看護師が公務員になるには?働く選択肢や年収・民間病院勤務との違いを解説
公務員として働く看護師は、雇用の安定や手厚い福利厚生から人気の選択肢です。ただ、いざ調べてみると「国家公務員」「地方公務員」「準公務員」と言葉が並び、自分が目指せるのはどれなのか分かりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか?
特に気をつけたいのが「準公務員」という呼び方です。国立病院機構などを指してよく使われますが、これらの法人の職員は法律上の公務員ではありません。同じ「公務員看護師」という言葉でくくられていても、身分や給与の決まり方、雇用保険や副業の扱いはそれぞれ違います。
この記事では、看護師が公務員になるにはどんな道があるのかを、4つの軸で整理します。勤務先ごとの仕事内容、類型別の年収、メリット・デメリット、新卒と既卒それぞれの応募ルートまで、公的データをもとに解説します。
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公務員看護師とは?

「公務員看護師」は法律上の用語ではなく、勤務先の設置主体によって大きく3つに分かれます。求人サイトや就職情報では3つが同列に並べられがちですが、待遇の中身は同じではありません。
読み分けるポイントは次の4点です。この記事では、以降のすべての章をこの4つの軸に沿って説明していきます。
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身分法律上の公務員に当たるかどうか
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適用される給与表どの給与表・給料表で月給が決まるか
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雇用保険加入できるかどうか
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副業の可否制限の根拠になる法律が何か
国家公務員として働く看護師
国が直接運営する病院・療養所・診療所などに勤務する看護師です。
一般職の国家公務員にあたり、給与は「医療職俸給表(三)」で決まります。この表は、病院、療養所、診療所等に勤務する保健師、助産師、看護師、准看護師などに適用されると法律で定められています。
人数はごくわずかです。人事院の令和7年国家公務員給与等実態調査によると、医療職俸給表(三)の適用者は全国で1,760人。全俸給表の適用者249,149人の1%にも届きません。平均年齢は48.2歳、平均経験年数は22.7年と、勤続の長い層が中心です。
人数が少ないのは、かつての国立病院・国立療養所の多くが2004年に独立行政法人へ移行したためです。現在、厚生労働省が直接開設している病院は全国で14施設にとどまります。
副業の制限は、国家公務員法第103条(私企業からの隔離)と第104条(他の事業又は事務の関与制限)が根拠になります。
なお、自衛隊病院で働く看護師は同じ国家公務員でも扱いが異なります。防衛省の職員は国家公務員法第2条第3項第16号により特別職とされ、同条で「この法律の規定は、この法律の改正法律により、別段の定がなされない限り、特別職に属する職には、これを適用しない」と定められているためです。副業の制限は自衛隊法第62条が根拠になります。
地方公務員として働く看護師
都道府県立・市町村立の病院や、保健所、自治体の本庁などに勤務する看護師です。
総務省の令和7年地方公務員給与実態調査では、看護師・保健師などが含まれる「看護・保健職」は78,588人。国家公務員の約45倍にあたり、公務員として働く看護師の大半はこちらです。
給与は各自治体の条例で定めた給料表によって決まります。地方公務員法第24条第5項が「職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める」としているためで、国の医療職俸給表(三)に相当する「医療職給料表(三)」を置く自治体が多くなっています。条例が自治体ごとに違うため、同じ地方公務員でも金額に差が出ます。
ここで注意したいのが、公立病院で働いていても地方公務員とは限らないという点です。地方独立行政法人に運営が移った病院の職員は、原則として地方公務員ではありません。
地方独立行政法人法では、定款で「特定地方独立行政法人」と定めた法人の役員・職員だけが地方公務員とされます(第47条)。それ以外の一般地方独立行政法人の職員は、第58条により「刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす」とされるだけです。
総務省の資料では、令和7年4月1日現在で病院事業を行う公営企業型地方独立行政法人は68法人。このうち特定地方独立行政法人はわずか2法人です。厚生労働省の医療施設調査では地方独立行政法人が開設する病院は134施設あり、その大半は職員が地方公務員ではないことになります。
志望先が地方独立行政法人に移行していないかは、応募前に確認しておきたいところです。
注意
- 地方独立行政法人法第4条は、法人の名称中に「地方独立行政法人」という文字を用いなければならないと定めています
- 病院の公式サイトの「病院概要」や「沿革」で運営主体の名称を確認しましょう
病院を運営する地方独立行政法人の数
準公務員として働く看護師
国立病院機構、地域医療機能推進機構(JCHO)、労働者健康安全機構、国立高度専門医療研究センターなどの病院に勤務する看護師です。
「準公務員」「みなし公務員」と呼ばれますが、これは実務上の通称で、法律上の公務員ではありません。
根拠になっているのは、独立行政法人国立病院機構法第14条や独立行政法人地域医療機能推進機構法第12条の規定です。どちらも「機構の役員及び職員は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす」と定めています。収賄罪などの罰則を適用するときに公務員と同じに扱うという意味で、身分そのものを公務員にする規定ではありません。
違いは待遇に表れます。国立病院機構近畿グループの募集案内では、保険・年金について「共済組合(国家公務員共済組合法)、雇用保険に加入」と明記されています。年金は公務員と同じ共済組合ですが、雇用保険には加入する点が公務員と決定的に違います。
賞与の基準も国とは別です。国立病院機構の業績手当は年間で基本給等の4.2月分とされており、国家公務員の令和7年度の期末・勤勉手当4.65月分とは異なります。副業についても、国家公務員法・地方公務員法の対象外であるため、可否は勤務先の規程しだいです。
公務員看護師3類型の比較
| 観点 | 国家公務員 | 地方公務員 | 準公務員 |
|---|---|---|---|
| 身分 | 一般職の国家公務員(自衛隊病院勤務は特別職) | 地方公務員 | 公務員ではない(罰則の適用時のみ公務に従事する職員とみなす) |
| 給与の決まり方 | 国が定める医療職俸給表(三) | 自治体の条例で定める給料表 | 法人が定める給与規程 |
| 雇用保険 | 加入できない | 加入できない | 加入する |
| 副業の制限の根拠 | 国家公務員法第103条・第104条 | 地方公務員法第38条 | 勤務先の規程 |
| 人数 | 1,760人(医療職俸給表(三)の適用者) | 78,588人(看護・保健職) | 25,772人(国立病院機構の病院看護師) |
※人数は調査主体と時点が異なる。準公務員の人数は国立病院機構のみの数字
参考:人事院「令和7年国家公務員給与等実態調査報告書」 / 総務省「令和7年地方公務員給与の実態」 / 厚生労働省「令和6(2024)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」 / 総務省「総務省|地方自治制度|地方独立行政法人」 / e-Gov法令検索「地方独立行政法人法」 / e-Gov法令検索「独立行政法人国立病院機構法」 / 独立行政法人国立病院機構近畿グループ「給与・勤務時間・福利厚生」
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公務員看護師の勤務先と仕事内容

公務員看護師の勤務先は病院だけではありません。保健所や自治体の本庁、学校、自衛隊病院、刑事施設など、看護の資格を生かせる職場は幅広く存在します。
ただし、病院以外の職場では保健師免許や教員免許が要件になることがあります。「看護師免許があれば応募できる」とは限らないため、募集要項の受験資格欄を必ず確認してください。
公立病院
公務員看護師の勤務先として最も一般的なのが公立病院です。厚生労働省の医療施設調査によると、令和6年10月1日現在で都道府県が開設する病院は184施設、市町村が開設する病院は588施設あります。
仕事内容は病棟や外来、手術室、救急外来など民間病院と大きく変わりません。違いが出るのは病院が担う役割です。公立病院は救急医療や周産期医療、感染症医療、へき地医療など、採算だけでは維持しにくい医療を自治体の方針として引き受けるケースが多く、そうした部門への配属や応援が発生することがあります。
保健所
保健所は、地域住民全体の健康を対象にする行政機関です。地域保健法施行令第5条は、保健所に置く職員として医師、歯科医師、薬剤師、獣医師、保健師、助産師、看護師などを挙げており、条文上は看護師も対象に含まれます。
一方で、自治体が実際に募集する採用区分は「保健師」であることが多いのが実情です。母子保健の相談、感染症の発生時対応や積極的疫学調査、精神保健の相談、家庭訪問といった業務が中心で、個人の治療ではなく地域全体への働きかけが主な仕事になります。
自治体の本庁
都道府県庁や市役所の医療政策課、介護保険課、障害福祉課などで働く道もあります。医療計画や介護保険事業計画の策定、医療機関・介護事業所への指導監査、健康づくり事業の企画運営などが業務です。
臨床を離れて制度そのものに関わる仕事になりますが、こちらも募集は保健師区分が中心です。現場経験に加えて、統計の読み取りや文書作成の力が求められる職場といえます。
学校
学校で看護師が働く形として制度化されているのが「医療的ケア看護職員」です。学校教育法施行規則第65条の2は、医療的ケア看護職員について「日常生活及び社会生活を営むために恒常的に医療的ケア(人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引その他の医療行為をいう。)を受けることが不可欠である児童の療養上の世話又は診療の補助に従事する」と定めています。
保健室にいる養護教諭とは別の職です。養護教諭になるには教員免許状が必要で、看護師免許だけでは取得できません。教育職員免許法の別表第二では、保健師免許があれば二種免許状の授与対象になり、看護師免許の場合は文部科学大臣の指定する養護教諭養成機関に1年以上在学して22単位を修得すると一種免許状の授与対象になると定められています。
保有免許から養護教諭までのルート
自衛隊病院
全国に置かれた自衛隊病院で働くルートは大きく2つあります。1つは防衛医科大学校看護学科の自衛官候補看護学生として入学し、保健師・看護師の国家資格を取得したうえで幹部候補生学校を経て幹部自衛官になる道です。もう1つは、各病院が実施する防衛省職員としての選考採用に応募する道です。
前述のとおり防衛省の職員は特別職の国家公務員にあたるため、給与も服務も自衛隊法など防衛省関係の法令で定められます。患者さんは隊員やその家族が中心で、災害派遣や国際緊急援助といった任務に関わる可能性がある点が他の職場と大きく異なります。
刑事施設
刑務所や拘置所、少年院などの矯正施設にも医務部門があり、被収容者の健康管理や診察の補助、投薬管理などを担っています。
法務省の矯正職員採用ページでは、刑務所の医務課について「准看護師養成所において刑務官として勤務しながら准看護師の資格を取得した刑務官が医師の指示を受けるなどして、医療事務に従事しています」と説明されています。各工場を回って症状を聞き取り、常備薬を使わせたり医師の診察につないだりする業務が挙げられています。
看護師の求人を探す参考:厚生労働省「令和6(2024)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」 / e-Gov法令検索「地域保健法施行令」 / e-Gov法令検索「学校教育法施行規則」 / e-Gov法令検索「教育職員免許法」 / 法務省「職場を見る(刑務官):法務省矯正職員採用」 / 防衛省「防衛医科大学校看護学科学生(自衛官候補看護学生)|自衛官募集サイト」
公務員看護師の年収

公務員の給与は、勤務先ごとの相場ではなく給料表で決まります。職務の責任の重さに応じた「級」と、経験年数などに応じた「号給」の組み合わせで俸給月額が決まる仕組みです。
国家公務員の医療職俸給表(三)を例にとると、人事院規則九―八の級別標準職務表では、准看護師が1級、看護師・保健師・助産師が2級、副看護師長が3級、看護師長が4級というように、役割が上がるほど級も上がる設計になっています。同じ級の中では、勤務成績に応じて号給が上がり、少しずつ昇給していきます。
金額は毎年の人事院勧告や自治体の条例改正で変わるため、志望先の最新の給料表を確認することが大切です。以下で紹介するのは、いずれも令和7年(2025年)時点の公的な調査結果です。
国家公務員看護師の年収
人事院の令和7年国家公務員給与等実態調査によると、医療職俸給表(三)の適用者1,760人の平均給与月額は375,323円です。内訳は俸給333,346円、地域手当21,884円、扶養手当9,967円、住居手当6,199円などとなっています。平均年齢は48.2歳です。
ここで押さえておきたいのが、この「平均給与月額」には超過勤務手当と夜勤に伴う手当が含まれていないことです。実際に受け取る月収は、夜勤や残業の回数に応じてこれより高くなります。
賞与にあたる期末手当・勤勉手当は、令和7年人事院勧告により令和7年度は年間4.65月分に引き上げられました。平均給与月額を12か月分にすると約450万円で、ここに4.65月分の期末・勤勉手当と、超過勤務手当・夜間看護等手当が加わるイメージです。
地方公務員看護師の年収
総務省の令和7年地方公務員給与実態調査では、全地方公共団体の「看護・保健職」78,588人の平均給料月額は317,862円、諸手当を加えた給与月額の合計は392,909円でした。平均年齢は40.7歳です。
諸手当75,047円の中身は、時間外勤務手当18,656円、夜勤などに支給される特殊勤務手当14,209円、地域手当15,050円、夜間勤務手当4,931円などです。国家公務員の数字と違い、残業代や夜勤手当が含まれた金額である点に注意してください。
賞与は期末手当839,501円と勤勉手当703,139円の合計で年間1,542,640円です。給与月額の12か月分と合わせると、年収の目安は約626万円になります。
同じ地方公務員でも、自治体の区分によって平均給料月額には差が出ます。最も高い都道府県は327,209円、最も低い特別区は300,839円で、同じ職種でも月額26,370円の開きがあります。志望先がどの区分に当たるかで、生涯の収入は変わってきます。
準公務員看護師の年収
独立行政法人は「役職員の報酬・給与等について」を毎年公表しており、職種別の年間給与額を確認できます。国立病院機構の令和6年度の公表資料では、医療職種(病院看護師)25,772人の年間給与額の平均総額は528万5千円でした。内訳は所定内給与399万7千円、賞与128万8千円で、平均年齢は38.2歳です。なお、年俸制が適用される看護部長はこの数字に含まれていません。
初任給の水準も公表されています。国立病院機構近畿グループの募集案内(令和8年4月1日現在)では、看護師の基本給は大学卒241,500円程度、短大3年課程卒235,900円程度とされています。
地方公務員の約626万円と比べると低く見えますが、平均年齢が2.5歳違う点を踏まえる必要があります。年齢構成をそろえずに金額だけを比べると、実態を見誤ります。
民間病院の看護師の年収
比較の基準として、看護師全体の平均も見ておきましょう。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査(産業計・企業規模10人以上の一般労働者)では、看護師のきまって支給する現金給与額は365,900円、年間賞与は856,400円です。ここから算出した推計年収は約525万円、平均年齢は42.1歳、平均勤続年数は9.8年でした。
- 正看護師の求人9,633件の月給中央値は292,000円
- 施設別では訪問看護320,000円、病院298,000円、クリニック286,000円
- 公務員は給料表で金額が決まるので、求人ごとに提示額を見比べる考え方とは違います
医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)
同じ調査の他の資格を見ると、准看護師は約428万円、保健師は約551万円、助産師は約567万円となっています。
なお、この統計は民間だけを対象にしたものではなく、公立病院などの公営事業所も含んだ全体の平均です。「公務員」対「民間」の純粋な比較ではない点は押さえておいてください。
参考:人事院「令和7年国家公務員給与等実態調査報告書」 / 人事院「令和7年人事院勧告」 / 総務省「令和7年地方公務員給与の実態」 / 独立行政法人国立病院機構「独立行政法人国立病院機構の役職員の報酬・給与等について 令和6年度」 / e-Stat「賃金構造基本統計調査 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」
公務員看護師のメリット

公務員として働くメリットは、給与の高さだけではありません。身分の保障、昇給の見通しの立てやすさ、退職手当、共済組合による福利厚生など、法律や条例で仕組みが決まっていることから生まれる安心感が大きな特徴です。
雇用が安定している
地方公務員法第27条第2項は「職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、又は免職されず、この法律又は条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して、休職され、又は降給されることがない」と定めています。経営状態を理由に一方的に解雇されることは想定されていません。
ただし、絶対に免職されないわけではありません。同法第28条第1項は、勤務実績がよくない場合や、職制の改廃・予算の減少により廃職や過員が生じた場合には、意に反して降任・免職できるとしています。病院の統廃合が起きた際も多くは配置転換で対応されますが、制度上は例外があると理解しておくとよいでしょう。
給料表に沿って昇給する
給料表が公開されているため、何年後にどのくらいの俸給になるのかを事前に確認できます。募集要項や自治体の例規集で給料表を見れば、入職後の見通しが立てられる点は民間にない強みです。
引き上げの実績も数字で追えます。地方公務員の看護・保健職の平均給料月額は、令和6年の306,769円から令和7年の317,862円へと3.6%上昇しました。看護師(3年制短大卒)の初任給基準額も、国が249,400円、都道府県が252,350円と引き上げられています。
一方、日本看護協会が2024年時点で実施した調査では、病院に勤務するフルタイム正規雇用・非管理職の看護師の基本給は、2012年の調査から6,000円(約2.3%)の増加にとどまっていました。約10年かけた民間の伸びと、直近1年の公務員の伸びを並べると、給料表に沿って毎年見直される仕組みの効果が分かります。
退職手当が支給される
内閣官房内閣人事局が公表している令和5年度の国家公務員の退職手当支給状況では、定年退職者7,835人の平均支給額は約2,147万円でした。平均勤続年数は38年7か月です。
自己都合退職の場合は、10,317人の平均が約304万円で、平均勤続年数は9年9か月でした。ただしこの平均には勤続の短い退職者も含まれています。勤続年数別に見ると20年を超えたあたりから金額が大きく伸びるため、平均だけを見て判断しないほうがよいでしょう。地方公務員も、条例に基づいて同様の退職手当制度が設けられています。
自己都合退職の退職手当は勤続年数が長いほど増える
令和5年度に退職した国家公務員の平均支給額(自己都合退職)
福利厚生が整っている
公務員は健康保険組合ではなく共済組合に加入します。共済組合は、健康保険にあたる短期給付、年金にあたる長期給付に加え、貸付や宿泊施設の利用といった福祉事業も行っています。
育児・介護に関する制度も条例や規程で整備されています。国立病院機構の例では、育児休業は子が3歳に達する日まで取得でき、小学校就学前まで利用できる育児短時間休業も設けられています。準公務員にあたる法人でも、公務員に準じた制度が用意されているケースが多くなっています。
研修制度が充実している
保健師助産師看護師法第28条の2は「保健師、助産師、看護師及び准看護師は、免許を受けた後も、臨床研修その他の研修を受け、その資質の向上を図るように努めなければならない」と定めています。この努力義務を受けて、公立病院や独立行政法人の病院ではクリニカルラダーに沿った院内研修が体系化されています。
規模の大きい組織ほど研修の選択肢は広がります。国立病院機構は看護師等養成所の教員244人を抱えており、グループ内の病院間で異動しながらキャリアを継続できる仕組みも整えています。
参考:e-Gov法令検索「地方公務員法」 / e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」 / 総務省「令和7年地方公務員給与の実態」 / 内閣官房内閣人事局「給与・退職手当」 / 公益社団法人日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査 結果」
転職活動するなら?
公務員看護師のデメリット

安定と引き換えに、公務員には民間にはない制約があります。特に副業と雇用保険は法律で扱いが決まっているため、個人の交渉では変えられません。就職・転職を決める前に確認しておきたい5つのポイントを整理します。
副業が禁止されている
地方公務員法第38条は、職員は任命権者の許可を受けなければ、営利企業の役員などを兼ねたり、自ら営利企業を営んだり、報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならないと定めています。単発の夜勤バイトや健診の応援も、報酬を得る以上は許可の対象です。
国家公務員も同様で、国家公務員法第103条が営利企業の役員兼務や自営を禁じ、第104条が報酬を得て営利企業以外の事業に従事する場合に内閣総理大臣および所轄庁の長の許可を求めています。自衛隊病院で働く場合は自衛隊法第62条により防衛大臣などの承認が必要です。
一方、準公務員にあたる法人の職員は、これらの法律の適用対象ではありません。副業ができるかどうかは勤務先の規程しだいで、一律に禁止されているとは限らない点が公務員との違いです。
雇用保険に加入できない
雇用保険法第6条第6号は、国や地方公共団体などの事業に雇用される者のうち、離職した場合に他の法令や条例に基づいて支給される諸給与の内容が求職者給付・就職促進給付の内容を超えると認められる者を適用除外としています。退職手当が失業給付を上回ると整理されているため、そもそも加入対象にならないという建て付けです。
そのぶん、退職手当制度の中に救済措置が用意されています。国家公務員退職手当法第10条の「失業者の退職手当」です。内閣官房内閣人事局は、退職時に支給された一般の退職手当等の額が雇用保険の失業等給付に満たない場合に、その差額分を限度として公共職業安定所などを通じて支給する制度だと説明しています。
ただし同局は、受給対象になるのは「退職時に支給される一般の退職手当等の額(退職金)が相当に低い者か一般の退職手当等が支給されない者であり、主として、3年以内などの短い勤続期間で退職した者」だと明記しています。一定年数勤めてから自己都合で退職する場合、失業給付にあたるものは受け取れないと考えておくのが現実的です。
なお、前述のとおり国立病院機構などの職員は雇用保険に加入します。同じ「公務員系」でも、退職後の備え方はまったく違います。
異動や転勤がある
地方公務員法第17条は、職員の職に欠員が生じた場合、任命権者は採用・昇任・降任・転任のいずれかの方法で職員を任命できると定めています。転任は本人の希望とは別に発令されるため、複数の病院を持つ自治体では病院間の異動が、保健師区分では保健所と本庁の間の異動が起こります。
独立行政法人でも事情は同じです。国立病院機構は全国140病院を運営しており、病院間の異動制度が設けられています。転居を伴う異動が生じる可能性があるかどうかは、生活設計に直結します。異動の範囲は面接や説明会で確認しておきましょう。
年功序列で評価されやすい
制度上、人事評価がないわけではありません。地方公務員法第23条第2項は「任命権者は、人事評価を任用、給与、分限その他の人事管理の基礎として活用するものとする」と定めており、第24条第1項も「職員の給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない」としています。
それでも年功序列に見えるのは、昇給が号給を一つずつ上げていく積み上げ型だからです。大きく給与を上げるには級を上げる必要がありますが、級別標準職務表が示すとおり、3級以上は副看護師長・看護師長といった役職に対応しています。ポストの数が限られている以上、実績があっても空きがなければ級は上がりません。短期の成果がすぐ給与に反映される仕組みを求める人には、物足りなく感じられる部分です。
看護師の求人を探す夜勤手当が低い傾向がある
国家公務員の夜勤手当にあたる「夜間看護等手当」は、人事院規則九―三〇第24条で金額が定められています。勤務時間が深夜の全部を含む勤務は1回7,300円、深夜の一部を含む勤務は深夜勤務が4時間以上で3,550円、2時間以上4時間未満で3,100円、2時間未満で2,150円です。
これを日本看護協会が2024年時点で実施した調査による病院の平均額と並べると、傾向が見えてきます。三交代の深夜勤は国の基準額のほうが高い一方、二交代では基準額が病院の平均を大きく下回ります。
「夜勤手当が低い」と言われるのは、主に二交代夜勤の場合です。ただし国家公務員にはこの手当とは別に深夜割増にあたる夜間勤務手当が支給されるため、1回あたりの金額だけを単純に比べることはできません。地方公務員は条例で額を定めるため自治体差があり、令和7年の看護・保健職では特殊勤務手当が月平均14,209円、夜間勤務手当が月平均4,931円でした。
参考:e-Gov法令検索「地方公務員法」 / e-Gov法令検索「国家公務員法」 / e-Gov法令検索「自衛隊法」 / e-Gov法令検索「雇用保険法」 / e-Gov法令検索「人事院規則九―三〇(特殊勤務手当)」 / 内閣官房内閣人事局「内閣人事局|国家公務員制度|失業者の退職手当制度の概要」 / 公益社団法人日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査 結果」 / 総務省「令和7年地方公務員給与の実態」
公務員看護師になる方法

「看護師の採用に公務員試験はない」と書かれている記事を見かけますが、この説明は正確ではありません。地方公務員法第17条の2は、人事委員会を置く地方公共団体では職員の採用は競争試験によることを原則とし、人事委員会規則で定める場合に限って選考によることを妨げないとしています。
そして同法は選考を「競争試験以外の能力の実証に基づく試験」と定義しています。選考だから試験がない、という意味ではありません。第20条第2項も採用試験の方法を「筆記試験その他の人事委員会等が定める方法により行う」としており、何を課すかは募集元が決めます。教養試験や小論文、専門試験が出る募集もあれば、書類選考と面接が中心の募集もあるということです。
判断材料は募集要項にあります。次の欄を確認してください。
- 受験資格(免許の種類、年齢の上限、必要な実務経験年数)
- 採用の区分(競争試験か選考か)
- 第1次・第2次試験の科目(教養試験・専門試験・小論文・面接の有無)
- 受付期間と各試験の日程
- 採用予定日
日程は自治体の採用情報ページで毎年更新されます。志望先が決まっているなら、前年度の募集要項を先に読んでおくと、必要な準備と時期の見通しが立ちます。
新卒で一括採用試験を受ける
看護学生向けの採用は、翌年4月採用の募集が前年の春から夏にかけて出るケースが多く見られます。ただし時期は自治体や法人ごとに異なるため、一律には言えません。志望先の前年度の日程を確認するのが確実です。
採用後は、いきなり正式採用になるわけではない点も知っておきましょう。地方公務員法第22条は「職員の採用は、全て条件付のものとし、当該職員がその職において六月の期間を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに、正式のものとなる」と定めています。人事委員会規則により、条件付採用の期間は1年を超えない範囲で延長できます。
国立病院機構などの独立行政法人は、公務員試験とは別に法人独自の採用試験を実施しています。グループ単位で募集をまとめている法人もあるため、複数の病院を一度に受けられる場合があります。
既卒で中途採用に応募する
すでに働いている看護師が公務員を目指す場合、新卒一括採用とはルートが変わります。欠員が出たタイミングで随時募集がかかるケースがあり、募集時期も選考内容も新卒向けとは別に設定されます。
経験者向けの選考では、受験資格に実務経験年数が設定されることがあります。「看護師として3年以上の実務経験を有する者」といった条件です。年齢の上限が新卒向けより緩やかに設定されることもあるため、年齢だけで諦める前に募集要項を確認してください。
保健所や自治体本庁の職を狙う場合は、前述のとおり保健師免許が要件になることが多くなります。働きながら保健師の資格取得を目指すかどうかも含めて、応募先の幅を早めに把握しておくとよいでしょう。
公務員だけに絞ると、募集が出るまで動けない期間ができてしまいます。民間の求人も並行して見ておくと、条件を比べる基準ができて志望動機も具体的になりますよ。
公務員の中途採用は、民間病院のように年間を通じて求人が出ているわけではありません。募集が出たときにすぐ動けるよう、履歴書や職務経歴書、志望動機の準備は前もって進めておくことをおすすめします。
まとめ
看護師が公務員になるには、国家公務員、地方公務員、そして「準公務員」と呼ばれる独立行政法人の3つのルートがあります。ただし、この3つは待遇が同じではありません。準公務員は法律上の公務員ではなく、雇用保険に加入する一方で賞与の基準も国とは別に定められています。公立病院であっても、地方独立行政法人に移行していれば職員は地方公務員ではない点にも注意が必要です。
年収は、地方公務員の看護・保健職が年約626万円(平均40.7歳)、国立病院機構の病院看護師が約528万円(平均38.2歳)、看護師全体の推計年収が約525万円(平均42.1歳)でした。平均年齢が異なるため、金額だけを並べて優劣を判断するのは避けたいところです。
採用については、「公務員試験は不要」と一律に考えないことが大切です。試験の内容も受験資格も募集元が決めるため、判断材料は募集要項にしかありません。志望先の前年度の募集要項を読み、受験資格・試験科目・日程の3点を先に押さえておきましょう。既卒での応募ルートもあります。まずは気になる自治体や法人の採用情報ページをチェックすることから始めてみてください。





