薬局の人間関係に疲れた|薬剤師が原因を切り分ける方法と対処法を解説

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薬局の人間関係に疲れて、出勤前になると気持ちが重くなる。そんな状態が続くと「自分の耐性が足りないのではないか」と考えてしまうことがあります。ただ、薬局は一つの店舗を数人で回す職場で、疲れやすさには環境側の理由があります。

そしてもう一つ大切なのが、疲れの原因が本当に人間関係なのか、それとも人員不足や業務過多といった労働環境なのかを見分けることです。原因を取り違えたまま職場を変えると、条件の似た薬局で同じ状況を繰り返すことになりかねません。

この記事では、薬局の人間関係で疲れやすい構造的な理由から、原因の切り分け方、今の職場でできる対処、ハラスメントに当たる場合の対応、そして転職先の見極め方までを順に解説します。

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薬局の人間関係で疲れやすい理由

調剤した薬剤を2人の薬剤師が監査している様子

薬局で人間関係に疲れるのは、性格の相性だけが原因ではありません。人数の少なさ、空間の狭さ、シフトの組み方、そして薬剤師の仕事に組み込まれた確認の工程が、摩擦の起きやすい条件を重ねてつくっています。

まずは、その構造を具体的に見ていきます。自分の置かれた環境を言葉にできると、次の章で扱う原因の切り分けがぐっとやりやすくなります。

狭い空間で少人数が長時間過ごすため

厚生労働省の統計では、薬局に従事する薬剤師は令和6年12月末時点で約19万7千人です。一方、薬局の数は令和6年度末で約6万3千施設あります。単純に割ると、1薬局あたりの薬剤師は平均で約3人という計算になります。

つまり多くの薬局では、数人が同じ調剤室で開店から閉店まで顔を合わせ続けることになります。オフィスのように席を移動したり、フロアを変えて気分を切り替えたりする余地はほとんどありません。

さらに、調剤室という物理的に限られた空間では、他のスタッフの声も動きも常に視界と耳に入ります。一人になれる時間が取りにくいため、小さな違和感が解消されないまま積み重なりやすい環境だといえます。

1薬局あたりの薬剤師数
約3.1
197,437 薬局の薬剤師数(人)
÷
63,203 薬局数(施設)

※2つの公表値からの単純計算

シフトで顔ぶれが固定されやすいため

人数が少ない職場では、シフトの組み合わせも自然と限られます。薬剤師が3人前後の店舗であれば、誰と誰が一緒になるかのパターンは数通りしかありません。

そのため、相性が合わない相手がいた場合でも、その人と組む日を避けることが難しくなります。大きな組織のように「同じ部署でも一週間顔を合わせない」という状況は起こりにくく、距離を取る選択肢そのものが少なくなります。

加えて、薬局には薬剤師が不在にできる時間の上限があります。医薬品医療機器等法にもとづく体制省令では、薬剤師不在時間は4時間または開店時間の2分の1のうち短いほうを超えられないと定められています。つまり、基本的には誰かが常に店舗にいる前提でシフトが組まれます。

監査や確認のやり取りが日常的に発生するため

薬剤師の仕事には、互いの仕事を確認し、間違いを指摘する工程が最初から組み込まれています。調剤した薬剤を別の薬剤師が監査する流れは、患者さんの安全を守るための仕組みです。

ただし、この仕組みは「指摘する側」と「指摘される側」という関係を毎日つくり出します。日本医療機能評価機構の2024年年報によると、調剤に関するヒヤリ・ハット19,304件のうち、約3分の2は当事者以外が気づいたものでした。

数字が示しているのは、確認し合う工程が実際に機能しているという事実です。同時に、それだけの頻度で指摘のやり取りが発生しているということでもあります。他職種にはあまり見られない、薬剤師特有の疲れの要因だといえます。

調剤ヒヤリ・ハットは誰が発見したか
19,304件調剤に関する事例
当該薬局の薬剤師 35.5%(6,849件)
当事者本人 32.6%(6,288件)
患者さん本人 15.6%(3,005件)
事務員 6.2%(1,196件)
家族 4.8%(928件)
他施設 4.5%(869件)
その他・不明 0.9%(169件)
当事者本人以外が発見 67.4%

職種ごとの役割分担が曖昧になりやすいため

薬局には薬剤師のほかに、事務員や登録販売者が勤務しています。忙しいときに互いを補い合う場面は多いものの、どこまでを誰が担うかの線引きは、実は法令で細かく決まっています。

薬剤師法第19条により、調剤は薬剤師でなければ行えません。厚生労働省が平成31年に出した通知(いわゆる0402通知)では、薬剤師以外が行える行為が2つだけ示されています。それ以外は、薬剤師が途中で確認していても薬剤師法第19条違反にあたると明記されています。

線引きが厳密である一方、現場では「これくらいなら手伝ってもらえないか」という判断が日々発生します。そのたびに調整が必要になり、頼む側にも頼まれる側にも負担が残ります。役割分担をめぐる緊張は、個人の姿勢ではなく制度と現場の間に生じるずれから来ています。

薬剤師以外に頼める業務・頼めない業務
頼める
PTPシート等で包装されたままの医薬品の必要量を取りそろえる行為
薬剤師の監査前に行う一包化薬剤の数量確認
× 薬剤師でなければできない
軟膏剤の直接計量・混合
水剤の直接計量・混合
散剤の直接計量・混合
薬剤師が途中で確認していても、薬剤師法第19条違反にあたる

人手不足で余裕がなくなるため

人手が足りない状態が続くと、言葉づかいや表情に気を配る余裕が失われます。同じ「これ違うよ」という一言でも、落ち着いた日と立て込んだ日では受け取り方が変わります。

先ほどの年報では、ヒヤリ・ハットの発生要因も集計されています。調剤に関する19,304件について複数回答で挙げられた要因のうち、「繁忙であった」が9,037件と上位を占めました。ほかにも、薬局内のルールや管理の体制、教育訓練のなされ方、職場の風土といった項目が並んでいます。

こうした要因は、個人の注意力ではなく体制の問題として整理されています。人間関係がぎくしゃくしている背景に、そもそも人が足りていないという事情が隠れているケースは珍しくありません。

発生要因のうち職場側の条件
繁忙であった
9,037件
薬局内のルールや管理の体制・仕方
3,627件
教育訓練のなされ方
1,484件
スタッフ間のコミュニケーション不足
914件
風土・雰囲気
450件
※複数回答。調剤に関する事例19,304件が母数

参考:厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」厚生労働省「令和6(2024)年度衛生行政報告例の概況」e-Gov法令検索「薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令」厚生労働省「調剤業務のあり方について」日本医療機能評価機構「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 年報」

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人間関係の問題か労働環境の問題かを切り分ける

調剤室でノートを手に考え込む女性薬剤師

ここがこの記事の中核です。人員不足や業務過多で常に余裕がない職場では、些細な言い方がきつく感じられ、それを人間関係の問題として受け取ってしまうことがあります。

厚生労働省の令和7年労働安全衛生調査(実態調査)では、仕事や職業生活に強い不安・悩み・ストレスを感じる事柄がある労働者は67.5%でした。その内容を主なもの3つ以内で挙げてもらった結果、最も多かったのは「仕事の量」で、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」はその次でした。

対人関係は確かに大きな要因ですが、それを上回るのが仕事の量です。この順位は、疲れの正体を人間関係だけに求めないほうがよいことを示しています。ここからは、切り分けるための4つの観点を順に見ていきます。

強い不安・悩み・ストレスがある労働者は67.5%

ストレスを感じる事柄の内訳
010203040%
仕事の量
39.5%
対人関係
32.9%
仕事の量が対人関係を6.6ポイント上回る
仕事の質
30.7%
役割・地位の変化等
17.7%

※主なもの3つ以内の複数回答。合計は100%にならない

人員体制を確認する

最初に確認したいのは、そもそも人が足りているかどうかです。感覚ではなく、数字で見るのが確実です。

薬局の人員配置には基準があります。体制省令では、1日平均取扱処方箋数40枚につき薬剤師1人を基準に薬剤師を置くことが定められています。自分の店舗の1日あたり処方箋枚数を、勤務している薬剤師の常勤換算人数で割ってみてください。

基準を大きく超えている場合、余裕のなさは体制から来ている可能性が高くなります。逆に基準を満たしているのに息苦しさが続くなら、原因は別のところにあると考えられます。

処方箋枚数から見る必要人数の目安
1日の処方箋枚数基準上必要な薬剤師数
〜401
41〜802
81〜1203
121〜1604
161〜2005
1日の平均処方箋枚数 ÷ 40 = 基準上必要な薬剤師数(端数は切り上げ)

※常勤換算での人数。パート勤務は勤務時間で換算する

業務量と時間外労働を確認する

次に見るのが、実際に働いている時間です。時間外労働には法律上の上限があり、原則として月45時間・年360時間と定められています。

臨時的な特別の事情があって労使が合意した場合でも、年720時間以内、複数月平均80時間以内、月100時間未満という枠を超えることはできません。自分の残業時間がこの水準に近づいているなら、疲れの主因は業務量にあると見るのが自然です。

あわせて確認したいのが、休憩を取れているかどうかです。処方箋が途切れずに続く時間帯に一人で調剤室に立ち続けている場合、休憩時間が名目だけになっていることがあります。実際に離席できているかを、数日分書き出して見てみてください。

特定の相手との関係なのかを確認する

職場全体がつらいのか、特定の一人との関係がつらいのかで、取るべき対処はまったく変わります。ここを混同したまま動くと、選ぶ手段を誤ります。

判断のしかたはシンプルです。その人が休みの日、出勤するときの気持ちがどう変わるかを思い出してみてください。明らかに軽くなるなら、問題は個別の関係にある可能性が高いといえます。変わらないなら、職場全体の状態を疑うことになります。

特定の相手との関係が原因であれば、後の章で扱う店舗異動が現実的な選択肢になります。職場全体の状態が原因であれば、同じ法人の別店舗に移っても同じ体制が続くおそれがあるため、判断の材料を増やす必要があります。

つらさの原因を判定する
薬局に行くのがつらい
質問1
薬剤師1人あたりの処方箋枚数が40枚を超えているか
はい
労働環境の問題(人員体制)
人員の増員を求める・勤務形態を変える
いいえ
次の質問へ
質問2
残業や休憩が取れない状態が続いているか
はい
労働環境の問題(業務量)
労働時間を記録して相談する
いいえ
次の質問へ
質問3
その相手が休みの日は、気持ちが明らかに軽くなるか
はい
個別の関係の問題
距離の取り方を決める・店舗異動を検討する
いいえ
職場全体の問題
環境ごと変えることを検討する

忙しい時期だけの状態かを確認する

薬局の忙しさには波があります。処方箋の集中する時間帯や時期があり、その山を越えると落ち着くことも少なくありません。

先ほどの年報では、ヒヤリ・ハットの発生時間帯も集計されています。報告113,185件のうち10時から11時台が40,267件と突出しており、次いで12時から13時台が20,173件、16時から17時台が19,797件でした。一日の中でも負荷の集中する時間がはっきり存在します。

そのうえで、直近3か月を振り返ってみてください。特定の月だけがつらかったのか、それとも一年を通じて同じ状態が続いているのか。前者なら業務の山の問題として対処できますが、後者なら構造的な問題として扱う必要があります。

参考:厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況」e-Gov法令検索「薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令」厚生労働省「時間外労働の上限規制」日本医療機能評価機構「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 年報」

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疲れが限界に近づいているサイン

ベッドで休んでいる女性

疲れには、休めば戻る段階と、休養や受診を検討したほうがよい段階があります。ここで挙げるのは診断の基準ではなく、一般に知られている目安です。当てはまるかどうかの判断は医師に委ねてください。

厚生労働省の令和7年労働安全衛生調査によると、過去1年間にメンタルヘルス不調で連続1か月以上休業した労働者または退職者がいた事業所の割合は、全産業で13.5%、医療・福祉では16.8%でした。決して珍しい出来事ではありません。

事業所規模別 休業・退職の状況とメンタルヘルス対策の実施率
メンタル不調で連続1か月以上休業・退職した人がいた事業所 メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所
0%25%50%75%100%
10〜29人
6.8%
54.6%
30〜49人
18.3%
72.0%
50〜99人
26.8%
90.3%
1,000人以上
92.9%
99.8%
※上段は在籍者数が多い事業所ほど高く出やすい指標のため、規模間で単純比較はできません

睡眠の変化

最初に変化が現れやすいのが睡眠です。寝つけない、夜中に何度も目が覚める、朝早くに目が覚めてそのまま眠れない、といった状態が続いていないか振り返ってみてください。

眠れているつもりでも、起きたときに疲れが残っている場合があります。休日に長く寝ても回復した感覚がないなら、睡眠の質が落ちているサインと考えられます。

出勤前の体調の変化

職場に向かう前だけ体調が崩れるパターンもあります。出勤日の朝に腹痛や吐き気、頭痛が出て、休日には出ないという場合です。

体は正直に反応します。「気のせい」と片づけずに、いつ・どんな症状が出たかを日付とともに書き留めておいてください。産業医や医療機関に相談する際、経過が分かる記録があると話が早く進みます。

休日に回復しなくなる

以前は一日休めば戻っていたのに、二日休んでも戻らない。休日にやりたかったことをする気力が湧かず、横になって終わってしまう。こうした変化は、回復力そのものが落ちてきている目安になります。

あわせて、休日の後半になると翌日の出勤を考えて気持ちが沈む、という状態が続いていないかも確認してみてください。休みが休みとして機能しなくなっているなら、休養の量を増やすことを検討する段階です。

ミスや確認漏れが増える

調剤に関わる仕事である以上、コンディションの低下は業務の安全性に直結します。無理を続けることは、自分にとっても患者さんにとってもリスクになります。

先に触れた年報では、ヒヤリ・ハットの発生要因として「疲労・体調不良」が1,192件挙げられています。件数としては上位ではありませんが、疲労が実際に事例の背景として報告されていることは確かです。

いつもは気づく取り違えを見落とした、鑑査で指摘される回数が増えた。そうした変化を感じたら、自分を責める前に休養と相談を検討してください

相談先は、勤務先の産業医だけではありません。産業医の選任義務は常時50人以上の事業場に課されており、薬局は50人未満であることが多いため、選任されていない職場もあります。

ただし、選任されていない職場で働く人のための窓口も用意されています。勤務先を通すかどうかも含めて、状況に合う相談先を選べます。

なお、ストレスチェック制度は現在、労働者50人以上の事業場に義務づけられています。2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、令和10年4月1日からは50人未満の事業場にも義務化されます。

体調不良の相談先 3つの比較

  産業医
(勤務先)
地域産業
保健センター
こころの耳
使える人 常時50人以上の事業場で働く人(選任義務あり) 労働者50人未満の事業場で働く人 働く人なら誰でも
費用 無料(会社が選任) 無料 無料
相談方法 勤務先の担当部署に申し出る 地域のセンターに申し込む 電話・メール・SNS
向く場面 勤務先に知られてよい/就業上の配慮を求めたい 産業医が選任されていない小規模な薬局で働いている 勤務先を通さずに相談したい

参考:厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況」日本医療機能評価機構「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 年報」e-Gov法令検索「労働安全衛生法施行令」厚生労働省「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」厚生労働省「地域産業保健センター」厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」

今のあなたの状況は?

今の職場でできる対処

パソコンの前で電話をかける女性薬剤師

すぐに職場を変えられる人ばかりではありません。ここでは、今の薬局にいながら試せる対処を4つ紹介します。

順番にも意味があります。記録を残し、距離の取り方を決めたうえで、必要なら相談や異動という手段に進む。この流れなら、途中で状況が変わっても次の判断材料が手元に残ります。

相談相手として挙げた割合と実際に相談した割合
相談できる相手として挙げた 実際に相談した
上司
挙げた
63.8%
相談した
56.6%
同僚
挙げた
62.5%
相談した
53.8%
人事労務担当者
挙げた
10.7%
相談した
3.9%
産業医
挙げた
7.1%
相談した
2.0%
※複数回答。系列ごとに母数が異なる

やり取りの記録を残す

記録は、感情を整理する道具であると同時に、後で相談するときの材料にもなります。何が起きたかを事実として書き留めておくだけで、伝えるときの精度が大きく変わります。

書く内容は複雑にしなくて構いません。日付、時刻、場所、誰が何を言ったか、そのとき周囲に誰がいたか。この5点をメモアプリや手帳に残しておきます。

  • 日付と時刻を必ず入れる
  • 発言はできるだけそのままの言葉で書く
  • その場にいた人の名前を添える
  • 業務にどう影響したかを1行で足す

最後の「業務への影響」は特に大切です。監査を頼めず一人で処理した、確認に時間がかかって患者さんを待たせた、といった具体的な影響があると、後の相談で検討されやすくなります。

記録には評価や感情を書かず、起きた事実だけを残してください。「ひどい言い方をされた」ではなく「10時30分に調剤室で、他のスタッフの前で〇〇と言われた」と書くほうが、相談を受けた側が扱いやすくなります。

距離の取り方を決める

すべての人と良好な関係を築こうとすると、消耗が増えます。業務に必要な範囲でのやり取りに絞るという決め方も、現実的な選択肢の一つです。

具体的には、雑談の輪に無理に入らない、休憩時間を意識的にずらす、私的な話題を振られたときは短く答えて業務の話に戻す、といった対応が考えられます。冷たく振る舞う必要はなく、必要なやり取りを丁寧に行えば十分です。

言い回しの例としては、「そうなんですね。ところで、この処方の疑義照会の件なんですが」と話題を切り替える形があります。相手を否定せずに、話の焦点を業務に戻すことができます。

上司や本部に相談する

相談するときは、感情ではなく事実で伝えるほうが検討されやすくなります。前述の記録を使い、いつ・何が起きて・業務にどう影響しているかという形に整理してから持っていきます。

ここで知っておきたいのが、薬局には店舗の問題を本部に上げる法律上のルートがあることです。医薬品医療機器等法第8条第2項では、薬局の管理者は保健衛生上支障を生ずるおそれがないように、薬局の業務について開設者に対し必要な意見を書面により述べなければならないと定められています。

さらに同法第9条第2項では、開設者は管理者の意見を尊重し、法令遵守のために措置を講ずる必要があるときは措置を講じたうえで、その内容を記録し保存しなければならないとされています。措置を講じない場合は、その旨と理由を記録することが求められます。

つまり、管理薬剤師を通じて本部に上げた話は、記録に残る仕組みになっています。「小さな薬局だから言っても仕方ない」と諦める前に、この経路があることを知っておいてください。

なお、令和7年労働安全衛生調査によると、ストレスを相談できる人がいる労働者は94.8%にのぼります。ただし、実際に相談した相手として制度上の窓口を挙げた人は、ごく一部にとどまります。相談先があることと、それが使われていることは別だといえます。

医薬品医療機器等法 第8条第2項
管理者の義務
薬局の管理者は、保健衛生上支障を生ずるおそれがないように、その薬局の業務につき、薬局開設者に対し、必要な意見を書面により述べなければならない
管理薬剤師
書面
開設者・本部
記録・保存
医薬品医療機器等法 第9条第2項
開設者の遵守事項
薬局開設者は、述べられた管理者の意見を尊重するとともに、法令遵守のために措置を講ずる必要があるときは、当該措置を講じ、かつ、講じた措置の内容(措置を講じない場合にあっては、その旨及びその理由)を記録し、これを適切に保存しなければならない。

店舗異動を希望する

複数店舗を持つ法人であれば、転職せずに環境を変えられる場合があります。特定の相手との関係が原因であれば、異動は有効な手段になります。

希望を伝えるタイミングは、人事の動きが検討される時期に合わせるのが現実的です。多くの法人では年度替わりや半期の区切りに人員配置を見直すため、その1〜2か月前までに意向を伝えておくと検討の対象に入りやすくなります。

伝え方は、相手の非を並べるよりも、自分がどう働きたいかを軸にしたほうが通りやすくなります。「別の店舗で在宅業務の経験を積みたい」「通勤時間を短くして体調を整えたい」といった形にすると、人事側も配置の理由をつくりやすくなります。

参考:e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況」

ハラスメントに当たる場合の対応

用紙に記入しながら相談を受ける女性の手元

ここまでは相性や体制の話でした。ただし、受けている言動によっては、単なる相性の問題ではなく、法律上の措置義務が事業主に課される領域に入ります。

なお、個別の事案がハラスメントに該当するかどうかは、状況を総合的に見て判断されます。この記事で当てはまるかどうかを断定することはできませんので、判断の枠組みとして読んでください。以下は労働施策総合推進法および厚生労働省の解説資料にもとづき、2026年8月時点の内容で整理しています。

職場のパワーハラスメントの定義

労働施策総合推進法第30条の2第1項は、事業主が講ずべき措置の対象となる言動を次のように定めています。職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、その雇用する労働者の就業環境が害されるもの、という3つの要素で整理されています。

厚生労働省は、典型例として次の6つの類型を示しています。

  • 身体的な攻撃(暴行・傷害)
  • 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
  • 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
  • 過大な要求(業務上不要または遂行不可能なことの強制)
  • 過小な要求(能力と無関係な低い仕事の指示)
  • 個の侵害(私的なことへの過度な立ち入り)

薬局の場合、業務上必要な監査や指摘とそうでないものの線引きが問題になります。調剤内容の誤りを事実として指摘するのは業務の一部です。一方、他のスタッフの前で人格を否定する言葉を繰り返す行為は、業務上必要かつ相当な範囲を超えていると評価される余地があります。

パワーハラスメントの3要素
労働施策総合推進法第30条の2第1項
1
優越的な関係を背景とした言動
+
2
業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
+
3
労働者の就業環境が害されるもの
3つすべてを満たす言動が、パワーハラスメントの対象になる
調剤内容の誤りを事実として指摘すること自体は、業務上必要な範囲に含まれる
他のスタッフの前で人格を否定する言葉を繰り返す行為は、業務上必要かつ相当な範囲を超えていると評価される余地がある

事業主に課されている措置義務

同じ第30条の2第1項は、事業主に対し、労働者からの相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないと定めています。努力義務ではなく義務です。

そして重要なのが第2項です。事業主は、労働者が相談を行ったことや、相談への対応に協力して事実を述べたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないと定められています。相談したことで立場が悪くなるのではという不安に対する、法律上の答えがここにあります。

厚生労働省が示す事業主の措置は、方針の明確化と周知、相談体制の整備、事実確認と適正な対処、プライバシー保護と不利益取扱い禁止の周知などです。この措置義務は、2022年(令和4年)4月1日から中小企業の事業主にも義務化されています。

薬局の規模は関係ありません。数人で運営している店舗であっても、その事業主には相談体制を整える義務があります。「うちには相談窓口などない」という状態は、本来あるべき状態ではないということです。

社内の相談窓口の使い方

まずは、勤務先に相談窓口が設けられているかを確認します。就業規則やイントラネット、入職時に配布された資料に窓口の連絡先が記載されていることが多いため、そこを見てみてください。

窓口に持ち込むときは、前述の記録が役に立ちます。日付・場所・発言・同席者・業務への影響がそろっていれば、事実確認の作業が進めやすくなります。

ただし、店舗の管理者本人が相手である場合など、社内の窓口が使いにくい状況もあります。前述のとおり、小規模な事業所ほど社内の体制が整いにくい傾向があります。社内で解決しないときは、次に紹介する外部の窓口を使ってかまいません

外部の相談窓口

社内で解決しない場合や、社内に持ち込みにくい場合は、公的な外部窓口を使えます。代表的なのが、都道府県労働局や労働基準監督署などに設置されている総合労働相談コーナーです。

厚生労働省の令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況によると、総合労働相談コーナーは全国378か所に設置されています(令和8年4月1日現在)。同年度の総合労働相談件数は119万8,010件で、18年連続で100万件を超えました。

民事上の個別労働紛争の相談では、「いじめ・嫌がらせ」が55,614件で14年連続の最多です。相談は珍しいことではなく、制度として受け止める体制が用意されています。

このほか、厚生労働省はハラスメント対策の情報サイト「あかるい職場応援団」を運営しており、相談窓口の案内や事例の解説を掲載しています。相談に行く前に、記録の残し方や整理のしかたを確認しておくと話が進めやすくなります。

参考:e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」厚生労働省「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況を公表します」厚生労働省「あかるい職場応援団」

転職活動するなら?

改善しないときの選択肢

2つの選択肢を表すブロック

対処を試しても状況が変わらないことはあります。そのときの選択肢は転職だけではありません。関わる時間そのものを減らす、いったん離れて立て直す、という方向もあります。

ここでは4つの選択肢を、生活への影響が小さい順に並べて紹介します。自分の体調と生活の状況に合わせて、どこから検討するかを決めてください。

4つの選択肢の比較

選択肢 環境の変わり方 収入・待遇 向くケース 注意点
01同じ法人内で異動する 店舗と顔ぶれが変わる/法人と待遇は変わらない 変わらない(退職金・有給休暇は引き継がれる) 特定の相手との関係が原因のとき 法人全体の人員体制が原因なら状況は変わりにくい
02勤務形態を変える 職場は同じ/関わる時間が減る 勤務時間に応じて減る(社会保険の扱いが変わる場合がある) 人と関わる時間そのものを減らしたいとき 手取りと保険の条件を先に確認する
03転職する 職場も法人もすべて変わる 転職先の条件による 職場全体の状態が原因のとき 原因を切り分けないまま動くと同じ状況を繰り返す
04一度休んで立て直す 職場は変わらない/いったん離れる 有給休暇は通常どおり/休職中は傷病手当金の対象になる場合がある 体調に影響が出ているとき 転職活動より先に休養が必要になることがある

同じ法人内で異動する

前述のとおり、複数店舗を持つ法人なら店舗異動という手があります。転職に比べて条件の変化が小さく、退職金や有給休暇の扱いも引き継がれるのが利点です。

ただし、原因が特定の相手ではなく法人全体の人員体制にある場合、別店舗でも同じ状況が続くおそれがあります。異動を希望する前に、移りたい店舗の薬剤師数と1日あたりの処方箋枚数を確認しておくと判断を誤りにくくなります。

勤務形態を変える

常勤を前提にしない働き方も選択肢になります。パートに切り替えて勤務日数を減らす、時短勤務にして重なる時間を短くする、といった形で、人と関わる時間そのものを減らすことができます。

医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)では、薬剤師の求人1,450件のうちパート・アルバイトが518件を占めています。時短勤務が可能な求人は約10%、ブランクがあっても応募できる求人も約10%ありました。

ただし、勤務時間が減れば収入も変わります。社会保険の扱いも、労働時間や事業所の規模によって変わる場合があります。手取りと保険の条件を確認したうえで、生活が成り立つかを先に計算しておいてください。

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キャリアパートナー

転職する

環境ごと変える必要があると判断したなら、転職が現実的な選択肢になります。薬局から病院、企業、行政などへ移る道もあります。

厚生労働省の統計では、届出のある薬剤師329,045人のうち薬局勤務が60.0%を占めます。一方で病院・診療所などの医療施設で働く人が63,290人(19.2%)、残る約2割は企業や大学、行政機関などです。薬局以外の選択肢は確かに存在します。

なお、退職の申し入れから雇用契約が終了するまでの期間は、期間の定めのない雇用の場合、民法第627条により申入れの日から2週間とされています。就業規則で1〜2か月前の申告を求めている職場も多いため、まずは自分の就業規則を確認してください。

一度休んで立て直す

体調に影響が出ている場合は、転職活動より先に休養が必要になることがあります。疲れ切った状態で職場を選ぶと、判断の精度が落ちてしまうためです。

まず確認したいのが年次有給休暇の残日数です。労働基準法第39条により、勤続6か月で10日、以降勤続年数に応じて日数が増え、勤続6年6か月以上で年20日が付与されます。年10日以上付与されている場合は、そのうち年5日を取得させることが使用者の義務です。

より長い休養が必要な場合は、休職制度の有無を就業規則で確認します。業務外の病気やけがで働けない期間については、健康保険から傷病手当金が支給される仕組みがあります。支給されるのは連続する3日間の待期を除き4日目からで、支給期間は同一の傷病について通算1年6か月です。

参考:厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」e-Gov法令検索「民法」e-Gov法令検索「労働基準法」全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」

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転職先で同じ悩みを繰り返さないための確認方法

採用面接で面接官が質問している様子

人間関係の良い職場という条件は、求人票に書かれていません。だからこそ、何を見れば推測できるのかを具体化しておく必要があります。

ここまで見てきたとおり、薬局のつらさは人員体制と業務量に強く結びついています。転職先を見るときも、同じ観点で確認するのが近道です。

職場見学で見るところ

見学は短時間でも情報が取れます。人柄ではなく、動き方を見るのがコツです。

  • 薬剤師と事務員の間で業務の依頼が言葉として交わされているか
  • 混雑した時間帯に誰がどう動いているか
  • 待合の患者さんに対して声かけがあるか
  • 調剤室の中で作業スペースが確保されているか
  • 休憩スペースが実際に使われている様子があるか

会話が一切ない職場は、業務上必要なやり取りまで抑制されている可能性があります。逆に、指示が飛び交いすぎている場合は、役割分担が定まっていないことも考えられます。どちらか一方だけで判断せず、複数の点を合わせて見てください。

面接で聞くこと

「人間関係は良いですか」と聞いても、判断材料にはなりません。良くないと答える職場はまずないためです。事実として答えられる質問に絞るほうが、得られる情報は多くなります。

  1. 配属予定店舗の薬剤師の人数と、常勤・パートの内訳
  2. 1日あたりの平均処方箋枚数
  3. 直近1年間の退職者数と、在籍しているスタッフの勤続年数
  4. シフトの決め方と、希望休の申請方法
  5. 店舗異動の可否と、実際の異動の頻度

いずれも数字か手続きで答えられる内容です。答えが曖昧だったり、「そのあたりは入ってから」と流されたりする場合、その情報を管理していないか、答えにくい事情があると考えられます。

質問する順序も工夫できます。人数と処方箋枚数を先に聞き、そのうえで退職者数を尋ねると、話の流れとして自然になります。

求人票から読み取ること

同じ店舗の求人が長期間掲載されている場合、採用が決まっていないか、決まっても定着していない可能性があります。ただし、拡大中で継続的に採用している薬局もあるため、これだけで断定はできません。

確認しておきたいのが、令和6年4月に改正された労働条件明示のルールです。すべての労働契約の締結時と有期労働契約の更新時に、就業場所・業務の「変更の範囲」の明示が必要になりました。

これにより、入職時に受け取る労働条件通知書で、将来的にどこまで異動の可能性があるかを書面で確認できます。店舗異動を前向きな選択肢として考えている人にも、逆に転居を伴う異動を避けたい人にも、判断の材料になります。

入職前に確認したい人員体制

最後に、応募前でも使える確認方法を紹介します。実は、薬局の人員体制は公的な制度で公表されています。

医薬品医療機器等法第8条の2により、薬局開設者は薬局の機能に関する情報を都道府県知事に報告し、都道府県知事はその内容を公表しなければならないとされています。報告項目は同法施行規則の別表第一に定められており、次のような項目が含まれます。

  • 薬局の薬剤師数
  • 総取扱処方箋数
  • 薬剤師不在時間の有無
  • 薬局の面積
  • 開店時間

公表されている内容は、厚生労働省の「医療情報ネット(ナビイ)」から薬局を検索して確認できます。薬剤師数と総取扱処方箋数が両方公表されているため、1人あたりの負荷をおおよそ計算できます。

前述の40枚基準と突き合わせれば、応募前の段階で人員体制の見当をつけられます。求人票に書かれていない情報を、公的な情報源から補えるということです。

なお、公表される数値は報告時点のものであり、直近の在籍状況とは異なる場合があります。面接で確認する内容と合わせて使ってください。

人員体制を確認する4つの手順
1
厚生労働省の「医療情報ネット(ナビイ)」で応募先の薬局を検索する
2
公表項目のうち「薬局の薬剤師数」と「総取扱処方箋数」を控える
3
総取扱処方箋数を営業日数で割り、1日あたりの処方箋枚数を出す
4
1日あたりの処方箋枚数を薬剤師数で割り、40枚の基準と比べる
計算例(仮の値)
薬局の薬剤師数
4人
総取扱処方箋数(年間)
24,000枚
年間営業日数300日 → 1日あたり
80枚
80枚 ÷ 4人 = 20枚/人
40枚の基準に収まっている
※数値は説明用の例です
※公表値は報告時点のもの

参考:e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則」厚生労働省「薬局機能情報提供制度について」厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」

まとめ

薬局の人間関係に疲れる背景には、1薬局あたり平均約3人という人数の少なさ、シフトの固定、そして監査という業務構造があります。感じ方の問題ではなく、環境側に理由があります。

そのうえで大切なのが、疲れの原因が人間関係なのか労働環境なのかを切り分けることです。人員体制、業務量と時間外労働、特定の相手との関係かどうか、忙しい時期だけの状態かどうか。この4つを数字と事実で確認すれば、取るべき手段が見えてきます。

今の職場でできることとしては、記録を残す、距離の取り方を決める、管理薬剤師を通じて本部に上げる、店舗異動を希望する、という順序があります。受けている言動がパワーハラスメントに当たる場合は、事業主に相談体制を整える義務があり、相談したことを理由とする不利益な取扱いは禁止されています。

改善しない場合も、異動、勤務形態の変更、転職、休養という選択肢が並びます。体調に影響が出ているなら、まず休むことを優先してください。そして転職先を選ぶときは、医療情報ネットで薬剤師数と処方箋数を確認し、面接では事実で答えられる質問に絞る。この2つを押さえておけば、同じ悩みを繰り返す可能性を下げられます。

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この記事を書いた人
医療キャリアナビ編集部

医療キャリアナビ編集部

記事の執筆・編集は、医療業界に精通した編集スタッフが担当しています。日々の転職支援業務で得た現場のリアルな情報と、厚生労働省をはじめとする公的機関のデータに基づき、信頼性の高いコンテンツをお届けしています。

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