柔道整復師が免許取り消しになるのはどんな場合?処分に至るまでの流れ・受けた後の影響
柔道整復師として働くなかで、どんなときに「免許取り消し」になるのかふと思ったことはないでしょうか?報道やインターネット上では処分の結果だけが取り上げられることが多く、どんな行為が対象になるのか、どのような手続きを経て決まるのかまでは意外と知られていません。
この記事では、柔道整復師の免許取り消しについて、柔道整復師法の条文と厚生労働省・地方厚生局が公表している資料をもとに整理します。処分の種類と対象になる行為、保険者からの照会から聴聞までの流れ、処分を受けた後の影響に加えて、雇われて働く立場で自分を守る方法までをまとめました。
なお本記事は制度の解説であり、法的な助言ではありません。個別の事案については、弁護士などの専門家にご相談ください。
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柔道整復師の免許取り消しとは?

柔道整復師の免許取り消しは、厚生労働大臣が柔道整復師法にもとづいて行う行政処分です。刑事裁判で下される刑罰とは別のもので、資格そのものを対象とする点に特徴があります。
「免許取り消し」という言葉だけが独り歩きしがちですが、法律上は取り消し以外の処分も定められています。まずは根拠となる条文と、処分の種類、誰が処分を行うのかという3点を押さえておきましょう。
法律で定められている処分
柔道整復師は、柔道整復師法第2条で「厚生労働大臣の免許を受けて、柔道整復を業とする者」と定義されています。免許は国家試験に合格した人の申請にもとづき、柔道整復師名簿に登録することで与えられます。
その免許を後から取り上げる根拠となるのが、同法第8条第1項です。柔道整復師が同法第4条各号のいずれかに該当するに至ったとき、厚生労働大臣はその免許を取り消すか、期間を定めて業務の停止を命じることができると定められています。
ここで注目したいのは、条文の末尾が「命ずることができる」という書き方になっている点です。第4条の事由に当てはまったからといって、自動的に免許が失われるわけではありません。行為の内容や経緯を踏まえて、処分を行うかどうか、行うとしてどの処分にするかが判断される仕組みになっています。
処分の種類
柔道整復師法が定める処分は、次の2種類です。
- 免許の取消し(柔道整復師として働く資格そのものを失う)
- 業務の停止(期間を定めて柔道整復の業務ができなくなる)
医師や看護師の行政処分と混同されることがありますが、内容は同じではありません。医師法第7条第1項は処分として「戒告」「三年以内の医業の停止」「免許の取消し」の3つを定めていますが、柔道整復師法には「戒告」にあたる処分の定めがありません。
また、医師の業務停止が「三年以内」と上限つきで規定されているのに対し、柔道整復師法第8条第1項は「期間を定めて」とあるだけで、条文上の上限は設けられていません。処分の重さは、事案ごとに個別に判断されることになります。
柔道整復師法 と 医師法 の処分比較
| 項目 | 柔道整復師法 | 医師法(参考) |
|---|---|---|
| 処分の種類 | 2種類 | 3種類 |
| 戒告 | 定めなし | あり |
| 業務の停止 | あり(期間を定めて) | あり(三年以内の医業停止) |
| 免許の取消し | あり | あり |
| 業務停止の上限 | 条文上の上限なし | 三年以内と明記 |
| 根拠条文 | 第8条第1項 | 第7条第1項 |
※条文の記載内容にもとづく比較
処分を行う主体
免許に関する処分を行うのは厚生労働大臣です。免許を与えるのも取り消すのも国であり、都道府県が免許を取り消すことはありません。
一方で、都道府県知事にも柔道整復師や施術所に対する権限があります。柔道整復師法第18条では、衛生上害を生ずるおそれがあると認めるときに業務に関する必要な指示ができると定められ、第21条では施術所への立入検査、第22条では構造設備や衛生上の措置が基準に適合しない場合の使用制限や改善命令が定められています。
さらに、健康保険の療養費に関わる「受領委任の取扱いの中止」は、地方厚生局長と都道府県知事が行う措置です。これは免許の処分とは別の制度で、実務上はこちらの方が先に動くことも少なくありません。
この違いは次の章以降で詳しく見ていきます。
参考:e-Gov法令検索「柔道整復師法」 / e-Gov法令検索「医師法」
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処分の対象となる行為

免許の取り消しや業務停止の対象になる行為は、柔道整復師法第4条に列挙された4つの事由です。この4つは免許を与えないことがある事由(欠格事由)として定められており、免許取得後にこれらに該当した場合は第8条第1項の処分の対象になります。
いずれも「該当する者には、免許を与えないことがある」という書き方で、絶対に免許が与えられない(あるいは必ず取り消される)という定め方にはなっていません。以下、4つの事由を順に確認します。
罰金以上の刑に処せられた場合
第4条第3号は「罰金以上の刑に処せられた者」を挙げています。日本の刑罰は重い順に死刑・拘禁刑・罰金・拘留・科料と定められており、罰金以上とは、罰金刑とそれより重い刑を指します。
ここで見落とされやすいのが、柔道整復の業務と関係のない犯罪でも対象になり得るという点です。条文は罪名や場面を限定していないため、たとえば業務外での交通事故や暴力事件で罰金刑を受けた場合も、形式的にはこの号に当てはまります。
ただし前述のとおり、処分は「できる」と定められた裁量規定です。該当したからといって直ちに免許が失われるわけではなく、事案の内容や社会的な影響を踏まえた判断が行われます。
刑の重さの順序と「罰金以上」の該当ライン
※ 刑罰は死刑・拘禁刑・罰金・拘留・科料の順に重い
業務に関して犯罪や不正の行為があった場合
第4条第4号は、前号(罰金以上の刑)に該当する場合を除いて、「柔道整復の業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者」を対象としています。
第3号との違いは、刑事裁判で有罪判決を受けていなくても対象になり得る点です。「不正の行為」には刑罰の対象とまではいえない行為も含まれ得るため、業務に関わる不適切な行為が幅広く視野に入ります。
実務上、この号との関係で問題になりやすいのが療養費の不正請求です。患者さんが受けていない施術を請求する、実際より多い日数を請求するといった行為は、柔道整復の業務に関する不正の行為にあたると評価される可能性があります。
心身の障害に関する事由
第4条第1号は「心身の障害により柔道整復師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの」と定めています。障害があること自体ではなく、業務を適正に行えるかどうかが基準である点が条文から読み取れます。
なお、免許を申請する段階でこの号に該当すると認められ、免許を与えないこととする場合には、柔道整復師法第7条により、あらかじめ本人にその旨が通知され、求めがあれば意見を聴取する手続きがとられます。一方的に判断が下されるわけではありません。
麻薬などの中毒
第4条第2号は「麻薬、大麻又はあへんの中毒者」を挙げています。施術者としての判断力や安全性に直接関わる事由であり、4つの事由のなかでは対象が明確に限定されています。
第4条の4つの事由(柔道整復師法)
- 第1号:心身の障害により業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
- 第2号:麻薬、大麻又はあへんの中毒者
- 第3号:罰金以上の刑に処せられた者
- 第4号:第3号に該当する者を除き、柔道整復の業務に関し犯罪又は不正の行為があった者
実際に多い理由

条文上の事由は4つですが、現場で問題になりやすい行為は限られています。厚生労働省や地方厚生局が公表している資料からは、健康保険の療養費に関わるトラブルが中心になっている状況が読み取れます。
なお、令和6年衛生行政報告例によると、就業している柔道整復師は78,666人、柔道整復の施術所は全国に50,924か所あります。母数の大きさに対して公表されている措置の件数は限られており、業界全体で不正が横行しているという話ではありません。
療養費の不正請求
柔道整復の施術で健康保険が使えるのは、骨折・脱臼・打撲・捻挫(いわゆる肉ばなれを含む)に限られます。
厚生労働省は、単なる肩こりや筋肉疲労などに対する施術は保険の対象にならないと明示しています。骨折と脱臼については、応急手当をする場合を除き、医師の同意を得ることが必要です。
健康保険が使える施術と使えない施術
この線引きを超えた請求が積み重なると、不正請求として扱われます。地方厚生局は、療養費の請求内容に不正または著しい不当が認められた場合、受領委任の取扱いを中止したうえで、その措置内容を公表するとしています。
保険の対象外である施術を保険で請求した、実際には行っていない施術を請求した、負傷の原因を実際と違う形で届け出た。こうした行為は、柔道整復師法第4条第4号の「業務に関し犯罪又は不正の行為」に該当する可能性があります。
無資格者による施術
柔道整復師法第15条は、医師である場合を除き、柔道整復師でなければ業として柔道整復を行ってはならないと定めています。これに違反した場合、同法第29条第1項により50万円以下の罰金が科されます。
問題になるのは、無資格者本人だけではありません。資格を持たない従業員に施術をさせている施術所で、有資格者が名前だけを出している状態は、柔道整復師本人の「業務に関する不正の行為」として評価される可能性があります。
施術所の運営方針として無資格者の施術が行われている場合、その場にいる有資格者の立場も問われかねません。誰がどの施術を担当しているのかは、日頃から意識しておきたいところです。
名義の貸与
受領委任の取扱いを行う施術所には、施術管理者となる柔道整復師を登録する必要があります。この登録にあたり、実際には勤務していない施術所へ自分の名前を登録すること(名義貸し)は、制度が想定していない状態です。
名義を貸した側は、その施術所で行われた請求について責任を問われる立場になります。自分が直接請求に関わっていなくても、登録上の管理者は自分だからです。
また、柔道整復師法第19条は施術所の開設や届出事項の変更について都道府県知事への届出を義務づけており、虚偽の届出をした者には同法第30条第6号により30万円以下の罰金が定められています。名義に関する取り扱いは、複数の制度にまたがって問題になります。
参考:厚生労働省「柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて」 / 関東信越厚生局「保険医療機関等、訪問看護ステーション及び柔道整復師等において不正請求等が行われた場合の取扱いについて」 / e-Gov法令検索「柔道整復師法」 / 厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」
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処分に至るまでの流れ

免許の取り消しは、ある日突然通知されるものではありません。療養費の不正が疑われた場合には、保険者からの照会に始まり、指導や監査、受領委任の取扱いの中止といった段階を経ていきます。
この流れを知っておく意味は、どの時点で何が起きているのかを把握できることにあります。早い段階であれば、請求内容を見直したり、専門家に相談したりする余地が残されています。ここでは代表的な段階を順に見ていきます。
保険者からの照会
きっかけとして多いのが、保険者(健康保険組合や市町村など)から患者さんに送られる照会です。療養費の支給申請の内容について、実際に施術を受けた日数や部位、負傷の原因などを患者さん本人に確認する手続きが行われます。
患者さんの回答と請求内容に食い違いがあれば、保険者は施術所に対して確認を求めたり、地方厚生局へ情報を提供したりします。この段階では、まだ行政処分の手続きに入っているわけではありません。
ただし、この照会が最初のシグナルになるケースは少なくありません。患者さんから「保険組合から手紙が来た」と言われたときに、自分の施術録と請求内容を確認できる状態にしておくことが重要です。
個別指導や監査
地方厚生局と都道府県は、必要があると認めるときに施術に関する指導や監査を行います。受領委任の取扱規程では、柔道整復師および勤務する柔道整復師は、帳簿や書類の検査、説明、報告の求めに応じることが定められています。
指導には、複数の施術管理者を集めて規程の理解を促す集団指導と、個別の施術所を対象とする個別指導があります。九州厚生局は、受領委任の取扱規程などの理解を目的として、各県事務所等で集団指導を行っていると案内しています。
個別指導で改善が見られない場合や、不正の疑いが強い場合には監査へ進みます。監査では、施術録や請求書類の確認、関係者への聞き取りが行われます。正当な理由なく監査に応じないこと自体が、規程に違反する行為にあたります。
個別指導から監査に至る流れ
正当な理由なく監査に応じないことも規程に違反する行為にあたる
受領委任の取扱いの中止
監査の結果、療養費の請求内容に不正または著しい不当の事実が認められた場合、受領委任の取扱いは中止されます。規程には、規程に定める事項を遵守しなかったとき、請求内容に不正または著しい不当の事実が認められたとき、その他受領委任の取扱いを認めることが不適当と認められるときが中止の事由として挙げられています。
中止の影響は大きく、中止を受けると原則として5年を経過するまで、新たに受領委任の取扱いが認められません。患者さんが窓口で一部負担金だけを支払う形での施術ができなくなるため、施術所の運営に直接影響します。
さらに、中止された場合は措置内容が公表されます。中止の前に受領委任を辞退したり施術所を廃止したりした場合も、「中止相当」として同様に公表の対象になると各地方厚生局が案内しています。
規程違反
規程に定める事項を遵守しなかったとき
不正・不当請求
請求内容に不正または著しい不当の事実が認められたとき
その他不適当
その他受領委任の取扱いを認めることが不適当と認められるとき
原則5年間
新たに受領委任の取扱いが認められない
公表
措置内容が公表される(中止前の辞退・廃止も「中止相当」として同様に対象)
受領委任の取扱いの中止は、健康保険の請求の仕組みから外れる措置です。中止されても、それだけで柔道整復師の免許が失われるわけではありません。一方で、中止の理由となった行為が柔道整復師法第4条第4号にあたると判断されれば、免許の処分が別途検討されることになります。
聴聞を経て処分が決まる
免許に関する処分は、行政手続法にもとづく手続きを経て決まります。同法第13条第1項は、不利益処分をしようとする場合に、名あて人となるべき者に意見を述べる機会を与えることを行政庁に義務づけています。
このうち許認可等を取り消す不利益処分をしようとするときは「聴聞」の手続きが必要とされています。聴聞は、処分の内容と理由が事前に通知され、本人や代理人が出席して意見を述べたり証拠を提出したりできる手続きです。
一方、免許の取り消しにあたらない処分、たとえば業務の停止については、同項第2号により「弁明の機会の付与」が原則となります。こちらは書面の提出による意見陳述が基本です。いずれにしても、本人の言い分を聞かずに処分が決まる仕組みにはなっていません。
- 患者さんから「保険組合から手紙が来た」と聞いたら、まず自分の担当分を確認
- 指導・監査の連絡が来た時点で、弁護士など専門家に相談する選択肢があります
- 聴聞や弁明の機会は、言い分を伝えられる場。黙って待つ手続きではありません
参考:厚生労働省「柔道整復師の施術に係る療養費について」 / e-Gov法令検索「行政手続法」 / 九州厚生局「柔道整復師の方へ」
勤務する柔道整復師が巻き込まれる場合

処分の話は、開業している施術管理者だけの問題として語られがちです。しかし受領委任の取扱規程は、施術管理者だけでなく勤務する柔道整復師も対象としています。
雇われて働く立場でも、施術所の請求のやり方によっては当事者になり得ます。ここでは、勤務者が直面しやすい場面と、そのときにできることを整理します。
施術所の方針として請求が行われている場合
受領委任の取扱いの中止について、規程は「柔道整復師又は勤務する柔道整復師」が該当する場合に中止すると定めています。つまり、中止の措置は施術管理者だけでなく、勤務する柔道整復師にも及び得るということです。
さらに、受領委任の取扱いを新たに認めない事由として、施術管理者である柔道整復師または勤務する柔道整復師が中止を受け、原則として中止後5年を経過しないときが挙げられています。勤務先で起きたことが、自分が将来独立するときの制約になる可能性があるわけです。
施術管理者 と 勤務する柔道整復師 の中止措置
施術所の方針による請求でも、中止の措置は柔道整復師個人にも及びます
「経営者が決めたことだから」「指示された通りに書いただけだから」という説明が、常に通用するとは限りません。請求の内容に疑問を感じたときに、その場でやり過ごさないことが結果的に自分を守ります。
名義を貸すよう求められた場合
勤務先から、実際には勤務していない別の施術所の管理者として名前を登録してほしいと求められることがあります。給与を上乗せするといった条件が示されることもありますが、応じるのは避けたい対応です。
登録上の管理者になれば、その施術所で行われた請求の責任を負う立場になります。自分が現場にいなくても、請求書類には自分の名前が並びます。不正が発覚したとき、事情を知らなかったという説明で切り抜けられる保証はありません。
また、資格を持たない従業員に施術をさせるための「見せかけの配置」として名義を求められるケースもあります。この場合は柔道整復師法第15条の無資格施術に関わる問題にもつながります。断りにくい状況であっても、名義に関する依頼は一線を引いて考えることをおすすめします。
自分を守るためにできること
まず、自分が担当した患者さんについて、施術日・部位・負傷の原因が請求内容と一致しているかを確認する習慣を持つことです。請求業務に関わっていない場合でも、自分の施術分の記録は手元で把握できます。
次に、記録を残すことです。施術録を正確につけるのはもちろん、請求内容に疑問を伝えた日付ややり取りの内容をメモしておくと、後から経緯を説明する材料になります。
そして、相談先を持っておくことです。制度上の疑問は都道府県の担当窓口や地方厚生局に確認できます。
なお、法令違反の事実を通報した労働者については、公益通報者保護法により保護の仕組みが設けられています。要件は通報先ごとに細かく定められているため、実際に動く前に専門家や窓口に確認するのが安全です。
自衛のための3つの行動
参考:厚生労働省「柔道整復師の施術に係る療養費について」 / e-Gov法令検索「公益通報者保護法」
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処分を受けた後の影響

処分を受けた後にどうなるのかは、事前にはなかなか調べにくい部分です。業務停止の期間中にできること、免許を取り消された後の再免許、そして就業への影響について、条文と公表資料から確認できる範囲を整理します。
業務停止の期間中の扱い
業務の停止を命じられた期間中は、柔道整復の業務を行えません。ここで注意したいのが、停止期間中に業務を行った場合、柔道整復師法第30条第1号により30万円以下の罰金が定められている点です。処分に重ねて刑事罰の対象になります。
免許そのものが失われるわけではないため、期間が終われば柔道整復の業務に戻れます。ただし、その間に受領委任の取扱いがどうなっているか、勤務先との雇用関係がどうなるかは別の問題として整理が必要です。
なお、柔道整復以外の業務、たとえば介護施設での機能訓練指導員としての勤務などについては、その職種の要件を柔道整復師免許で満たしている場合、業務停止の影響を受ける範囲がどこまでかを個別に確認する必要があります。判断に迷う場合は、都道府県の担当窓口に照会するのが確実です。
再免許の可能性
免許を取り消された場合でも、再び免許を受けられる道は残されています。柔道整復師法第8条第2項は、取り消しの理由となった事項に該当しなくなったとき、その他その後の事情により再び免許を与えることが適当と認められるに至ったときは、再免許を与えることができると定めています。
ここでも医師法との違いがあります。医師法第7条第2項は、業務に関する犯罪・不正などを理由に取り消された場合について、処分の日から5年を経過しない者を再免許の対象から除くという条件を明記していますが、柔道整復師法にはこの5年の定めがありません。
とはいえ、再免許は申請すれば認められるものではなく、「適当と認められるに至ったとき」という判断が前提です。取り消しの理由となった事情がどう解消されたかが問われることになります。
就業や再就職への影響
受領委任の取扱いの中止措置は、地方厚生局のウェブサイトで公表されます。処分そのものとは別に、この公表が就業先探しに影響する場面は想定しておいた方がよいでしょう。
働く場所という観点でも影響があります。医療キャリアナビ掲載求人データでは、柔道整復師の求人3,737件のうち整・接骨院が2,075件と半数以上を占めています。整・接骨院の多くは受領委任の取扱いを前提に運営しているため、中止措置を受けている状態では選択肢が狭まります。
柔道整復師の求人3,737件の内訳(職場別)
一方で、療養費の請求を前提としない職場の求人も一定数あります。処分や中止の内容によっては、こうした職場が選択肢になる場合もあります。
- 受領委任を取り扱っているかは求人票に書かれていないことがほとんど
- 請求業務を誰が担当するのかは、面接で確認しておくと安心
- 介護施設や訪問系は、療養費の請求と距離を置いて働ける選択肢
参考:e-Gov法令検索「柔道整復師法」 / e-Gov法令検索「医師法」 / 関東信越厚生局「保険医療機関等、訪問看護ステーション及び柔道整復師等において不正請求等が行われた場合の取扱いについて」
柔道整復師の求人を探す処分を避けるために日頃からできること

ここまで見てきたとおり、処分に至る流れの多くは療養費の請求から始まります。逆に言えば、日々の請求と記録を整えておくことが、もっとも現実的な予防策になります。
特別なことをする必要はありません。勤務する立場でも取り組める3つの習慣を紹介します。
請求内容を自分で確認する
健康保険が使えるのは骨折・脱臼・打撲・捻挫に限られ、慢性的な肩こりや筋肉疲労は対象外です。この線引きを頭に入れたうえで、自分が担当した患者さんの請求が実態と合っているかを確認します。
確認したいのは、施術日・部位・負傷の原因といった基本的な項目が実態と合っているかどうかです。
請求業務を担当していない場合でも、月に一度でも自分の担当分を目にしておくと、違和感に気づきやすくなります。
施術録などの記録を残す
受領委任の取扱規程では、柔道整復師は受領委任に係る施術に関する施術録を他の施術録と区別して作成し、必要な事項を記載したうえで、施術が完結した日から5年間保存することと定められています。
この記録は、指導や監査で真っ先に確認される資料です。逆に言えば、正確な施術録は自分の施術内容を証明する材料になります。あとから書き足すのではなく、その日のうちに記載する習慣をつけておきたいところです。
記載が曖昧なまま時間が経つと、実際には適切に施術していたのに説明できないという事態になりかねません。忙しい日ほど、記録の精度が落ちやすい点には注意が必要です。
施術録の記録管理・3つの手順
制度の改定を確認する
柔道整復の療養費に関するルールは、定期的に見直されています。厚生労働省の社会保障審議会(医療保険部会 柔道整復療養費検討専門委員会)で議論が行われ、料金や算定の取扱いが改定されます。
改定の内容を知らずに従来どおりの請求を続けると、意図せず不適切な請求になってしまう場合があります。厚生労働省や地方厚生局のウェブサイトで、療養費の改定に関する通知を確認しておきましょう。
参考:厚生労働省「柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて」 / 厚生労働省「柔道整復師の施術に係る療養費について」 / 厚生労働省「社会保障審議会(医療保険部会 柔道整復療養費検討専門委員会)」
まとめ
柔道整復師の免許取り消しは、柔道整復師法第8条第1項にもとづく行政処分です。処分の種類は「免許の取消し」と「業務の停止」の2つで、対象となるのは同法第4条に定められた4つの事由に該当した場合です。
実際に問題になりやすいのは、療養費の不正請求、無資格者による施術、名義の貸与といった行為です。これらが疑われた場合、保険者からの照会に始まり、個別指導や監査、受領委任の取扱いの中止という段階を経て、聴聞などの手続きを踏んだうえで処分が判断されます。突然すべてが決まるわけではありません。
受領委任の取扱規程は勤務する柔道整復師も対象としているため、雇われて働く立場でも無関係ではいられません。自分が担当した患者さんの請求内容を確認する、施術録を正確に残す、制度の改定を確認する。この3つを日々の習慣にしておくことが、結果として自分を守ることにつながります。
請求のやり方に疑問を感じたまま働き続けるのは、精神的にも負担が大きいものです。窓口に相談しても状況が変わらない場合は、働く場所を見直すことも選択肢のひとつとして考えてみてください。





