理学療法士と柔道整復師のダブルライセンスは意味がある?取得するかの判断基準

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理学療法士として働くなかで「柔道整復師の資格も取れば、できることが増えるのでは」と考えたことはないでしょうか。逆に柔道整復師の方が、リハビリの知識を深めたくて理学療法士を目指すケースもあります。

ただ、どちらの資格も養成校に3年以上通う必要があり、学費も数百万円規模になります。時間もお金も大きく動く判断なので、「なんとなく強そうだから」で決めてしまうと後悔しかねません。

この記事では、理学療法士と柔道整復師のダブルライセンスについて、両資格の法律上の違い、取得にかかる時間と費用、そして「自分の目的には本当に必要なのか」を判断する材料を整理します。

2つ目の資格を取らずに同じ目的を達成する方法も併せて紹介しますので、取得を検討している方はぜひ参考にしてください。

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理学療法士と柔道整復師の違い

整骨院・接骨院の施術室とリハビリ室の様子

理学療法士と柔道整復師は、どちらも身体の不調に向き合う国家資格ですが、法律上の位置づけは大きく異なります。理学療法士は理学療法士及び作業療法士法、柔道整復師は柔道整復師法という別々の法律にもとづく資格で、業務の範囲も働く場所も分かれています。

ダブルライセンスを検討するうえで、まず押さえておきたいのがこの違いです。「似た仕事だから両方持てば有利」と考えがちですが、実際には重なる部分と重ならない部分がはっきり分かれています。

ここでは業務の範囲・働く場所・開業の3つの観点から見ていきます。

業務の範囲

理学療法士は、身体に障害のある方に対して、基本的動作能力の回復を図るために運動療法や物理療法を行う資格です。法律上の定義では、治療体操などの運動を行わせることに加えて、電気刺激・マッサージ・温熱などの物理的手段を加えることが理学療法とされています。

ここで重要なのが、理学療法士は医師の指示の下に理学療法を行う資格だという点です。理学療法士及び作業療法士法第2条3項にそう定められており、自分の判断だけで理学療法を提供することはできません。また、理学療法士の名称を使えるのは有資格者だけという名称独占の資格であり、業務そのものを独占しているわけではない点も特徴です。

一方の柔道整復師は、柔道整復を業として行う資格です。柔道整復師法第15条は「医師である場合を除き、柔道整復師でなければ、業として柔道整復を行なつてはならない」と定めており、こちらは業務独占の資格にあたります。

ただし柔道整復師にも制限があります。第16条で外科手術や薬品の投与などが禁止されているほか、第17条では医師の同意を得た場合を除き、脱臼または骨折の患部に施術をしてはならないと定められています。応急手当は例外ですが、それ以降の施術には医師の同意が必要です。

業務範囲の違い(法的根拠)

項目 理学療法士 柔道整復師
医師の指示要否 PT法2条3項により、医師の指示にもとづいて業務を行う 医師の同意が必要になるのは、脱臼・骨折など特定の施術に限られる
業務独占・名称独占 名称独占(PT法17条)。資格がなくても業務自体を行うことは禁じられない 業務独占(柔整法15条)。資格がなければ柔道整復を業として行えない
禁止されている行為 診療の補助として理学療法を行う(PT法15条1項)。単独の判断で行う前提の資格ではない 外科手術・薬品投与の禁止(柔整法16条)、医師の同意がない脱臼・骨折への施術の禁止(柔整法17条)

業務範囲でおさえる3点


  • 理学療法士は医師の指示の下で理学療法を行う(名称独占)
  • 柔道整復師は柔道整復の業務独占をもつ
  • 柔道整復師も脱臼・骨折の患部は医師の同意が必要(応急手当を除く)

働く場所

働く場所の違いは、資格の性格をそのまま反映しています。理学療法士は病院や診療所を中心に、介護老人保健施設や訪問リハビリ、放課後等デイサービスなど医療・介護・福祉の現場に広く配置されています。

日本理学療法士協会の統計では、会員の勤務先として急性期の病院・センターや回復期リハビリテーション病棟が上位を占めています。

柔道整復師の主な職場は、自身が施術を行う施術所です。柔道整復師法第2条2項は、施術所を「柔道整復師が柔道整復の業務を行なう場所」と定義しています。

令和6年衛生行政報告例によると、柔道整復の施術所は全国に50,924か所あり、就業している柔道整復師は78,666人です。整骨院・接骨院に加えて、近年はデイサービスや介護老人保健施設の現場で働く方も増えています。

柔道整復師の働く場所は「施術所」に集中

78,666
就業柔道整復師数
50,924か所
施術所数
柔道整復師:施術所に集中
理学療法士:配置先が分かれる

つまり両者は、同じ「身体を診る仕事」でありながら、医療機関側と施術所側という別々のフィールドに軸足を置いているといえます。この点は、後述する求人の分布にもはっきり表れています。

開業に関する違い

ダブルライセンスを考える方が最も気にするのが、この開業に関する違いです。

柔道整復師法第19条は、施術所を開設した者は開設後10日以内に、開設の場所や従事する柔道整復師の氏名などを都道府県知事に届け出なければならないと定めています。つまり柔道整復師は、届出を行うことで自分の施術所を開設できる制度が法律に用意されています。

これに対して理学療法士及び作業療法士法には、理学療法士が施術所を開設するという規定がありません。理学療法士は医師の指示の下で理学療法を行う資格であるため、単独で理学療法を提供する施設を開く制度自体が存在しないのです。

なお、理学療法士が自費のトレーニング施設やコンディショニングサービスを開くこと自体は可能です。ただしその場合、そこで行うものは保険診療としての理学療法ではありません。

マッサージについても、理学療法士及び作業療法士法第15条2項は、病院・診療所において行う場合または医師の具体的な指示を受けて行う場合に限ってあはき法の規定を適用しないとしています。裏を返せば、病院外で医師の具体的な指示なくマッサージを業として行うことは、この規定の対象外になります。

開業に関する法律上の違い
柔道整復師
○ 届出で開業できる
  • 開設後10日以内に都道府県知事へ届出
  • 自分の施術所を持てる制度が法律にある
理学療法士
× 開業の制度がない
  • 法律に施術所開設の規定がない
  • 医師の指示の下で理学療法を行う資格のため
例外自費のジム・コンディショニング施設は開ける(保険の理学療法は行えない)
注意病院外でのマッサージは、医師の具体的な指示がなければ行えない
根拠:柔道整復師法19条/理学療法士及び作業療法士法15条2項

参考:e-Gov法令検索「理学療法士及び作業療法士法」e-Gov法令検索「柔道整復師法」厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の結果」公益社団法人日本理学療法士協会「統計情報」

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ダブルライセンスで広がること

階段を上がる人のイラストで表したキャリアアップのイメージ

ここまで見てきた違いは、そのまま「両方持つと何が変わるか」に直結します。ダブルライセンスの価値は、単純に知識が増えることよりも、法律上できることの範囲が変わる点にあるといえます。

一方で、増えるのは選択肢であって、収入や評価が自動的に上がるわけではありません。まずは何が実際に広がるのかを具体的に確認していきましょう。

働ける場所が増える

最も分かりやすい変化は、応募できる求人の母集団が変わることです。

医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)を見ると、理学療法士の求人6,409件のうち整骨院・接骨院の求人はわずか6件でした。反対に柔道整復師の求人3,737件のうち、病院の求人は12件にとどまっています。どちらの資格も、相手側の職場にはほとんど求人が存在しないのが実情です。

相手側の職場への求人数の比較
理学療法士 求人6,409件のうち
求人全体
6,409件
整骨院・接骨院
6件
柔道整復師 求人3,737件のうち
求人全体
3,737件
病院
12件
※ 相手側の職場への求人はどちらもごくわずか

これは裏を返せば、両方の資格を持つことで、これまで応募対象ですらなかった領域が選択肢に入るということでもあります。理学療法士が整骨院で働く、柔道整復師が病院のリハビリテーション科で働くといった転職が、資格の面では可能になります。

ただし注意したいのは、求人数そのものが増えるわけではない点です。整骨院の求人は柔道整復師にとってもともと最大の受け皿であり、新たに市場が生まれるわけではありません。あくまで「自分が応募できる範囲が相手側の領域まで届く」という変化です。

施術とリハビリの両方に関われる

業務の面では、急性期の外傷への対応と、その後の機能回復の両方に一人で関われるようになります。

柔道整復師は骨折や脱臼、打撲、捻挫といった外傷への対応を専門としており、医師の同意を得れば脱臼・骨折の患部への施術も行えます。理学療法士は、医師の指示のもとで基本的動作能力の回復に向けた運動療法や物理療法を担当します。

養成課程の中身を比べると、この違いはさらにはっきりします。柔道整復師の養成課程では柔道整復実技が17単位、臨床柔道整復学が17単位と、手技と外傷評価に大きな比重が置かれています。一方、理学療法士の養成課程では臨床実習が20単位を占め、医療提供施設での実習が求められています。

つまり両方を学ぶことは、外傷を診る手技と、動作を評価して回復させる視点の両方を身につけることを意味します。ケガをした直後から日常生活に戻るまでを一人で見通せるのは、ダブルライセンスならではの強みといえます。

柔道整復師
急性期の外傷に対応
  • 骨折・脱臼・打撲・捻挫の施術が専門
  • 医師の同意があれば脱臼・骨折の患部にも施術できる
養成課程柔道整復実技17単位+臨床柔道整復学17単位(手技と外傷評価に比重)
理学療法士
機能回復を担当
  • 医師の指示のもと運動療法・物理療法を実施
  • 基本的動作能力の回復に向けて評価・訓練
養成課程臨床実習20単位(医療提供施設での実習)
ケガ直後から日常生活まで、一人で見通せる
受傷直後回復期日常生活へ
柔道整復師(外傷施術)
理学療法士(リハビリ)
ダブルライセンス=一貫して関われる

開業という選択肢が生まれる

理学療法士が柔道整復師の資格を取得した場合、最も大きく変わるのが開業の選択肢です。前述のとおり、柔道整復師は施術所の開設届を出すことで自分の施術所を持てます。

この差は求人条件にも表れています。医療キャリアナビ掲載求人データでは、「独立・開業支援あり」の求人は柔道整復師で594件(全体の16%)だったのに対し、理学療法士ではわずか10件でした。開業を前提としたキャリア支援が、そもそも業界としてどちらに用意されているかが分かる数字です。

「独立・開業支援あり」求人の割合
16%594件
柔道整復師
0.2%10件
理学療法士
※求人件数に占める「独立・開業支援あり」の割合

反対に、柔道整復師が理学療法士の資格を取ると、開業の選択肢は増えません。増えるのは医療機関で働く道と、医師の指示の下でリハビリテーションに関わる道です。どちらの方向から取得するかで、得られるものはまったく違うという点は必ず押さえておきましょう。

参考:e-Gov法令検索「柔道整復師学校養成施設指定規則」e-Gov法令検索「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」

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取得にかかる時間と費用

はてなマークのブロックと小銭で表した資金面の疑問

ダブルライセンスの検討で避けて通れないのが、時間と費用です。「数年かかる」「数百万円かかる」と漠然と語られがちですが、実際にどれだけかかるのかを具体的に把握しておかないと、判断のしようがありません。

ここでは法令で定められた修業年限、学費の目安、働きながら通う場合の負担、そして意外と知られていない履修免除の可能性まで順に確認します。

必要な修業年限

結論からいうと、どちらの資格も養成校で3年以上学ぶ必要があります

理学療法士については、理学療法士及び作業療法士法第11条1号が、文部科学大臣の指定した学校または都道府県知事の指定した養成施設で3年以上必要な知識と技能を修得した者に受験資格を認めています。柔道整復師も同様に、柔道整復師法第12条が3年以上の修得を受験資格の要件としています。大学に進む場合は4年です。

ここで気になるのが「すでに国家資格を持っていれば短縮できるのでは」という点ではないでしょうか?

理学療法士については、法第11条2号に修業年限2年以上の短縮ルートが定められています。ただしこの入学資格は理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則で「作業療法士その他法第11条第2号の政令で定める者」とされており、柔道整復師が名指しで対象とされているわけではありません。柔道整復師側にも、他資格保有者向けの短縮ルートは設けられていません。

つまり、いずれの方向でも修業年限そのものは3年以上と考えておくのが安全です。

学費の目安

学費は養成校によって幅がありますが、3年制の専門学校でおおむね300万〜500万円程度が一つの目安とされています。ただしこの数字は各校の公表額を集計した相場感であり、公的な統計として発表されているものではありません。実際の金額は必ず志望校の募集要項で確認してください。

金額に幅が出る主な理由は次のとおりです。

  • 昼間部か夜間部かによる差(夜間部は昼間部より抑えられている場合が多い)
  • 専門学校か大学かによる差(大学は4年制のため総額が大きくなりやすい)
  • 実習費・教材費・実技用具代などの諸費用が別途必要かどうか

また、入学金・授業料以外に国家試験の受験手数料や免許登録の費用もかかります。総額を見積もるときは、授業料だけで判断しないようにしましょう。

働きながら通う場合の負担

すでに国家資格を持って働いている方の多くは、仕事を続けながら養成校に通うことを検討します。この場合に候補になるのが夜間部です。

ただし、通えるかどうかは学校側の体制だけでは決まりません。養成課程には臨床実習が組み込まれており、理学療法士の養成課程では臨床実習20単位、柔道整復師の養成課程では臨床実習4単位が必修とされています。特に理学療法士の臨床実習は、実習時間の3分の2以上を医療提供施設で行うことが定められているため、昼間の勤務を続けたままでは調整が難しい時期が生じます

費用面では、厚生労働省の専門実践教育訓練給付金が支えになる場合があります。受講中は教育訓練経費の50%(年間上限40万円)が6か月ごとに支給され、資格を取得して就職した場合には合計70%(年間上限56万円)まで引き上げられます。さらに訓練修了後の賃金が受講前より5%以上上昇した場合は80%(年間上限64万円)が上限です。

専門実践教育訓練給付金は段階を踏むほど手厚くなる
1
受講中
50%
年間上限40万円
6か月ごとに支給
2
資格取得+就職
70%
合計で年間上限56万円
1の支給に上乗せ
3
賃金が受講前より5%以上上昇
80%
合計で年間上限64万円
条件達成でさらに上乗せ
※対象は指定講座に限られる

ただし対象となるのは指定された講座に限られます。志望校の課程が対象講座かどうかは、ハローワークで事前に確認しておきましょう。

・夜間部があるか、実習期間の日程はどう組まれるか

・専門実践教育訓練給付金の指定講座に該当するか

・実習中に勤務を減らす前提で家計が回るか

履修免除の有無を確認する

意外と知られていませんが、すでに履修した科目の免除については法令に明確な規定があります。しかもその内容は、取得する方向によって非対称です。

柔道整復師学校養成施設指定規則の別表第一には、大学や高等専門学校のほか、理学療法士養成施設などで既に履修した科目については免除することができると定められています。理学療法士から柔道整復師を目指す場合、解剖学や生理学といった専門基礎分野の科目が免除の対象になり得るということです。

反対に、理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則の別表第一で免除の対象として挙げられているのは、大学・高等専門学校・作業療法士養成施設・看護師等の養成施設です。この「看護師等の養成施設」には看護師・診療放射線技師・臨床検査技師・視能訓練士・臨床工学技士・義肢装具士・救急救命士・言語聴覚士の養成所が含まれますが、柔道整復師養成施設は列挙されていません

柔道整復師を大学で取得した場合は「大学において既に履修した科目」として扱われる余地がありますが、専門学校で取得した場合は同じようにはいきません。

相手の養成施設で履修した科目が免除対象に入るか

進む方向 免除の基準になる規定 相手の養成施設の記載
理学療法士から柔道整復師へ 柔道整復師学校養成施設指定規則 別表第一 「理学療法士養成施設」が免除対象として明記されている
柔道整復師から理学療法士へ 理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則 別表第一 「柔道整復師養成施設」の記載はない

※どちらも「免除することができる」規定=可否と対象科目は学校ごとの判断

なお、いずれの規定も「免除することができる」という書き方です。免除するかどうか、どの科目を対象とするかは学校の判断に委ねられているため、必ず志望校に個別に確認してください。この一点で在学中の負担が変わる可能性があります。

参考:e-Gov法令検索「理学療法士及び作業療法士法」e-Gov法令検索「柔道整復師法」e-Gov法令検索「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」e-Gov法令検索「柔道整復師学校養成施設指定規則」厚生労働省「教育訓練給付金」

転職活動するなら?

目的別に必要かどうかを考える

2択の選択肢を示すブロック

ここまでで、ダブルライセンスに3年以上の時間と数百万円の学費がかかることが分かりました。この投資に見合うかどうかは、「何を達成したいのか」によって答えが変わります。

大切なのは、資格を取ることを目的にしないことです。ここでは代表的な4つの目的について、2つ目の国家資格が本当に必要なのかを一つずつ検討していきます。

開業したい場合

開業が目的なら、ダブルライセンスの必要性は高いといえます。理由ははっきりしていて、柔道整復師法第19条にもとづく施術所の開設という制度が、理学療法士側には存在しないためです。

保険を扱う施術所を自分で持ちたいのであれば、柔道整復師の資格取得は現実的な選択肢になります。理学療法士のまま自費のトレーニング施設やコンディショニングサービスを開く道もありますが、そこで提供できるのは保険診療としての理学療法ではありません。

ただし、開業したいという気持ちの中身は人によって違います。「自分で判断して働きたい」「組織に縛られたくない」という動機であれば、訪問リハビリのように裁量の大きい職場や、業務委託・フリーランスに近い働き方でも満たせる場合があります。「保険を扱う自分の店舗を持ちたいのか」「自分の裁量で働きたいのか」を切り分けて考えると、判断しやすくなります。

スポーツ分野で働きたい場合

スポーツ分野が目的の場合、2つ目の国家資格は必須ではありません。

スポーツ現場で広く知られている資格に、日本スポーツ協会の公認アスレティックトレーナーがあります。この資格は理学療法士でも柔道整復師でも目指すことができ、どちらか一方の国家資格しか持っていなくても不利にはなりません。養成講習会は共通科目150時間・専門科目600時間で構成され、受講料は共通科目22,000円、専門科目55,000円(いずれも税込)です。

受講には条件があり、受講する年の4月1日時点で満20歳以上であること、そして日本スポーツ協会または加盟団体などからの推薦が必要です。所属先や地域のスポーツ協会とのつながりが前提になるため、資格そのものより、現場との接点を先につくることが近道になります。

JSPO公認アスレティックトレーナーを目指すまでの流れ
※2つ目の国家資格は必須ではない
理学療法士
柔道整復師
受講条件を満たす
満20歳以上(受講する年の4月1日時点)+推薦(日本スポーツ協会・加盟団体などから)
共通科目
150時間
受講料 22,000円(税込)
専門科目
600時間
受講料 55,000円(税込)
JSPO公認アスレティックトレーナー

つまりスポーツ分野を目指すなら、3年かけて2つ目の国家資格を取るよりも、今の資格を持ったままアスレティックトレーナーの取得や、チーム・部活動へのサポート参加を検討するほうが、目的への距離は近いといえます。

収入を上げたい場合

収入アップが目的の場合、ダブルライセンスは効率の良い手段とはいいにくいのが実情です。

医療キャリアナビ掲載求人データで正社員の月給中央値を見ると、理学療法士が272,500円、柔道整復師が265,000円と、資格による差は1万円未満でした。一方、同じ資格の中でも職場によって金額は動きます。理学療法士では訪問リハビリが300,000円、病院が251,425円で約5万円の開きがあり、柔道整復師でも訪問マッサージ290,000円に対しデイサービスは250,000円でした。

つまり資格を1つ増やすことより、どの職場を選ぶかのほうが月給への影響が大きいという結果です。3年間の学費と、その間に減る収入を考えれば、まず職場選びを見直すほうが現実的な選択肢になります。

もちろん、開業して事業収入を得る場合は話が別です。ただしそれは「資格が増えたから給料が上がる」のではなく、経営者になることで収入構造そのものが変わるという話であり、相応のリスクも伴います。

求人を見てきた立場からひと言
  • 資格の違いより、職場の違いのほうが月給に効いています
  • 同じ理学療法士でも、訪問リハビリと病院で約5万円の開きがあります
  • 3年の学費を検討する前に、今の資格で選べる職場を一度見てみてください
キャリアパートナー

仕事の幅を広げたい場合

「もっと幅広く患者さんに関わりたい」という動機は、目的がはっきりしていない状態であることも少なくありません。この場合はまず、広げたい方向を具体的にしてみましょう。

対象疾患を広げたいのか、関われる時期(急性期から在宅まで)を広げたいのか、対象年齢を広げたいのかで、取るべき手段は変わります。たとえば小児に関わりたいのであれば、理学療法士の求人には放課後等デイサービス427件、児童発達支援246件があり、資格を増やさずに移れる領域です。

その一方で、外傷の初期対応から関わりたい、保険を扱う施術所で働きたいという方向であれば、柔道整復師の資格が必要になります。広げたい方向が今の資格の外側にあるのか内側にあるのかを見極めることが、判断の分かれ目です。

参考:e-Gov法令検索「柔道整復師法」公益財団法人日本スポーツ協会「アスレティックトレーナー」

2つ目の資格以外の選択肢

スクラブや白衣を着た医療職が参加する勉強会の様子

ここまで見てきたとおり、目的によっては2つ目の国家資格を取らなくても達成できることがあります。では、具体的にどのような選択肢があるのでしょうか。

ダブルライセンスと比べて、時間も費用も大幅に小さく済む手段は複数あります。判断を急ぐ前に、これらを一度検討してみる価値は十分にあります。

認定資格や研修で専門性を高める

専門性を高める方法として、まず候補になるのが職能団体や公益法人が運営する認定資格です。

理学療法士であれば、日本理学療法士協会が認定理学療法士・専門理学療法士の制度を運営しています。臨床の専門性を高めたい方に向けた仕組みで、いずれも取得後は更新が必要です。柔道整復師にも各団体が実施する研修や認定制度があります。

職種を問わず活用できる資格としては、健康運動指導士があります。理学療法士・柔道整復師はどちらも104単位コースの対象とされており、受講料は291,500円(教材込)、受験料13,619円、登録料25,300円です。ただし修業年限4年以上の大学卒業者であることが条件となるため、該当するかどうかの確認は必要です。

ダブルライセンスの学費が300万〜500万円規模であることを踏まえると、これらの選択肢は費用も期間も一桁小さく収まります。

健康運動指導士ルート と ダブルライセンスルート の費用・期間比較
健康運動指導士ルート
受講料 291,500
受験料 13,619
登録料 25,300
※修業年限4年以上の大学卒業者が対象
ダブルライセンスルート
300〜500万円
修業年限3年以上
健康運動指導士ルートは費用・期間ともに一桁小さい

自費のサービスを提供する

保険外の自費サービスを提供するという方向もあります。パーソナルトレーニング、コンディショニング、姿勢改善の指導などが代表例です。

理学療法士がこの領域に進む場合、法律上の線引きを正しく理解しておく必要があります。理学療法士及び作業療法士法第15条2項は、病院・診療所において行う場合、または医師の具体的な指示を受けて行う場合のマッサージについて、あはき法の規定を適用しないと定めています。この条件から外れる場面でマッサージを業として行うことは、この規定の対象になりません。

そのため自費サービスを組み立てる際は、運動指導や動作の評価・助言といった内容が中心になります。何を提供し、何を提供しないのかを事前に整理しておくことが欠かせません。

一方、柔道整復師が自費メニューを設ける場合も、柔道整復師法第16条で外科手術や薬品投与が禁止されている点、第17条で脱臼・骨折の患部への施術には医師の同意が必要とされている点は変わりません。

勤務先や職場の種類を変える

最も現実的で、最も見落とされやすいのが職場を変えるという選択肢です。

医療キャリアナビ掲載求人データで求人の内訳を見ると、理学療法士は訪問リハビリが最も多く、クリニック・病院・介護施設・小児領域まで領域ごとにまとまった数の求人があります。柔道整復師も整骨院・接骨院が中心ではあるものの、デイサービスや訪問マッサージなど受け皿は一つではありません。

勤務先タイプの内訳(求人件数に占める割合)
理学療法士 求人 6,409
30.9%
15.6%
12.8%
12.1%
訪問リハビリ1,983件 クリニック999件 病院819件 デイケア・デイサービス777件 介護老人保健施設558件 放課後等デイサービス427件 特別養護老人ホーム328件 児童発達支援246件 その他272件
柔道整復師 求人 3,737
55.5%
20.3%
整骨院・接骨院2,075件 デイケア・デイサービス759件 特別養護老人ホーム266件 訪問マッサージ227件 クリニック189件 鍼灸院41件 その他180件

働き方の条件にも差があります。理学療法士では「年間休日120日以上」の求人が23%、「土日祝休み」が15%であるのに対し、柔道整復師ではそれぞれ6%、2%でした。逆に柔道整復師は「インセンティブあり」が17%、「完全週休2日」が19%と、条件の傾向自体が異なります。

同じ資格のままでも、職場を変えるだけで働き方は大きく変わります。3年の学習期間を投じる前に、今の資格で選べる職場を一通り見てみることをおすすめします。

参考:公益財団法人健康・体力づくり事業財団「令和8年度健康運動指導士養成講習会開催要領」e-Gov法令検索「理学療法士及び作業療法士法」

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ダブルライセンスのデメリット

デメリットと書かれた黒板

ダブルライセンスには明確な利点がある一方で、見過ごせない負担やリスクもあります。取得を後押しする情報は養成校や採用側から多く発信されますが、判断するうえではマイナス面も同じ重さで検討しておきたいところです。

ここでは時間と費用、経験の分散、待遇との関係という3つの観点から整理します。

時間と費用の負担が大きい

最も直接的な負担は、3年以上という期間と数百万円の学費です。しかし本当に重いのは、その間に得られたはずの収入が減ることかもしれません。

仮に夜間部に通いながら勤務を続けたとしても、臨床実習の期間は勤務を減らさざるを得ない場面が出てきます。理学療法士の養成課程では臨床実習20単位が必修で、実習時間の3分の2以上を医療提供施設で行うことが求められています。

さらに、国家試験に合格するとは限らない点も踏まえておく必要があります。厚生労働省の発表によると、第61回理学療法士国家試験の合格率は89.7%(受験者12,951人・合格者11,156人)、第34回柔道整復師国家試験の合格率は71.5%(受験者4,434人・合格者3,170人)でした。

特に柔道整復師は3割近くが不合格となっており、働きながらの受験では相応の学習時間の確保が必要です。

理学療法士・柔道整復師 国家試験の合格率
89.7%
理学療法士国試(第61回)
新卒のみ94.9%
71.5%
柔道整復師国試(第34回)
 
※理学療法士11,156/12,951人、柔道整復師3,170/4,434人が合格

どちらの経験も浅くなるおそれがある

資格を2つ持つことと、2つの領域で通用することは同じではありません。

医療現場でも施術所でも、評価されるのは資格の数より臨床経験の厚みです。3年間の学習期間中は現職での経験の積み上げが鈍りますし、卒業後に新しい領域へ移れば、その領域では新人からのスタートになります。

たとえば理学療法士として5年勤めた方が柔道整復師の資格を取り、整骨院に転職した場合、理学療法士としてのキャリアは5年で止まり、柔道整復師としては1年目から始まります。どちらの経験も中途半端になるリスクは、あらかじめ想定しておくべきでしょう。

これを避けるには、両方を同時に活かせる職場をあらかじめ見つけておくことが有効です。ただし前述のとおり、理学療法士の求人で整骨院・接骨院は6件、柔道整復師の求人で病院は12件と、両方を求める職場は多くありません。

資格の数が待遇に直結するとは限らない

「資格が2つあれば手当がつく」と期待する方は少なくありませんが、必ずそうなるとは限りません。

求人の月給中央値で見ると、理学療法士272,500円、柔道整復師265,000円と資格による差は小さく、職場による差のほうが大きいことはすでに述べたとおりです。ダブルライセンスに対する加算を明示している求人は、業界全体で見ればまだ限られています。

また、就業者数の動きも押さえておきたい点です。令和6年衛生行政報告例によると、就業柔道整復師は78,666人で前回調査から1,034人増えた一方、施術所は50,924か所でわずか8か所の増加にとどまりました。理学療法士も、日本理学療法士協会の統計では有資格者の累計が23万人を超えています。

資格を持つ人が増えれば、資格そのものの希少性は下がります。待遇につなげるには、資格に加えて何ができるかを示せることが前提になるといえます。

参考:厚生労働省「第61回理学療法士国家試験・第61回作業療法士国家試験の合格発表について」厚生労働省「第34回柔道整復師国家試験の合格発表について」厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の結果」公益社団法人日本理学療法士協会「統計情報」

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取得を決める前に確認したいこと

チェックリストと書かれた紙とペン

ここまでの検討を経て「やはり取得したい」と考えた方に向けて、入学を決める前に確認しておきたい点をまとめます。

養成校のパンフレットやオープンキャンパスでは、なかなか踏み込んで聞きにくい内容もあります。しかし、ここを曖昧にしたまま入学すると、想定と違う3年間になりかねません。

養成校の入学要件と通学の形態

入学資格は、どちらの養成校も基本的に大学に入学できる者、つまり高校卒業程度が要件です。すでに国家資格を持っていても、この点で優遇されるわけではありません。

学習環境の違いとして、一学級の定員が挙げられます。指定規則では、理学療法士の養成校は一学級の定員が40人以下、柔道整復師の養成校は30人以下と定められています。教育内容の総単位数は理学療法士が101単位、柔道整復師が99単位とほぼ同じですが、内訳は異なります。

養成校の教育内容 単位数の内訳
基礎分野 専門基礎分野 専門分野 臨床実習
理学療法士101単位
14
30
37
20

基礎14・専門基礎30・専門57(うち臨床実習20)

柔道整復師99単位
14
37
44

基礎14・専門基礎37・専門48(うち実技17・臨床実習4)

※専門分野の中身が違う:理学療法士は臨床実習20単位、柔道整復師は実技17単位が中心

確認しておきたい項目を挙げます。

  • 夜間部の有無と、授業の開始・終了時刻
  • 臨床実習の時期・期間と、実習先の所在地
  • 既修得科目の免除が受けられるか、対象となる科目はどれか
  • 専門実践教育訓練給付金の指定講座に該当するか
  • 学費の総額(入学金・授業料以外の諸費用を含む)

働きながら通える体制があるか

夜間部があることと、実際に働きながら卒業できることは別の問題です。

特に確認しておきたいのが臨床実習の組み方です。理学療法士の養成課程では臨床実習が20単位あり、通所リハビリテーションまたは訪問リハビリテーションに関する実習も1単位以上行うことが求められています。柔道整復師の養成課程では臨床実習は4単位ですが、施術所での実習が想定されています。

実習期間中に勤務をどこまで減らす必要があるのか、過去の在学生がどのように両立していたのかは、学校に直接尋ねてみましょう。在職者の在籍実績と、その方たちの働き方を聞ければ、現実的なイメージがつかめます。

あわせて、現在の勤務先に相談しておくことも大切です。勤務時間の調整や、資格取得後の処遇について事前に話ができていれば、卒業後の選択肢も変わってきます。

取得後に働きたい職場の求人

最後に確認したいのが、資格を取った後に働きたい職場の求人が実際に存在するかどうかです。

医療キャリアナビ掲載求人データでは、理学療法士の求人が6,409件、柔道整復師の求人が3,737件でした。雇用形態を見ると、理学療法士は正社員4,618件・パート1,790件・業務委託1件、柔道整復師は正社員3,040件・パート695件・業務委託2件と、どちらも業務委託の求人はほとんどありません。フリーランスとして働くイメージを持っている場合は、実態との差を確認しておく必要があります。

また、両資格を同時に評価する求人が自分の希望エリアにあるかどうかも重要です。求人の所在地には偏りがあり、どちらの資格も関東・関西の都市部に集中する傾向があります。

都道府県別 求人数(上位5都府県)
理学療法士 柔道整復師
0500件1,000件1,500件2,000件2,500件
東京都
2,009件
1,349件
神奈川県
1,268件
636件
埼玉県
912件
511件
大阪府
874件
525件
千葉県
759件
492件
※ 東京都を筆頭に、両資格とも求人は関東・関西の大都市圏に集中

3年後の求人状況を完全に予測することはできませんが、今の時点でどのような求人があるのかを見ておけば、卒業後のイメージは格段に具体的になります。入学を決める前に、一度求人情報に目を通しておくことをおすすめします。

参考:e-Gov法令検索「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」e-Gov法令検索「柔道整復師学校養成施設指定規則」

まとめ

理学療法士と柔道整復師のダブルライセンスは、確かにできることの範囲を広げます。特に理学療法士から柔道整復師を目指す場合、柔道整復師法第19条にもとづく施術所の開設という、理学療法士側にはない選択肢が生まれます。

一方で、どちらの方向でも養成校に3年以上通う必要があり、学費は300万〜500万円程度が目安です。求人データを見ると、資格による月給の差は職場による差より小さく、資格を1つ増やすことが収入に直結するとは限りません。

判断のポイントは、達成したいことから逆算することです。開業したいのであれば柔道整復師の資格取得は現実的な選択肢ですが、スポーツ分野で働きたい、収入を上げたい、仕事の幅を広げたいという目的であれば、公認アスレティックトレーナーや健康運動指導士、職場を変えるといった、より短い期間と少ない費用で届く手段があります。

取得を決めたら、志望校に既修得科目の免除について必ず確認してください。柔道整復師の養成課程では理学療法士養成施設で履修した科目を免除できる規定があり、扱いは学校ごとに異なります。この確認一つで、3年間の負担が変わる可能性があります。

まずは今の資格で選べる職場を一通り見たうえで、それでも足りないものがあるかを確かめる。その順番で考えることが、後悔しない判断につながります。

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この記事を書いた人
医療キャリアナビ編集部

医療キャリアナビ編集部

記事の執筆・編集は、医療業界に精通した編集スタッフが担当しています。日々の転職支援業務で得た現場のリアルな情報と、厚生労働省をはじめとする公的機関のデータに基づき、信頼性の高いコンテンツをお届けしています。

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