年収400万円の手取りは?税金の内訳と生活費の目安を解説
求人票に「年収400万円」と書かれていても、実際に口座へ振り込まれる金額がいくらになるのかは、すぐには思い浮かばないのではないでしょうか。給与からは所得税・住民税に加えて健康保険料や厚生年金保険料も差し引かれるため、額面と手取りには数十万円単位の差が生まれます。
この記事では、年収400万円の手取りを年額と月額の両方で示したうえで、引かれるお金の内訳、年収が上がったときに手取りがどれだけ増えるのか、生活費の目安までをまとめました。国税庁や厚生労働省などの公的データをもとに算出しているので、求人票の金額を自分の暮らしに引き直す材料として活用してください。
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年収400万円の手取りの目安

年収400万円の手取りは、年額でおよそ316万円、月額にすると約26万3,000円です。額面の79.0%が手元に残り、残りの約21%にあたる約84万円が税金と社会保険料として差し引かれる計算になります。
ただし手取り額は、家族構成や年齢、勤務先の所在地によって変わります。そのため本記事では、条件をそろえたうえで金額を算出しました。以降の見出しで示す金額も、すべて同じ条件で統一しています。
本記事の算出条件
- 会社員(正社員)で、独身・扶養している家族なし
- 40歳未満(介護保険料の負担がない年齢)
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)東京都支部に加入
- 雇用保険は「一般の事業」
- 賞与なしで、年収を12か月に均等に分けて受け取る
- 保険料率は令和8年度、所得税は令和7年分以降、住民税は令和8年度の標準税率を適用
税額や保険料は制度改正のたびに変わります。以下の金額はいずれも参照年度時点での概算であり、実際の金額はお手元の給与明細で確認してください。
手取りの年額
年収400万円から差し引かれるのは、社会保険料・所得税・住民税の3つです。上記の条件で計算すると、社会保険料が約59万9,000円、所得税が約6万5,000円、住民税が約17万6,000円となり、差し引かれる合計は約84万円になります。
この結果、手取りの年額はおよそ316万円です。額面に対する手取りの割合、いわゆる手取り率は79.0%となります。
差し引かれる金額のうち最も大きいのは厚生年金保険料で、約37万3,000円と全体の4割以上を占めます。次いで健康保険料が約20万1,000円、住民税が約17万6,000円と続き、所得税は約6万5,000円にとどまります。「税金が高い」と感じやすい年収帯ですが、実際に負担が重いのは税金よりも社会保険料である点は押さえておきたいところです。
なお、社会保険料は全額が所得控除の対象になるため、社会保険料が増えるとその分だけ課税所得が減り、所得税と住民税は軽くなります。手取りを考えるときは、この連動関係も意識しておくと理解しやすくなります。
手取りの月額
年間の手取り約316万円を12か月で割ると、月あたりの手取りはおよそ26万3,000円です。額面の月給は約33万3,000円なので、毎月およそ7万円が引かれている計算になります。
毎月の給与から差し引かれる内訳は、次のとおりです。
-
厚生年金保険料約3万1,100円
-
健康保険料約1万6,700円(子ども・子育て支援金を含めて約1万7,100円)
-
住民税約1万4,600円
-
所得税約5,400円
-
雇用保険料約1,700円
社会保険料の計算のもとになるのは、実際の月給そのものではなく「標準報酬月額」という区切りのよい金額です。月給約33万3,000円の場合、標準報酬月額は34万円に当てはまります。
注意したいのは、住民税は前年の所得をもとに計算され、翌年6月からの給与で天引きされる点です。そのため、社会人1年目や転職して収入が大きく変わった年は、上記の月額と実際の手取りがずれます。この仕組みは記事の後半で詳しく取り上げます。
ボーナスがある場合の月の手取り
同じ年収400万円でも、賞与の有無で毎月の手取りは大きく変わります。年収400万円のうち賞与が年間80万円(月給約26万7,000円×12か月+賞与80万円)というケースで計算すると、毎月の手取りは約20万8,000円、賞与の手取りは1回あたり約33万7,000円になります。
賞与なしの場合の月26万3,000円と比べると、毎月の手取りは約5万5,000円少なくなる計算です。毎月の生活費を月給だけでまかなう前提で家計を組むと、賞与の割合が高い職場では資金繰りが苦しくなりやすいといえます。
一方で、年間の手取り合計は賞与ありのほうがわずかに多く、約316万5,000円となりました。これは、月給が下がることで標準報酬月額が34万円から27万円へと下がり、年間の社会保険料が約5,700円減るためです。
賞与の割合が高いほど毎月の手取りは減るものの、年間の手取り総額はほとんど変わらないと理解しておくとよいでしょう。
求人票を比べるときは、年収の総額だけでなく「月給がいくらか」まで確認しておくと、入職後のギャップを防げます。
参考:国税庁「No.1410 給与所得控除」 / 日本年金機構「保険料額表(令和2年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)」
年収400万円から引かれる税金・社会保険料

年収400万円から差し引かれるのは、所得税・住民税という2つの税金と、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料という3つの社会保険料です。ここでは、それぞれがどのような仕組みで計算され、年間いくらになるのかを順に見ていきます。
前提として、税金は「収入」ではなく「所得」に対してかかります。年収400万円の場合、給与所得控除124万円(400万円×20%+44万円)を差し引いた276万円が給与所得です。ここからさらに基礎控除や社会保険料控除などを引いた金額が、税額計算のもとになります。
所得税
所得税は、給与所得276万円から所得控除を差し引いた課税所得に、税率を掛けて計算します。年収400万円・独身・扶養なしの場合、差し引ける所得控除は基礎控除88万円と社会保険料控除約59万9,000円の合計約147万9,000円です。
課税所得は約128万1,000円となり、課税所得195万円以下に適用される税率5%を掛けると所得税は約6万4,000円になります。ここに復興特別所得税(所得税額の2.1%)が加わり、年間の所得税はおよそ6万5,300円、月あたり約5,400円です。
基礎控除は令和7年分から見直され、金額が合計所得金額に応じて段階的に決まる形になりました。給与所得276万円は「132万円超336万円以下」の区分にあたるため、令和7年分・令和8年分は88万円が適用されます。この区分の控除額は令和9年分以降58万円に戻る予定のため、同じ年収でも将来の税額は変わる点に注意してください。
住民税
住民税には、所得に応じてかかる「所得割」と、所得にかかわらず定額でかかる「均等割」があります。所得割の標準税率は10%(道府県民税4%・市町村民税6%)、均等割は年4,000円(道府県民税1,000円・市町村民税3,000円)です。
住民税は所得税と控除額が異なり、基礎控除は43万円です。給与所得276万円から基礎控除43万円と社会保険料控除約59万9,000円を引いた課税所得は約173万1,000円となり、所得割は約17万3,100円。ここから調整控除2,500円を差し引いた17万600円が所得割額になります。
これに均等割4,000円と、令和6年度から均等割と併せて徴収される森林環境税(国税)1,000円が加わり、年間の住民税はおよそ17万5,600円です。所得税の2倍以上の負担になる点は、意外に思われるかもしれません。
健康保険料
健康保険料は、標準報酬月額に都道府県ごとの保険料率を掛け、会社と本人で半分ずつ負担します。月給約33万3,000円の場合、標準報酬月額は34万円です。
協会けんぽ東京都支部の令和8年度の保険料率は9.85%なので、34万円×9.85%=3万3,490円のうち本人負担は1万6,745円。年間では約20万1,000円になります。
さらに令和8年4月分からは、子ども・子育て支援金(全国一律0.23%)が健康保険料とは別建てで加わります。本人負担は月391円、年間で約4,700円です。金額としては大きくありませんが、令和8年度から新たに増える負担なので、給与明細を見て「先月と少し違う」と感じた方は確認してみてください。
なお保険料率は都道府県ごとに異なり、令和8年度は最も高い佐賀県が10.55%、最も低い沖縄県が9.44%です。標準報酬月額34万円で計算すると本人負担の差は年間約2万3,000円になり、同じ会社の同じ給与でも勤務地が変われば手取りが変わります。
厚生年金保険料
厚生年金保険料率は全国一律で18.3%に固定されており、健康保険と同様に会社と本人で折半します。標準報酬月額34万円の場合、34万円×18.3%=6万2,220円のうち本人負担は3万1,110円、年間では約37万3,300円です。
差し引かれる金額としては最も大きく、年収400万円から引かれる総額約84万円の4割以上を占めます。ただし厚生年金保険料は将来受け取る老齢厚生年金の額に反映されるため、単なる負担ではなく、将来の年金を積み上げている支出という側面もあります。
雇用保険料
雇用保険料は、標準報酬月額ではなく実際に支払われた賃金額に料率を掛けて計算します。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの一般の事業の料率は、労働者負担が1,000分の5(0.5%)です。
年収400万円なら年間で2万円、月あたり約1,700円になります。他の保険料と比べると負担は小さいものの、失業したときの基本手当や育児休業給付の財源となる保険料です。
| 項目 | 料率など | 本人負担の年額 |
|---|---|---|
| 税金 | ||
| 所得税 | 5%+復興特別2.1% | 65,300円 |
| 住民税 | 所得割10%+均等割等5,000円 | 175,600円 |
| 社会保険料 | ||
| 厚生年金保険 | 18.3% | 373,320円 |
| 健康保険 | 9.85% | 200,940円 |
| 子ども・子育て支援金 | 0.23% | 4,692円 |
| 雇用保険 | 0.5% | 20,000円 |
| 合計 | - | 839,852円 |
今のあなたの状況は?
参考:国税庁「No.2260 所得税の税率」 / 国税庁「No.1199 基礎控除」 / 総務省「総務省|地方税制度|個人住民税」 / 全国健康保険協会「令和8年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます」 / ハローワーク立川「令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内」
年収が上がったときに手取りはどう変わるか

転職や昇給を考えるとき、本当に知りたいのは「額面がいくら増えるか」ではなく「手元に残るお金がいくら増えるか」ではないでしょうか。額面と手取りは同じペースでは増えないため、年収の差だけを見て判断すると期待とずれます。
ここでは、年収350万円から400万円に上がったケースを例に、増えた分がどこへ消えるのかを金額で確認します。あわせて、年収が上がった直後に多くの人が戸惑う「時間差」の仕組みも取り上げます。
年収350万円から400万円に上がった場合の増加額
同じ条件で年収350万円の手取りを計算すると、年額は約278万円、月額は約23万2,000円です。年収400万円の手取り約316万円と比べると、年間で約38万1,000円、月あたりでは約3万2,000円の増加になります。
額面は50万円増えているのに、手元に残るのは約38万円。差額の約11万9,000円は税金と社会保険料として消えています。その内訳は次のとおりです。
-
社会保険料の増加約7万1,000円(増加分の約6割を占める)
-
住民税の増加約3万2,000円
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所得税の増加約1万6,000円
増えた負担の6割近くを占めるのが社会保険料です。年収が上がると標準報酬月額の等級も上がるため、健康保険料と厚生年金保険料が同時に増えることが理由です。年収350万円では標準報酬月額30万円、年収400万円では34万円と、4万円分の等級差が保険料に直結します。
増えた分に対する手取りの割合
増えた50万円のうち手元に残った約38万1,000円を割合にすると、76.2%です。年収400万円全体の手取り率79.0%と比べると、約3ポイント低くなっています。
さらに年収450万円まで上がったケースで計算すると、手取りは約354万円。400万円からの増加額は約38万円で、増えた分に対する割合は75.9%でした。つまりこの年収帯では、額面が50万円上がるたびに手取りは約38万円ずつ増えると考えておくと、判断を誤りにくくなります。
年収帯全体の手取り率も、350万円で79.4%、400万円で79.0%、450万円で78.7%と、少しずつ下がっていきます。年収が上がるほど手取り率は緩やかに低下しますが、この年収帯では年収を上げれば手取りも確実に増えると考えて差し支えありません。「年収を上げても税金で持っていかれるだけ」という話を耳にすることがありますが、少なくとも400万円前後の水準には当てはまらないといえます。
住民税は翌年から反映される
年収が上がった直後に多くの人が戸惑うのが、住民税の時間差です。住民税の所得割は前年の1月1日から12月31日までの所得で算定されるため、年収が上がった当年ではなく、翌年6月以降の給与から負担が増えます。
たとえば年収350万円から400万円に上がった場合、その年は前年(350万円)の所得をもとにした住民税が天引きされ続けます。年収400万円分の住民税に切り替わるのは翌年6月からです。そのため、昇給した翌年の6月に、昇給していないのに手取りが減ったように見えるという現象が起こります。
この例では住民税の差が年間約3万2,000円、月あたり約2,700円です。給与明細を見て慌てないためにも、昇給や転職の翌年6月は住民税が上がるものと見込んでおくと安心です。逆に、年収が下がった翌年は住民税の負担も軽くなります。
社会保険料の等級が見直される時期
社会保険料にも、住民税とは別の時間差があります。標準報酬月額は毎月見直されるわけではなく、原則として年1回まとめて決め直される仕組みだからです。
事業主は毎年7月1日時点の被保険者について、4月・5月・6月の報酬をもとに算定基礎届を提出し、決め直された標準報酬月額が9月から翌年8月までの各月に適用されます。これを定時決定といいます。
ただし、昇給などで固定的賃金が大きく変わった場合は、定時決定を待たずに見直される仕組みもあります。これが随時改定で、次の3つの要件をすべて満たしたときに行われます。
- 昇給または降給などにより固定的賃金に変動があった
- 変動月以後3か月の報酬の平均から算出した標準報酬月額と、従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた
- 変動月以後3か月の報酬の支払基礎日数が、いずれも17日以上である
随時改定に該当した場合、変動後の報酬を初めて受けた月から起算して4か月目の標準報酬月額から改定されます。4月の給与が上がったなら、7月分の保険料から新しい等級が適用されるという流れです。
つまり、年収が上がっても社会保険料の負担が増えるのは数か月後になります。昇給直後は手取りが増えたように見えても、保険料の反映後に少し戻る点は、家計の見通しを立てるうえで知っておきたいところです。
参考:総務省「総務省|地方税制度|個人住民税」 / 日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」 / 日本年金機構「随時改定(月額変更届)」
年収400万円の手取りで暮らす生活費の目安

手取り月26万3,000円で、実際にどのくらいの暮らしができるのでしょうか。ここでは総務省「家計調査」の2025年平均をもとに、世帯の形ごとに家計の目安を見ていきます。
前提として、家賃は地域によって差が大きい費目です。令和5年住宅・土地統計調査によると、借家の1か月あたり家賃は全国平均で5万9,656円。構造別では民営借家の木造が5万4,409円、非木造が6万8,548円で、都市部ではこれを大きく上回ります。以下の金額はあくまで目安として、幅を持たせて読んでください。
一人暮らしの場合
家計調査の2025年平均によると、単身世帯の消費支出は1か月あたり17万3,042円です。手取り月26万3,000円から差し引くと、およそ9万円が残る計算になります。年収350万円の場合に残る約5万9,000円と比べると、3万円以上の余裕が生まれます。
ただし、この金額をそのまま自分に当てはめるのは注意が必要です。家計調査の単身世帯には持ち家に住む人も含まれているため、住居費が賃貸で暮らす人の実感より低く出る傾向があります。家賃6万円前後の物件を借りる場合、手元に残るお金はさらに少なくなると考えておくのが現実的です。
とはいえ、年収400万円は一人暮らしであれば毎月一定額を貯蓄に回しやすい水準といえます。給与が振り込まれた時点で一定額を別口座に移す先取り貯蓄の仕組みをつくっておくと、支出が生活水準に合わせて膨らむのを防げます。
夫婦2人暮らしの場合
家計調査の2025年平均では、2人世帯の消費支出は1か月あたり28万1,014円でした。手取り月26万3,000円ではこの水準に約1万8,000円届かないため、片働きで年収400万円の場合は支出を平均より抑える必要があります。
もっとも、この2人世帯の平均は世帯主の平均年齢が68.5歳と高く、退職後の世帯が多く含まれる数字です。現役世代の夫婦2人であれば、保健医療費が平均より少ない一方で交通・通信費は多くなるなど、内訳は変わってきます。
費目別に見ると、2人世帯の支出で大きいのは食料7万9,340円、その他の消費支出5万4,799円、交通・通信3万9,516円の順です。食費や日用品は2人分になっても2倍にはならず、住居費や水道光熱費は共有できるため、1人あたりで見れば単身世帯より効率がよくなります。共働きにするかどうかを早めに話し合っておくと、家計の見通しが立てやすくなります。
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夫婦と子ども1人の場合
3人世帯の消費支出は、家計調査の2025年平均で1か月あたり32万4,047円です。手取り月26万3,000円との差は約6万1,000円。片働きで年収400万円の場合、平均的な支出水準には届かない計算になります。
2人世帯との差は約4万3,000円で、内訳では食料が約1万2,900円、教育が約1万500円、交通・通信が約1万200円増えています。子どもが増えると、食費だけでなく教育費と移動にかかる費用がまとまって増えるのが特徴です。
ここで示した金額は持ち家世帯を含む平均のため、賃貸で暮らす場合はさらに家賃分が上乗せされます。世帯収入をどう確保するかが最大の論点になるため、配偶者の就労や、年収を上げる働き方への切り替えを早い段階で検討しておくことをおすすめします。
参考:総務省「総務省|報道資料|家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)12月分、10~12月期平均及び2025年平均」 / 政府統計の総合窓口「家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表 年次 2025年」 / 総務省統計局「統計局ホームページ/令和5年住宅・土地統計調査」
年収400万円は平均と比べて高いか

自分の年収が世の中のどのあたりに位置するのかは、多くの人が気にするところです。ここでは国税庁「民間給与実態統計調査」をもとに、年収400万円の位置づけを確認します。
日本の平均給与との比較
令和6年分の調査によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は478万円でした。4年連続の増加で、過去最高となっています。年収400万円はこの平均を約78万円下回る水準です。
ただし、平均給与は一部の高所得者に引き上げられるため、実感とずれやすい指標でもあります。属性別に見ると、平均給与は男性587万円・女性333万円、正社員545万円・正社員以外206万円と大きな開きがあります。年収400万円は、女性の平均給与333万円を約67万円上回り、正社員以外の平均206万円のほぼ2倍にあたる水準です。
年齢階層別に見ると、位置づけはさらに変わります。20〜24歳の平均給与は277万円、25〜29歳は407万円、30〜34歳は449万円で、ピークは55〜59歳の572万円です。年収400万円は25〜29歳の平均とほぼ同じ水準にあたり、20代であれば平均以上、30代以降は平均を下回ると整理できます。
年収400万円台が占める割合
同じ調査の給与階級別の分布を見ると、400万円超500万円以下の層は全体の15.3%で、300万円超400万円以下の16.1%に次いで2番目に多い階級です。年収400万円ちょうどは前者の階級に含まれるため、最も人数の多い年収帯の上限にあたります。
累計で見ると、年収400万円以下の人が全体の48.1%、500万円以下では63.4%を占めます。つまり年収400万円は、給与所得者全体のちょうど真ん中あたりに位置する水準です。平均給与478万円を下回るからといって、低い水準というわけではありません。
男女で分けると景色は変わります。400万円以下の割合は男性が32.1%であるのに対し、女性は69.0%。女性の場合、年収400万円は上位3割に入る水準です。同じ金額でも、比較対象によって「平均以下」にも「上位」にもなるという点は覚えておくとよいでしょう。
医療・介護職で年収400万円に近い職種と働き方

医療・介護の現場で働く方にとっては、全体平均より「自分の職種の相場」と比べたほうが判断材料になります。ここでは厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」の職種別データ(企業規模計10人以上・男女計)をもとに、きまって支給する現金給与額の12か月分と年間賞与を合計した推計年収で見ていきます。
職種による違い
推計年収が400万円前後に位置するのは、准看護師の約417万円、保育士の約407万円、歯科衛生士の約406万円、栄養士の約394万円などです。介護支援専門員(ケアマネジャー)は約430万円、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士は約444万円と、これをやや上回ります。
一方で、介護職員(医療・福祉施設等)は約376万円、訪問介護従事者は約381万円と400万円に届きません。看護師の約520万円、薬剤師の約599万円と比べると、同じ医療・介護の現場でも職種によって200万円以上の開きがあることが分かります。
見落とされやすいのが事業所規模による差です。歯科衛生士の推計年収は、従業員10〜99人の事業所では約398万円、1,000人以上の事業所では約499万円と約101万円の開きがあります。介護支援専門員でも約22万円、介護職員でも約30万円の差があり、職種を変えなくても規模の大きい法人に移ることで年収が変わる余地は残されています。
常勤と非常勤の違い
同じ調査で短時間労働者のデータを見ると、常勤と非常勤の差がどこにあるのかがはっきりします。1時間あたりの所定内給与額は、リハビリ専門職が2,423円、歯科衛生士が1,970円、看護師が1,946円、介護支援専門員が1,708円、介護職員が1,323円です。
時給だけを見れば決して低くありませんが、非常勤で年収400万円に届かせるには相当な勤務時間が必要になります。時給2,423円のリハビリ専門職でも年間約1,651時間、時給1,323円の介護職員では年間約3,023時間の勤務が必要な計算です。後者はフルタイムを大きく超える水準で、現実的とはいえません。
差が大きいのは賞与です。年間賞与その他特別給与額は、常勤の介護職員が約50万8,000円に対し短時間労働者は約7万2,000円、看護師では約83万5,000円に対し約12万7,000円と、いずれも7分の1前後にとどまります。年収400万円を目指すなら、常勤での勤務が前提になると考えたほうがよいでしょう。
転職活動するなら?
夜勤や当直の有無による違い
夜勤手当や時間外手当がどれだけ効くかは、「きまって支給する現金給与額」と「所定内給与額」の差を見ると分かります。この差額が、時間外・深夜・休日勤務などに対して支払われている金額にあたります。
職種によってこの差額には開きがあり、年額に直すと看護師は約41万円、准看護師は約25万円、介護職員は約19万円、リハビリ専門職は約14万円、歯科衛生士は約13万円です。夜勤のある職場とない職場では、基本給が同じでも年収が数十万円変わるということになります。
年収400万円前後の職種から収入を上げたい場合、夜勤や当直のある職場に移ることは選択肢の一つです。ただし生活リズムへの負担も伴うため、金額だけでなく続けられる働き方かどうかを含めて判断することをおすすめします。
参考:政府統計の総合窓口「賃金構造基本統計調査 令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」
年収400万円から手取りを増やす方法

手取りを増やす道筋は、大きく3つあります。額面の年収そのものを上げる方法、控除制度を使って課税所得を減らす方法、そして手当のつく職場に移る方法です。それぞれ効果の大きさと実現までの時間が違うので、組み合わせて考えるのが現実的です。
年収そのものを上げる
最も効果が大きいのは、年収の額面を上げることです。前述のとおり、この年収帯では額面が50万円上がるごとに手取りが約38万円増えます。控除制度で得られる年間数万円の効果と比べると、桁が一つ違います。
厚生労働省「令和6年雇用動向調査」によると、転職入職者のうち前職と比べて賃金が増加した人は40.5%、そのうち1割以上増加した人は29.4%でした。一方で、減少した人も29.4%(うち1割以上の減少が21.7%)、変わらない人が28.4%となっています。転職すれば必ず上がるわけではなく、上がる人と下がる人がほぼ同じ割合で存在する点は押さえておきたいところです。
年収を上げる方向で転職を検討するなら、求人票の年収額だけでなく、昇給の仕組みや賞与の実績、資格手当の有無まで確認しておくと判断を誤りにくくなります。
控除制度を活用する
額面を変えずに手取りを増やす方法として、所得控除や税額控除の活用があります。年収400万円の水準で効果が出やすいのは、次の3つです。
ふるさと納税で気をつけたいのは、住民税から差し引かれる特例分に「住民税所得割額の2割」という上限がある点です。本記事の条件では所得割額が17万600円なので、特例分の上限は約3万4,000円。この上限を超えて寄附すると、自己負担が2,000円を超えます。
なお、これらはいずれも税金が減るだけで、支出そのものは発生します。iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、生活防衛資金を確保したうえで無理のない金額から始めるのが安全です。
手当がつく職場に移る
前述のとおり、夜勤手当や時間外手当の有無で年収は数十万円変わります。同じ職種・同じ経験年数でも、手当の設計が違えば年収は変わるということです。
医療・介護の現場では、夜勤手当のほかにも資格手当、住宅手当、扶養手当、通勤手当などが設定されています。通勤手当は月15万円まで非課税で、社会保険料の計算には含まれるものの所得税・住民税はかからないため、手取りベースで見ると効率のよい支給項目です。
求人票を比較するときは、基本給・手当・賞与の内訳がどうなっているかまで確認しましょう。年収の総額が同じでも、基本給の割合が高い職場のほうが賞与や退職金に反映されやすく、長く働くほど差がつきます。
3つの方法を効果の大きさで比べる
- 年収を50万円上げれば手取りは約38万円増えます。控除制度の年数万円とは桁が違います
- 昇給の効果が給与明細に出そろうのは翌年6月。焦らず1年単位で確かめましょう
- 求人票は年収の総額でなく、月給・賞与・手当の内訳まで見て比べるのがコツです
参考:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」 / 厚生労働省「iDeCoの概要」 / 国税庁「No.1140 生命保険料控除」 / 総務省「総務省|ふるさと納税のしくみ|税金の控除について」 / 国税庁「No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当」
まとめ
年収400万円の手取りは、独身・扶養なし・40歳未満・協会けんぽ東京都支部という条件でおよそ316万円、月あたり約26万3,000円でした。差し引かれる約84万円のうち4割以上は厚生年金保険料で、税金より社会保険料の負担が重いことが分かります。
年収350万円から400万円に上がった場合、額面は50万円増えても手元に残るのは約38万1,000円。増えた負担の6割近くは社会保険料でした。ただし手取り率の低下はごくわずかで、この年収帯では年収を上げれば手取りも着実に増えます。
注意したいのは時間差です。住民税は前年の所得をもとに翌年6月から反映され、社会保険料の等級は原則9月から見直されます。昇給した年と負担が増える時期がずれるため、給与明細の変化に驚かないよう仕組みを知っておくと安心です。
医療・介護の職種で見ると、年収400万円前後に位置するのは准看護師・保育士・歯科衛生士など。同じ職種でも事業所規模で数十万円、夜勤の有無で年間十数万円から40万円以上の差が生まれます。まずは自分の条件で手取りを把握し、そのうえでどこを動かせるかを考えることが、遠回りに見えて確実な進め方です。



