柔道整復師の副業とは?種類・必要な届出・会社員の注意点を解説
「整骨院で働きながら、もう少し収入を増やしたい」「休日に資格を活かして何かできないだろうか」と考える柔道整復師の方は少なくありません。柔道整復師は業務独占の国家資格であり、自分で施術所を開く権利も認められているため、他の職種に比べて副業の選択肢が広い資格といえます。
ただし、施術を伴う副業では保健所への届出が必要になる場合があり、健康保険を扱えるかどうかでもハードルが大きく変わります。勤務先の就業規則や、公務員に適用される規定の確認も欠かせません。
この記事では、柔道整復師の副業の種類、保険と自費の違い、必要な届出、確定申告、勤務先に関する注意点までを、法令や公的機関の情報をもとに整理します。副業を始める前に押さえておきたい要点がひととおり分かる内容です。
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柔道整復師は副業できる?

結論からお伝えすると、柔道整復師の副業を禁止する法律はありません。
柔道整復師法第15条では、医師である場合を除き、柔道整復師でなければ業として柔道整復を行ってはならないと定められています。つまり柔道整復は業務独占の国家資格であり、有資格者だけが施術を仕事にできます。加えて、自分で施術所を開設できる権利も認められているため、勤務先以外の場所で施術を行う道が最初から用意されている資格です。
一方で、副業ができるかどうかを実際に左右するのは勤務先の就業規則です。法律で禁止されていなくても、就業規則で兼業を禁止したり、事前の許可を求めたりしている整骨院や医療機関は珍しくありません。特に、勤務先と同じ商圏で施術する副業は競業とみなされ、トラブルにつながる場合があります。
また、公立病院や公立の福祉施設などに勤める公務員は事情が異なります。地方公務員法第38条は、職員は任命権者の許可を受けなければ、自ら営利企業を営み、または報酬を得ていかなる事業もしくは事務にも従事してはならないと定めています。
公務員として働く柔道整復師の副業は許可制であり、無許可で報酬を得ることはできません。国家公務員についても、国家公務員法第103条・第104条で同様の制限が置かれています。
なお、求人票に「副業可」と書かれているかどうかも、職場の姿勢を知る手がかりになります。
副業・Wワーク可を明示している柔道整復師の求人は、3,737件中103件(3%)と少数派です。求人票に書かれていなくても認められる場合はあるので、応募前に兼業の可否を確認しておくと確実です。
参考:e-Gov法令検索「柔道整復師法」 / e-Gov法令検索「地方公務員法」 / e-Gov法令検索「国家公務員法」
柔道整復師の副業の種類

柔道整復師の副業は、施術を行うものと、資格や知識を別のかたちで活かすものに大きく分かれます。施術を行う副業は収入につながりやすい反面、届出や保険の扱いを確認する必要があります。
ここでは代表的な5つのタイプを見ていきます。
整骨院・治療院でのアルバイト
最も始めやすいのが、勤務先とは別の整骨院・接骨院でアルバイトとして施術を行う働き方です。すでに身につけている技術をそのまま活かせるうえ、施術所の届出や保険の手続きは雇い主側が済ませているため、自分で行政手続きを行う必要がありません。
医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)では、柔道整復師の求人3,737件のうちパート・アルバイトは695件でした。週1日勤務が可能な求人は65件、時短勤務が可能な求人は141件と、限られた時間で働ける枠も一定数あります。
ただし、雇用契約を結ぶ働き方であるため、勤務先の就業規則で二重就労が認められているかの確認が欠かせません。社会保険や労働時間の通算にも関わるため、事前に本業側へ相談しておくと安心です。
訪問・出張施術(業務委託)
利用者さんの自宅や職場へ出向いて施術を行う働き方です。店舗を借りる必要がなく、空いた時間に稼働できるため、副業との相性がよいタイプといえます。訪問系の事業所と業務委託契約を結んで案件を受ける形が一般的です。
一方で、求人市場としてはまだ小さいのが実情です。業務委託として働きたい場合は、自分で契約先を開拓する必要があると考えておきましょう。
勤務先の種類別 月給中央値
医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)
機能訓練指導員・スポーツトレーナー
柔道整復師の強みが活きるのが、介護・スポーツの現場です。
厚生労働省の通知(老企第25号)では、通所介護などに配置する機能訓練指導員について、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護職員・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師の資格を有する者とすると示されています。柔道整復師は追加の実務経験なしで機能訓練指導員になれる資格であり、デイサービスの非常勤枠は副業先の候補になります。医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)でも、デイケア・デイサービスの求人は759件と、整骨院に次ぐ規模でした。
スポーツトレーナーとして、休日にチームや部活動のサポートに関わる方もいます。専門性を高めたい場合は、日本スポーツ協会の公認アスレティックトレーナー資格が選択肢です。受講料は共通科目22,000円、専門科目55,000円(いずれも税込)で、別途テキスト代がかかります。
資格がなくても現場に関わることは可能ですが、取得しておくと任される範囲が広がります。
自宅サロンなどの小規模開業
自宅の一室やレンタルスペースを使い、小規模に施術を始める方法です。テナントを借りる開業に比べて初期費用を抑えられるため、副業から段階的に事業を育てたい方に向いています。
ただし、場所を定めて施術を行う場合は施術所開設届が必要になり、構造設備の基準も満たさなければなりません。自宅であっても例外ではないため、事前に管轄の保健所へ相談しておきましょう。届出の詳細は後の見出しで解説します。
施術以外で資格を活かす副業
施術を伴わない副業であれば、保健所への届出は不要です。身体の仕組みを説明できる知識そのものが価値になるため、稼働時間を柔軟に調整しやすい点も利点といえます。代表的なものは次のとおりです。
- 養成校やスクールの非常勤講師
- 一般向け・企業向けのセミナー講師
- 医療・健康分野の記事執筆や監修
- SNSやブログでの情報発信
注意したいのが広告の制限です。柔道整復師法第24条では、柔道整復の業務や施術所に関する広告は、柔道整復師である旨と氏名・住所、施術所の名称や電話番号・所在地、施術日や施術時間などに限られると定められています。
同条第2項では、技能・施術方法・経歴に関する内容の広告は認められないとされています。集客目的で「〇〇が治る」「日本一の技術」といった表現を使うと違反になるおそれがあるため、発信内容には配慮が必要です。
ここまでの5タイプを、始めやすさ・収入の安定性・準備の少なさで並べると次のようになります。
副業タイプ別の比較(始めやすさ・収入・準備)
| 副業のタイプ | 始めやすさ | 収入の安定性 | 準備の少なさ |
|---|---|---|---|
| 整骨院・治療院でのアルバイト | ◯ | ◯ | ◯ |
| 訪問・出張施術(自費・業務委託) | △ | △ | ◯ |
| 機能訓練指導員・スポーツトレーナー | ◯ | ◯ | △ |
| 自宅サロンなどの小規模開業 | ✕ | △ | ✕ |
| 講師・執筆など施術以外 | ◯ | ✕ | ◯ |
参考:厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について」 / 日本スポーツ協会「アスレティックトレーナー」 / e-Gov法令検索「柔道整復師法」
保険を扱う副業と自費の副業の違い

柔道整復師の副業を考えるうえで、最初に整理しておきたいのが健康保険(療養費)を扱うかどうかです。ここを混同すると、始められるまでの期間も手続きの重さも大きく変わります。
まず、療養費の対象となる範囲は限られています。厚生労働省は、整骨院や接骨院で健康保険が使えるのは骨折・脱臼・打撲・捻挫(いわゆる肉ばなれを含む)の施術を受けた場合としています。
骨折と脱臼については、緊急の場合を除き、あらかじめ医師の同意を得ることが必要です。慢性的な肩こりや疲労に対する施術は対象外となります。
保険(療養費)を扱う副業 と 自費の副業 の違い
| 観点 | 保険(療養費)を扱う副業 | 自費の副業 |
|---|---|---|
| 対象となる症状 | 骨折・脱臼・打撲・捻挫(いわゆる肉ばなれを含む) ※骨折・脱臼は緊急の場合を除き、あらかじめ医師の同意が必要 | 療養費の対象範囲に縛られず、コンディショニングやセルフケア指導も組み合わせられる |
| 料金の決め方 | 定められた算定基準にしたがう | 自分で設定できる |
| 必要な手続き | 受領委任の申し出と施術管理者の要件を満たすこと | 場所を定めるなら施術所開設届 |
| 始めるまでの期間 | 実務経験と研修の修了が前提のため長い | 準備が整えばすぐに始められる |
| 副業としての現実性 | 手続きが重く、入口には向かない | 始めやすい |
さらに、保険で施術料を受け取るには受領委任の取扱いが必要で、その施術所を管理する「施術管理者」になるための要件が定められています。
厚生局の案内によると、平成30年4月から資格取得後の実務経験と研修の受講が要件に加わり、実務経験の期間は段階的に引き上げられてきました。令和6年4月以降は、実務経験が3年以上(うち保険医療機関で従事した期間は2年まで)必要で、あわせて施術管理者研修の修了証の提出が求められます。
つまり、保険を扱う施術所を自分で持とうとすると、実務経験の積み上げと研修受講、厚生局への申し出という手順を踏むことになります。本業を続けながら並行して進めるには負担が大きく、副業の入口としては現実的とはいえません。
これに対して、保険を使わない自費の施術は料金を自分で設定でき、療養費の対象範囲や医師の同意にも縛られません。訪問での自費施術やリラクゼーション寄りのメニューであれば、稼働時間を自分で決められます。副業として始めるなら、まずは自費・保険外の施術から入るほうが手続きは軽く済みます。
保険(療養費)を扱うには、施術所の受領委任の取扱いが前提になります。勤務先の施術所で保険を扱っているからといって、副業先や自分の施術で自動的に使えるわけではありません。
参考:厚生労働省「柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて」 / 北海道厚生局「柔道整復師の施術に係る療養費の受領委任に関する申し出」
施術を伴う副業で必要な届出

施術を伴う副業では、届出が必要かどうかが「施術を行う場所を定めるか」で決まります。ここは誤解が多いところなので、順番に整理していきます。
場所を設けるなら施術所開設届
柔道整復師法第19条では、施術所を開設した者は、開設後10日以内に、開設の場所や業務に従事する柔道整復師の氏名などを施術所の所在地の都道府県知事に届け出なければならないと定められています。届出事項に変更が生じたとき、施術所を休止・廃止・再開したときも、同じく10日以内の届出が必要です。
実際の窓口は、施術所の所在地を管轄する保健所になります。
「施術所を開設した者は、開設後十日以内に、開設の場所、業務に従事する柔道整復師の氏名その他厚生労働省令で定める事項を施術所の所在地の都道府県知事に届け出なければならない。その届出事項に変更を生じたときも、同様とする。」
「施術所の開設者は、その施術所を休止し、又は廃止したときは、その日から十日以内に、その旨を前項の都道府県知事に届け出なければならない。休止した施術所を再開したときも、同様とする。」
- 期限は「開設後10日以内」。変更・休止・廃止・再開も同じく10日以内
- 届出先は都道府県知事。実際の窓口は施術所の所在地を管轄する保健所
- 自宅の一室で行う場合も、場所を定めて業務を行うなら施術所にあたる
自宅の一室を使う場合でも、施術のための場所を定めて継続的に業務を行うのであれば施術所にあたります。届出だけでなく、柔道整復師法第20条にもとづく構造設備の基準や衛生上の措置も満たす必要があります。
届出をしなかったり虚偽の届出をしたりした場合は罰則の対象となるため、「副業だから」「小規模だから」という理由で省略することはできません。
出張専門で行う場合の届出
インターネット上では「出張専門なら出張施術業務開始届を出す」と説明されていることがありますが、柔道整復師については注意が必要です。
出張のみで業務を行う場合の届出は、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(あはき法)第9条の3に定められたもので、対象はあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師です。
柔道整復師法には、出張のみで業務を行う場合の届出に関する規定はありません。大阪市の案内でも、出張施術業務の届出について「届出者はあん摩マッサージ指圧・はり・きゅう業を専ら出張のみによって行う個人であること」とされ、柔道整復業には出張施術届出の制度がないと明記されています。
したがって、施術所を設けず出張のみで柔道整復の施術を行う場合、法律上の届出義務は生じません。ただし、次の点は押さえておきましょう。
-
あはき資格を併せ持つ場合マッサージやはり・きゅうを出張で行うなら、住所地の保健所へ出張施術業務開始届が必要
-
保険(療養費)の扱い受領委任は施術所を単位とする仕組みのため、出張のみでは自費施術が基本
-
自治体ごとの運用様式や取扱いが異なる場合があるため、開始前に管轄の保健所へ確認する
整体院など保険を扱わない場合の届出
柔道整復の施術を行わず、保険も扱わない整体・リラクゼーションとして開く場合は、あはき法・柔道整復師法にもとづく施術所の届出は不要です。この場合に必要なのは、税務署への開業届(個人事業の開廃業等届出書)のみとなります。
ただし、名称の扱いには注意が必要です。「整骨院」「接骨院」といった名称や、柔道整復の施術を行うことを示す表示を用いる場合は、柔道整復の施術所として届け出たうえで、柔道整復師法の広告制限にも従うことになります。届出をしないまま柔道整復をうたうことはできません。
自分にどの届出が必要かは、次の流れで確認できます。
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参考:e-Gov法令検索「柔道整復師法」 / e-Gov法令検索「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」 / 大阪市「施術所の開設等の手続き」
柔道整復師の副業収入と確定申告

副業で収入を得たら、税金の手続きも自分で行うことになります。ここを後回しにすると、あとから慌てることになりやすい部分です。
国税庁によると、給与を1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合、給与所得・退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円を超える人は確定申告が必要です。給与を2か所以上から受けている場合は、年末調整されなかった給与の収入金額と各種の所得金額との合計額が20万円を超えるときに申告が必要となります。
整骨院でアルバイトをして給与を受け取る形なら、この2か所以上のケースにあたります。
※所得税の申告が不要でも、住民税の申告が必要な場合がある
なお、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告が別途必要になることがあります。判断に迷うときは、居住する市区町村に確認しておくと確実です。
副業を事業として継続的に行うなら、税務署への開業届も検討します。国税庁の案内では、個人事業の開廃業等届出書の提出期限は事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までとされています。「開業から1か月以内」と説明されることがありますが、1か月以内とされているのは給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書です。
開業届を出したうえで青色申告の承認を受けると、青色申告特別控除を受けられます。控除額は要件によって3段階に分かれます。
青色申告特別控除 控除額ごとの要件
控除額
65万円
- 55万円の要件をすべて満たす
- そのうえで「電子帳簿保存を行う」または「e-Taxで申告する」のいずれかを満たす
控除額
55万円
- 不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいる
- 複式簿記で記帳する
- 貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付し、期限までに提出する
控除額
10万円
- 55万円・65万円の要件に該当しない青色申告者が受けられる控除額
副業でどれくらい稼げるかは、施術単価や稼働日数、地域によって大きく変わります。柔道整復師の副業収入をまとめた公的な統計はないため、金額は目安として捉え、経費と税金を差し引いた手残りで判断することをおすすめします。
参考:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」 / 国税庁「No.2090 新たに事業を始めたときの届出など」 / 国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
勤務柔整師が副業する場合の注意点

整骨院や医療機関に勤めながら副業をする場合、本業との関係でつまずきやすいポイントがあります。始めてから気づくと修復が難しいため、事前に確認しておきましょう。
勤務先の就業規則を確認する
まず確認したいのが就業規則です。兼業を禁止しているのか、許可制なのか、届出だけでよいのかは勤務先によって異なります。許可制であれば、副業先の名称・業務内容・稼働時間などを申請したうえで承認を得ることになります。
特に整骨院業界では、競業避止に関する規定が置かれていることがあります。勤務先の近くで施術を行ったり、勤務先の患者さんを副業先へ紹介したりする行為は、規定に触れる可能性が高い行動です。次の点は事前に確認しておくと安心です。
- 兼業の可否と、許可・届出の手続き
- 競業避止の範囲(同一商圏での施術が禁止されていないか)
- 勤務先で知り得た患者さんの情報や技術の取扱い
- 副業の稼働時間・曜日に制限がないか
住民税から副業が知られる場合がある
副業が勤務先に知られる経路として多いのが住民税です。給与から住民税を天引きする特別徴収の仕組みでは、勤務先に住民税額の通知が届きます。副業の所得が加わって税額が増えると、勤務先の給与だけでは説明がつかない金額になり、気づかれることがあります。
これを避ける方法として、確定申告書で徴収方法を選ぶ欄が用意されています。国税庁の案内によると、給与・公的年金等に係る所得以外の所得については、給与から差し引く「特別徴収」か、別に窓口等で納める「自分で納付」かを選択できます。
ただし、副業がアルバイトなど給与所得の場合、この選択はできません。給与に係る住民税は原則として特別徴収とされているためです。整骨院でのアルバイトを副業にする場合は、この方法では対応できないと理解しておきましょう。就業規則で認められているのであれば、隠さずに申告しておくほうが結果的にトラブルは少なくなります。
本業に支障が出ないようにする
施術は身体を使う仕事です。休日をすべて副業に充てると、疲労が抜けないまま本業に臨むことになり、施術の質や安全面に影響が出かねません。
労働時間は本業と副業で通算して考える必要があり、長時間労働は健康リスクにもつながります。副業を始めるときは稼働の上限をあらかじめ決め、月あたりの日数や1日の施術件数に自分でブレーキをかけておくと続けやすくなります。収入だけを基準に判断せず、体力と生活のバランスを見ながら調整していきましょう。
転職活動するなら?
参考:国税庁「【確定申告書等作成コーナー】-住民税の徴収方法の選択(令和7年分申告)」
柔道整復師が副業するメリット・デメリット

副業には収入以外の効果もありますが、負担も同時に増えます。両面を把握したうえで始めるかどうかを決めましょう。
メリット
最も分かりやすいのは収入の増加です。本業の給与に上乗せできるため、生活の余裕や将来の開業資金づくりにつながります。
それ以上に大きいのが、経験の幅が広がる点です。整骨院しか経験がない方が訪問施術やデイサービスに関わると、高齢者さんへの対応や多職種との連携など、勤務先だけでは得にくい経験を積めます。将来の転職先を選ぶときの判断材料にもなります。
さらに、独立を考えている方にとっては小さく試せる練習の場になります。集客・料金設定・会計といった経営の要素を、収入の柱を残したまま体験できるのは副業ならではです。医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)でも、柔道整復師の求人3,737件のうち独立・開業支援ありは594件(16%)と、開業を視野に入れる方を後押しする職場が一定数あります。
デメリット
一方で、時間と体力の負担は避けられません。施術は立ち仕事で身体への負荷が大きく、休みが減ればコンディションの維持が難しくなります。
手続きの手間も増えます。確定申告や帳簿づけ、施術所を設ける場合は届出や設備基準への対応まで、自分で管理する範囲が広がります。保険を扱おうとすれば、実務経験や研修といった要件も関わってきます。
加えて、勤務先との関係が悪化するリスクも見過ごせません。無許可の副業が発覚したり、競業にあたる働き方をしたりすれば、処分の対象になる可能性があります。副業は本業があってこそ成り立つものなので、勤務先との合意を取り付けたうえで進めるのが安全です。
メリットとデメリットは、多くの場合で同じ要因の裏表になっています。
柔道整復師の副業に関するよくある質問

最後に、柔道整復師の副業について質問の多い3点にお答えします。
副業でも開業届は必要?
副業を事業として継続的に行い、その所得が事業所得にあたる場合は、税務署への開業届の提出が必要です。提出期限は、事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までとされています。
ここで混同しやすいのが、税務署へ出す開業届と、保健所へ出す施術所開設届の違いです。目的も提出先も別のものなので、施術所を設ける場合は両方が必要になります。
| 観点 |
開業届
(個人事業の開廃業等届出書)
|
施術所開設届
|
|---|---|---|
| 提出先 | 税務署 | 施術所の所在地を管轄する保健所(都道府県知事あて) |
| 根拠 | 所得税法 | 柔道整復師法第19条 |
| 期限 | 事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで | 開設後10日以内 |
| 必要になる人 | 副業を事業として継続的に行う人 | 場所を定めて柔道整復の施術を行う人 |
※自宅サロンなどを開く場合は、両方の届出が必要
往療(訪問施術)は副業でもできる?
自費であれば、施術所を設けずに訪問して施術を行うことは可能です。柔道整復師法には出張のみで業務を行う場合の届出の規定がないため、届出なしで始められます。
一方、健康保険を使う往療は事情が異なります。療養費の対象は骨折・脱臼・打撲・捻挫に限られ、保険で施術料を受け取るには受領委任の取扱いが前提となります。副業として個人で保険の往療を行うのは現実的ではないため、保険を扱いたい場合は受領委任を取り扱う施術所に所属して働く方法を検討しましょう。
本業に副業がバレることはある?
可能性はあります。よくある経路は住民税の通知、勤務先の関係者やSNS経由での発覚、患者さんからの話などです。住民税については、副業が給与以外の所得であれば確定申告で「自分で納付」を選ぶことで通知を避けられますが、アルバイトなど給与所得の副業では選択できません。
隠しとおすことを前提にすると、発覚したときの影響が大きくなります。就業規則を確認し、許可制であれば正面から申請するほうが、結果的に働きやすい状況をつくれます。
まとめ
柔道整復師の副業を禁止する法律はなく、業務独占の資格と開業権を持つ強みを活かせる働き方です。実際の可否は勤務先の就業規則で決まり、公務員は任命権者の許可が必要になります。
副業の入口としては、整骨院でのアルバイト、訪問・出張での自費施術、機能訓練指導員やスポーツトレーナー、小規模開業、講師や執筆といった選択肢があります。健康保険を扱う場合は施術管理者の要件が関わるため、まずは自費の施術から始めるほうが手続きは軽く済みます。
届出は「場所を定めるかどうか」が分かれ目です。施術所を設けるなら開設後10日以内に施術所開設届が必要で、出張のみの場合は柔道整復には届出の制度がありません。副業所得が20万円を超えれば確定申告が必要になり、事業として行うなら開業届と青色申告も検討しましょう。
まずは就業規則を確認し、どの副業なら無理なく続けられるかを整理するところから始めてみてください。働き方の選択肢を広げたい方は、条件に合う求人を比較しながら検討を進めるのもひとつの方法です。





