薬剤師は学費の元が取れる?学費分を回収できる人とできない人の分かれ目
薬学部への進学を考えるとき、多くの方が最初に立ち止まるのが学費の高さです。私立の場合、6年間で1,000万円を超える金額を前にして、「本当に元が取れるのだろうか」と不安になるのは当然のことといえます。
インターネット上では「薬剤師なら10年で回収できる」という説明をよく見かけます。ただ、その計算には見落とされているコストがいくつもあり、さらに「そもそも6年で薬剤師になれるとは限らない」という前提が抜け落ちています。
この記事では、文部科学省や厚生労働省の公的データをもとに、薬剤師の学費が本当に回収できるのかを数字で検証します。回収できる人とできない人を分けるポイントは、実は入学前の段階でほぼ決まっています。
学費の総額、回収年数の現実的な試算、そして進学前に必ず確認しておきたい数字まで、順を追って解説します。
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私立薬学部の学費は6年間で1,100万〜1,200万円

まず、コストの総額をはっきりさせておきます。文部科学省の調査によると、令和7年度に私立大学の薬学系学部へ入学した学生が初年度に納めた金額は、平均で2,181,184円でした。内訳は授業料が約142万円、入学料が約33万円、施設設備費が約34万円などとなっています。
2年目以降は入学料がかからないため、年間の負担はおよそ186万円です。これを5年分積み上げると約929万円になり、初年度と合わせた6年間の総額はおよそ1,146万円という計算になります。
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初年度約218万円(授業料・入学料・施設設備費・実験実習料など)
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2年目以降約186万円 × 5年 = 約929万円
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6年間の合計約1,146万円
ここに教科書代、白衣や実習用品、実務実習中の交通費、そして6年次の国家試験対策講座の費用が加わります。自宅から通えず下宿する場合は、家賃と生活費で年間100万円前後が別途必要です。
つまり大学に払う1,150万円前後は氷山の一角で、実際に動くお金は1,200万円を大きく超えるケースが珍しくありません。
国公立なら6年間で約350万円という差
同じ薬剤師を目指すのに、進学先が国公立か私立かで負担は大きく変わります。国立大学の授業料と入学料は文部科学省令で標準額が定められており、入学料282,000円、授業料は年間535,800円です。
6年間で計算すると約350万円となり、私立との差はおよそ800万円にのぼります。
| 項目 | 標準額 | 上限120% | 差額 |
|---|---|---|---|
| 入学料 | 282,000円 | 338,400円 | +56,400円 |
| 授業料(年間) | 535,800円 | 642,960円 | +107,160円 |
なお各国立大学は標準額の120%を上限に金額を設定できるため、実際の負担額はこの水準よりやや高くなる大学もあります。それでも私立との差が大きいことに変わりはありません。
私立薬学部の6年間の学費は約1,150万円。国公立は約350万円で、その差は約800万円。この800万円が「元が取れるか」を左右する最大の変数です。
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参考:文部科学省「私立大学等の入学者に係る学生納付金等調査結果について」 / e-Gov法令検索「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」
薬剤師の生涯年収から見た学費の回収年数

学費の総額がわかったところで、次は収入の側を見ていきます。ここでは「薬剤師なら10年で元が取れる」という、よく語られる計算の中身を確認します。
平均年収は約599万円
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査をもとに算出すると、薬剤師の平均年収はおよそ599万円です。これは毎月支払われる給与の12か月分に、年間の賞与を加えた金額として計算されています。男女別では男性が約651万円、女性が約556万円となっています。
薬剤師の給与は、国家資格を前提とした専門職としての水準が反映されています。特に20代のうちから月給が高めに設定されている点が、他の大卒職種との大きな違いです。
日本人の平均より約120万円高い
比較対象として、給与所得者全体の平均を見てみます。国税庁の令和6年分民間給与実態統計調査によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は478万円でした。
薬剤師の599万円と並べると、その差は年間で約121万円です。この「年に120万円多く稼げる」という部分が、高い学費を正当化する根拠として使われてきました。
単純計算なら約10年で回収できる
ここまでの数字を組み合わせると、次のような計算になります。
- 私立薬学部の学費:約1,146万円
- 薬剤師と平均給与の年収差:約121万円
- 1,146万円 ÷ 121万円 = 約9.5年
つまり働き始めておよそ10年で学費分を取り返せる、という結論が導かれます。22歳前後で社会に出る一般的な大卒者と比べても、30代前半には回収が終わる計算です。この数字だけを見れば、薬学部は十分に「元が取れる」進路に見えます。
ただ、この計算にはいくつもの前提が抜け落ちています。次の章では、その抜けを一つずつ埋めていきます。
薬剤師の求人を探す参考:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況」 / 国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」
この計算で見落とされている4つのコスト

先ほどの「10年で回収」という計算は、学費と年収差だけを見たものです。実際には、薬学部を選んだことで発生する別のコストがあります。
ここでは代表的な4つを取り上げます。
6年制のため就職が2年遅い
最も見落とされやすく、そして金額が大きいのがこれです。薬学部は6年制のため、社会に出るのは24歳前後になります。4年制の学部を出た同級生は、その2年間すでに働いて給与を受け取っています。
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査によると、大学卒で20〜24歳の所定内給与額は月25万800円です。単純に24か月分を計算すると約602万円になり、賞与を含めれば2年間でおよそ700万円の収入差が生まれます。
この700万円は、学費のように払うお金ではありません。しかし「本来受け取れたはずのお金を受け取らなかった」という意味で、実質的なコストです。学費1,150万円に足すと、薬学部進学の実質負担は約1,800万円という水準になります。
奨学金には利息がつく
学費を奨学金でまかなう場合、借りた額をそのまま返すわけではありません。日本学生支援機構の第二種奨学金は利息が付くタイプで、基本月額に対する利率は年3.0%を上限として算定されます。
薬学部の6年間で数百万円を借りた場合、返済総額は借入額を上回ります。返済期間も長くなるため、社会に出てからの手取りに継続的に影響します。回収年数を考えるときは、借入額ではなく利息を含めた返済総額で見るのが実態に近い考え方です。
薬剤師の昇給カーブは緩やか
薬剤師は初任給が高い職種です。ただしその分、年齢とともに給与が伸びる幅は小さいという特徴があります。
同じ賃金構造基本統計調査で大学卒の所定内給与額を年齢別に見ると、20〜24歳の25万800円から55〜59歳の52万7,200円まで、およそ2.1倍に伸びています。20代のうちは薬剤師が大きく上回りますが、他業種の大卒者は40代以降も伸び続けます。
薬剤師側のレンジはどうでしょうか。医療キャリアナビ掲載求人データで薬剤師の正社員求人の月給を見ると、中央値は35万円、最も高い求人でも55万円で、上下の幅がそれほど広くありません。
年収差120万円が生涯にわたって続く前提の計算は、実態より楽観的だといえます。
結婚や出産などライフイベントの変化は考慮していない
10年で回収という計算は、フルタイムで働き続けることを前提にしています。しかし実際には、結婚や出産、育児、家族の介護などで働き方を変える時期があります。
時短勤務やパート勤務に切り替えれば、その期間の年収は下がります。薬剤師は資格があるため復職しやすい職種ですが、ブランクの間は回収が進みません。
これら4つを踏まえると、実質コスト約1,800万円を年120万円の差で埋めるには15年前後かかる計算になります。回収が終わるのは30代後半から40代にかけて、というのがより現実に近い見方です。
「10年で回収」を修正すると
- 学費だけで見れば約9.5年
- 2年遅れの就職分(約700万円)を足すと約15年
- 奨学金の利息や働き方の変化があればさらに延びる
参考:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況」 / 日本学生支援機構「第二種奨学金(有利子で借りる)」
入学者の約4割は6年で薬剤師になれない

ここまでは「無事に薬剤師になれた場合」の話でした。しかし薬学部には、進学を考えるうえで避けて通れないもう一つの現実があります。入学した人全員が6年で薬剤師になれるわけではない、という点です。
文部科学省は毎年、全国の薬学部6年制課程について修学状況を調査し、公表しています。2025年度の調査結果から、2019年度に入学した学生の追跡データを見ていきます。
標準修業年限での卒業率は約68%
2019年度に全国の薬学部6年制課程へ入学した学生は10,894人でした。このうち6年間で卒業できたのは7,374人で、卒業率は67.7%です。
言い換えると、約3割の学生は6年で卒業していません。留年して在学を続けているか、途中で薬学部を離れたかのどちらかです。国公立と私立では差があり、国立大学の卒業率が88.4%であるのに対し、私立大学は65.8%にとどまります。
ストレート国家試験合格率は約59%
卒業できても、その先に薬剤師国家試験があります。同じ2019年度入学生のうち、6年で卒業して国家試験にも合格した人は6,402人でした。入学者を分母にすると58.8%です。
つまり入学者の約4割は、6年という予定どおりのスケジュールで薬剤師になれていないことになります。ここでも国公立と私立の差は大きく、国立大学が80.0%であるのに対し、私立大学は56.8%です。
薬学部の退学率は平均約12%
卒業できなかった学生のうち、一定数は薬学部そのものを離れています。文部科学省の調査によると、2019年度入学者の退学等の割合は全国平均で約12%でした。
退学した場合、それまでに払った学費は戻ってきません。2年で退学すれば約400万円、4年で退学すれば約770万円が、資格につながらないまま支出として残ります。退学は「元が取れない」ではなく「全額が回収不能になる」ケースです。
留年した場合も負担は増えます。私立薬学部の2年目以降の学費はおよそ186万円ですから、1年留年するだけで約186万円が追加で必要になります。
私立には退学率が3割を超える大学もある
平均12%という数字の裏側には、大学ごとの大きなばらつきがあります。2025年度の調査では、退学等の割合が3割を超えた私立大学が4校ありました。最も高い大学では39.3%に達しています。
一方で、国立大学の多くは退学率が0%台から数%台です。同じ「薬学部」という名前でも、6年後にどうなっているかは大学によってまったく違います。
ここで注意したいのが、厚生労働省が発表する新卒合格率との違いです。第111回薬剤師国家試験の新卒者合格率は86.25%と高い数字ですが、これは卒業できた学生だけを分母にしたものです。留年した学生や退学した学生は、そもそもこの数字に入っていません。
さらに、卒業試験で国家試験に合格しそうにない学生を卒業させなければ、新卒合格率は高く保たれます。新卒合格率が高い大学ほど安心とは限らないのは、こうした構造があるためです。入学者を分母にした58.8%という数字のほうが、進学を検討する人にとっては実感に近いといえます。
「新卒合格率」と「ストレート合格率」は分母が違います。前者は卒業できた学生だけ、後者は入学した学生全員が分母です。大学案内で示されるのはほとんどが前者なので、進学の判断には後者を使ってください。
お探しの求人は?
参考:文部科学省「薬学部における修学状況等」 / 文部科学省「薬学部の6年制課程における退学状況等」 / 厚生労働省「第111回薬剤師国家試験の合格発表を行いました」
「元が取れるか」は大学選びでほぼ決まる

前の章の数字が示しているのは、「元が取れるか」は薬剤師という職業の問題ではなく、どの大学に入るかの問題だということです。ここからは、進学前にできる具体的な確認方法を見ていきます。
国公立なら6年間で約350万円
回収の話をシンプルにする最も確実な方法は、国公立大学に進むことです。6年間の学費が約350万円であれば、年収差120万円で3年ほどで回収できる計算になります。
加えて、国立大学の薬学部は卒業率88.4%、ストレート国家試験合格率80.0%と、6年で薬剤師になれる確率も高い水準です。学費が安く、資格取得の確率も高いという二重の意味で、期待値が大きく異なります。
もちろん入試の難易度は上がります。ただ、浪人して1年多く勉強することと、私立で800万円多く払うことを並べて比べる価値はあります。
私立はストレート合格率の大学差が大きい
私立薬学部を選ぶ場合、大学名や偏差値ではなくストレート国家試験合格率を見ることをおすすめします。私立全体の平均は56.8%ですが、これはあくまで平均です。大学ごとに見ると、この数字は大きく開いています。
同じ「私立薬学部で1,150万円」でも、6年で薬剤師になれる確率が8割の大学と3割の大学では、支払うお金の意味がまったく違います。前者は学費、後者は賭けに近いといえます。
各大学は修学状況の公開を義務づけられている
こうした数字は、探せば必ず見つかります。学校教育法施行規則第172条の2により、大学は入学者数・卒業者数・進路の状況などを公表することが義務づけられているためです。
薬学部の場合、6年制課程の修学状況として、進級率・卒業率・国家試験合格率・退学者数がまとめて公開されています。
確認の手順はシンプルです。
- 文部科学省の「薬学部における修学状況等」のページを開く
- 最新年度の調査結果から、志望校の卒業率・国家試験合格率を確認する
- 大学公式サイトの「情報公開」「修学状況」のページで詳細を見る
- 複数年度を並べて、数字が安定しているかを確認する
1年だけの数字で判断しないことが大切です。たまたま良かった年、悪かった年があるため、3年分ほど並べて傾向を見ると実態がつかめます。
オープンキャンパスで説明されるのは新卒合格率であることが多いので、自分で入学者ベースの数字を確認する意味は大きいといえます。
薬剤師の求人を探す参考:文部科学省「薬学部における修学状況等」 / e-Gov法令検索「学校教育法施行規則」
学費の負担を抑える4つの制度

私立薬学部を選ぶ場合でも、負担を軽くする方法はあります。ここでは代表的な4つの制度を簡潔に整理します。
| 制度 | 返済 | 対象・条件 | 金額・利率 |
|---|---|---|---|
| 特待生・スカラシップ | 不要 | 入試の成績上位者。継続条件は大学ごと | 全額免除から初年度のみ免除まで幅がある |
| 高等教育の修学支援新制度 | 不要 | 所得等の要件を満たす世帯。子ども3人以上の多子世帯は2025年度から所得制限なし | 私立大学は授業料が年70万円、入学金が26万円を上限に減免 |
| 日本学生支援機構 第二種奨学金 | 必要 | 第一種より基準がゆるやかで利用しやすい | 利率は年3.0%を上限として算定 |
| 日本政策金融公庫 教育一般貸付 | 必要 | 世帯年収に上限あり。成績基準はなく奨学金と併用できる | 学生1人あたり350万円(一定要件で450万円)、固定金利年4.05% |
特待生・スカラシップ制度
多くの私立薬学部が、入試の成績上位者を対象に授業料を減額する制度を設けています。全額免除から半額免除、初年度のみ免除まで大学によって内容はさまざまです。
入学後の成績によって継続の可否が判定される場合が多いため、何年間適用されるのか、継続条件は何かを募集要項で確認しておくと安心です。
日本学生支援機構の奨学金
日本学生支援機構の奨学金には、利息が付かない第一種と、利息が付く第二種があります。第一種は成績と家計の基準が厳しく、採用されなかった場合は第二種を利用することになります。
前の章で触れたとおり、第二種は年3.0%を上限とする利率で利息が計算されます。借入額ではなく、利息を含めた返済総額で考えることが重要です。6年間借り続ければ元金も大きくなるため、必要額だけを借りる姿勢が結果的に回収年数を縮めます。
高等教育の修学支援新制度
国が実施している授業料等減免と給付型奨学金の制度です。返済不要である点が奨学金との大きな違いです。
私立大学の場合、授業料は年間70万円、入学金は26万円を上限に減免されます。2025年度からは、子ども3人以上の多子世帯について所得制限なしで支援を受けられるようになりました。世帯の状況によっては負担が大きく変わるため、まず対象になるかどうかを確認しておくことをおすすめします。
教育ローン
日本政策金融公庫の教育一般貸付、いわゆる国の教育ローンも選択肢になります。融資限度額は学生1人あたり350万円で、一定の要件に該当する場合は450万円まで借りられます。金利は固定で、2026年7月時点では年4.05%です。
奨学金との併用ができ、成績基準がない点が特徴です。ただし世帯年収の上限が設けられており、金利も奨学金より高くなります。奨学金で足りない分を補う位置づけで使うのが現実的といえます。
制度を使うときの順番
- 返済不要の特待生制度と修学支援新制度から先に検討する
- 足りない分を第二種奨学金で補い、借入額は必要最小限にとどめる
- それでも足りない場合に教育ローンを使う
- 申込時期は入試より前に締め切られるものもあるため、早めに募集要項を確認する
転職活動するなら?
参考:日本学生支援機構「第二種奨学金(有利子で借りる)」 / 文部科学省「高等教育の修学支援新制度」 / 日本政策金融公庫「教育一般貸付(国の教育ローン)」
薬剤師になってから回収を早める方法

無事に薬剤師になれたあとは、回収のスピードを自分で上げていくことができます。ここまで見てきたとおり、薬剤師の給与は勤続年数よりもどこで働くかで決まる部分が大きい職種です。
初任給の高い業態を選ぶ
同じ薬剤師でも、働く場所によって最初の給与から差があります。医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)で正社員求人の月給を業態別に見ると、次のような傾向が出ています。
-
調剤薬局月給の中央値は約36万5,000円
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病院月給の中央値は約30万500円
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全体月給の中央値は約35万円
調剤薬局と病院では、月あたり6万円以上、年間では70万円以上の差になります。病院は臨床経験を積める環境として人気がありますが、学費の回収を優先するなら初任給の水準は無視できない要素です。
- 賞与・ボーナスありの求人は66%
- 退職金制度ありは57%
- 住宅補助ありは23%。家賃負担が減れば回収は早まります
管理薬剤師・エリアマネージャーを目指す
薬局や店舗の管理者となる管理薬剤師は、手当が付く分だけ収入が上がります。医薬品医療機器等法により、薬局の開設者は薬局ごとに薬剤師を管理者として置くことが求められており、管理薬剤師は原則としてその薬局の業務に専念する立場です。
複数店舗を統括するエリアマネージャーになれば、さらに収入は上がります。いずれも年数を待つのではなく、役割を取りにいくことで収入が変わるポジションです。
製薬企業に進む
薬剤師の働く場所は薬局や病院だけではありません。厚生労働省の令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計によると、届出薬剤師329,045人のうち薬局が60.0%、病院・診療所などの医療施設が19.2%で、残るおよそ2割は企業・大学・行政機関などで働いています。
製薬企業では、研究開発、品質管理、薬事、学術といった職種があります。新卒採用が中心で中途採用の枠は限られますが、給与水準や賞与の面で調剤業務とは異なるキャリアになります。
昇給を待たずに業態を変える
ここまでの3つに共通するのは、薬剤師の収入が変わるタイミングは勤続年数を重ねたときではなく、働く場所や役割を変えたときだということです。
昇給カーブが緩やかである以上、同じ職場で年数を重ねるだけでは回収のスピードは上がりません。調剤薬局から企業へ、病院から調剤薬局へ、あるいは管理職へ。数年ごとに自分の市場価値を確認し、条件が合う場所へ移ることが、結果として回収年数を短くします。
参考:厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」 / e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」
まとめ
薬剤師の学費が元を取れるかどうかは、「薬剤師になれば取れる」という単純な話ではありませんでした。
私立薬学部の6年間の学費は約1,146万円。薬剤師の平均年収599万円と給与所得者平均478万円の差は約121万円で、学費だけを見れば10年ほどで回収できます。しかし6年制ゆえの2年遅れの就職で約700万円、さらに奨学金の利息や緩やかな昇給カーブを加味すると、実質的な回収には15年前後かかるのが現実的な見通しです。
そして最大の分かれ目は、6年で薬剤師になれるかどうかでした。2019年度の入学者のうち、6年で卒業して国家試験に合格したのは58.8%。退学すれば学費は全額が回収不能になります。この確率は大学によって大きく違い、志望校を決める前に入学者ベースの数字を確認できるかどうかが、回収できる人とできない人を分けています。
進学前であれば、文部科学省と各大学が公開している修学状況を確認することから始めてみてください。すでに薬剤師として働いている方は、勤続年数を待つよりも業態や役割を見直すほうが、回収のスピードは上がります。どちらの立場でも、数字を確認したうえで動くことが最短の近道といえます。





