ドラッグストア薬剤師を辞めたいときは?判断基準やタイミング・転職で活かせる経験
ドラッグストアで働く薬剤師の方から、「調剤以外の業務に追われて薬剤師らしい仕事ができない」「シフトが不規則で体力的にきつい」といった声が聞かれます。辞めたいという気持ちが強くなると、すぐにでも次を探したくなるものです。
ただし、辞めることがいつも最善の解決策とは限りません。ドラッグストアは組織の規模が大きく、職種の幅も広いため、会社を変えずに解決できる悩みもあるからです。
この記事では、ドラッグストアの薬剤師が辞めたいと感じる理由を整理したうえで、辞める前に社内で試せること、辞めたほうがよいと判断できるサイン、辞めるタイミングの考え方を順に解説します。
転職先の選択肢や年収が下がる可能性への備え、ドラッグストアの経験を次に活かす方法も紹介しますので、自分で判断するための材料としてお役立てください。
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ドラッグストアの薬剤師が辞めたいと感じる理由

ドラッグストアの薬剤師が抱える悩みは、調剤薬局や病院とは性質が異なります。調剤業務と店舗運営の両方に関わる働き方が、負担として感じられる場面が多いためです。
厚生労働省の令和2年転職者実態調査によると、自己都合で前の勤め先を辞めた人の理由は「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」が28.2%で最も多く、「満足のいく仕事内容でなかったから」が26.0%、「賃金が低かったから」が23.8%と続きます。
薬剤師に限った調査ではありませんが、働き方と仕事内容への不満が離職理由の上位を占めている点は共通しています。
ここでは、ドラッグストアの薬剤師が辞めたいと感じるきっかけになりやすい理由を7つに分けて整理します。自分の不満がどれに当てはまるのかを確かめながら読み進めてみてください。
調剤以外の業務が多い
ドラッグストアの薬剤師は、調剤室にこもって処方せんを受けるだけの働き方にはなりません。レジ対応、品出し、発注、売り場づくり、クレーム対応など、店舗を回すための業務を分担するのが一般的です。
調剤併設店であっても、処方せんが集中しない時間帯は売り場に出るよう求められる場合があります。薬剤師として採用されたつもりが、実際には販売スタッフとしての業務時間のほうが長いと感じ、そのギャップに疲れてしまう方もいます。
一方で、こうした業務は店舗全体の売上や在庫の動きを理解するうえで役立つ側面もあります。負担に感じるかどうかは、自分が薬剤師としてどの業務に時間を使いたいかによって変わります。
調剤や服薬指導に時間を使いたいと考えている場合は、ミスマッチが解消されにくい部分だといえます。
休日やシフトが不規則
ドラッグストアは年中無休や長時間営業の店舗が多く、土日祝日も通常どおり営業します。そのため薬剤師のシフトも交代制になり、休みが週によって変わることが珍しくありません。
家族や友人と休みが合わない、予定を先に決められないといった悩みは、勤務を続けるほど積み重なっていきます。早番と遅番が交互に入る勤務が続くと、生活リズムが安定しにくい点も負担になります。
なお、シフト制であっても労働時間のルールは労働基準法で定められています。法定労働時間は原則として1日8時間・1週40時間で、これを超えて働かせるには36協定の締結と届出が必要です。時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間と決まっています。
自分のシフトがこの範囲に収まっているかは、勤務実態を振り返る際の確認材料になります。
1人で勤務する時間帯がある
ドラッグストアでは、店舗にいる薬剤師が自分1人という時間帯が生じることがあります。いわゆる「1人薬剤師」の状態です。
医薬品のリスク区分のうち、要指導医薬品と第一類医薬品を販売できるのは薬剤師だけと定められています。第二類医薬品と第三類医薬品は登録販売者も販売できますが、リスクの高い区分は薬剤師が対応しなければなりません。
そのため、自分が休憩に入る時間や退勤したあとの時間帯には、店舗で扱える医薬品の範囲が変わります。
・調剤と接客が重なり、判断を相談できる相手が店内にいない
・休憩を取りにくく、離席のタイミングを自分で調整する必要がある
・急な体調不良でも代わりの薬剤師をすぐに確保しにくい
疑義照会の判断や、購入者への説明で迷う場面でも、その場で相談できる薬剤師がいないという緊張感が続きます。この負担は個人の努力で減らせる部分が限られるため、辞めたい理由として挙がりやすい項目です。
販売目標が負担になる
ドラッグストアは小売業でもあるため、店舗単位や個人単位で販売目標が設定される場合があります。特定のカテゴリーの売上や、プライベートブランド商品の販売点数などが対象になることがあります。
薬剤師として適切な情報提供をしたいという気持ちと、目標を達成しなければならないという立場が衝突すると、働くこと自体にストレスを感じやすくなります。購入者にとって必要のない商品まで勧めているのではないか、という葛藤を抱える方もいます。
目標の設定方法や評価への反映度合いは企業や店舗によって差があります。数字への意識が強い職場かどうかは、日々の朝礼やミーティングの内容から判断できる部分です。
体力的な負担が大きい
ドラッグストアの業務は、立ち仕事が中心です。加えて、飲料やペットフード、紙おむつといった重量のある商品の品出しも発生します。
営業時間が長い店舗では拘束時間も長くなりやすく、遅番のあとに早番が入るようなシフトが続くと、疲労が抜けにくくなります。年齢を重ねるにつれて負担が増したと感じる方も多く、長く続けられるかという不安が辞めたい気持ちにつながるケースがあります。
体力的な負担は本人の努力で解消しにくく、我慢を重ねると心身の不調につながります。無理が続いていると感じる場合は、後述する「辞めたほうがよいと判断できるサイン」も合わせて確認してみてください。
異動や応援が多い
ドラッグストアはチェーン展開している企業が多く、複数の店舗を持つ会社では定期的な異動や、人員が足りない店舗への応援勤務が発生します。
経済産業省の商業動態統計によると、2024年のドラッグストアの販売額は前年比6.9%の増加、店舗数は前年比3.3%の増加となりました。出店が続く業界では新店への配置や店舗間の人員調整も起こりやすく、勤務地が数年ごとに変わる可能性があります。
なお、2024年4月から労働条件明示のルールが変わり、労働契約の締結時などに「就業の場所」と「従事すべき業務」について、雇入れ直後の内容だけでなく変更の範囲まで明示することが必要になりました。今の会社でどこまで異動の可能性があるのかは、労働条件通知書や就業規則で確認できます。
薬剤師としての専門性が伸びにくい
ドラッグストアでは、扱う処方せんが特定の診療科に偏る店舗もあれば、そもそも調剤を併設していない店舗もあります。調剤に触れる時間が短いと、経験できる薬剤の幅が広がりにくくなります。
数年後に病院や調剤薬局への転職を考えたとき、調剤経験の少なさが不安材料になることがあります。認定薬剤師などの資格取得を目指す場合も、研修や学会参加の時間を確保しづらい環境だと計画が進みません。
- 処方せん枚数が少なく、調剤の実務経験を積みにくい
- 対応する診療科が偏り、扱う薬剤の幅が広がりにくい
- 研修や勉強会に参加する時間を確保しづらい
- 在宅医療や医療機関との連携に関わる機会が少ない
一方で、OTC医薬品の知識やセルフメディケーションの相談対応は、ドラッグストアだからこそ深められる専門性です。何を伸ばしたいのかを整理すると、今の職場で足りないものが見えやすくなります。
参考:厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」 / 厚生労働省「医薬品の販売制度」 / 厚生労働省「しっかり学ぼう!働くときの基礎知識」 / 経済産業省「商業動態統計」 / 厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」
辞める前に社内で試せること

辞めたい理由がはっきりしたら、次に確認したいのが「その悩みは今の会社の中で解決できるか」という点です。転職には年収や勤務条件が変わるリスクが伴うため、社内で解決できる余地があるなら先に検討する価値があります。
ドラッグストアを運営する企業は組織の規模が大きく、調剤部門、店舗、本部と職種の幅があります。同じ会社に在籍したまま働き方を変えられる可能性は、規模の小さい薬局よりも高いといえます。
ここでは、退職を決める前に会社に相談できる4つの選択肢を紹介します。いずれも希望が必ず通るわけではありませんが、相談した記録を残しておくことは、後で辞めると決めたときの判断材料にもなります。
調剤部門への配属を相談する
調剤に関わる時間を増やしたい場合は、調剤併設店への異動や、調剤専門の店舗への配属を希望する方法があります。企業によっては調剤薬局部門を別ブランドで運営していることもあり、社内公募の対象になる場合があります。
相談する際は、「調剤がしたい」という希望だけでなく、これまでの処方せん応需の経験や取得している認定資格を具体的に伝えると検討されやすくなります。かかりつけ薬剤師として指導した実績や、在宅対応に関わった経験があれば整理しておきましょう。
厚生労働省の令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計によると、薬剤師の届出数は329,045人で、そのうち薬局の従事者が60.0%を占めています。調剤に関わる職域は薬剤師の働く場として最も大きく、社内でも移れる先が用意されている可能性があります。
勤務する店舗の変更を希望する
悩みの中心が人間関係や店舗特有の運営方法にある場合は、店舗の変更だけで状況が変わることがあります。同じ会社でも、店長の方針や薬剤師の人数、客層によって働きやすさは大きく異なるためです。
通勤時間の負担が大きい場合も、自宅に近い店舗への異動で解決できる場合があります。異動希望は自己申告制度や定期面談の場で伝えるのが一般的です。
ただし、店舗を変えても会社全体の給与水準や評価制度、販売目標の考え方は変わりません。悩みが会社の仕組みに由来するものかどうかを切り分けてから相談すると、判断を誤りにくくなります。
本部の職種に応募する
一定の規模がある企業では、本部に医薬品の仕入れを担当するバイヤー、店舗の品質管理や法令対応を担う部門、教育研修を担当する部門などが置かれています。薬剤師の資格や店舗での経験が評価される職種もあります。
厚生労働省の統計では、薬剤師の届出数のうち医薬品関係企業の従事者が34,184人となっています。店舗以外にも薬剤師が働く場があることを示す数字です。
本部職は募集人数が限られ、社内公募のタイミングも不定期です。関心がある場合は、募集が出たときにすぐ動けるよう、店舗で担当した業務改善や新人教育の実績をまとめておくとよいでしょう。
勤務形態を変える
体力的な負担や生活リズムの不規則さが理由なら、雇用形態や勤務時間の見直しで続けられる場合があります。正社員からパートへの切り替え、時短勤務の利用、夜勤帯や遅番の免除といった調整が考えられます。
収入は下がりますが、退職して転職活動をするよりも生活への影響を小さく抑えられます。育児や介護と両立する必要がある場合は、就業規則に定められた制度を確認してみてください。
社内で相談する前に整理しておきたいこと
- 辞めたい理由のうち、店舗を変えれば解決するものはどれか
- 会社の制度や評価の仕組みに由来する不満はどれか
- 希望が通らなかった場合、どこまで待てるか
今のあなたの状況は?
参考:厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
辞めたほうがよいと判断できるサイン

社内での相談を試しても状況が変わらない場合や、そもそも相談できる状態ではない場合があります。無理を続けると、転職活動に必要な体力や判断力まで失われてしまいます。
ここでは、退職に向けて動き出したほうがよいと考えられるサインを3つ紹介します。当てはまるものがあるなら、まずは体調を守ることを優先してください。
心身の不調が続いている
眠れない日が続く、休日でも気分が晴れない、出勤前に体調を崩すといった状態が2週間以上続いている場合は、勤務環境が負担になっている可能性があります。
セルフチェック
※複数当てはまる場合は、我慢せず相談窓口の利用を検討してください
厚生労働省は働く人向けのメンタルヘルス情報サイト「こころの耳」を運営しており、電話やSNSで相談できる窓口を案内しています。我慢して働き続けるより、まず専門の窓口に相談することが優先です。
体調を崩したまま転職活動を始めると、条件を十分に比較しないまま決めてしまいがちです。休職制度が利用できるかどうかも含めて、選択肢を確認しておきましょう。
相談しても体制が変わらない
人員の不足やハラスメントを上司に伝えても改善されない、相談窓口が機能していないという状態が続く場合、社内での解決は難しいと判断できます。
厚生労働省が公表した令和6年度個別労働紛争解決制度の施行状況によると、全国の総合労働相談件数は1,201,881件で、5年連続で120万件を超えました。このうち民事上の個別労働紛争の相談内容では、「いじめ・嫌がらせ」が54,987件で13年連続の最多となっています。
職場の問題を一人で抱えている方が多い実態がうかがえます。
社外の相談先としては、全国379か所の総合労働相談コーナーや、厚生労働省の「あかるい職場応援団」で案内されている窓口があります。会社に相談した日付と内容を記録に残しておくと、外部に相談する際の説明がしやすくなります。
目指すキャリアと業務が離れている
数年後にどのような薬剤師になりたいかを考えたとき、今の業務がその方向とつながっていないと感じるなら、早めに動くほうが選択肢は広がります。
在宅医療に関わりたい、がん専門薬剤師を目指したい、企業で医薬品の開発に携わりたいなど、目標によって必要な経験は変わります。今の職場で必要な経験を積めないのであれば、時間が経つほど転職の難度は上がります。
薬剤師の求人を探す参考:厚生労働省「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」 / 厚生労働省「「令和6年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します」 / あかるい職場応援団「相談窓口のご案内」
辞めるタイミングの考え方

辞めると決めたあとに悩みやすいのが、いつ切り出すかという点です。退職の意思を伝える時期によって、受け取れる金銭や引き継ぎの負担が変わります。
法律上は、期間の定めのない雇用契約であれば退職の申入れから2週間が経過すれば契約は終了します。ただし、実際には就業規則で1〜2か月前の申出を求めている会社が多く、円満に辞めるならそちらに合わせるのが現実的です。
退職の申出から退職日までの流れ
ここでは、タイミングを決めるときに確認したい3つの視点を紹介します。
賞与の支給時期
賞与は法律で支給が義務づけられているものではなく、支給の条件は就業規則や賃金規程で定められます。「支給日に在籍していること」を条件にしている会社では、支給日より前に退職すると受け取れません。
支給日の直前に退職を申し出ること自体に問題はありませんが、支給日在籍要件の有無は事前に規程で確認しておきましょう。査定期間の途中で退職する場合、減額される規定が置かれていることもあります。
賞与を待つために転職時期を遅らせるかどうかは、次の職場の入職時期との兼ね合いで判断します。求人の募集時期は職場によって偏りがあるため、賞与を優先した結果、希望の求人を逃す場合もあります。
店舗の人員体制
薬剤師の人数に余裕がない時期に退職すると、引き継ぎが長引いたり、退職日の調整を求められたりすることがあります。新しい薬剤師が入職する時期や、繁忙期を避けられるかを確認しておくと進めやすくなります。
ただし、人員不足を理由に退職を認めないという対応は、法律上の根拠がありません。人員の補充は会社の責任で行うものです。体調に問題が出ている場合は、店舗の事情より自分の状態を優先して構いません。
引き継ぎに必要な期間
引き継ぎには、調剤業務の手順だけでなく、店舗運営に関わる情報も含まれます。担当していた範囲が広いほど時間がかかります。
- 調剤の手順や薬歴の記載ルールなど、日常業務の進め方
- 医薬品の在庫状況と発注のサイクル
- 卸や近隣の医療機関とのやり取りの経緯
- 登録販売者やパート従業員のシフトと担当範囲
あわせて確認したいのが、残っている年次有給休暇です。厚生労働省の令和6年就労条件総合調査によると、労働者1人あたりの年次有給休暇の平均付与日数は16.9日、取得日数は11.0日で、取得率は65.3%と昭和59年以降で最も高くなっています。
取得率は上がっているものの、付与された日数を使い切れていない人は依然として多い状況です。
退職日を決めるときは、引き継ぎ期間と有給休暇の消化日数を合わせて逆算すると計画が立てやすくなります。
転職活動するなら?
参考:e-Gov法令検索「民法」 / 厚生労働省「令和6年就労条件総合調査 結果の概況」
次の転職先の選択肢

ドラッグストアを離れる場合、次の勤務先にはいくつかの方向があります。大切なのは、それぞれの職場が「自分のどの悩みを解決してくれるのか」を確かめることです。
厚生労働省の令和6年医師・歯科医師・薬剤師統計によると、薬剤師の届出数329,045人のうち、薬局の従事者が60.0%、病院・診療所などの医療施設が19.2%を占めています。残りが医薬品関係企業や大学、衛生行政機関などです。
※その他は医薬品関係企業・大学・衛生行政機関など
ここでは4つの選択肢について、どのような悩みを持つ方に合うのかとあわせて整理します。
調剤薬局
調剤を中心に働きたい、売り場業務や販売目標から離れたいという方に向いています。処方せんの応需が業務の中心になるため、服薬指導や薬歴管理に使える時間が増えます。
令和5年度衛生行政報告例によると、令和5年度末時点の薬局数は62,828施設です。全国に数多くあるため、通勤圏内で複数の求人を比較しやすい点も特徴です。
一方で、店舗の規模が小さいと薬剤師の人数も限られ、休みの調整がしづらい場合があります。門前の医療機関が1か所に限られる薬局では、扱う診療科が偏る点にも注意が必要です。
病院
チーム医療に関わりたい、入院患者さんの薬物療法に携わりたいという方に向いています。注射薬の調製や病棟業務、他職種との連携など、ドラッグストアでは経験しにくい業務が中心になります。
専門・認定資格の取得を支援する体制が整っている施設もあり、専門性を高めたい場合の選択肢になります。ただし、当直や夜勤が発生する施設もあり、生活リズムの不規則さを理由に辞める場合は同じ悩みを抱える可能性があります。
給与水準はドラッグストアより下がる場合が多いため、条件面の確認は欠かせません。
他のドラッグストア
OTC医薬品の相談対応や売り場づくりにやりがいを感じている場合は、同じ業態で環境を変える方法もあります。これまでの経験をそのまま活かせるため、入職後の立ち上がりが早い点が利点です。
同じ業態でも、条件は企業によって大きく異なります。辞めたい理由になっている条件が、次の会社では違うのかを求人票と面接で確認することが欠かせません。
- 調剤を併設している店舗の比率と、配属予定店の処方せん枚数
- 1店舗あたりの薬剤師の人数と、1人になる時間帯の有無
- 販売目標の設定方法と、評価にどこまで反映されるか
- 異動の対象になる範囲と、応援勤務の頻度
同じ業態への転職は「何も変わらなかった」という結果になりやすい選択でもあります。応募前に、店舗見学ができるかを尋ねてみるとよいでしょう。
製薬企業や本部の職種
店舗に立つ働き方そのものを見直したい場合は、製薬企業や小売企業の本部という選択肢があります。医薬品の学術担当、品質管理、薬事、教育研修など、薬剤師の知識が活きる職種があります。
土日休みや在宅勤務が可能な職種もあり、生活リズムを整えたい方には魅力があります。ただし募集数は限られ、中途採用の枠は狭いのが実情です。応募の際は、店舗で担当した業務改善や後輩育成の実績を具体的に説明できるよう準備しておきましょう。
転職先の比較
| 比較の軸 | 調剤薬局 | 病院 | 他のドラッグストア | 製薬企業・本部職 |
|---|---|---|---|---|
| 給与水準 | 店舗の規模によって差が出やすい | ドラッグストアより下がる場合が多い | 同業態のため大きく変わりにくい | 職種による差が大きい |
| 専門性の方向 | 服薬指導・薬歴管理が中心 | 注射薬調製・病棟業務・チーム医療 | OTC相談・売り場づくりを継続 | 学術・品質管理・薬事・教育研修 |
| 勤務の生活リズム | 薬剤師の人数が少ないと休みが調整しづらい | 当直・夜勤がある施設も | シフト制であることは変わらない場合が多い | 土日休み・在宅勤務が可能な職種もある |
| 向いている人 | 調剤中心に働きたい人・販売目標から離れたい人 | 入院患者さんの薬物療法に関わりたい人 | 同じ経験を活かして環境だけ変えたい人 | 店舗に立つ働き方そのものを見直したい人 |
参考:厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」 / 厚生労働省「令和5年度衛生行政報告例の概況」
年収が下がる可能性への備え

ドラッグストアは薬剤師の勤務先の中では給与水準が高い傾向にあります。そのため転職によって収入が下がる場合があり、あらかじめ備えておく必要があります。
厚生労働省の令和2年転職者実態調査によると、転職後の賃金が前職と比べて増加した人は38.9%、減少した人は37.0%、変わらない人は23.7%でした。およそ4割の人が転職で賃金の減少を経験している計算になります。
薬剤師に限った調査ではありませんが、収入が上がる前提で計画を立てるのは避けたほうがよいといえます。
ここでは、収入が変わる可能性に備えるための3つの視点を紹介します。
額面ではなく手取りで比較する
求人票に記載されている月給や年収は額面の金額です。実際に使えるのは、そこから社会保険料と税金を差し引いた手取りの金額になります。
厚生年金保険の保険料率は18.3%で、会社と従業員が半分ずつ負担するため本人負担は9.15%です。健康保険料は加入する健康保険と都道府県によって率が異なり、これに雇用保険料、所得税、住民税が加わります。手取りは額面のおおむね75〜80%が目安です。
額面が同じでも、手当の構成や社会保険の加入先が違えば手取りは変わります。転職先を比較するときは、額面の年収だけでなく、月々の手取り額まで試算して並べてみてください。
手当の内訳を確認する
ドラッグストアの給与には、店舗手当、地域手当、時間帯手当、役職手当などが含まれている場合があります。これらは勤務地や役割が変われば支給されなくなるものです。
基本給がいくらで、変動する手当がいくらなのかを分けて把握しておくと、転職先との比較が正確になります。賞与は基本給を基準に計算されることが多いため、基本給が低く手当が厚い給与体系は、賞与や退職金で差が出やすい点にも注意が必要です。
- 基本給と各種手当の金額を分けて書き出したか
- 変動手当が支給されなくなる条件を確認したか
- 賞与の算定基準(基本給の何か月分か)を確認したか
- 退職金制度の有無と支給条件を確認したか
- 残業代の計算方法と固定残業代の有無を確認したか
生活費を見直す時期を決める
収入が下がる可能性があるなら、支出を見直す時期をあらかじめ決めておくと生活への影響を抑えられます。転職してから慌てて調整するより、退職の意思を伝えた時点で着手するほうが余裕を持てます。
住居費や保険料など固定費の見直しは効果が続きます。また、住民税は前年の所得をもとに計算されるため、収入が下がった年も前年の水準で課税される点に注意が必要です。転職の直後に負担が重く感じられる原因になりやすい部分です。
退職から次の入職まで期間が空く場合は、その間の健康保険と年金の切り替え、住民税の納付方法についても確認しておきましょう。
お探しの求人は?
参考:厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」 / 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」 / 全国健康保険協会「令和6年度保険料額表(令和6年3月分から)」
ドラッグストアの経験を次に活かす

ドラッグストアでの勤務は、調剤薬局や病院では積みにくい経験を含んでいます。転職の場面では、その経験を言葉にして伝えられるかどうかが評価を左右します。
辞めたい理由になっていた業務が、次の職場では強みとして扱われることもあります。ここでは、選考で伝えやすい3つの経験を整理します。
OTC医薬品と接客の経験
要指導医薬品と第一類医薬品を販売できるのは薬剤師だけです。症状を聞き取り、受診をすすめるべきか判断し、購入者に合った商品を選ぶ経験は、処方せん応需が中心の職場では積みにくいものです。
近年は、薬局に対して地域の健康相談に応じる役割が求められています。厚生労働省は、地域連携薬局や専門医療機関連携薬局といった認定薬局の制度を設け、薬局の機能に応じた体制の整備を進めています。セルフメディケーションの相談に対応できる薬剤師は、こうした機能を持つ薬局で評価されやすいといえます。
面接では「1日に何件程度の相談に対応していたか」「受診勧奨につなげた事例」など、具体的な場面を挙げて説明すると伝わりやすくなります。
在庫や売上の管理経験
発注や在庫管理、期限切れの防止、棚割りの調整といった業務は、店舗の経営に直結する仕事です。医薬品の在庫は資産であり、適正に管理する視点は調剤薬局でも必要とされます。
不動在庫を減らした、廃棄額を下げた、発注の頻度を見直したといった取り組みは、数字とあわせて説明できると説得力が増します。管理薬剤師や薬局長を目指す場合は、薬の知識だけでなく数字を扱える点が評価の対象になります。
店舗運営やスタッフ育成の経験
ドラッグストアでは、登録販売者やパート従業員を含む多様なスタッフと働きます。シフトの調整、新人への指導、他部門との調整といった経験は、規模の小さい薬局では得にくいものです。
医薬品の販売区分に応じて誰が何を販売できるかを踏まえ、店舗の体制を整えてきた経験は、法令遵守の観点からも評価されます。教育担当や本部職を目指す場合は、指導した人数や作成した手順書など、具体的な成果を整理しておきましょう。
経験は「やっていました」ではなく、規模と結果をセットで伝えると評価につながります。担当した店舗数、指導した人数、削減できた廃棄額など、数字を1つ添えるだけで具体性が上がります。
参考:厚生労働省「医薬品の販売制度」 / 厚生労働省「薬局・薬剤師に関する情報」
まとめ
ドラッグストアの薬剤師が辞めたいと感じる理由には、調剤以外の業務の多さ、不規則なシフト、1人で勤務する時間帯の負担、販売目標、体力面、異動、専門性の伸ばしにくさといった要素があります。
まず確認したいのは、その悩みが今の会社の中で解決できるかどうかです。ドラッグストアを運営する企業は組織が大きく、調剤部門への異動、店舗の変更、本部職への応募、勤務形態の変更といった選択肢が残されている場合があります。
一方で、心身の不調が続いている、相談しても体制が変わらない、目指すキャリアと業務が離れているという状態なら、退職に向けて動き出すほうが選択肢は広がります。辞めると決めたら、賞与の支給条件、店舗の人員体制、引き継ぎと有給休暇の消化を踏まえて時期を決めましょう。
転職先には調剤薬局、病院、他のドラッグストア、製薬企業や本部職といった方向があります。ドラッグストアは給与水準が高い傾向にあるため、額面ではなく手取りで比較し、手当の内訳まで確認しておくと入職後の想定が立てやすくなります。OTC医薬品の相談対応、在庫や売上の管理、スタッフ育成といった経験は、次の職場で強みとして伝えられます。
辞めるかどうかに正解はありません。今の職場で試せることと、辞めなければ変わらないことを分けて考え、自分が納得できる判断をしてください。





