あん摩マッサージ指圧師はきつい?負担になることと負担を減らす方法
あん摩マッサージ指圧師は、自分の手と身体を使って人の不調に向き合う仕事です。そのぶん負担は自分の身体にも返ってきて、「きつい」と感じる場面が出てきます。
ただ、その「きつさ」は中身がひとつではありません。手技を用いる以上どうしても避けられないものと、1日の施術数や設備、休憩の取り方といった職場の条件で決まるものが混ざっています。
この記事では、きついといわれる理由を切り分けたうえで、就業先ごとに負担の性質がどう違うか、負担を減らすために何ができるかを整理します。
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あん摩マッサージ指圧師の仕事が「きつい」といわれる理由

語られる中身は、身体への負担・時間の使い方・収入・人間関係の4つに大きく分かれます。まずは実態を並べます。
手指・手首への負担
母指や手根部に体重を乗せる動きを1日に何十回と繰り返すため、指・手首・前腕の同じ部位に負担が集中します。力を抜ける瞬間が少なく、施術中はほぼ連続して手を使い続けることになります。
施術で使う動きは、上肢に負担がかかる作業として挙げられているものと重なります。
痛みやしびれが続く場合、原因が業務だけとは限りません。年齢や日常生活の動作も関わるため、自己判断で「職業病だから仕方ない」と片づけず、整形外科などで一度診てもらうのが無難です。
上肢に負担がかかる3つの動作
立ち仕事と姿勢による負担
施術ベッドの高さが自分の身長に合っていないと、前かがみのまま体重をかけ続けることになります。前屈姿勢や反り返りに近い姿勢は腰への負担が大きく、立ちっぱなしの時間が長いほど脊柱を支える筋肉と下肢の疲労がたまります。
- ベッドの高さは利用者さんが乗り降りしやすい高さで固定されていることが多い
- 施術者の身長に合っていないと、前かがみの姿勢が1日中続く
- 高さを変えられるベッドかどうかは、職場を選ぶときの確認ポイントになる
施術数と拘束時間
予約が詰まる時間帯は、施術と施術の間にほとんど余裕がありません。着替えの介助、ベッドの片付け、カルテの記入が施術時間の外に出てしまうと、表向きの勤務時間より実際の拘束時間が長くなります。
休憩が昼と夕方に分かれる「中休み」の形をとる職場もあります。その時間に電話番や受付対応を任されていれば、それは休憩ではなく労働時間です。労働基準法では、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は60分以上の休憩を、労働時間の途中に与えなければならないと定められています。
収入と業務量が見合わない
身体を使う量に対して給与が伸びにくい、という声は多く聞かれます。医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)では、あん摩マッサージ指圧師の正社員求人2,128件の月給中央値は265,000円でした。
正社員求人2,128件の月給の幅
インセンティブありの求人は約20%あり、施術数や指名数が収入に直結する設計の職場も一定数あります。この形だと、収入を上げようとするほど施術数が増え、身体の負担も一緒に増えます。
なお公的統計では、あん摩マッサージ指圧師は賃金構造基本統計調査の「その他の保健医療従事者」という区分にはり師・きゅう師・柔道整復師などとまとめて集計されます。この資格単独の平均年収を示した公的な数値は存在しません。
職場の人間関係
施術所は小規模なところが多く、合わない相手がいても配置転換で距離を取ることが難しい構造にあります。令和6年の衛生行政報告例によると、あん摩マッサージ指圧を行う施術所は17,531か所で、前回調査から486か所減っています。
厚生労働省の令和7年労働安全衛生調査では、強い不安や悩み、ストレスを感じる労働者は67.5%で、その内容として最も多く挙がったのは仕事の量でした。人間関係より、仕事の量を挙げる人のほうが多いという結果です。
また同じ調査では、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は全体で63.0%ですが、労働者10〜29人の事業所では54.6%にとどまります。小さな職場ほど、相談する仕組み自体が用意されていない傾向があります。
参考:厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況」 / 厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」
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仕事の性質上避けられないもの

前章で並べたきつさのうち、手技を用いる限り消せないものがあります。ここを職場の問題と混同すると、どこを変えても楽にならないという結論になってしまいます。
- 自分の体重と筋力を使って圧をかける
- 相手の状態に合わせて力加減や手順をその場で変える
- 予約時間という決まった枠の中で施術を終える
- 目に見える変化がすぐには出ないことがある
このうち身体を使うことは、避けられないからこそ量を管理する対象になります。1日に何回まで、何分までなら回復が追いつくのかは人によって違い、経験年数とも一致しません。避けられないものを我慢の対象ではなく調整の対象として扱えるかどうかが、長く続けられるかの分かれ目になります。
もうひとつ避けにくいのが、相手の話を受け止める役割です。施術中の会話は身体の状態を知る手がかりであると同時に、悩みや不満を受ける場面にもなります。
この負荷は施術数が多いほど積み上がりますが、身体の疲れと違って外から見えにくく、本人も自覚しにくい性質があります。
- 避けられない負担は「なくす」ではなく「1日の量を決める」で考える
- 回復が追いつく施術数は人によって違うので、経験年数で判断しない
- 体力の話ではなく作業条件の話として伝えると、職場に相談が通りやすい
職場の条件によって変わるもの

同じ資格、同じ手技でも、働く条件が変われば負担の大きさは変わります。次の項目は職場ごとに差が大きく、面接や見学のときに確認できるものばかりです。
-
1日の施術数1人あたりの受け持ち数が多いほど手を休める時間が減る
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1回の施術時間30分と60分では、1日の総施術時間が同じでも身体の使い方が変わる
-
休憩の取り方まとまって取れるか、中休みで分断されるか
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施術ベッドと設備高さ調整ができるか、椅子や台が用意されているか
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指名制の有無指名が集中すると特定の施術者に負担が偏る
-
移動の有無訪問では移動時間と天候が加わる
医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)で見ると、同じ資格の求人でも休みや残業の条件は職場によってかなり開きがあります。
法定休日は毎週1回、または4週間を通じて4日以上と定められていて、これを下回る勤務は労働基準法に反します。求人票の「シフト制」という表記だけでは実際の休みの取りやすさは分からないため、月あたりの休日数と年間休日総数を確認しておくと判断しやすくなります。
参考:厚生労働省「しっかり学ぼう!働くときの基礎知識(過重労働の防止)」
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【就業先別】負担の性質の違い

同じ「きつい」でも、就業先が変われば中身が変わります。身体への負担が大きい職場と、時間の使い方が負担になる職場は別です。
治療院・鍼灸マッサージ院
手技の時間が長く、1人あたり40〜60分程度の施術を1日に複数回こなす形が中心です。身体への負担はまとまって大きくなりますが、施術に専念できるぶん業務の種類は絞られます。
小規模な院が多く、院長と施術者数名という体制も珍しくありません。技術を教わりやすい反面、人間関係が固定されやすく、シフトの調整も限られた人数の中で回すことになります。
整骨院・接骨院
柔道整復師が中心の職場で、あん摩マッサージ指圧師は自費の施術を担当することが多くなります。求人数はこの資格の中で最も多く、医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)では1,241件と全体の半数近くを占めます。
一方で、受付や物販、SNSの更新といった施術以外の業務が加わる職場もあります。夜遅い時間まで開いている院では、終業後の片付けを含めた拘束時間が長くなりがちです。
訪問マッサージ
利用者さんの自宅や施設へ出向く働き方です。1回の施術時間は20〜30分程度と短めですが、移動が業務時間の中に入ります。夏の暑さや冬の寒さ、雨天時の移動が身体にこたえる点は、施設内の勤務にはない負担です。
さらに、基本的に1人で訪問するため、判断に迷ったときにその場で相談できる相手がいません。利用者さんやご家族との距離も近く、施術以外の要望を受ける場面も出てきます。
介護保険施設
デイサービスや特別養護老人ホームなどで、機能訓練指導員として配置されるケースです。あん摩マッサージ指圧師は機能訓練指導員の対象資格に含まれていて、実務経験の要件はありません。
身体を使う場面は治療院より少ない一方、個別機能訓練計画書の作成、日々の記録、カンファレンスへの参加といった施術以外の業務が加わります。書類と会議に時間が取られることを負担と感じる人もいれば、身体の消耗が減る点を歓迎する人もいます。
リラクゼーション系の施設
国家資格がなくても働ける職場で、あん摩マッサージ指圧師が勤めることもあります。ただし法令上の位置づけが治療院とは異なります。
あん摩・マッサージ・指圧を業として行えるのは免許を持つ人に限られます。厚生労働省も、有資格者と無資格者を利用者が判別しにくい状況があるとして、免許保有証の仕組みを設けています。
有資格者として働く場合も、店舗の表示や施術内容は法令の範囲内に収める必要があります。指名やオプションの売上が評価に直結する店舗では、施術数が増えやすい点も押さえておきたいところです。
| 就業先 | 負担の中心 | 施術以外に時間を取られること |
|---|---|---|
| 治療院・鍼灸マッサージ院 | 手技そのものの長さ | 少ない |
| 整骨院・接骨院 | 営業時間の長さ | 受付、物販、SNSの更新 |
| 訪問マッサージ | 移動と天候、1人での判断 | 移動、訪問先での準備と片付け |
| 介護保険施設 | 書類と会議 | 個別機能訓練計画書、日々の記録、カンファレンス |
| リラクゼーション系の施設 | 施術数の多さ | 指名やオプションの提案 |
参考:厚生労働省「あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師と無資格者との判別について」 / 厚生労働省「平成30年度介護報酬改定について」
負担を減らすためにできること

負担は「気をつける」だけでは減りません。姿勢と環境、施術数と休憩という、条件として変えられる部分から手をつけるのが現実的です。
施術姿勢と環境の見直し
厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」は、立ち作業について具体的な対策を示しています。指針は事業者に向けたものですが、内容は自分の働き方を点検する材料としても使えます。
- 作業台の高さは、施術者の上肢長・下肢長など体型に合わせて配置する
- 長時間の立ちっぱなしを避けるため、腰掛ける作業を組み合わせる
- 立ち作業が続く場合は椅子を置き、途中で腰掛けて小休止できるようにする
- 両下肢をあまり使わない作業では、片足置き台を使って姿勢に変化をつける
- 床が硬い場合は、クッション性のある靴やマットで衝撃を和らげる
前屈姿勢や過伸展姿勢は椎間板内圧を著しく高めると指摘されています。ベッドの高さを変えられない職場でも、足を前後に開いて体重移動で圧をかける、肘や前腕を使って母指への集中を分散させるといった工夫は取り入れられます。
施術数と休憩の確保
同じ指針では、立ち作業を行う場合はおおむね1時間につき1〜2回程度の小休止・休息を取り、下肢の屈伸運動などを行うことが望ましいとされています。施術の合間に数分でも足を伸ばす時間を挟めるかどうかで、1日の終わりの疲れ方は変わります。
不自然な姿勢を取らざるを得ない作業や反復作業は、他の作業と組み合わせてできるだけ連続させないことも示されています。同じ手技を続けるより、記録や準備の時間を間に入れるほうが身体は回復しやすくなります。
1時間の休憩サイクルの目安
職場に相談するときの材料
- 1日の施術数と、施術以外にかかっている時間を記録する
- どの動作でどの部位に負担が出るかを具体的に書き出す
- ベッドの高さ調整や椅子の設置など、設備で解決できることを分けて伝える
不調が続くときの受診と労災の考え方
痛みやしびれが続く場合は、早めに整形外科などで診てもらいましょう。そのうえで、症状が業務によるものと認められれば、労災保険の対象になり得ます。
厚生労働省の認定基準では、上肢に負担のかかる作業を主とする業務に相当期間従事した後に発症したこと、発症前に過重な業務に就労したこと、その経過が医学上妥当と認められることの3つを満たす上肢障害が対象とされています。ここでいう「相当期間」は、原則としておおむね6か月程度以上です。
上肢障害の労災認定要件
「過重な業務」は、同じ事業場の同種の労働者と比べておおむね10%以上業務量が増え、その状態が発症直前3か月程度続いた場合などが目安とされています。腰痛についても、業務との関係が認められれば労災の対象になります。
ただし認定は個別の事情をもとに判断されるため、必ず認められるとは限りません。判断に迷うときは、勤務先を管轄する労働基準監督署に相談してみてください。
参考:厚生労働省「上肢作業に基づく疾病の業務上外の認定基準について」 / 厚生労働省「腰痛予防対策」
転職活動するなら?
それでも続けたくなる仕事の魅力

負担の話と同じ重さで、この仕事が選ばれ続けている理由もあります。
施術で変化を実感できる
施術の前後で可動域が広がる、表情が変わる、歩き方が変わる。その変化をその場で確認できるのは、手技を使う仕事の特徴です。
機器や薬に頼らず、自分の手で結果を出すという性質上、経験が技術としてそのまま積み上がります。何年たっても伸びしろがある点を続ける理由に挙げる人もいます。
働き方を選びやすい
治療院、整骨院、訪問、介護施設、リラクゼーションと、活躍する場が複数あります。身体の状態やライフステージに応じて場所を移せるのは、この資格の強みです。
医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)でも、独立や短時間勤務、副業に対応した求人が一定数あります。数としては多くありませんが、雇われて常勤で働く以外の道も残されています。
長く続けやすい
国家資格であり、免許に更新の仕組みはありません。ブランクがあっても資格そのものが失われることはなく、復帰しやすい職種です。
求人データでは未経験可の求人が約79%を占めます。別の職場や別の働き方へ移るときに、経験年数がハードルになりにくい環境といえます。
あん摩マッサージ指圧師の求人を探すきついと感じたときに考えること

「きつい」と感じた段階で、すぐ転職を決める必要はありません。まず何がきついのかを切り分けると、取れる手が見えてきます。
原因を切り分ける
身体の負担、時間の使い方、収入、人間関係のどれが一番大きいのかを分けてみます。前述のとおり、労働安全衛生調査では人間関係より仕事の量を挙げる人のほうが多く、人間関係の問題に見えていたものが、実は業務量の問題だったというケースもあります。
- この1か月で、何にどれだけ時間を使ったかを書き出す
- 身体の不調が出る場面と出ない場面を分ける
- 職場を変えれば解決することと、どこへ行っても残ることを分ける
- 残るものについて、量を減らす方法があるかを考える
書き出してみて、設備や施術数といった条件に原因があるなら、職場への相談で改善できる可能性があります。一方で身体の不調が続いている場合は、原因の切り分けより先に受診を優先しましょう。
職場を変える
同じ資格でも、就業先が変われば負担の中身が変わります。身体の負担が限界なら訪問から施設内へ、あるいは施術以外の業務も担う介護保険施設へ移るという選択があります。逆に、施術に集中したいなら治療院へ戻る形もあります。
求人票だけでは分からない部分が多いため、見学の機会があればベッドの高さ、休憩スペース、1日の施術数を実際に確認しておくと、入職後のギャップが減ります。
働き方を変える
職場そのものは変えずに、勤務日数や時間を調整する方法もあります。常勤からパートへ切り替える、訪問と院内勤務を組み合わせる、体調が戻るまで一度休むという選択も含まれます。
どれを選ぶにしても、きついという実感そのものは否定しなくて構いません。慣れの問題として片づけず、条件として変えられる部分から動かしていくほうが結果的に長く続きます。
まとめ
あん摩マッサージ指圧師の「きつい」は、手技を用いる以上避けられない部分と、職場の条件で決まる部分が混ざっています。この2つを分けて考えることが、最初の一歩になります。
避けられないのは、自分の身体を使うこと、相手に合わせて力加減を変えること、決まった時間枠で施術を終えることです。一方で1日の施術数、施術時間、休憩の取り方、ベッドの高さ、指名制の有無、移動の有無は、職場によってまったく違います。
就業先ごとに負担の性質も変わります。治療院は施術時間の長さ、整骨院は施術以外の業務、訪問マッサージは移動と1人での判断、介護保険施設は書類と会議が中心の負担です。
負担を減らす手立てもあります。施術姿勢と環境の見直し、施術数と休憩の確保、そして不調が続くときの受診です。業務に起因する上肢障害や腰痛は労災保険の対象になり得るため、我慢し続ける前に労働基準監督署へ相談するという手もあります。


