筋肉注射の部位と手技|上腕・大腿・臀部の刺入位置
筋肉注射は、薬液を筋肉内に注入する方法です。
皮下注射より吸収が速く、ワクチンや一部の薬剤で用いられます。
神経や血管を避けるため、部位ごとに決められた位置を正確に選ぶことが大切です。
筋肉注射の基本
筋肉注射は、皮下より深い筋肉層に薬液を注入します。角度や部位の選び方に、皮下注射との違いがあります。

| 項目 | 筋肉注射 | 皮下注射 |
|---|---|---|
| 刺入角度 | 90度 | 10〜30度 |
| 注入する層 | 筋肉(三角筋など) | 皮下組織(皮下脂肪) |
| 皮膚の操作 | 皮膚を伸展させる | 皮膚をつまみ上げる |
| 吸収 | 速い | ゆるやかで持続的 |
| 主な部位 | 三角筋・中殿筋など | 腹部・上腕・大腿 |
筋肉注射は、部位選びが安全の要です。
太い神経(橈骨神経・坐骨神経)や血管を避けるために、目印から正確に位置を決めることが重要です。
- 皮下脂肪を越えて、針先を筋層まで届かせる
- 標準的な体型では、20mm〜25mm程度の針が選ばれることが多い
- 皮下脂肪が厚い場合は長めの針、小柄な人や乳幼児では短めの針と、体格に応じて選択する
筋肉注射の3部位の刺入位置
代表的な3部位について、目印と刺入位置を整理します。
| 部位 | 筋肉 | 刺入位置の目安 |
|---|---|---|
| 上腕 | 三角筋 | 肩峰の外側端から3横指(約5cm)下、三角筋の最も厚い部分 |
| 大腿 | 外側広筋 | 大転子と膝関節裂隙を結ぶ線の中央1/3、やや外側 |
| 臀部 | 中殿筋 | クラークの点、ホッホシュテッターの部位、四分三分法 |

ワクチン接種で最もよく使われる部位です。肩峰を目印に、三角筋の厚い部分を選びます。
| 目印 | 肩峰(肩の骨の外側端) |
| 刺入位置 | 肩峰から3横指(約5cm)下、三角筋の最も厚い部分 |
| 注意点 | 上方すぎると肩峰下滑液包、下方・後方すぎると橈骨神経や腋窩神経に近づく |

乳幼児や、三角筋が使いにくい場合に選ばれる部位です。大きな神経や血管が少なく、比較的安全とされています。
| 目印 | 大転子と膝関節裂隙 |
| 刺入位置 | 両者を結ぶ線を3等分した中央1/3、やや外側 |
| 特徴 | 大きな神経・血管が少なく、乳幼児では第一選択になりやすい |

坐骨神経を避けるため、位置決めの方法が定められています。
中殿筋を用いる方法が推奨されています。
| クラークの点 | 上前腸骨棘と上後腸骨棘を結んだ線を3等分し、その前方1/3の点 |
| ホッホシュテッターの部位 | 手掌を大転子に当て、示指を上前腸骨棘に置いたときにできる示指と中指の間 |
| 四分三分法 | 臀部を4分割し、外上1/4のさらに外側寄りを選ぶ従来法。簡便だが坐骨神経・血管に比較的近い |
| 注意点 | 四分三分法は坐骨神経や血管が比較的近く、位置を誤ると損傷のリスクが指摘されている。より安全性が高いとされる中殿筋を用いるクラークの点やホッホシュテッターの部位を用いることも多い。 |
筋肉注射の基本的な手順
部位を選んだあとの、基本的な実施の流れです。詳しい根拠や準備は施設の手順書に従ってください。
- 手指衛生を行い、必要物品を準備する。薬剤・投与量・対象者を確認する
- 体位を整え、骨の目印を触知して刺入部位を決める
- アルコール綿などで消毒し、しっかり乾燥させる
- 皮膚を伸展させ、皮膚に対して90度で刺入する
- 薬液を注入し、注入後は速やかに抜針して止血する
- 刺入部位の状態と、対象者の全身状態を観察する
安全に行うためのポイント
神経・血管損傷や合併症を防ぐために、次の点を守ります。
- 骨のランドマークから位置を決め、目測で決めない
- 刺入角度は皮膚に対して90度を保つ
- 放散痛やしびれを訴えたら、注入せずにいったん抜針して位置を変える
- 刺入後は針を動かさない
- 接種後に揉むかどうかは、薬剤ごとの添付文書と施設の基準を確認する
注意
刺入時に電気が走るようなしびれや強い放散痛を訴えた場合は、神経を刺激している可能性があります。無理に薬液を注入せず、いったん針を抜いて位置を変えます。
印刷して活用しよう
3部位の刺入位置・目印・安全のポイントを1枚にまとめた資料です。
詰所やロッカーに貼っておくと、位置決めの確認にすぐ使えます。以下のフォームからPDFをダウンロードできます。
筋肉注射の部位と手技
上腕(三角筋)・大腿(外側広筋)・臀部(中殿筋)の目印と刺入位置、刺入角度、安全に打つためのポイントを1枚にまとめた資料です。