右心不全と左心不全の違い|症状・観察項目を比較
心不全では、障害される心臓の側によって、うっ血が起こりやすい場所や現れやすい症状が異なります。
左心不全では肺うっ血による呼吸症状、右心不全では体静脈うっ血による浮腫や腹部症状が目立ちます。
右心不全と左心不全の違い

左心不全は「肺に水がたまる」、右心不全は「全身に水がたまる」と捉えると整理しやすくなります。
ただし、これはあくまで理解を助けるための表現です。実際には、単純に水がたまるのではなく、肺循環あるいは体静脈系にうっ血が生じている状態を指します。
また、重症例や慢性心不全では、左右両方の症状や所見がみられることがあります。
左心不全でみられやすい症状・所見
左心室から全身へ十分に血液を送り出せなくなると、左心房から肺静脈側へ圧がかかり、肺うっ血が生じます。
そのため、左心不全では呼吸に関する症状が目立ちます。
| 観察項目 | みられやすい変化 | 観察のポイント |
|---|---|---|
| 呼吸困難 | 労作時の息切れ。進行すると安静時にも呼吸苦 | 会話時の息切れ、呼吸数、努力呼吸の有無 |
| 起座呼吸 | 臥位で苦しく、上体を起こすと楽になる | 眠れる体位、夜間の呼吸苦での覚醒 |
| 肺音 | 湿性ラ音を聴取することがある | 聴取部位、左右差、範囲、前回からの変化 |
| 酸素化 | SpO₂低下、チアノーゼ | 酸素投与の有無・投与量、呼吸状態とあわせて経時的に評価 |
| 低心拍出 | 倦怠感、末梢冷感、尿量減少、血圧低下、意識状態の変化 | 呼吸だけでなく循環状態や臓器血流も観察 |
なお、湿性ラ音があれば必ず左心不全というわけではありません。肺炎、無気肺、間質性肺疾患などでも異常音がみられるため、症状、画像所見、検査値、経時的な変化とあわせて評価します。
SpO₂についても一つの数値だけで重症度を判断せず、酸素投与条件、基礎疾患、普段の値、呼吸数、努力呼吸、意識状態などを組み合わせて評価することが大切です。
突然の強い呼吸困難、泡沫状の喀痰、著しいSpO₂低下、冷汗、意識状態の変化などがみられる場合は、急性肺水腫などの可能性があります。急速な悪化を認めた場合は、体位調整や酸素化の確認と並行して速やかに報告します。
右心不全でみられやすい症状・所見
右心室から肺へ十分に血液を送り出せなくなると、全身から右心系へ戻る血液が滞り、体静脈系のうっ血が起こります。そのため、右心不全では末梢浮腫や体重増加、腹部症状などが目立ちます。
| 観察項目 | みられやすい変化 | 観察のポイント |
|---|---|---|
| 浮腫 | 足背・足関節・下腿の圧痕性浮腫 | 左右差、範囲、圧痕の深さ。臥床例では仙骨部・背部も確認 |
| 体重 | 短期間での体重増加 | 同じ時間帯・同じ衣服・排尿後など条件を統一して測定 |
| 頸静脈 | 頸静脈怒張 | 上体を起こして頸部を観察。怒張の有無と左右差 |
| 腹部症状 | 腹部膨満、腹水、食欲低下、悪心、早期満腹感 | 腹囲、食事摂取量、右上腹部の不快感の変化 |
| 腎機能・尿量 | 尿量減少 | 時間尿量、1日の入出量、体重・浮腫・腎機能データと併せて評価 |
浮腫だけで右心不全と判断せず、体重増加、頸静脈怒張、腹部症状、尿量の変化などを組み合わせて評価することが大切です。
右心不全の原因は左心不全だけに限りません。肺高血圧症、慢性肺疾患、右室梗塞、弁膜症などでも起こり得ます。
体重の具体的な増加量を報告基準として用いる場合、基準は施設や患者さんごとの指示によって異なります。特定の数値を一律にあてはめるのではなく、受け持ちの患者さんに設定された基準を確認しましょう。
なぜ左心不全から右心不全につながるのか

左心不全によって肺うっ血が続くと、肺循環の圧が上昇します。すると、右心室が血液を肺へ送り出す際の負担が増加します。右心室への負担が続くと右心室の機能も低下し、右心不全を合併することがあります。
そのため、慢性心不全では左心不全と右心不全の症状が混在することも少なくありません。
看護師が押さえたい観察ポイント
- 呼吸:呼吸数、SpO₂、努力呼吸、起座呼吸、肺音、咳嗽・喀痰
- 循環:心拍数、血圧、末梢冷感、皮膚色、意識状態
- 水分バランス:体重、浮腫、尿量、1日の入出量
- 腹部症状:腹囲、腹部膨満、食欲・食事摂取量
- 活動耐容能:活動時の息切れ、日常生活動作での症状の変化
早めの報告につなげたい変化
次のような変化がみられた場合は、心不全の増悪や循環状態の悪化が進んでいる可能性があります。
- 安静時にも続く呼吸困難、急な起座呼吸、会話が難しいほどの息切れ
- SpO₂の明らかな低下、呼吸数の増加、湿性ラ音の範囲拡大
- 短期間での体重増加、浮腫や腹囲の急な増悪
- 尿量減少、血圧低下、頻脈、末梢冷感、意識状態の変化
- 胸痛、冷汗、失神または失神しそうな感覚、急激な全身状態の悪化
報告の基準は施設や患者さんごとに異なります。医師の指示や心不全管理計画、患者さんの普段の状態を確認し、いつから、どのような変化が、どの程度みられているかを整理して報告します。
なお、数値や報告基準は標準的な目安だけで判断せず、各施設の基準、医師の指示、患者さんの基礎疾患や普段の状態に合わせて評価してください。
印刷して活用しよう
右心不全と左心不全の比較表、および左右それぞれの観察項目早見表を1枚にまとめた資料をご用意しました。詰所やロッカーへの掲示、ポケットノートへの貼り付けなど、日々の観察の確認用にご活用ください。
右心不全・左心不全の違い
右心不全と左心不全の比較表と、左右それぞれの観察項目早見表を1枚にまとめた資料です。うっ血の場所・主な症状・観察のポイントを一覧で確認できます。