保健師の仕事内容は?勤務先別の業務と1日の流れを把握しよう
「保健師って、具体的に毎日どんな仕事をしているの?」と気になっている看護師や学生は多いはずです。
保健師の仕事内容は、保健指導や健康相談といった対人支援だけでなく、事業の企画や記録・統計の集計まで幅広く、勤務先によって中身も大きく変わります。
この記事では、保健師の主な仕事内容を業務ごとに整理し、勤務先別の違い、行政保健師と産業保健師の1日の流れ、看護師との違い、仕事で大変なことまで紹介します。
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保健師の仕事内容

保健師は、法律上「保健指導に従事することを業とする者」と定められた国家資格です。 病気になった人を治療する看護師に対して、保健師は病気になる前の予防や、地域・職場全体の健康づくりを担います。
保健師の仕事内容は、大きく分けて6つです。 どの業務にどれだけ時間を使うかは勤務先によって変わりますが、行政でも企業でも、この6つが仕事の柱になります。
保健指導・特定保健指導
保健指導は、健診結果や生活の様子をもとに、食事・運動・睡眠などの生活習慣を一緒に見直す支援です。 保健師の名前のとおり中心となる業務で、対象は妊産婦さんや乳幼児の保護者、生活習慣病のリスクがある大人、働く人などさまざまです。
保健指導を行う根拠は、勤務先によって異なります。
| 実施する主体 | 根拠となる法律 | おもな対象と内容 |
|---|---|---|
| 市町村(母子) | 母子保健法第10条 | 妊産婦さん・乳幼児の保護者への妊娠・出産・育児の保健指導義務 |
| 市町村(成人) | 健康増進法第17条 | 住民の生活習慣の改善に関する相談と栄養指導・保健指導 |
| 医療保険者 | 高齢者医療確保法第24条 | 特定健診の結果、生活習慣病のリスクが高い加入者への特定保健指導 |
| 企業(事業者) | 労働安全衛生法第66条の7 | 健診の結果、特に健康の保持に努める必要がある従業員への保健指導努力義務 |
特定保健指導は、40〜74歳を対象とした特定健診(いわゆるメタボ健診)の結果、生活習慣病のリスクが高いと判定された人に行う保健指導です。
保健師は、医師・管理栄養士とともに初回面接で本人と行動計画を立て、数か月後に成果を評価する役割を担います。
健康相談
健康相談は、住民や従業員からの「最近眠れない」「子どもの発達が気になる」「血圧が高いと言われた」などの相談に、面接や電話で応じる業務です。 相談日を決めて予約制で受ける場合と、窓口や電話で随時受ける場合があります。
保健師は、相談内容から医療機関の受診が必要か、生活習慣の見直しで様子を見られるかを判断し、必要に応じて専門機関につなぎます。
心の不調や子育ての悩みなど、相談者自身が問題をうまく言葉にできない相談も多く、話を聞きながら本当の困りごとを見つけることが大切です。
健康診断と予防接種の実施
市町村では、乳幼児健診(1歳6か月児健診・3歳児健診など)や、住民向けの健診・がん検診、予防接種を実施しています。 保健師が担当するのは、次のような業務です。
- 会場の準備と受付の段取り
- 問診と身体計測
- 結果の説明と保健指導
- 経過観察が必要な人のフォロー
予防接種や採血などの医療行為は、医師の指示のもとで行います。 保健師は看護師の業務もできると法律で定められているため、健診会場では看護師としてのスキルもそのまま活かせます。
企業では、定期健康診断の日程調整や受診勧奨、結果の管理が主な役割です。
家庭訪問
家庭訪問は、保健師が対象者の自宅に出向いて、生活環境を見ながら保健指導や相談に応じる業務です。
母子保健法では、新生児・未熟児・妊産婦さんへの訪問指導が市町村の役割として定められていて、保健師が担当することが多い業務です。
自宅を訪ねると、窓口の相談では見えない家の様子や家族関係が分かります。 支援が必要なのに自分から相談に来られない人に、保健師のほうから会いに行けるのが家庭訪問の役割です。
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保健事業の企画と計画の策定
保健師は、目の前の個人を支援するだけでなく、地域や職場全体の健康課題を見つけて、それを解決する事業を企画します。
たとえば「この地区は高血圧の人が多い」と分かれば、減塩教室を企画したり、健診の受診勧奨の方法を見直したりします。
行政では、健康増進計画や母子保健計画などの自治体の計画づくりにも関わります。 事業の目的・対象・予算・評価方法を企画書にまとめ、上司や関係部署の決裁を通すところまでが保健師の仕事です。
記録の作成と統計の集計
保健指導・健康相談・家庭訪問のたびに、支援の内容と対象者の状態を記録に残します。 記録は、担当者が変わっても支援を引き継げるようにするためと、事業の成果を振り返るための材料になります。
健診の受診率、特定保健指導の実施率、乳幼児健診で経過観察になった子どもの割合なども、保健師が集計して分析します。
看護師から保健師に転職した人がギャップを感じやすいのがこの部分で、パソコンに向かう時間は想像以上に長いと考えておくと安心です。
保健師って、こんなに書類仕事が多いの?
参考:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」 / e-Gov法令検索「地域保健法」
勤務先別に見た保健師の仕事内容

保健師の働く場所で最も多いのは市区町村で、令和6年末時点で就業保健師63,536人のうち33,217人(52.3%)が市区町村で働いています。
保健所(15.1%)と都道府県(3.1%)を合わせると、約7割が行政で働く保健師です。
行政保健師
行政保健師は、市区町村・保健所・都道府県の職員(地方公務員)として働く保健師です。 同じ行政でも、市区町村と保健所では担当する仕事が違います。
-
市区町村(保健センターなど)乳幼児健診、妊産婦さん・新生児の訪問、住民の健診や健康教室など、住民に身近なサービス
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保健所感染症対策、精神保健、難病の療養支援など、専門性が高く広い地域にかかわる業務
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都道府県(本庁)県全体の計画づくり、市町村の支援、保健師の人材育成など
地区ごとに担当を持つ「地区担当制」をとる自治体では、担当地区の赤ちゃんから高齢者まで幅広く関わります。 感染症の流行や災害のときは、保健師が住民の健康を守る最前線に立つのも行政保健師の特徴です。
保健師の求人を探す産業保健師
産業保健師は、企業や健康保険組合で働く保健師で、従業員の健康管理を担当します。
労働安全衛生法では、健診の結果から特に健康管理が必要な従業員への保健指導(事業者の努力義務)や、ストレスチェックの実施者として保健師が定められています。
主な仕事は、健診後の保健指導、メンタルヘルス不調者の面談、休職・復職の支援、職場の健康教育などです。 産業医と連携しながら動くため、医師と従業員、人事部の間に立って調整する役割が大きいのが特徴です。
学校保健師
学校保健師は、主に大学や専門学校の保健管理センター・保健室で、学生や教職員の健康管理を担う保健師です。 健康診断の運営、けがや体調不良への応急対応、心身の健康相談などが中心です。
小学校・中学校・高校の保健室で働くのは、教員免許をもつ「養護教諭」で、保健師とは別の職種です。 学校保健師の求人は大学などに限られ、募集数は多くありません。
病院保健師
病院で働く保健師は、行政で働く保健師に比べると少数です。 病院での主な配属先は、次のとおりです。
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健診センター・人間ドック受診者への結果説明と保健指導
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地域医療連携室退院後の生活を見すえた退院支援や地域との調整
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職員の健康管理部門病院職員の健診や健康相談
病棟で看護師と同じように働く場合もあり、保健師として採用されても仕事内容は看護師に近いことがあります。 応募する前に、保健師としての業務がどのくらいあるかを確認しておくと、入職後のギャップを防げます。
地域包括支援センターの保健師
地域包括支援センターは、高齢者の介護・医療・生活の相談に応じる地域の総合窓口です。 介護保険法の基準では、担当区域の第1号被保険者(65歳以上)がおおむね3,000人以上6,000人未満ごとに、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員(またはこれらに準ずる者)を1人ずつ置くことが原則です。
保健師は、介護予防のケアプランづくりや、介護予防教室の運営、認知症の相談などを担当します。 令和8年5月時点で、自治体に所属する常勤保健師のうち1,384人が地域包括支援センターで働いています。
- 保健師の掲載求人は52件
- 訪問看護15件、特養9件、クリニック7件など
- 正社員の平均月給は約28.6万円
参考:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」 / 厚生労働省「令和8年度 保健師活動領域調査(領域調査)の結果について」
保健師の1日の流れ

保健師の1日は、勤務先によって大きく変わります。 以下は、市町村の保健センターで働く行政保健師と、企業で働く産業保健師の1日の一例です。 実際のスケジュールは、自治体や企業、その日の予定によって異なります。
行政保健師の場合
市町村の行政保健師は、乳幼児健診や健康教室などの「事業」がある日と、家庭訪問や事務作業が中心の日でスケジュールが変わります。 次の一例は、午前中に1歳6か月児健診があり、午後に新生児訪問へ行く日です。
健診後のカンファレンスでは、発達や育児で気になる点があった親子を誰がどうフォローするかを話し合います。 訪問から戻ったあとは記録を入力し、必要に応じて医療機関や保育所などに連絡します。
勤務時間は役所の開庁時間に合わせた日勤が基本で、休日の健康イベントや夜間の教室がある日は時間をずらして勤務することもあります。
産業保健師の場合
産業保健師は、健診後の面談やメンタルヘルスの相談など、従業員との面談を軸に1日を組み立てます。 次の一例は、本社の健康管理室で働く産業保健師の1日です。
健診の時期やストレスチェックの実施時期は面談が集中し、年間を通じて忙しさに波があります。 産業医が来る日は面談の調整や資料準備が増えるため、産業医の訪問日を中心に週の予定を組む保健師も多いです。
同じ保健師でも、1日の過ごし方はけっこう違うんだね
看護師と保健師の仕事内容の違い

保健師になるには、看護師国家試験と保健師国家試験の両方に合格する必要があり、保健師は看護師の業務もできます。 同じ看護職でも、仕事の目的・対象・働き方には違いがあります。
治療と予防という目的の違い
看護師の仕事は、病気やけがをした患者さんの療養上の世話と、医師の診療の補助です。 病院では、患者さんが回復して退院するまでを支えることが目的になります。
一方、保健師の仕事は、まだ病気になっていない人を含めて、病気を防ぎ健康を保つことが目的です。 健診で異常が見つかる前の段階から関わり、生活習慣を変えるきっかけをつくります。
成果が出るのが数年後になることも多く、患者さんの回復を間近で見られる看護師とは、やりがいの感じ方も変わります。
予防と集団への視点が、保健師らしさなんだね!
個人と集団という対象の違い
看護師が向き合うのは、主に目の前の患者さん一人ひとりです。 保健師も個人への支援は行いますが、同時に「地域の住民全体」「会社の従業員全体」といった集団も対象にします。
たとえば、一人の住民の高血圧に保健指導をするだけでなく、地区全体の健診データから高血圧の人が多い原因を探り、事業で解決を図ります。 個人の支援から地域全体の課題を見つける視点が、看護師との大きな違いです。
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夜勤の有無と勤務時間の違い
病院の看護師は、24時間体制で患者さんを看るため、交代制の夜勤があるのが一般的です。 保健師は、行政でも企業でも日勤が中心で、行政保健師は役所の開庁日に合わせて土日祝日が休みになるのが基本です。
ただし、行政保健師は災害や感染症の発生時に時間外の対応が入ることがあります。 病院保健師として病棟勤務をする場合は、看護師と同じく夜勤がある場合もあります。
看護師と保健師の違いを、資格の取り方や待遇も含めて知りたい人は、以下の記事を参考にしてください。
参考:厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」 / e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」
保健師の仕事で求められる力

保健師の仕事は、人と話す力と、データや文書を扱う力の両方が必要です。 看護師として身につけた力がそのまま活きる部分と、保健師になってから伸ばす部分があります。
生活背景を聞き出す面談力
保健指導や健康相談では、検査値だけでなく、食事・仕事・家族など生活の背景を聞き取ることから始まります。
相談者は最初から本音を話すとは限らないため、責めずに話を聞き、本人が「変えてみよう」と思える目標を一緒に探す力が必要です。
看護師として患者さんの話を聞いてきた経験は、面談の場面でそのまま強みになります。
健診データを読み取る分析力
保健師は、健診の検査値から一人ひとりのリスクを判断するだけでなく、地域や職場全体のデータから傾向を読み取ります。 「どの年代で受診率が低いか」「どの部署で血圧の高い人が多いか」などを把握し、事業の対象を絞り込みます。
Excelでの集計や、グラフを使った資料作成が日常的にあるため、基本的なパソコン操作に慣れておくと仕事がスムーズです。
保健師の求人を探す関係機関と調整する力
保健師が一人で支援を完結させることは少なく、医療機関・保育所・学校・福祉の窓口・地域包括支援センターなどと連携して動きます。 企業では、産業医・人事部・上司と、従業員の働き方について話し合います。
関係者ごとに立場や優先したいことが違うため、それぞれの事情をくみ取りながら支援の方向をそろえる力が求められます。
企画書や通知文を作成する文書力
保健師が作る文書には、次のようなものがあります。
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行政保健師事業の企画書、住民向けの通知文やチラシ、上司や議会への説明資料
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産業保健師衛生委員会の資料、従業員向けの健康だより、研修の資料
住民向けの文書では、専門用語を使わず、誰が読んでも行動に移せる書き方が大切です。 看護記録とは書く目的も読み手も違うため、最初は戸惑う人も多い部分です。
文章を書くのが苦手だと、最初は大変そう…
保健師の仕事で大変なこと

保健師の仕事は、日勤が中心で働きやすいイメージを持たれがちですが、保健師ならではの大変さもあります。
成果が数字に表れるまで時間がかかる
予防の取り組みは、効果が出るまでに数年かかることが多くあります。 減塩教室を開いても、地域の脳卒中が減ったかどうかが分かるのはずっと先です。
患者さんの回復を目の前で見られる病棟とは違い、自分の仕事の手応えを感じにくいと感じる保健師もいます。
受診率や教室の参加者数など、短い期間で確認できる指標を自分で決めておくと、手応えを感じやすくなります。
対象者に支援を拒まれることがある
保健指導や家庭訪問は、本人が望んで受けるものとは限りません。 「健康だから必要ない」「家に来ないでほしい」と断られることもあります。
それでも、虐待が疑われる家庭や、治療を中断している人など、支援が必要なケースでは関わりを続ける必要があります。 断られても関係を切らずに、少しずつ信頼を積み重ねる粘り強さが必要です。
断られると、やっぱり落ち込んじゃうよね
行政では事務と調整の業務が多い
行政保健師の活動時間を見ると、訪問や健康相談などの直接対人支援は、市町村で35.0%です。 一方で、事業の企画や組織の管理(21.4%)と、業務連絡・事務(19.1%)を合わせると約4割になります。
都道府県の保健師は直接対人支援が16.8%と、さらに事務や企画の比重が高くなります。
「住民と直接関わる仕事がしたい」と考えて行政保健師を目指すなら、デスクワークや会議の時間も仕事の大きな部分だと理解しておくと、入職後のギャップを小さくできます。
職場に保健師が一人のことがある
企業や小規模な町村では、保健師が一人だけの職場もあります。 相談できる先輩がいないため、判断に迷う場面でも自分で決めなければならず、責任の重さを感じやすくなります。
一人職場で働く場合は、地域の保健師の研修会や、産業保健師のネットワークに参加して、職場の外に相談できる仲間をつくっておくと安心です。
参考:厚生労働省「令和7年度 保健師活動領域調査(活動調査)の結果について」
まとめ
保健師の仕事は、保健指導・健康相談・家庭訪問といった対人支援に加えて、事業の企画や記録・統計の集計まで幅広くあります。 働く場所は市区町村が半数を占めますが、企業・学校・病院・地域包括支援センターなど勤務先によって仕事の中身は大きく変わります。
この記事のポイント
- 保健師は予防と健康づくりを担う国家資格
- 就業保健師の約7割は行政で働いている
- 勤務先によって根拠となる法律や業務が変わる
- 日勤中心だが行政では事務・調整の時間も長い
- 看護師の面談力や臨床経験はそのまま活きる
保健師への転職を考えているなら、まずは自分が「地域の住民」と「働く人」のどちらを支えたいかを考えてみましょう。 保健師の求人は看護師に比べて数が少ないため、転職エージェントに相談すると、公開されていない求人や職場の体制まで確認しやすくなります。


