保健師国家試験の難易度は?合格率・合格基準と本当の難しさを解説
保健師を目指すうえで、「国家試験は難しいのだろうか」と不安に感じている方は多いのではないでしょうか。保健師国家試験の合格率は例年90%前後と高く、数字だけを見ると難易度は高くないように思えます。
しかし、合格率の高さだけで「簡単な試験」と判断するのは誤りです。保健師国家試験には、受験できる人が限られているという前提や、看護師国家試験との同時受験といった、数字に表れない難しさがあります。
この記事では、保健師国家試験の合格率・合格基準・試験内容を公的データで確認しながら、本当の難しさがどこにあるのかをわかりやすく解説します。
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保健師国家試験の難易度

保健師国家試験の合格率は、例年90%前後で推移しています。直近の試験でも8割台後半から9割台で安定しており、合格率の数字だけを見れば、難易度はそれほど高くないように見えます。
ただし、この数字をそのまま「簡単な試験」と受け取るのは適切ではありません。保健師国家試験を受験できるのは、保健師養成課程で所定のカリキュラムを修了した人、または修了見込みの人に限られます。つまり、専門教育をしっかり受けてきた人だけが受験している試験であり、もともと一定の学力を備えた集団のなかでの合格率だという点を踏まえる必要があります。
保健師国家試験の本当の難しさは、試験そのものの合格率というより、受験資格を得るまでの過程や、看護師国家試験と並行して合格しなければならない点にあります。
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保健師国家試験の合格率

保健師国家試験の合格率は、例年90%前後と高い水準にあります。ただし、年度によって合格率には変動があり、新卒か既卒かによっても大きな差が生まれます。
ここでは、過去5年間の合格率の推移と、新卒・既卒の差を公的データから確認します。
過去5年間の合格率の推移
厚生労働省の発表によると、保健師国家試験の合格率は直近5年間でおおむね87〜96%の範囲で推移しています。第110回(2024年)には95.7%まで上がりましたが、第112回(2026年)は87.1%と、数字には一定の幅があります。
合格率が90%を超える年もあれば、80%台後半まで下がる年もあるため、「ほぼ全員が合格する試験」と油断するのは禁物です。試験の難易度や出題傾向は年度ごとに変わるため、その年の試験に合わせた対策が欠かせません。
直近の合格率は、過去問演習や公衆衛生看護学の理解度がそのまま結果に反映される傾向にあります。合格率の数字を「自分も合格できる根拠」ではなく、「しっかり対策すれば合格できる試験」という目安として捉えることが大切です。
過去5年間の合格率の推移
保健師国家試験 第108回〜第112回
※直近の第112回で前回より6.9pt低下し、5年で最も低い水準。
新卒と既卒の合格率の差
保健師国家試験で特に注目したいのが、新卒と既卒の合格率の差です。第112回(2026年)では、全体の合格率87.1%に対し、新卒の合格率は89.9%でした。一方、いったん養成課程を卒業してから受験する既卒者の合格率は、大きく下がる傾向にあります。
第112回のデータをもとに計算すると、既卒受験者の合格率は約28%にとどまり、新卒との差は60ポイント以上にもなります。年度によって幅はありますが、既卒の合格率が新卒を大きく下回る傾向は、過去の試験でも共通しています。
保健師国家試験は「新卒で受けるか、既卒で受けるか」で合格率が大きく変わります。在学中に集中して対策し、現役合格を目指すことが、もっとも確実なルートだといえます。
この差が生まれる背景には、卒業後は看護師として働きながら勉強時間を確保しにくくなることや、養成課程で学んだ専門知識が時間とともに薄れてしまうことがあると考えられます。
参考:厚生労働省「第112回保健師国家試験、第108回助産師国家試験及び第114回看護師国家試験の合格発表」 / 厚生労働省「第110回保健師国家試験、第107回助産師国家試験及び第113回看護師国家試験の合格発表」
保健師国家試験の合格基準と試験内容

保健師国家試験は、毎年2月に実施される筆記試験です。合格するには、決められた基準点を上回る必要があります。
ここでは、合格基準となる得点の考え方、出題される科目や範囲、試験の日程と形式について整理します。試験の全体像をつかんでおくことで、対策の方向性が見えやすくなります。
合格基準は正答率60%
保健師国家試験の合格基準は、総得点のおおむね60%程度に設定されています。一般問題は1問1点、状況設定問題は1問2点で採点され、その合計得点が基準点を上回れば合格となります。
合格基準点は、その年の試験の難易度に応じて毎回設定・公表されます。満点や高得点を取る必要はなく、6割程度を確実に得点できれば合格ラインに届くという点は、対策を考えるうえで重要なポイントです。裏を返せば、苦手分野を残したまま本番に臨むと、6割のラインを割り込むリスクがあるということでもあります。
幅広い分野から満遍なく得点する力が求められるため、特定の科目に偏らず、全体をバランスよく仕上げることが合格への近道です。
合格基準と配点ルール
合格ラインは総得点のおおむね6割。基準点は毎回設定・公表される
(総得点のおおむね)
(配点の重みが大きい)
※状況設定問題は1問2点のため、得点への影響が大きい。
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試験科目と出題範囲
保健師国家試験では、保健師として働くうえで必要となる専門分野が幅広く出題されます。
中心となるのは、公衆衛生看護学・疫学・保健統計学・保健医療福祉行政論といった、看護師国家試験では深く問われない分野です。
- 公衆衛生看護学(地域・産業・学校保健などの保健活動)
- 疫学(病気の発生要因や予防に関する考え方)
- 保健統計学(人口統計や保健に関するデータの読み方)
- 保健医療福祉行政論(法律・制度・行政の仕組み)
これらの分野は、個別の知識を暗記するだけでは得点しにくく、制度や統計を実際の保健活動と結びつけて理解する力が問われます。地域の健康課題に対してどう対応するかといった、応用的な視点が必要になる点が特徴です。
試験日程と形式
保健師国家試験は、例年2月中旬に全国の会場で実施されます。看護師国家試験とは別日に行われるため、養成課程の学生は両方の試験に向けた準備を並行して進めることになります。
出題形式はマークシート方式の筆記試験で、問題数は110問です。午前・午後に分けて実施され、一般問題と状況設定問題が出題されます。看護師国家試験(240問)と比べると問題数は少ないものの、専門性の高い分野に絞って出題されるため、1問あたりの重みは大きいといえます。
合格発表は例年3月下旬に厚生労働省から行われ、合格者は保健師籍への登録手続きを経て、保健師免許を取得できます。
参考:厚生労働省「第112回保健師国家試験、第108回助産師国家試験及び第114回看護師国家試験の合格発表」
合格率が高くても油断できない理由

保健師国家試験の合格率は例年90%前後と高い水準にありますが、この数字だけを見て安心するのは危険です。合格率の高さには理由があり、その背景を理解しないまま準備を進めると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。ここでは、合格率が高くても油断できない3つの理由を解説します。
受験者が専門教育を受けた人に限られる
保健師国家試験の合格率が高い最大の理由は、受験できる人が限られている点にあります。保健師国家試験を受けられるのは、保健師養成課程で所定のカリキュラムを修了した人、または修了見込みの人だけです。
つまり、合格率90%という数字は、すでに専門教育を受けて一定の知識を身につけた集団のなかでの割合です。誰でも受けられる試験で90%が合格しているわけではありません。専門教育を受けた人どうしの試験で1割前後が不合格になっていると考えると、決して油断できる数字ではないことがわかります。
統計や制度の細かい知識が問われる
保健師国家試験では、疫学や保健統計学、保健医療福祉行政論といった分野から、細かい知識が問われます。これらは数字や制度を正確に理解していないと得点しにくく、あいまいな暗記では対応できません。
たとえば、各種統計の指標の意味や計算方法、関連する法律の規定など、正確な知識がないと迷ってしまう問題が多く出題されます。看護師国家試験で得意だった人でも、これらの分野は新たに学び直す必要があり、付け焼き刃の対策では苦戦しやすい部分です。
既卒になると合格率が下がる
前述のとおり、保健師国家試験では新卒と既卒で合格率に大きな差があります。新卒の合格率が9割前後で安定している一方、既卒者の合格率は年度によっては3割前後まで下がることがあります。
一度卒業して看護師として働き始めると、仕事と勉強の両立が難しくなり、まとまった学習時間を確保しづらくなります。また、養成課程で学んだ専門知識も時間とともに薄れていきます。「いつか受け直せばいい」と先延ばしにすると、合格のハードルが一気に上がってしまう点には注意が必要です。
同じ試験でも「直近で学んだか」で差がつく
※新卒89.9%は第112回保健師国家試験の値。既卒は年度により3割前後まで下がる年がある。
参考:厚生労働省「第112回保健師国家試験、第108回助産師国家試験及び第114回看護師国家試験の合格発表」
保健師になるまでの本当の難しさ

保健師国家試験そのものの合格率は高いものの、保健師になるまでの道のりには、試験以外の難しさがあります。
むしろ、国家試験に合格すること以上に、受験資格を得るまでの過程が大きなハードルになるケースも少なくありません。ここでは、保健師を目指すうえで知っておきたい3つの難しさを解説します。
保健師免許の交付までの道のり
看護師資格を土台に、もう一段の関門を越える
※選抜・同時受験・両方合格という三重の条件が「本当の難しさ」になる。
保健師養成課程が選抜制・選択制
保健師になるには、看護系大学や保健師養成校で保健師養成課程を修了する必要があります。しかし、多くの看護系大学では、保健師課程を全員が履修できるわけではありません。
成績や面接などによる選抜が行われ、学年で限られた人数しか保健師課程に進めない大学も多いのが実情です。保健師を目指すには、まず大学入学後の選抜を勝ち抜く必要があり、この段階で希望がかなわないこともあります。保健師資格を確実に取得したい場合は、全員が保健師課程を履修できる大学や、専攻科・大学院などのルートを事前に調べておくことが大切です。
今のあなたの状況は?
看護師国家試験との同時受験
保健師養成課程の学生は、保健師国家試験と看護師国家試験を同じ年に受験するのが一般的です。2つの国家試験に向けて並行して準備を進める必要があり、これが大きな負担になります。
看護師国家試験は240問と問題数が多く、出題範囲も広い試験です。これに加えて、公衆衛生看護学や疫学といった保健師特有の分野も仕上げなければなりません。限られた時間で2つの試験範囲を同時にカバーすることが求められるため、計画的な学習スケジュールが欠かせません。
看護師免許がないと保健師免許も取得できない
意外と知られていないのが、保健師免許の取得には看護師免許が前提になるという点です。保健師国家試験に合格しても、看護師国家試験に合格していなければ、保健師免許は交付されません。
つまり、保健師として働くには、保健師と看護師の両方の国家試験に合格する必要があります。仮に保健師国家試験だけ合格して看護師国家試験に不合格だった場合、その年は保健師免許を取得できず、翌年に看護師国家試験を受け直すことになります。2つの資格の関係を正しく理解しておくことが重要です。看護師と保健師の違いや、それぞれの働き方については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
保健師国家試験の難易度を看護師国家試験と比較

保健師国家試験と看護師国家試験は、同じ年に受験することが多いものの、その性質は大きく異なります。看護師国家試験が全240問と問題数が多く、出題範囲も広いのに対し、保健師国家試験は110問と問題数自体は少なめです。
ただし、問題数が少ないからといって易しいわけではありません。保健師国家試験で中心に問われるのは、公衆衛生看護学・疫学・保健統計学・保健医療福祉行政論など、看護師国家試験ではあまり深く扱われない分野です。これらは制度や統計の細部を正確に理解したうえで、地域の健康課題にどう対応するかという複合的な思考が求められます。
そのため、看護師国家試験の勉強がそのまま保健師国家試験の対策になるわけではありません。看護師国家試験で高得点を取れる人でも、保健師特有の分野は別途しっかり学習しないと、付け焼き刃では合格しにくいのが実情です。問題数の少なさに惑わされず、専門分野を確実に仕上げることが、保健師国家試験を突破するカギになります。
看護師国試 と 保健師国試 ― 問われ方の違い
出題の範囲
解剖生理から各科の看護まで広く浅く。臨床全般を網羅する。
問われ方
基礎知識と患者個別の臨床判断。出題量が多く取りこぼしを防ぐ力。
出題の範囲(中心分野)
公衆衛生看護学 疫学 保健統計 行政論
問われ方
制度・統計の細部と集団を捉える複合的思考。付け焼き刃が効きにくい。
問題数は少なくても、看護師国試で深く扱わない分野が中心になる。
参考:厚生労働省「第112回保健師国家試験、第108回助産師国家試験及び第114回看護師国家試験の合格発表」
保健師国家試験の難易度を踏まえた対策

保健師国家試験は、合格率こそ高いものの、専門分野を確実に仕上げなければ合格ラインに届かない試験です。
ここでは、これまで見てきた難易度の特徴を踏まえて、効果的な対策を3つ紹介します。基本を押さえた学習を積み重ねることが、確実な合格につながります。
合格をつかむ対策の3ステップ
過去問で土台を作り、頻出分野を固め、模試で仕上げる
※基準ぎりぎりでなく上乗せした得点を狙うのが安全圏。
過去問を繰り返し解く
保健師国家試験対策の基本は、過去問の繰り返し演習です。過去問を解くことで、出題されやすいテーマや問われ方の傾向をつかむことができます。
特に保健師国家試験は、似たテーマが形を変えて繰り返し出題される傾向があります。過去数年分の問題を解き、間違えた問題は解説を読んで理解し直すというサイクルを繰り返すことで、知識が定着していきます。一度解いて終わりにせず、正答を選べるようになるまで何度も繰り返すことが大切です。
公衆衛生看護学・疫学・統計を重点的に学ぶ
保健師国家試験で得点の差がつきやすいのが、公衆衛生看護学・疫学・保健統計学といった専門分野です。これらは看護師国家試験ではあまり深く問われないため、保健師課程で新たに学ぶ内容が中心になります。
統計の指標の意味や疫学の考え方は、丸暗記では対応しにくく、仕組みから理解しておく必要があります。苦手意識を持つ人が多い分野ですが、ここを得点源にできるかどうかが合否を分けます。早めに着手し、繰り返し復習して理解を深めておきましょう。
転職活動するなら?
模擬試験で7割以上を目指す
本番に向けては、模擬試験を活用して実力を客観的に把握することが効果的です。合格基準が総得点の約6割であることを踏まえると、模擬試験の段階では7割以上の得点を一つの目安にしておくと安心です。
模擬試験は、時間配分を確認したり、本番の形式に慣れたりするうえでも役立ちます。結果に一喜一憂するのではなく、間違えた分野を洗い出し、本番までに弱点を埋めるための材料として活用することが大切です。本番直前まで弱点の補強を続けることで、合格の確実性を高められます。
- 過去問は数年分を繰り返し、間違えた問題は解説まで読み込む
- 公衆衛生看護学・疫学・統計は早めに着手して得点源にする
- 模試は7割を目安に、本番直前まで弱点を補強し続ける
保健師の難易度に関するよくある質問

ここでは、保健師国家試験の難易度に関して、受験を考えている方からよく寄せられる質問にお答えします。独学での合格や既卒受験、看護師とのダブル受験など、不安に感じやすいポイントを整理しました。
保健師国家試験は独学で合格できる?
保健師国家試験は、養成課程で学んだ内容をしっかり復習すれば、参考書や過去問を使った独学での合格も十分に可能です。ただし、そもそも保健師国家試験を受験するには保健師養成課程を修了している必要があるため、完全に独学だけで受験資格を得ることはできません。
養成課程での学習を土台に、過去問演習と苦手分野の復習を自分で進めることが、現実的な「独学」のかたちになります。公衆衛生看護学や統計など難しい分野は、わからない点を教員や仲間に確認しながら進めると効率的です。
既卒でも保健師国家試験に合格できる?
既卒でも保健師国家試験に合格することは可能です。ただし、データ上は新卒に比べて既卒の合格率が大きく下がる傾向があるため、相応の準備が必要になります。
働きながら受験する場合は、まとまった学習時間を確保しにくいことが最大の課題です。学習計画を立てて、毎日少しずつでも継続する工夫が合格のカギになります。可能であれば、在学中の現役合格を目指すのがもっとも確実です。なお、保健師として働く道だけでなく、看護師資格を活かした幅広いキャリアについては、こちらの記事も参考になります。
看護師と保健師のダブル受験は難しい?
看護師と保健師のダブル受験は、決して簡単ではありませんが、養成課程の学生にとっては一般的なことです。多くの学生が同じ年に両方の試験を受け、合格しています。
難しさの中心は、2つの試験範囲を限られた時間で同時に仕上げる点にあります。看護師国家試験の幅広い範囲に加え、保健師特有の専門分野も並行して学ぶ必要があるため、早い段階からの計画的な学習が欠かせません。看護師国家試験の対策を軸にしつつ、保健師分野は専門科目として別枠で時間を確保する進め方が現実的です。
まとめ
保健師国家試験の合格率は例年90%前後と高く、数字の上では難易度が高くないように見えます。しかし、その背景には「専門教育を受けた人だけが受験している」という前提があり、合格率の高さだけで簡単な試験と判断するのは適切ではありません。
保健師になるまでの本当の難しさは、試験そのものよりも、保健師養成課程の選抜を勝ち抜くことや、看護師国家試験との同時受験、看護師免許がなければ保健師免許も取得できないという仕組みにあります。また、既卒になると合格率が大きく下がるため、現役のうちに集中して対策し、確実に合格しておくことが大切です。
対策としては、過去問の繰り返し演習を基本に、公衆衛生看護学・疫学・統計といった専門分野を重点的に学び、模擬試験で7割以上を目指すことが効果的です。試験の特徴を正しく理解し、計画的に準備を進めることで、保健師国家試験は十分に乗り越えられる試験だといえます。





