がん専門薬剤師とは?認定薬剤師との違いや業務内容、資格取得方法について解説

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がん薬物療法は、薬剤師の専門性が最も発揮されると言えるでしょう。

抗がん剤の種類は年々増え、副作用マネジメントや治療方針の個別化など、薬物療法の重要性はますます高まっています。

その中でも、日本医療薬学会が認定する「がん専門薬剤師」は、がん薬物療法のプロフェッショナルとして活躍できる資格です。

患者さん一人ひとりの治療に深くかかわりながら、チーム医療の中心で信頼される存在を目指せます。

この記事では、がん専門薬剤師の詳しい内容について、がん領域のほかの認定資格との比較、資格の申請方法について解説します。

薬剤師の転職、プロが伴走します

がん専門薬剤師とは?

がん専門薬剤師は、一般社団法人日本医療薬学会が認定する資格です。日々進歩していくがん薬物療法について高度な知識・技術を持つ薬剤師を養成し、チーム医療の一員としてがん患者さんのサポートをすることを目的としています。

がん専門薬剤師はがん領域で一定水準以上の知識と技術が求められるため、認定を受けるには試験の合格に加えて「5年以上の研修」「50症例以上の報告」など、さまざまな要件を満たさなければなりません。 

がん専門薬剤師の仕事内容

医療現場において、がん専門薬剤師は薬物療法のプロとしてがん患者さんの安全を守り、薬剤師の立場からケアをしていきます。

がん専門薬剤師の仕事内容として、具体的には以下のようなものがあります。

仕事内容 詳細
レジメンの審査 院内で申請されたレジメンがエビデンスに基づいたものであるか審査する。
レジメン内容のカルテ登録 審査を通ったレジメンをカルテに登録する。輸液・ルート・調整方法・投与量・投与方法などの具体的な内容を調整する。
治療方法の説明 医師に提案された治療方法を、がん患者さんへわかりやすく説明する。また、複数の治療方法がある場合は選択のための相談をする。
がん治療の副作用に対するケア アドヒアランス・治療効果の確認とともに副作用の発現について確認し、副作用を緩和する支持療法の提案や指導をする。
がん治療体制の整備 院内でがん薬物療法についての講義をしたり、看護師などへ抗がん剤暴露への対策を指導したりする。
外来患者への指導 一部の医療機関で行われている薬剤師外来において、患者さん対応・体調管理を実施する。
がんに関する臨床研究 がん治療のためのエビデンスを集めるための症例をまとめる。

がん患者さんはもちろん、治療にかかわる家族や医療従事者の安全を考慮した治療法を実施できているか、チーム医療の一員として業務にあたります。とくに、がん患者さんの希望や生理的機能、仕事・日常生活、経済的事情などと抗がん剤の特性を把握したうえで、治療法を提案できるようになる知識が必要とされるでしょう。

がん専門薬剤師になるメリット

がん専門薬剤師の資格保有者は2025年4月時点で845名少なく、希少価値の高い資格です。そのため「専門性が確立できる」「転職で有利になる」「医療機関の集患に役立つ」といったメリットがあります。

まず、がん治療のプロとして専門性を確立できます。がん領域の症例を数多く経験し、専門性の高いスキルと知識を身につけたがん薬剤師は、チーム医療の中でも薬のプロとして重宝されるでしょう。

がん治療を専門としている医療機関では、がん専門薬剤師の資格は大きな強みになります。2022年の届出データによると、薬剤師は全国に32万3,690名いるとされています。東京や兵庫、福岡などの都市部を中心に薬剤師が集中しており、医療機関によっては転職倍率も高くなる傾向です。そのような場合に、専門資格を持っていることでほかの薬剤師との差別化が図れます。

がん専門薬剤師が転職に有利となる理由の一つは、この資格が医療機関の広告に活用できる点です。薬剤師の中では初めて広告が認められた資格であり「一般社団法人日本医療薬学会認定 がん専門薬剤師 氏名」といった表記で、一般向けの看板や新聞・雑誌などに掲載可能です。がん領域を扱う病院やその門前薬局、特色を出したい薬局などでは、特に重宝されるでしょう。

今のあなたの状況は?

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がん領域の専門薬剤師と認定薬剤師の違い

がん領域には複数の資格があり、混同されがちです。しかし、資格の種類によって得意とする分野が異なり、特に専門薬剤師と認定薬剤師では専門性の高さにも違いが出てきます。

必要な知識やスキルの違い

簡単に言うと、認定薬剤師のステップアップ先として専門薬剤師が設置されています。専門薬剤師・認定薬剤師ともに多くの資格を認定している日本病院薬剤師会の定義を参考にすると、専門薬剤師と認定薬剤師の違いは以下のとおりです。

必要な知識・スキル
専門薬剤師 ある専門分野の薬物療法について十分な知識とスキルを持ち、医療機関にて質の高い業務を実践する ほかの薬剤師を指導、研究も行える知識とスキル
認定薬剤師

対応可能な業務も異なります。例えば、認定薬剤師は抗がん剤の治療効果や副作用の血中濃度モニタリングが主な業務となりますが、専門薬剤師はさらに高度なモニタリングを行い医師への処方提案やレジメンの審査も業務に追加されます。

認定方法の違い

認定薬剤師は講習や単位の修得と認定試験の合格があれば取得できることが多いですが、専門薬剤師はプラスして症例報告や学会発表の実績が求められます。

<認定薬剤師>

  • 講習や単位修得、認定試験の合格で取得可能
  • 臨床での実践力を評価する資格

<専門薬剤師>

  • 講習や単位修得、認定試験の合格が必要
  • 症例報告や学会発表の実績が必要
  • 教育や研究活動にも関与する高度な専門性が必要

このように、専門薬剤師は認定薬剤師と比較して取得のハードルが高いことが特徴です。

がん領域の専門薬剤師と認定薬剤師

がん領域の専門薬剤師は、がん専門薬剤師のほかに「がん薬物療法専門薬剤師」「外来がん治療専門薬剤師」があり、認定薬剤師には「がん薬物療法認定薬剤師」と「外来がん治療認定薬剤師」があります。

専門薬剤師資格名 認定学会 主な特徴
がん専門薬剤師 日本医療薬学会 薬剤師の実務経験と本学会の会員歴が5年以上必要。50(3領域のがん種)の症例報告が必要。薬剤師の専門資格として唯一広告が可能。
がん薬物療法専門薬剤師 日本病院薬剤師会 すでにがん薬物療法認定薬剤師を取得している必要がある。病院長または施設長の推薦が必要。症例報告については必要ないが、2回の学会発表と1編の学術論文発表が必要。
外来がん治療専門薬剤師(BPACC) 日本臨床腫瘍薬学会(JASPO) 外来がん治療認定薬剤師の要件に加えて、病院または薬局において5年以上の実務経験が必要。外来がん患者とその家族のトータルサポートをしながら、病院と薬局での連携を密にとる技術が求められる。
認定薬剤資格名 認定学会 主な特徴
がん薬物療法認定薬剤師 日本病院薬剤師会 病院・診療所においてがん薬物療法に3年以上の従事が必要。がん領域の薬剤管理指導の実績が50以上(複数のがん種)必要。病院長または施設長の推薦が必要。
外来がん治療認定薬剤師(APACC) 日本臨床腫瘍薬学会(JASPO) 薬剤師の実務経験が3年以上、外来のがん患者へのサポート事例が10以上必要。地域のがん医療において、患者とその家族をトータルサポートできる知識とスキルが求められる。

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がん専門薬剤師になるには?

がん専門薬剤師の資格を取得するには、薬剤師としての実務経験のほかに、研修の受講や症例報告、認定試験への合格など、さまざまな条件を満たす必要があります。

認定試験を受けるための条件

がん専門薬剤師の認定には、まず「 日本の薬剤師資格があり、薬剤師としての実務経験5年以上あること」が必須条件となります。また、それ以外にも症例報告や研修への参加が要件として定められているのです。

以下が、がん専門薬剤師の具体的な申請資格です。

がん専門薬剤師の申請資格
(以下の要件を全て満たすこと)
具体的な内容
薬剤師資格 日本の薬剤師資格を持ち、薬剤師として優れた人格と見識を備えている
実務経験 薬剤師としての実務経験5年以上ある
日本医療薬学会の会員 申請時において、5年以上継続して日本医療薬学会の会員である
認定薬剤師 以下のいずれかの認定を受けている
・日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師
・日本病院薬剤師会日病薬病院薬学認定薬剤師
・日本薬剤師会生涯学習支援システム(JPALS)クリニカルラダー5以上
研修歴 日本医療薬学会が認定する「がん専門薬剤師研修施設」において、本学会が定めた研修ガイドラインに従って、がん薬物療法に関する研修を5年以上受けたこと
日本医療薬学会や指定する他団体のセミナー参加 学会細則「別表」で定めるクレジットを5年間で50単位以上取得していること
※5年間は学会の定める一定期間。2025年度の資格申請では「2020年4月~2025年4月」
がん専門薬剤師集中教育講座参加 少なくとも1回は参加(1回以上)
日本医療薬学会の年会参加 少なくとも1回は参加(1回以上)
がん領域の症例報告 5年間に自ら実施したがん患者への薬学的介入をともなう50症例(3領域以上のがん種)を提出すること
研究活動の発表 以下の研究活動のうち、発表あるいは論文の条件のどちらか一方を満たすこと。
・学会発表:2回以上医療薬学に関する全国学会、国際学会あるいは別に定める地区大会での発表(日本医療薬学会が主催する年会において、本人が筆頭発表者となった発表を含むこと)
・論文:1報以上本人が筆頭著者である医療薬学に関する学術論文(国際的もしくは全国的学会誌・学術雑誌に複数査読制による審査を経て掲載された医療薬学に関する学術論文あるいは症例報告)
認定試験 日本医療薬学会が実施する「がん専門薬剤師認定試験」に合格する

がん専門薬剤師の認定を受けるには、まず書類審査を通過する必要があり、通過者だけが試験を受けられます。試験に合格後、症例を提出し最終審査後、認定を受けるのが、通常の流れです。

受講すべき研修

がん専門薬剤師の申請資格の要件に、5年の研修歴があります。研修はどこでも受けられるわけではなく、日本医療薬学会が認定した「がん専門薬剤師研修施設」で行います。詳しくは、日本医療薬学会のがん専門薬剤師研修施設名簿に掲載されているため、確認しましょう。

現在、病院で働いている場合は、勤務先が研修施設であればそのまま研修を受けることができます。勤務先が研修施設でない場合には、施設が認定を受ける、もしくは認定研修施設名簿に掲載されている病院に所属する必要があります。

現在、薬局で働いている薬剤師は、過去に5年の研修歴がある場合にのみ、がん専門薬剤師の資格申請が可能です。薬局ががん専門薬剤師研修施設となることはできないため、過去に研修歴のない薬局薬剤師が資格申請したい場合には、研修施設である病院へ所属することが必要です。

資格取得にかかる難易度

がん専門薬剤師は、がん領域において高度な知識とスキルが求められます。がん専門薬剤師は、がん領域に関して高度な知識とスキルが求められるため、試験の難易度も高いです。また、資格申請へのハードルも非常に高いとされています。

まず、所属する病院が「がん専門薬剤師研修施設」であることが必要です。また、研修やセミナーへの参加、症例報告が必要なため、資格取得までは臨床において最前線の知識を習得することができなければ、資格申請自体が難しいでしょう。さらに、がん専門薬剤師資格が取得できた後も5年ごとに更新が必要です。更新にも症例報告などの要件があります。

海外留学や産前産後休暇、育児休暇、介護休暇、病気療養などで休職した場合には、5年間の更新保留申請が可能ですが、多忙などの理由では更新は保留できません。

転職活動するなら?

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がん専門薬剤師の資格でチーム医療に貢献しよう

がん専門薬剤師は、抗がん剤の適正使用や副作用対策を通じて、がん治療の安全性と効果を高める存在です。資格取得のハードルは高いものの、その分だけ専門性や社会的評価も大きくなります。

「より深く患者さんを支えたい」「専門性を武器にキャリアを築きたい」と考える方には、とくにおすすめの資格です。キャリアアップや転職を考えている薬剤師にとって、がん専門薬剤師は強力な武器となるでしょう。

がん専門薬剤師としてチーム医療に貢献したい場合、申請までの道のりは長いため、計画的な就職・転職が必要です。

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