在宅訪問薬剤管理指導とは?対象患者と算定要件・居宅療養管理指導との違い
「在宅訪問を始めることになったけれど、医療保険と介護保険のどちらで算定するのか分からない」と迷う薬剤師は少なくありません。
在宅訪問薬剤管理指導とは、通院が難しい患者さんの自宅を薬剤師が訪問し、薬の管理や服薬の支援をする仕組みです。
この記事では、対象になる患者さんと令和8年度調剤報酬改定後の算定要件、居宅療養管理指導との違いと判断に迷うケース、在宅に関わる薬剤師の働き方までまとめています。
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在宅訪問薬剤管理指導の対象と目的

「在宅訪問薬剤管理指導」は通称で、調剤報酬点数表での正式な名称は「在宅患者訪問薬剤管理指導料」です。 保険薬局の薬剤師が医師の指示を受けて患者さんの自宅を訪問し、薬歴管理・服薬指導・服薬支援・残薬の確認などをしたときに、医療保険で算定します。
目的は、通院できない患者さんでも薬を安全に使い続けられるようにすることです。
対象になる患者
対象は、在宅で療養していて、通院が困難な患者さんです。 ここでいう「在宅」は自宅だけでなく、病院・診療所や介護老人保健施設以外で療養している場合を指します。
通院できるかどうかの線引きもはっきりしています。 厚生労働省の通知では、少なくとも独歩で、家族や介助者の助けを借りずに来局できる人は算定できないとされています。
医師の指示が前提になること
在宅患者訪問薬剤管理指導は、薬剤師の判断だけでは始められません。 処方医の指示があることが算定の前提で、訪問のあとは指示を出した医師へ訪問結果を文書で報告します。
在宅療養を担う医師と連携する別の医師の求めで訪問した場合は、その医師に加えて、在宅療養を担う医療機関の医師にも文書で情報提供します。
連携する医師については担当医に確認し、薬学的管理指導計画書に医師名と医療機関名を書いて残しておきます。
薬剤師の求人を探す訪問の頻度
訪問の回数や間隔は、患者さんごとに作る薬学的管理指導計画で決めます。 処方日数や服薬状況、残薬の量を見ながら決め、状態が変われば計画を見直して頻度も変えます。
継続的な訪問指導が必要ない人に対して、安易に算定しないことも通知で求められています。 保険で算定できる回数には上限があり、詳しくは後半の「算定回数の上限」で紹介します。
「通院が難しい」「医師の指示がある」の2つが出発点だね!
地域の身近な医療(プライマリ・ケア)に、薬剤師を含む医療職がどう関わるかは以下の記事で紹介しています。
参考:近畿厚生局「在宅患者訪問薬剤管理指導の届出」 / 近畿厚生局「保医発0305第6号 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について 別添3」
居宅療養管理指導との違い

薬剤師が患者さんの自宅を訪問して薬の管理や指導をする点は、在宅患者訪問薬剤管理指導も居宅療養管理指導も同じです。 違いは、医療保険と介護保険のどちらから給付されるかと、それに伴う名称・算定のルールです。
医療保険と介護保険の区分
医療保険で算定するのが「在宅患者訪問薬剤管理指導料」、介護保険で算定するのが「居宅療養管理指導費」です。 要支援の人には「介護予防居宅療養管理指導費」が使われます。
| 在宅患者訪問薬剤管理指導料 | 居宅療養管理指導費 | |
|---|---|---|
| 保険 | 医療保険(調剤報酬) | 介護保険(介護報酬) |
| 対象 | 要介護・要支援の認定を受けていない人 | 要介護・要支援の認定を受けている人 |
| 指示を出す人 | 医師 | 医師または歯科医師 |
| 訪問後の報告先 | 指示を出した医師 | 医師とケアマネジャー |
| 人数の数え方 | 単一建物診療患者 | 単一建物居住者 |
薬局側の手続きにも違いがあります。 医療保険では地方厚生(支)局長への届出が必要ですが、介護保険では、保険薬局の指定を受けた時点で居宅療養管理指導の事業者の指定があったものとみなされます(介護保険法第71条)。
対象者による使い分け
どちらで算定するかは、薬剤師や患者さんが選ぶものではありません。 要介護・要支援の認定を受けている人は介護保険が優先され、医療保険の在宅患者訪問薬剤管理指導料は算定できません。
ただし、急変時の緊急訪問など、要介護認定を受けている人でも医療保険で算定できる項目があります。 同じ日・同じ月に居宅療養管理指導費を算定していると算定できない項目もあるため、組み合わせで確認しておきましょう。
判断に迷うケース
実務でつまずきやすいのは、次の3つのケースです。
1つ目は、訪問を続けている途中で要介護認定を受けた場合です。 要介護認定は、介護保険法第27条第8項により申請した日にさかのぼって効力が生じます。
給付は要介護被保険者等になった日から介護保険に変わるため、認定の結果が出た時点で、申請日以降の訪問は介護保険の扱いになります。
ここから介護保険
2つ目は、退院直後でケアマネジャーがまだ決まっていない場合です。 要介護認定を受けていれば、ケアマネジャーが決まっていなくても介護保険の扱いは変わりません。
3つ目は、末期がんや指定難病の患者さんです。 訪問看護には、要介護認定を受けていても末期の悪性腫瘍などの疾病では医療保険で訪問する例外がありますが、薬剤師の訪問指導にはこの例外がありません。
40〜64歳の患者さんでも、末期がんやパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症などは介護保険の特定疾病にあたるため、要介護認定を受けている可能性があります。 年齢だけで医療保険と決めつけず、認定の有無を確認しておきましょう。
要介護認定を受けたあとに、医療保険の在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定し続けないよう注意が必要です。初回訪問時と認定の更新時には、介護保険証で認定の有無と有効期間を確認しておきましょう。
末期がんなら医療保険だと思ってた…薬剤師は違うんだね
患者さんの自己負担額は、どちらの保険で算定するかと、本人の負担割合によって変わります。 患者さんや家族から費用を聞かれたときは、保険の種別と負担割合を確認してから伝えるのが無難です。
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参考:近畿厚生局「「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」の一部改正について」 / 厚生労働省「社会保障審議会介護給付費分科会(第259回)資料5 居宅療養管理指導」
在宅訪問薬剤管理指導の仕事内容

在宅訪問の仕事は、訪問前の計画づくりから、訪問先での確認、訪問後の報告までがひとつながりになっています。 薬を届けるだけで服薬指導をしていない場合や、施設の職員に薬を渡すだけの場合は、居宅療養管理指導としては算定できません。
薬学的管理指導計画の作成
薬学的管理指導計画は、処方医から受け取った診療状況の文書をもとに、必要に応じて処方医と相談し、訪問看護師などの他職種と情報を共有しながら作ります。 原則として、患家を訪問する前に作成し、薬剤服用歴に添付するなどして保存します。
- 薬剤の管理方法
- 薬物動態・副作用・相互作用などの薬剤特性
- 実施すべき指導の内容
- 患家への訪問回数と訪問間隔
- 少なくとも月1回
- 処方薬剤が変わったとき
- 他職種から情報提供を受けたとき
- 訪問で新しい情報が得られたとき
薬剤の配薬と服薬支援
訪問先では、薬を渡すだけでなく、患者さんや家族が自分で正しく飲める状態をつくることが仕事の中心です。 飲み忘れが多い場合は、一包化やお薬カレンダーの活用、服用時点の整理などを処方医と相談しながら進めます。
服薬の介助を家族や訪問介護員がしている場合は、誰がいつ薬を準備するのかまで確認しておくと、飲み忘れや重複を防ぎやすくなります。
服薬状況や保管状況に問題があり、訪問介護員などの援助が必要と判断した場合は、関係する事業者へ情報提供や助言をします。
残薬と副作用の確認
訪問時に確認する項目は、厚生労働省の通知で薬剤服用歴に記載する内容として決められています。
残薬が多い場合は、飲めていない理由を探ることが大切です。 飲み込みにくい剤形、服用回数の多さ、副作用への不安などが見つかれば、剤形の変更や用法の整理を処方医に提案できます。
薬剤師の求人を探す医師やケアマネジャーへの報告
訪問のあとは、指示を出した医師に訪問結果を文書で報告します。 介護保険で算定する場合は、医師に報告したうえで、ケアマネジャーにケアプランの作成に必要な情報を提供しないと算定できません。
ケアマネジャーによるケアプランがまだ作成されていない場合は、利用者さんが他の介護サービスを使っていれば、本人や家族の同意を得て、その事業者に必要な情報提供や助言をする扱いとされています。
報告書は医師とケアマネジャーで知りたいことが少し違うんだよ!
参考:東京都福祉局「令和7年度 集団指導資料 介護保険法の居宅療養管理指導(薬局)」 / 近畿厚生局「保医発0305第6号 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について 別添3」
在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定要件

令和8年度調剤報酬改定(令和8年3月5日告示)後の点数表では、在宅患者訪問薬剤管理指導料は単一建物診療患者の人数によって3段階に分かれています。
介護保険の居宅療養管理指導費は令和6年度介護報酬改定で定められた単位数で、令和8年6月時点の厚生労働省の資料でも同じ単位数が示されています。
| 区分 | 1人 | 2〜9人 | 10人以上 |
|---|---|---|---|
| 在宅患者訪問薬剤管理指導料医療保険・令和8年度改定 | 650点 | 320点 | 290点 |
| 居宅療養管理指導費(薬局の薬剤師)介護保険・令和6年度改定 | 518単位 | 379単位 | 342単位 |
| 居宅療養管理指導費(病院・診療所の薬剤師)介護保険・月2回まで | 566単位 | 417単位 | 380単位 |
薬局の届出
在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定するには、あらかじめ在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨を地方厚生(支)局長に届け出る必要があります。
届出は「別紙様式3」を使い、次の2点にチェックを入れて提出します。
- 在宅患者訪問薬剤管理指導を実施すること
- 休日・夜間を含む開局時間外でも薬剤師と連絡がとれる電話番号と緊急時の注意事項を、事前に患者さんや家族に説明し、文書で渡すこと
開局時間外の対応は、連携する在宅協力薬局と分担する体制でもかまいません。 その場合は、在宅協力薬局の名称・所在地・連絡先も患者さんに渡す文書に入れます。
算定回数の上限
算定回数は、患者さん1人につき月4回までです。 末期の悪性腫瘍の患者さん、注射による麻薬の投与が必要な患者さん、中心静脈栄養法の対象の患者さんは、週2回かつ月8回まで算定できます。
月2回以上算定する場合は、末期の悪性腫瘍などの患者さんを除き、算定は週1回までです。
令和8年度改定後の点数表では、在宅の患者さんにオンラインで服薬指導をした場合は服薬管理指導料の「4のロ」(59点)で算定し、在宅患者訪問薬剤管理指導料と合わせて上限の回数を数えます。
薬剤師1人あたりの上限もあり、在宅患者訪問薬剤管理指導料1〜3と服薬管理指導料「4のロ」を合わせて週40回までです。
単一建物診療患者の数え方
点数は、患者さんが住む建物で、その薬局が在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している人数(単一建物診療患者の人数)によって変わります。 建物にいる患者さん全体ではなく、自分の薬局が訪問指導をしている人数で数える点がポイントです。
同じ建物でも数え方で点数が変わるから、最初は戸惑うよね
算定できないケース
次のような場合は、在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定できません。
-
通院できる患者さん独歩で、家族や介助者の助けを借りずに来局できる人
-
入院・入所中病院・診療所や介護老人保健施設のほか、医師や薬剤師の配置が義務づけられた施設に入院・入所している場合(別に定める例外を除く)
-
他の薬局が訪問中ほかの保険薬局がすでに訪問薬剤管理指導をしている場合(在宅協力薬局が代わりに訪問する場合を除く)
-
距離が16kmを超える特殊な事情がないのに、患家を中心とした半径16kmの外側にある薬局が訪問した場合
-
要介護・要支援認定を受けている介護保険の居宅療養管理指導費で算定する
-
特別調剤基本料Bの薬局特別調剤基本料Bを算定している保険薬局
16kmを超える訪問が認められるのは、患家から16km以内に在宅患者訪問薬剤管理指導の届出をした薬局がないなどの特殊な事情がある場合です。
特殊な事情がなく、患者さんの希望で16kmを超えて訪問した場合は、保険診療として認められず患者さんの負担になります。 なお、訪問にかかった交通費は、実費を患家が負担するルールです。
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参考:近畿厚生局「令和8年厚生労働省告示第69号 診療報酬の算定方法の一部を改正する件 別表第3」 / 近畿厚生局「保医発0305第6号 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について 別添3」
在宅に関わる薬剤師の働き方

在宅訪問に関わる薬剤師の1日は、訪問先が個人宅中心か、施設中心かで大きく変わります。 これから在宅に関わる人は、制度の理解とあわせて、自分に合う働き方かどうかも確認しておきましょう。
1日の訪問件数と移動
訪問件数は薬局によって差が大きく、制度上の上限として決まっているのは、前述の「薬剤師1人につき週40回」(医療保険の算定分)です。
介護保険の居宅療養管理指導では、1つの建物で10人以上を訪問している利用者さんが訪問実人数の4割強を占めています。
施設や集合住宅をまとめて訪問する場合は、1回の移動で複数の利用者さんを回れるため件数が多くなりやすいです。 個人宅を1軒ずつ回る場合は移動時間が長くなり、車や自転車での移動が中心になります。
移動中に急な問い合わせが入ることもあるため、訪問ルートの組み方も仕事の一部です。
在宅医療での薬剤師の1日の流れは、以下の記事で詳しく紹介しています。
求められる経験とスキル
在宅訪問では、外来以上に患者さんの生活全体を見る力が求められます。
-
薬学的な判断力副作用の兆候や相互作用、腎機能などに応じた用量の見直しに気づき、処方医に提案できる
-
多職種との連携医師・訪問看護師・ケアマネジャーに、相手が使いやすい形で情報を伝えられる
-
生活に合わせた服薬支援一包化や服用時点の整理など、患者さんや家族が続けやすい方法を考えられる
-
麻薬・注射薬の管理医療用麻薬や中心静脈栄養の輸液など、在宅での管理に必要な知識がある
外来での服薬指導の経験は、そのまま在宅でも生かせます。 医療用麻薬や無菌調製が必要な輸液を扱う薬局では、入職後の研修や同行訪問の体制があるかどうかも確認しておくと安心です。
在宅業務を負担に感じやすい理由や、在宅に向いている人の特徴は以下の記事で紹介しています。
求人票で確認したい項目
「在宅あり」と書かれた求人でも、在宅業務の量や中身は薬局によって違います。 応募前や面接で、次の項目を確認しておきましょう。
- 在宅業務の割合(専任か、外来と兼務か)
- 訪問先の内訳(個人宅中心か、施設中心か)
- 1日・1週間あたりの訪問件数の目安
- 移動手段(社用車・自転車・公共交通機関)と運転の有無
- 開局時間外の連絡当番(オンコール)の有無と手当
- 在宅協力薬局との連携や、医療用麻薬・無菌調製への対応状況
- 「在宅あり」だけでは業務量は分からない
- 訪問件数と訪問先の内訳は面接で聞くのが確実
- 可能なら同行見学で移動の実際を見ておく
在宅業務への不安が大きい場合は、外来と兼務で在宅の比率が低い薬局から始めるのも一つの選択肢です。
参考:厚生労働省「社会保障審議会介護給付費分科会(第259回)資料5 居宅療養管理指導」
まとめ
在宅訪問薬剤管理指導(正式には在宅患者訪問薬剤管理指導料)は、通院が難しい患者さんの自宅を薬剤師が訪問し、医師の指示のもとで薬の管理や服薬支援をする仕組みです。
要介護・要支援の認定を受けている人は介護保険の居宅療養管理指導が優先されるため、まずは認定の有無を確認することが判断の出発点になります。
この記事のポイント
- 対象は在宅療養中で通院が困難な患者さん
- 医師の指示と薬学的管理指導計画が算定の前提
- 要介護・要支援の認定があれば介護保険が優先
- 末期がん・指定難病でも薬剤師の訪問に医療保険の例外はない
- 算定は原則月4回まで、薬剤師1人週40回まで
在宅業務に関わりたい人は、制度のルールとあわせて、訪問先の内訳や移動手段、時間外の対応など、求人票だけでは分かりにくい働き方の中身まで確認しておきましょう。
在宅に力を入れている薬局を探したいときは、転職エージェントに相談すると、訪問件数や体制など求人票に載っていない情報まで確認してもらえます。


