看護師が妊娠したらいつ報告する?夜勤の免除と使える制度を解説
妊娠が分かった看護師の多くが最初に迷うのが、「いつ、誰に報告すればいいのか」という点ではないでしょうか。夜勤に力仕事、感染リスクのある処置と、体への負担が大きい業務を抱えながら、人手不足の職場に迷惑をかけたくないという思いから切り出せずにいる方も多いです。
しかし、妊娠中の働き方を調整する仕組みは、労働基準法と男女雇用機会均等法に「権利」として定められています。看護師が請求すれば、事業主は応じなければならない内容が条文で決まっているのです。
この記事では、妊娠判明から産休までにやることを時期別に整理したうえで、報告する相手と順序、夜勤・抗がん剤・放射線業務の調整を上司に頼むときの具体的な言い方、使える制度と受け取れる手当までを解説します。
制度と給付の内容は2026年8月時点のものです
金額・支給率は改正されることがあるため、申請前に加入する健康保険や勤務先の就業規則で最新の内容を確認してください
気になることを
キャリアパートナーに相談できます
気になる内容をお選びください(複数選択可)
【時期別】看護師が妊娠判明から産休までにやること

妊娠が分かった直後に知りたいのは、制度の一覧よりも「今すぐ何をするか」だと思います
ここではまず全体像として、妊娠初期・中期・後期の3つの時期に分けて、何を決め、誰に伝え、どの制度を申請するかだけを整理します。
なお、健診を受けるための時間の確保は男女雇用機会均等法第12条で事業主の義務とされており、確保しなければならない回数は妊娠週数によって変わります。時期の区切りを考えるうえでの目安になります。
妊娠初期(〜15週)
この時期にまずやることは、直属の上司への報告です。妊娠初期はつわりで体調が変動しやすく、勤務の組み替えが必要になる可能性が高いためです。あわせて、シフトを組む立場の主任や副師長にも共有してもらえるよう依頼しておくと調整が進みやすくなります。
次に申し出たいのが、妊婦健診を受けるための時間の確保です。均等法第12条では、妊娠23週までは4週間に1回の頻度で必要な時間を確保することが事業主に義務づけられています。
妊娠初期のうちに、胎児への影響が心配される業務についても職場と相談しておきましょう。
感染リスクの高い処置や抗がん剤の取り扱い、放射線を使う検査の介助などは、妊娠初期にはできるだけ避けたい業務です。勤務先のルールや業務内容を確認しながら、必要に応じて担当を変更してもらえるか相談してみてください。
また、医師から仕事上の配慮について具体的な指示を受けた場合は、「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」に記入してもらい、職場へ提出する方法もあります。
- 妊娠が確定したら直属の上司へ報告する
- 妊婦健診の時間の確保を申し出る(23週までは4週間に1回)
- 感染・抗がん剤・放射線に関わる業務の調整を相談する
- 医師の指導があれば母健連絡カードを提出する
妊娠中期(16〜27週)
体調が落ち着いてくる時期ですが、お腹の膨らみが目立ち始め、周囲にも気づかれやすくなります。このタイミングで部署スタッフへの報告を行い、業務の分担を正式に組み替えてもらうのが一般的です。
妊娠中期に入ったら、夜勤や残業を続けるかどうかについても、体調をみながら職場と相談していきましょう。
労働基準法第66条では、妊産婦本人から申し出があった場合、時間外労働や休日労働、深夜業をさせてはならないと定められています。夜勤や残業を減らしたい場合は、翌月のシフトが決まる前など、できるだけ早めに伝えておくと勤務調整がスムーズです。
妊婦健診は、妊娠24週以降になるとそれまでより頻度が増えていきます。夜勤明けや勤務の前後に健診を入れると負担になりやすいため、勤務希望を出す際に健診の日程もあわせて伝えておくと安心です。
また、産休・育休の申請方法や提出する書類は勤務先によって異なります。妊娠中期のうちに就業規則や院内のルールを確認し、いつまでに何を準備すればよいか整理しておくと、その後の手続きも進めやすくなります。
妊娠後期(28週〜)
後期は、休業に向けた手続きを固める時期です。産前休業は出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から請求できます。単胎妊娠であれば妊娠34週にあたるため、それまでに人事・総務へ産休と育休の書類を提出しておきます。
健診は妊娠36週以後、出産までは1週間に1回になります。この頃には勤務そのものの負担が大きくなるため、勤務時間の短縮や休憩回数の増加といった措置を、母健連絡カードを使って追加で申し出るケースも多いです。
さらに、出産費用の支払いを軽くする直接支払制度を利用するかどうかも、出産する医療機関と事前に取り決めておく必要があります。手当の申請書類は産後にまとめて提出するものが多いため、後期のうちに提出先と期限だけ確認しておくと産後の負担が減ります。
参考:厚生労働省「働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について」 / 厚生労働省「母健連絡カードについて|働く女性の心とからだの応援サイト」
看護師の妊娠報告は誰に伝える?

妊娠報告は、シフトを組む人・一緒に業務を回す人・書類を扱う人がそれぞれ分かれているため、直属の上司 → 部署スタッフ → 人事・総務という順番が基本になります。
伝える内容も相手によって変わります。上司には勤務調整に必要な情報、スタッフには業務分担に関わる情報、人事には手続きに必要な情報を、それぞれ過不足なく伝えるのがポイントです。
直属の上司への報告
最初に伝える相手は、勤務表を作成する立場である師長などの直属の上司です。報告の目安としてよく挙げられるのが妊娠8週前後で、心拍が確認され妊娠の経過がある程度見通せる時期であること、つわりで勤務調整が必要になり始める時期であることが理由とされています。
ただし、この時期はあくまで目安です。つわりが重い場合や、切迫流産・多胎妊娠などのハイリスク要因がある場合は、8週を待たずに報告して差し支えありません。逆に体調が安定していて業務にも支障がなければ、少し後になることもあります。
上司に伝えるときは、次の3点をセットで話すと調整がスムーズです。
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出産予定日産休の開始時期を逆算してもらうため
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現在の体調と医師からの指導内容勤務の可否を判断してもらうため
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外してほしい業務と続けられる業務代替要員の必要度を判断してもらうため
なお、妊娠を報告したことを理由に、解雇や契約更新の拒否、降格、減給、不利益な配置転換などを行うことは、男女雇用機会均等法第9条で禁止されています。報告は不利益を受けるリスクではなく、法律に守られた行為です。
部署スタッフへの報告
部署のスタッフ全体への報告は、妊娠16週前後、安定期に入ってからとする職場が多いです。夜勤の回数を減らしたり、力仕事を代わってもらったりすると、周囲は理由を知らないまま負担を引き受けることになるため、業務調整を本格化させる前に共有しておく方が関係はこじれません。
伝え方は、朝の申し送りやカンファレンスの場でまとめて話す方法と、上司から周知してもらう方法があります。自分から話しづらい場合は、上司に「スタッフへの共有をお願いしたい」と依頼して構いません。
このとき、外してもらう業務と、これまで通り担当できる業務をはっきり伝えておくと、周囲も遠慮なく声をかけやすくなります。「できないこと」だけを伝えると過度に気を遣われ、かえって働きにくくなることがあります。
人事・総務への手続き連絡
制度の申請窓口は、多くの病院で人事課や総務課になります。上司への報告が済んだら、産前産後休業・育児休業の申請、健康保険と雇用保険の給付の手続きについて、必要な書類と提出期限を確認しましょう。
産休・育休の申請書類と提出期限は勤務先ごとに異なります。就業規則と院内規程を必ず確認し、不明な点は自己判断せず人事へ問い合わせてください。特に育児休業の申し出は法律上の期限が定められている一方、院内では独自の様式や事前面談を設けている場合があります。
また、産前産後休業と育児休業の期間中は、健康保険料と厚生年金保険料が本人負担・事業主負担ともに免除されます。免除は事業主が年金事務所へ届け出ることで適用されるため、申請書類の提出漏れがないよう確認しておきましょう。
報告する相手別 時期・内容・目的の整理
参考:厚生労働省「働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について」 / 日本年金機構「厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)」
今のあなたの状況は?
妊娠中の看護師が相談したい業務調整

「重い仕事は避けたほうがよい」と言われても、どの仕事を調整してもらえばよいのか迷うこともあるでしょう。職場に相談するときは、「どの業務を減らしたい・外してほしいのか」まで具体的に伝えると、勤務を調整してもらいやすくなります。
ここでは、夜勤・時間外労働・身体的な負担・感染リスク・抗がん剤・放射線の6つに分けて、妊娠中に確認しておきたい制度や注意点、職場へ相談するときの伝え方を整理します。
法律によって申し出ることで免除を受けられるものもあれば、医師の指導や職場との相談をもとに業務を調整するものもあります。それぞれの違いもあわせて確認していきましょう。
夜勤の免除・回数の調整
労働基準法第66条第3項では、妊産婦本人から申し出があった場合、深夜業をさせてはならないと定められています。深夜業とは午後10時から午前5時までの勤務を指すため、看護師の夜勤も申し出ることで免除を受けられます。
ただし、妊娠したからといって自動的に夜勤から外れるわけではありません。夜勤を免除してほしい場合は、本人から職場へ伝える必要があります。
体調や働き方にあわせて職場と相談し、「夜勤の回数を減らしたい」「深夜帯を含む勤務は外してほしい」など、希望する働き方を具体的に伝えると勤務調整もしやすくなります。
上司に伝えるときの言い方の例です。
- 労働基準法の深夜業の免除を請求したいので、来月から夜勤を外していただけますか
- 夜勤は続けたいのですが、回数を月2回までに減らす形で調整をお願いできますか
- 体調により変動があるため、当面は深夜勤のみ外して様子を見させてください
時間外労働と休日労働の免除
夜勤と同じように、残業や休日出勤についても、妊産婦本人から申し出ることで免除を受けられます。労働基準法第66条第2項では、妊産婦が請求した場合、時間外労働や休日労働をさせてはならないと定められています。
勤務時間を過ぎてからの業務や、参加が実質的に必要となっている勉強会・委員会活動なども、負担に感じる場合は職場に相談してみましょう。
また、変形労働時間制を採用している職場でも、妊産婦から申し出があれば、1日や1週間の法定労働時間を超える勤務について配慮が必要になります。シフト勤務が中心の看護師にとっては、夜勤だけでなく勤務時間全体を見直す際に知っておきたい制度です。
こうしたルールは、職場の善意に任されているものではなく、法律で定められています。無理なく働き続けるためにも、必要な場合は早めに職場へ相談しておくとよいでしょう。
申し出ることで免除・転換を受けられるもの(労働基準法)
- 深夜業(午後10時〜午前5時)=第66条第3項
- 時間外労働・休日労働=第66条第2項
- 変形労働時間制での法定時間超えの労働=第66条第1項
- 軽易な業務への転換=第65条第3項※妊娠中の女性が対象
身体負担の大きい業務からの除外
労働基準法第65条第3項では、妊娠中の女性が請求した場合、事業主は他の軽易な業務に転換させなければならないと定められています。看護業務のなかで負担が大きいものを具体的に挙げると、次のような作業が該当します。
- ベッドから車椅子・ストレッチャーへの移乗介助
- 体位変換や体重のある患者さんの抱え上げ
- 入浴介助や清拭など、前傾姿勢が続く処置
- 手術室での長時間の立位や器械出し
- 夜間の一人での急変対応や搬送
厚生労働省は、医師の指導に基づく措置の例として、連続して1時間程度以上の立作業を避けること、同一姿勢での作業を1時間以内とすること、1日1〜2時間程度の勤務時間短縮といった内容を示しています。相談の場では「重いものは無理です」ではなく、「移乗介助は外し、立位が続く処置は1時間以内で交代させてほしい」と数字を添えて伝えると、勤務表に落とし込みやすくなります。
通勤の負担も調整の対象です。ラッシュ時の通勤がつらい場合は、始業・終業を各30〜60分ずらす時差通勤や、1日30〜60分程度の勤務時間短縮を申し出ることができます。
相談時はこの数字を添えて伝えると勤務表に反映されやすい
感染リスクの高い業務からの除外
看護師にとって避けて通れないのが、胎児への影響が問題になる感染症への曝露です。特に注意が必要なのは、風疹・麻疹・水痘・ムンプス・サイトメガロウイルス・ヒトパルボウイルスB19です。
妊娠中は風疹・麻疹・水痘・ムンプスの生ワクチンを接種できません。そのため、抗体がない、あるいは接種歴が確認できない場合は、ワクチンではなく業務の切り替えで対応することになります。院内感染対策部門に自分の抗体価と予防接種歴を確認し、記録を上司へ共有しましょう。
| 感染症 | 胎児への影響 | 感染経路 | 現場での対応 |
|---|---|---|---|
| 風疹 | 先天性風疹症候群(先天性心疾患・難聴・白内障等) | 飛沫感染 | 抗体価を確認し、発疹のある患者さんの受け持ちを外れる |
| ヒトパルボウイルスB19(伝染性紅斑) | 胎児水腫・流産・死産(初感染時) | 飛沫感染・接触感染 | 疑い例のケア・トリアージを他のスタッフに交代する |
| サイトメガロウイルス | 難聴・小頭症・低出生体重・脈絡網膜炎など(先天性感染) | 乳幼児の尿・唾液を介した接触感染 | 乳幼児との密接な接触を避け、曝露後の手洗いを徹底する |
| 麻疹・水痘 | 水痘は先天性水痘症候群、麻疹は流産・死産のリスクが問題になる | 空気感染・飛沫感染・接触感染 | 生ワクチンを接種できないため、疑い例の隔離対応は他のスタッフに交代する |
相談の場では、次のような伝え方ができます。
- 風疹の抗体価が基準を下回っているため、発疹のある患者さんの受け持ちを外してほしい
- 小児科・感染症病棟の応援勤務から当面外してほしい
- 麻疹・水痘の疑い例のトリアージや隔離対応は他のスタッフに交代してほしい
抗がん剤を扱う業務からの除外
抗がん剤を扱う業務も、妊娠中に確認しておきたいもののひとつです。抗がん剤は、調製するときだけでなく、投与や廃棄などの場面でも、吸入や針刺し、皮膚への付着などによって曝露する可能性があります。
厚生労働省では、抗がん剤を安全に取り扱うため、安全キャビネットの設置や閉鎖式接続器具の活用、マスク・ガウン・手袋・保護メガネなどの適切な着用といった対策を示しています。
注意したいのは、薬剤そのものを扱う場面だけではありません。抗がん剤は投与後48時間程度は体内に残るとされており、患者さんの尿や便、汗などの体液・排泄物、それらが付着したリネン類を介して曝露する可能性もあります。
そのため、おむつ交換や排泄物の処理、尿量測定、シーツ交換など、普段の看護業務についても確認が必要です。抗がん剤治療を受けている患者さんを担当する場合は、どの業務に注意が必要なのか、職場のマニュアルや安全対策を確認しておきましょう。
上司への伝え方としては、業務の段階ごとに区切って依頼するのが現実的です。
- 抗がん剤の調製(ミキシング)業務から外してほしい
- 点滴の接続・抜針・廃棄など、投与に関わる工程を交代してほしい
- 投投与後48時間以内の患者さんの排泄物やリネンの取り扱いは、担当から外してほしい
放射線に関わる業務からの除外
放射線を扱う業務に従事する看護師は、妊娠中の被ばくについても確認が必要です。電離放射線障害防止規則では、妊娠と診断された女性の放射線業務従事者について、妊娠と診断された時点から出産までの線量限度が通常とは別に定められています。
具体的には、内部被ばくによる実効線量は1ミリシーベルト、腹部表面に受ける等価線量は2ミリシーベルトを超えないよう、事業者が管理しなければなりません。
ただし、放射線を使う検査に関わっているからといって、すべての業務から一律に外れるわけではありません。たとえば、透視検査や心臓カテーテル検査のように、撮影中も検査室内で介助する業務では散乱線を受ける可能性があるため、勤務先の放射線管理担当者と業務内容を確認することが大切です。
一方、CTなど撮影時に操作室へ移動できる業務では、担当する作業や被ばく状況によって対応が異なります。なお、MRIはX線や放射性物質を使用する検査ではないため、電離放射線による被ばくとは分けて考える必要があります。
妊娠がわかったら、放射線管理担当者や上司に伝え、自分が担当している業務や線量管理の方法について確認しておきましょう。
妊娠中の線量限度(電離則第6条)
対して、一般の女性放射線業務従事者の限度は
※期間の区切り方も異なるため単純な倍率比較はできない
参考:厚生労働省「働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について」 / 厚生労働省「妊娠中の女性労働者への対応|働く女性の心とからだの応援サイト」 / 厚生労働省「発がん性等を有する化学物質を含有する抗がん剤等に対するばく露防止対策について」
看護師の求人を探す妊娠中の看護師が使える制度

ここまで見てきた業務調整は、いずれも法律の規定に裏づけられています。制度の全体像を押さえておくと、上司や人事と話すときに「お願い」ではなく「制度の利用」として話を進められます。
大きく分けると、労働基準法の母性保護規定、男女雇用機会均等法の母性健康管理措置、そして育児・介護休業法の休業制度の3本立てです。
労働基準法の母性保護規定
労働基準法は、妊産婦の身体的な負担そのものを制限する規定を置いています。趣旨は、妊娠・出産・哺育に有害な状態で働かせないことにあります。
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産前産後休業(第65条第1項・第2項)産前6週間(多胎妊娠は14週間)は請求により、産後8週間は原則就業禁止
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軽易業務転換(第65条第3項)妊娠中の女性が請求した場合、他の軽易な業務に転換させる義務
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危険有害業務の就業制限(第64条の3)妊娠・出産・哺育等に有害な業務に就かせてはならない
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変形労働時間制の適用制限(第66条第1項)請求すれば法定時間を超える労働はさせられない
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時間外・休日労働、深夜業の制限(第66条第2項・第3項)請求すればいずれも免除
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育児時間(第67条)生後満1年に達しない子を育てる女性は1日2回、各30分以上を請求できる
産後休業については、産後8週間は本人が希望しても就業させることができません。ただし産後6週間を経過した後に、本人が請求し医師が支障ないと認めた業務については就業が可能です。
男女雇用機会均等法の母性健康管理措置
均等法は、医師などから受けた指導を職場で実現させるための規定です。労働基準法が「働かせてはいけない範囲」を定めるのに対し、均等法は「医師の指導に沿って働き方を変える」ことを事業主に義務づけています。
第12条では、妊産婦が保健指導や健康診査を受けるために必要な時間を確保することが義務とされています。確保しなければならない回数は、妊娠23週までは4週間に1回、妊娠24週から35週までは2週間に1回、妊娠36週以後出産までは1週間に1回です。出産後1年以内についても、医師等の指示に従って必要な時間を確保することとされています。
第13条では、健康診査等で医師から指導を受けた場合、事業主は勤務時間の変更や勤務の軽減など必要な措置を講じなければならないとされています。具体的には、妊娠中の通勤緩和、妊娠中の休憩に関する措置、妊娠中または出産後の症状等に対応する措置の3つです。
健診の時間は「有給か無給か」まで法律で決まっているわけではありません。取り扱いは就業規則で定められているため、事前に確認しておきましょう。
母性健康管理指導事項連絡カード
母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)は、医師などから受けた勤務上の指導内容を、職場へ正確に伝えるためのものです。
たとえば、「夜勤を控える」「勤務時間を短縮する」「休憩を増やす」といった指導を受けた場合は、カードに記載してもらい職場へ提出することで、必要な配慮を具体的に伝えやすくなります。
口頭だけでは勤務調整が進みにくい場合でも、医師の指導内容を書面で共有することで、職場側も対応を検討しやすくなります。体調に応じた働き方を相談するときに活用できる制度のひとつです。
使い方は次の3ステップです。
- 入手する:厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト」からダウンロードする(母子健康手帳にも様式が掲載されています)
- 記載を依頼する:健康診査を受けた際、主治医等に症状と必要な措置を記入してもらう
- 提出する:勤務先の事業主(実務上は上司または人事担当者)に提出し、措置を申し出る
産前産後休業
産前休業は、出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から取得できます。ただし、産前休業は本人が請求して初めて取得できるもので、自動的に始まるわけではありません。出産予定日より遅れて出産した場合、その遅れた期間も産前休業として扱われます。
産後休業は、出産日の翌日から8週間です。こちらは本人の請求を必要とせず、原則として就業させることができません。産後6週間を経過した後に本人が請求し、医師が支障ないと認めた業務についてのみ就業できます。
産前産後休業の期間中は、健康保険料と厚生年金保険料が免除されます。免除された期間も保険料を納めた期間として年金額の計算に反映されるため、将来の年金が減ることはありません。
育児休業
育児休業は、原則として子が1歳になるまで取得できる休業です。保育所に入れないなどの事情がある場合は、1歳6か月、さらに2歳まで延長できます。
近年の改正で柔軟性が高まっており、子1人につき原則2回まで分割して取得できるようになりました。夫婦で交代しながら取得する、いったん復帰してから再度取得するといった使い方が可能です。配偶者側には、子の出生直後に取得できる出生時育児休業(産後パパ育休)の枠組みもあります。
また、2025年4月と10月に段階的に施行された改正により、子の看護等休暇の対象が拡大され、柔軟な働き方を実現するための措置が事業主に求められるようになりました。復帰後の働き方にも関わるため、育休の申し出とあわせて院内の運用を確認しておくとよいでしょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象期間 | 産前6週間(多胎妊娠は14週間)・産後8週間 |
| 請求の要否 | 産前は本人が請求した場合に取得/産後は請求の有無に関わらず就業させられない(産後6週間経過後は本人請求+医師が支障ないと認めた業務のみ就業可) |
| 分割可否 | 分割取得の定めなし |
| 社会保険料免除 | 本人・事業主とも免除(免除期間も年金額に反映) |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象期間 | 原則子が1歳になるまで(保育所に入れない等の事情で1歳6か月、さらに2歳まで延長可) |
| 請求の要否 | 本人が申出(請求)した場合に取得 |
| 分割可否 | 子1人につき原則2回まで分割取得可 |
| 社会保険料免除 | 本人・事業主とも免除(免除期間も年金額に反映) |
参考:厚生労働省「働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について」 / 厚生労働省「母健連絡カードについて|働く女性の心とからだの応援サイト」 / 厚生労働省「育児休業制度特設サイト」 / 日本年金機構「厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)」
妊娠・出産で受け取れる手当

産休・育休の期間は給与が支払われない職場が多いため、収入の見通しを立てるうえで各種給付の理解が欠かせません。給付は加入している健康保険から出るものと、雇用保険から出るものに分かれます。
金額や支給率は改正が入る分野です。以下は2026年8月時点の内容であり、申請の際は加入する健康保険や勤務先の人事担当に最新の取り扱いを確認してください。
出産育児一時金
出産育児一時金は、出産にかかる費用を補うために健康保険から支給されるお金です。子ども1人につき原則50万円が、加入する保険者から支給されます。令和5年4月から、それまでの原則42万円を13年ぶりに引き上げたものです。
多くの医療機関では直接支払制度が利用できます。これは、出産施設が本人に代わって保険者へ支給申請を行い、保険者から出産施設へ一時金が直接支払われる仕組みです。窓口でまとまった出産費用を用意する必要がなくなるため、出産する医療機関が直接支払制度に対応しているかを事前に確認しておきましょう。
出産費用が50万円に満たなかった場合は、差額を後日請求して受け取ることができます。
出産手当金
出産手当金は、産前産後休業で給与が支払われない期間の生活を支えるために、健康保険から支給される手当です。1日あたりの金額は、支給開始日以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額を30で割り、その3分の2に相当する額として計算されます。
支給開始日以前の被保険者期間が12か月に満たない場合は、その期間の標準報酬月額の平均額と、定められた標準報酬月額の平均額のいずれか低い方を使って計算します。
出産手当金は健康保険の給付であるため、国民健康保険の加入者は原則として対象になりません。退職して家族の扶養に入る予定がある場合は、手当の扱いが変わることがあるため、退職時期を決める前に確認しておくことをおすすめします。
育児休業給付金
育児休業給付金は、育児休業を取得した雇用保険の被保険者に支給される給付です。支給額は、休業開始から6か月までは休業開始時賃金日額に支給日数を掛けた額の67%、6か月経過後は50%となります。
受給するには、育児休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上(または就業時間数80時間以上)の完全月が12か月以上あることが必要です。転職して間もない場合や、非常勤で勤務日数が少ない場合は要件を満たさないことがあるため、育休に入る前に確認しておきましょう。
支給の対象となる期間は1歳未満の子を養育する期間が原則ですが、保育所に入れないなどの事情がある場合は1歳2か月、1歳6か月、2歳までの延長に対応しています。
出生後休業支援給付金
出生後休業支援給付金は、2025年4月に創設された比較的新しい給付です。夫婦がともに育児休業を取得した場合に、育児休業給付金に上乗せして支給されます。
要件はやや複雑ですが、整理すると次の通りです。本人は、子の出生日から起算して8週間(産後休業をした場合は16週間)を経過する日の翌日までの期間内に、同一の子について出生時育児休業または育児休業を通算14日以上取得していること。配偶者も、子の出生日から起算して8週間を経過する日の翌日までの期間内に、同一の子について出生時育児休業または育児休業を通算14日以上取得していることが必要です。
支給額は、休業開始時賃金日額に支給対象日数(28日が上限)を掛け、その13%として計算されます。
出生後休業支援給付金でつまずきやすい点
- 夫婦の両方が14日以上の育休を取る必要がある(片方だけでは対象外)
- 本人と配偶者で、取得を判定する期間の起点が異なる
- 支給対象日数の上限は28日で、休業期間の全体に上乗せされるわけではない
- 配偶者が育休を取れない事情がある場合など、要件を満たさなくても支給される例外がある
要件に当てはまるかどうかは、厚生労働省が公開している簡易診断ツールでも確認できます。判断に迷う場合は、勤務先の人事担当かハローワークへ相談してください。
| 制度 | 支給元 | 受け取る時期 | 金額・支給率 | 主な要件 |
|---|---|---|---|---|
| 出産育児一時金 | 健康保険 | 出産後(直接支払制度なら加入健保から医療機関へ直接支払われる) | 子1人につき原則50万円 | 加入する健康保険の被保険者・被扶養者であること |
| 出産手当金 | 健康保険 | 産前産後休業の期間中 | 1日あたり支給開始日以前12か月の標準報酬月額平均÷30×3分の2 | 健康保険の被保険者が産前産後休業を取得し、給与の支払いがないこと |
| 育児休業給付金 | 雇用保険 | 育児休業の期間中 | 休業開始から6か月まで67%、6か月経過後は50% | 休業開始前2年間に賃金支払基礎日数11日以上(または就業時間数80時間以上)の完全月が12か月以上あること |
| 出生後休業支援給付金 | 雇用保険 | 育児休業給付金に上乗せして支給 | 休業開始時賃金日額×支給対象日数(上限28日)×13% | 本人と配偶者の双方が通算14日以上の育休等を取得すること |
参考:厚生労働省「出産育児一時金等について」 / 全国健康保険協会「出産手当金」 / 厚生労働省「育児休業給付金|母性健康管理に関する用語辞典」 / 厚生労働省「出生後休業支援給付金|母性健康管理に関する用語辞典」
転職活動するなら?
看護師がマタニティハラスメントを受けたときの対処法

夜勤の免除を申し出たら「そんな人は初めて」と言われた、産休の相談をしたら退職をほのめかされた。こうした言動は、妊娠・出産等に関するハラスメント、いわゆるマタニティハラスメントにあたります。
男女雇用機会均等法と育児・介護休業法では、こうしたハラスメントを防止するために事業主が雇用管理上講ずべき措置が義務づけられています。方針の明確化と周知、相談体制の整備、相談があった場合の迅速な事実確認と適正な対処、相談者のプライバシー保護と不利益取扱いの禁止などです。我慢して乗り切るべき問題ではありません。
対処は、証拠を残しながら段階的に進めるのが基本です。
母性健康管理指導事項連絡カードを提出する
最初に検討したいのが、母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)の提出です。
夜勤の免除や業務の軽減について口頭で相談しても調整が進まない場合は、医師の指導内容をカードに記載してもらい、職場へ提出する方法があります。
母健連絡カードが提出された場合、事業主は記載された指導内容に応じて、必要な措置を講じることが求められます。本人の希望だけでなく、医師の指導を書面で共有できるため、勤務内容や働き方について具体的に相談しやすくなります。
提出する際は、提出日や提出先を控えておくと安心です。その後も調整が難しく、労働局などへ相談することになった場合に、いつ・誰に・どのような内容を伝えたのかを整理しやすくなります。
院内の相談窓口に相談する
ハラスメントについて相談できる体制を整えることは、事業主に義務づけられています。勤務先によって窓口は異なりますが、人事・総務部門やハラスメント相談窓口、産業医、看護部などが相談先になることがあります。
直属の上司からハラスメントを受けている場合は、その上司を介さず、院内の相談窓口や人事担当者などに相談して構いません。また、ハラスメントについて相談したことや、事実確認に協力したことを理由に、不利益な取り扱いをすることは禁止されています。
相談するときは、「いつ・どこで・誰から・どのような言動を受けたのか」を時系列で整理しておくと、状況を伝えやすくなります。あわせて、業務の調整や配置の見直しなど、どのような対応を希望しているのかも伝えておくとよいでしょう。
都道府県労働局に相談する
院内で解決しない場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。均等法や育児・介護休業法に関する相談を扱う窓口で、全国の労働局に設置されています。
労働局には、事業主と労働者の間に生じた紛争を解決するための援助制度があります。都道府県労働局長による援助と、弁護士や学識経験者などの専門家である調停委員による調停の2種類です。男女雇用機会均等法では、第15条から第27条にこの紛争解決の仕組みが定められています。
職場でのトラブル全般について相談したい場合は、労働局や労働基準監督署に設置された総合労働相談コーナーも利用できます。援助を求めたことを理由とする不利益取扱いも、法律で禁止されています。
やり取りの記録を残す
どの相談先を利用する場合でも、これまでの経緯を記録しておくことが大切です。相談を受ける側は、記録や本人の説明をもとに事実関係を確認し、その後の対応を検討します。
- 言われた日時・場所・相手・発言内容をメモに残す(できるだけ当日のうちに)
- シフト表や勤務実績表を保管し、免除を申し出た後の勤務がどうなったか分かるようにする
- 申し出や相談はメール・院内チャットなど文字に残る手段を併用する
- 母健連絡カードの写しと提出日を控える
- 体調の変化や受診の記録を残しておく
記録は相手を追及するためだけのものではありません。相談窓口や労働局に状況を正確に伝え、必要な措置を早く引き出すための材料です。
参考:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」 / 厚生労働省「職場でのトラブル解決の援助を求める方へ」 / 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
看護師の求人を探すまとめ
看護師の妊娠報告は、直属の上司に妊娠8週前後、部署スタッフに16週前後が一般的な目安です。ただし体調やハイリスク要因によって前後するため、つらいと感じた時点で早めに伝えて構いません。
夜勤・時間外労働・休日労働は、請求すれば免除される権利です。身体負担の大きい業務も、軽易な業務への転換を求めることができます。相談の場で効くのは、「重い業務は避けたい」という言い方ではなく、外してほしい業務を名前で挙げて伝えることです。
口頭の申し出で動かないときに効くのが、母性健康管理指導事項連絡カードです。提出すれば事業主は記載内容に応じた措置を講じる必要があり、話を制度の話へ切り替えられます。それでも改善しない場合は、院内の相談窓口、続いて都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ相談してください。
産休・育休中は、出産育児一時金・出産手当金・育児休業給付金・出生後休業支援給付金が用意されており、社会保険料も免除されます。まずは今の週数で必要な行動から着手し、制度は使える順に一つずつ申請していきましょう。
- 直属の上司には妊娠8週前後を目安に伝える
- 部署スタッフには16週前後を目安に伝える
- つらいと感じたら目安の週数を待たず前倒しで伝える
- 労働基準法第66条にもとづき、夜勤・時間外労働・休日労働の免除を請求する
- 労働基準法第65条第3項にもとづき、移乗介助や投与後48時間以内の排泄物対応など、外してほしい業務名を挙げて軽易業務への転換を求める
- 口頭で進まないときは母性健康管理指導事項連絡カードを提出する
- 改善しなければ院内の相談窓口、続いて都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ相談する
- 均等法第12条にもとづき保健指導・健康診査の時間を確保する(妊娠23週までは4週に1回、24週から35週は2週に1回、36週以降は1週に1回)
- 均等法第13条にもとづき時差通勤や休憩、勤務時間短縮などの措置を申し出る
- 復帰後に備え、3歳未満の子を養育する労働者への短時間勤務等の措置を確認しておく
- 出産育児一時金(子1人につき原則50万円)の直接支払制度を確認する
- 出産手当金(標準報酬月額の平均額÷30×3分の2)を申請する
- 育児休業給付金(休業開始から6か月は67%、以降は50%)を申請する
- 出生後休業支援給付金(本人と配偶者双方が通算14日以上の育休等取得で対象)を申請する
- 産休・育休中の社会保険料免除の手続きを確認する





