トレムナー反射のやり方と陽性所見・疑われる疾患・自覚症状
トレムナー反射は、中指の指腹を弾いて母指や示指の屈曲が出るかどうかをみる病的反射のひとつです。ベッドサイドで道具を使わずに数秒で行え、上位運動ニューロン(錐体路)の障害を疑うきっかけになります。
トレムナー反射のやり方
トレムナー反射は特別な器具を必要とせず、検者の手だけで実施できます。
- 被検者に座位または背臥位をとってもらい、前腕を回内位(手のひらを下向き)で支える。
- 手指と手関節の力を抜くよう声をかけ、脱力を確認する。
- 検者は被検者の中指の基節部を軽くつまんで持ち上げ、指を軽度背屈位に保つ。
- 中指の指腹(掌側)を、検者の指で下から素早く弾く。
- 母指と示指に屈曲が出るかどうかを観察し、必ず左右で比較する。
判定の目安は次のとおりです。
母指の内転・屈曲、示指の屈曲がみられた場合を陽性とし、錐体路障害の可能性を考えます。
| 所見 | 判定 |
|---|---|
| 母指の内転・屈曲、示指の屈曲が出る | 陽性(錐体路障害の疑い) |
| 指の動きが出ない | 陰性 |
| 明らかな左右差がある | 反応が強い側の病変を疑う |
実施時には次の点に注意します。
- 健常者でも軽度に出現することがあり、この所見だけで病的と断定しない。
- 必ず左右を比較し、左右差の有無を確認する。
- 手指に力が入っていると反応が出にくいため、脱力を十分に促す。
- 腱反射亢進・痙縮など、他の上位運動ニューロン徴候と合わせて総合的に評価する。
上位運動ニューロンとは?
上位運動ニューロンは、大脳皮質の運動野から出て、内包・脳幹を通り脊髄前角へ至る運動指令の経路を担う神経細胞です。皮質脊髄路(錐体路)がその代表で、随意運動の指令を伝えると同時に、脊髄反射を抑制的にコントロールしています。
一方、脊髄前角細胞から末梢神経を経て筋へ至る経路が下位運動ニューロンです。
| 項目 | 上位運動ニューロン障害 | 下位運動ニューロン障害 |
|---|---|---|
| 筋緊張 | 亢進(痙縮) | 低下(弛緩) |
| 腱反射 | 亢進 | 減弱・消失 |
| 病的反射 | 出現する | 出現しない |
| 筋萎縮 | 軽度(主に廃用性) | 高度・early |
| 線維束性収縮 | みられない | みられることがある |
トレムナー反射は、この「病的反射の出現」にあたる所見です。上位運動ニューロンによる抑制が外れることで、通常は現れない反射が誘発されると考えられています。
ホフマン反射・バビンスキー反射との違い
いずれも上位運動ニューロン障害を疑う病的反射ですが、刺激する部位と反応する部位、示唆する病変レベルが異なります。
トレムナー反射とホフマン反射はどちらも上肢で行い、頸髄より上位の病変を示唆します。バビンスキー反射は下肢で行い、より広く錐体路障害全体を反映します。
| 項目 | トレムナー反射 | ホフマン反射 | バビンスキー反射 |
|---|---|---|---|
| 刺激部位 | 中指の指腹を下から弾く | 中指の爪を上から下へはじく | 足底の外側を踵から母趾側へこする |
| 陽性所見 | 母指の内転・屈曲、示指の屈曲 | 母指の内転・屈曲、示指の屈曲 | 母趾の背屈(開扇現象を伴うことがある) |
| 検査部位 | 上肢 | 上肢 | 下肢 |
| 示唆する病変 | 頸髄より上位のレベル | 頸髄より上位のレベル | 錐体路障害全般 |
| 健常者での出現 | みられることがある | みられることがある | 成人ではまれ(乳児では生理的) |
トレムナー反射とホフマン反射は反応が同じで、刺激の方向が違うだけと理解すると整理しやすくなります。どちらも健常者で軽く出ることがあるため、左右差や他の徴候との組み合わせが判断のポイントです。
バビンスキー反射は成人で陽性であれば特異度が高く、錐体路障害を強く示唆します。
疑われる主な疾患
トレムナー反射が陽性で、かつ腱反射亢進などの上位運動ニューロン徴候を伴う場合、次のような疾患が鑑別に挙がります。
- 頸椎症性脊髄症(頸部脊柱管狭窄症)
- 頸椎椎間板ヘルニアによる脊髄圧迫
- 後縦靱帯骨化症(OPLL)
- 脳血管障害(脳梗塞・脳出血)
- 脊髄腫瘍・脊髄損傷
- 多発性硬化症などの脱髄疾患
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
トレムナー反射はあくまでスクリーニングの所見であり、これだけで疾患を確定することはできません。陽性所見が得られた場合は、画像検査や他の神経学的所見と併せて評価を進めます。
伴いやすい自覚症状
頸髄レベルの上位運動ニューロン障害では、患者本人が次のような症状を訴えることがあります。
- 手指の細かい動作がしにくい(ボタンかけ・箸の使用がぎこちない)
- 字が書きにくくなった、字が乱れる
- 手のしびれ・こわばり、両手に広がる感覚異常
- 足がもつれる、階段の上り下りが不安定になる
- 歩行時にふらつく、痙性歩行がみられる
- 頸部から肩・上肢にかけての痛み
- 進行例では排尿障害などの膀胱直腸障害
印刷して活用しよう
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トレムナー反射の方法
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