関節可動域(ROM)測定の参考可動域角度と基本軸・移動軸・測定時の注意点
関節可動域(ROM:Range of Motion)とは、関節が生理的に動くことのできる範囲を角度で表したものです。
日本整形外科学会と日本リハビリテーション医学会が定めた「関節可動域表示ならびに測定法」に基づき、基本肢位(解剖学的肢位)を0°として、各運動方向の角度を5°刻みで測定・記録します。
ROM測定の主な目的は次のとおりです。
- 関節可動域制限の有無と程度を、客観的な数値として把握する
- 制限の原因(関節包・筋・皮膚・疼痛など)がどこにあるかを推測する
- 訓練や治療の効果判定、経過観察の指標にする
- 食事・更衣・入浴などADL(日常生活動作)への影響を評価し、目標設定に活かす
- 診断書や身体障害者手帳の申請など、公的書類の基礎資料とする
関節可動域(ROM)の種類
ROMは「誰が関節を動かすか」によって、自動運動と他動運動に分けられます。同じ関節でも両者の値は一致しないことが多く、その差そのものが評価の手がかりになります。
自動運動(AROM)
自動運動(AROM:Active Range of Motion)は、対象者自身が自分の筋力で関節を動かして測定する方法です。筋力・随意性・協調性・疼痛といった要素をすべて含んだ「実際に使える動き」を反映するため、ADLとの結びつきが強い評価といえます。
一方で、筋力低下や麻痺、痛みがあると、関節そのものには制限がなくても角度が小さく出ます。そのため自動運動だけで関節の状態を判断することはできません。
他動運動(PROM)
他動運動(PROM:Passive Range of Motion)は、検査者が対象者の関節を動かして測定する方法です。筋活動の影響を受けにくく、関節包・靱帯・筋などの軟部組織の伸張性や関節構造そのものを反映します。ROM測定は原則としてこの他動運動で行い、自動運動で測定した場合はその旨を記録に明記します。
自動運動と他動運動の違いを整理すると、次のようになります。
| 項目 | 自動運動(AROM) | 他動運動(PROM) |
|---|---|---|
| 関節を動かす人 | 対象者自身 | 検査者 |
| 角度の傾向 | 他動運動より小さくなりやすい | 自動運動より大きくなりやすい |
| 主に反映するもの | 筋力・随意性・協調性・疼痛を含む実用的な動き | 関節構造と軟部組織の伸張性 |
| 記録上の扱い | 測定した場合は「自動」と明記する | 原則こちらで測定する |
| 注意点 | 筋力低下や痛みがあると実際の可動域より小さく出る | 愛護的に操作しないと組織を損傷するおそれがある |
自動運動と他動運動に大きな差がある場合は、関節そのものよりも筋力低下や疼痛、随意性の問題が疑われます。逆に両者がほぼ同じ角度で制限されている場合は、拘縮など構造的な制限因子を考えます。
関節可動域(ROM)の評価方法
- 目的と方法を対象者にわかりやすく説明する
- 基本肢位(解剖学的肢位)をとらせ、代償運動が出にくい安定した肢位に整える
- ゴニオメーターの軸心を関節の運動軸に合わせる
- 基本軸を近位側の骨・体幹に、移動軸を遠位側の骨に沿わせる
- 隣接関節を固定しながらゆっくり動かし、最終域で角度を読み取る
- 5°刻みで記録し、疼痛の有無・エンドフィール・左右差を併せて記載する
以下、部位別に参考可動域角度と基本軸・移動軸をまとめます。数値はいずれも参考値であり、年齢や体格、既往によって個人差がある点に注意してください。
上肢測定
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| 部位名 | 運動方向 | 参考可動 域角度 | 基本軸 | 移動軸 | 測定肢位および注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 肩甲帯shoulder girdle | 屈曲flexion | 0-20 | 両側の肩峰を結ぶ線 | 頭頂と肩峰を結ぶ線 | 背面から測定する. |
| 伸展extension | 0-20 | ||||
| 挙上elevation | 0-20 | 両側の肩峰を結ぶ線 | 肩峰と胸骨上縁を結ぶ線 | ||
| 引き下げ(下制)depression | 0-10 | ||||
| 肩shoulder(肩甲帯の動きを含む) | 屈曲(前方挙上)forward flexion | 0-180 | 肩峰を通る床への垂直線(立位または座位) | 上腕骨 | 前腕は中間位とする. 体幹が動かないように固定する. 脊柱が前後屈しないように注意する. |
| 伸展(後方挙上)backward extension | 0-50 | ||||
| 外転(側方挙上)abduction | 0-180 | 肩峰を通る床への垂直線(立位または座位) | 上腕骨 | 体幹の側屈が起こらないように90°以上になったら前腕を回外することを原則とする. | |
| 内転adduction | 0 | ||||
| 外旋external rotation | 0-60 | 肘を通る前額面への垂直線 | 尺骨 | 上腕を体幹に接して, 肘関節を前方に90°に屈曲した肢位で行う. 前腕は中間位とする. | |
| 内旋internal rotation | 0-80 | ||||
| 水平屈曲horizontal flexion(horizontal adduction) | 0-135 | 肩峰を通る矢状面への垂直線 | 上腕骨 | 肩関節を90°外転位とする. | |
| 水平伸展horizontal extension(horizontal abduction) | 0-30 | ||||
| 肘elbow | 屈曲flexion | 0-145 | 上腕骨 | 橈骨 | 前腕は回外位とする. |
| 伸展extension | 0-5 | ||||
| 前腕forearm | 回内pronation | 0-90 | 上腕骨 | 手指を伸展した手掌面 | 肩の回旋が入らないように肘を90°に屈曲する. |
| 回外supination | 0-90 | ||||
| 手wrist | 屈曲(掌屈)flexion(palmar flexion) | 0-90 | 橈骨 | 第2 中手骨 | 前腕は中間位とする. |
| 伸展(背屈)extension(dorsiflexion) | 0-70 | ||||
| 橈屈radial deviation | 0-25 | 前腕の中央線 | 第3 中手骨 | 前腕を回内位で行う. | |
| 尺屈ulnar deviation | 0-55 |
手指測定
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| 部位名 | 運動方向 | 参考可動 域角度 | 基本軸 | 移動軸 | 測定肢位および注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 母指thumb | 橈側外転radial abduction | 0-60 | 示指(橈骨の延長上) | 母指 | 運動は手掌面とする. 以下の手指の運動は,原則として手指の背側に角度計をあてる. |
| 尺側内転ulnar adduction | 0 | ||||
| 掌側外転palmar abduction | 0-90 | 運動は手掌面に直角な面とする. | |||
| 掌側内転palmar adduction | 0 | ||||
| 屈曲(MCP)flexion | 0-60 | 第1 中手骨 | 第1 基節骨 | ||
| 伸展(MCP)extension | 0-10 | ||||
| 屈曲(IP)flexion | 0-80 | 第1 基節骨 | 第1 末節骨 | ||
| 伸展(IP)extension | 0-10 | ||||
| 指finger | 屈曲(MCP)flexion | 0-90 | 第2-5 中手骨 |
第2-5 基節骨 |
|
| 伸展(MCP)extension | 0-45 | ||||
| 屈曲(PIP)flexion | 0-100 | 第2-5 基節骨 |
第2-5 中節骨 |
||
| 伸展(PIP)extension | 0 | ||||
| 屈曲(DIP)flexion | 0-80 | 第2-5 中節骨 |
第2-5 末節骨 |
DIP は10°の過伸展をとりうる. | |
| 伸展(DIP)extension | 0 | ||||
| 外転abduction | 第3 中手骨 延長線 |
第2,4,5 指軸 |
中指の運動は橈側外転, 尺側外転とする. | ||
| 内転adduction |
下肢測定
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| 部位名 | 運動方向 | 参考可動 域角度 | 基本軸 | 移動軸 | 測定肢位および注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 股hip | 屈曲flexion | 0-125 | 体幹と平行な線 | 大腿骨(大転子と大腿骨外顆の中心を結ぶ線) | 骨盤と脊柱を十分に固定する. 屈曲は背臥位. 膝屈曲位で行う. 伸展は腹臥位,膝伸展位で行う. |
| 伸展extension | 0-15 | ||||
| 外転abduction | 0-45 | 両側の上前腸骨棘を結ぶ線への垂直線 | 大腿中央線(上前腸骨棘より膝蓋骨中心を結ぶ線) | 背臥位で骨盤を固定する. 下肢は外旋しないようにする. 内転の場合は,反対側の下肢を屈曲挙上してその下を通して内転させる. |
|
| 内転adduction | 0-20 | ||||
| 外旋external rotation | 0-45 | 膝蓋骨より下ろした垂直線 | 下腿中央線(膝蓋骨中心より足関節内外果中央を結ぶ線) | 背臥位で,股関節と膝関節を90°屈曲位にして行う. 骨盤の代償を少なくする. |
|
| 内旋internal rotation | 0-45 | ||||
| 膝knee | 屈曲flexion | 0-130 | 大腿骨 | 腓骨(腓骨頭と外果を結ぶ線) | 屈曲は股関節を屈曲位で行う. |
| 伸展extension | 0 | ||||
| 足関節・足部foot and ankle | 外転abduction | 0-10 | 第2中足骨長軸 | 第2中足骨長軸 | 膝関節を屈曲位, 足関節を0度で行う. |
| 内転adduction | 0-20 | ||||
| 背屈dorsiflexion | 0-20 | 矢状面における腓骨長軸への垂直線 | 足底面 | 膝関節を屈曲位で行う. | |
| 底屈plantar flexion | 0-45 | ||||
| 内がえしinversion | 0-30 | 前額面における下腿軸への垂直線 | 足底面 | 膝関節を屈曲位, 足関節を0度で行う. | |
| 外がえしeversion | 0-20 | ||||
| 第1趾, 母趾great toe, big toe | 屈曲(MTP)flexion | 0-35 | 第1中足骨 | 第1基節骨 | 以下の第1趾, 母趾, 趾の運動は,原則として趾の背側に角度計をあてる. |
| 伸展 (MTP)extension | 0-60 | ||||
| 屈曲(IP)flexion | 0-60 | 第1基節骨 | 第1末節骨 | ||
| 伸展(IP)extension | 0 | ||||
| 趾toe, lesser toe | 屈曲(MTP)flexion | 0-35 | 第2-5中足骨 | 第2-5基節骨 | |
| 伸展 (MTP)extension | 0-40 | ||||
| 屈曲(PIP)flexion | 0-35 | 第2-5基節骨 | 第2-5中節骨 | ||
| 伸展(PIP)extension | 0 | ||||
| 屈曲 (DIP)flexion | 0-50 | 第2-5中節骨 | 第2-5末節骨 | ||
| 伸展(DIP)extenshion | 0 |
体幹測定
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| 部位名 | 運動方向 | 参考可動 域角度 | 基本軸 | 移動軸 | 測定肢位および注意点 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 頚部cervical spine | 屈曲(前屈)flexion | 0-60 | 肩峰を通る床への垂直線 | 外耳孔と頭頂を結ぶ線 | 頭部体幹の側面で行う. 原則として腰かけ座位とする. |
|
| 伸展(後屈)extension | 0-50 | |||||
| 回旋rotation | 左回旋 | 0-60 | 両側の肩峰を結ぶ線への垂直線 | 鼻梁と後頭結節を結ぶ線 | 腰かけ座位で行う. | |
| 右回旋 | 0-60 | |||||
| 側屈lateral bending | 左側屈 | 0-50 | 第7頚椎棘突起と第1仙椎の棘突起を結ぶ線 | 頭頂と第7頚椎棘突起を結ぶ線 | 体幹の背面で行う. 腰かけ座位とする. |
|
| 右側屈 | 0-50 | |||||
| 胸腰部thoracic and lumbar spines | 屈曲(前屈)flexion | 0-45 | 仙骨後面 | 第1 胸椎棘突起と第5腰椎棘突起を結ぶ線 | 体幹側面より行う. 立位,腰かけ座位または側臥位で行う. 股関節の運動が入らないように行う. |
|
| 伸展(後屈)extension | 0-30 | |||||
| 回旋rotation | 0-40 | 両側の後上腸骨棘を結ぶ線 | 両側の肩峰を結ぶ線 | 座位で骨盤を固定して行う. | ||
| 0-40 | ||||||
| 側屈lateral bending | 0-50 | ヤコビー(Jacoby)線の中点にたてた垂直線 | 第1 胸椎棘突起と第5腰椎棘突起を結ぶ線 | 体幹の背面で行う. 腰かけ座位または立位で行う. |
||
| 0-50 | ||||||
測定の際は、次の点に注意すると測定値の信頼性が高まります。
測定時の注意点
- 疼痛の訴えがあるときは無理に最終域まで動かさず、痛みが出た角度を記録する
- 体幹や隣接関節をしっかり固定し、代償運動による見かけ上の可動域を拾わない
- 痙縮や不随意運動がある場合は、抵抗が高まらないようゆっくり動かす
- 経過を追うときは、同じ肢位・同じ測定者・同じ時間帯で行うと再現性が高まる
- 実測値だけでなく、参考可動域角度との差と左右差を必ず記録する
関節可動域(ROM)の制限因子とエンドフィール
ROMの制限因子は次のように分類され、それぞれアプローチの方法が異なります。
| 制限因子 | 主な原因・代表例 |
|---|---|
| 皮膚性 | 熱傷後の瘢痕拘縮、植皮後の癒着など |
| 結合組織性 | 関節包・靱帯の短縮、長期不動による拘縮 |
| 筋性 | 筋の短縮、痙縮、疼痛による防御性収縮 |
| 軟骨・骨性 | 変形性関節症、骨棘形成、骨折後の変形治癒、骨性強直 |
| 神経性 | 末梢神経障害や中枢性麻痺にともなう筋緊張の異常 |
| 疼痛性 | 炎症や外傷による痛みで動かせないことによる制限 |
制限因子を推測する手がかりになるのが、他動運動の最終域で検査者の手に伝わる抵抗感、すなわちエンドフィール(最終域感)です。
| エンドフィール | 手に伝わる感覚 | 主な原因・代表例 |
|---|---|---|
| 軟部組織性(正常) | 柔らかく、弾力をもって止まる | 肘や膝の屈曲で軟部組織どうしが接触する |
| 結合組織性(正常〜異常) | 硬いがわずかに伸びる感じで止まる | 関節包・靱帯・筋の伸張。短縮していれば拘縮を疑う |
| 骨性(正常〜異常) | 硬く、突然ぴたりと止まる | 肘伸展時の骨性接触。異常なら骨棘や変形治癒 |
| 筋スパズム性(異常) | 急に強い抵抗が生じ、跳ね返るように止まる | 急性炎症や外傷にともなう防御性収縮 |
| 虚性(異常) | 抵抗を感じる前に強い痛みで中止となる | 急性炎症、骨折、感染、腫瘍など |
正常なエンドフィールと異常なエンドフィールを区別することで、拘縮なのか、炎症なのか、骨性の変化なのかをある程度絞り込めます。
印刷して活用しよう
ここまで解説した全身の参考可動域角度・基本軸・移動軸を、早見表にまとめました。測定肢位の原則と注意点も掲載しているので、実習先や病棟、リハビリ室に貼っておけば、測定のたびに教科書を開かずに確認できます。
関節可動域(ROM)の測定方法
全身の関節の参考可動域角度・基本軸・移動軸を1枚にまとめた早見表です。測定肢位の原則と注意点も掲載しており、実習や臨床でそのまま活用できます。