ホフマン反射のやり方・判定基準・疑われる疾患・自覚症状
ホフマン反射は、ドイツの神経学者Johann Hoffmannの名を冠した病的反射のひとつです。中指の末節を掌側へ弾くという刺激に対して、母指の内転・屈曲と示指の屈曲が誘発された場合を陽性と判定します。
この反応は、脳から脊髄前角細胞へ向かう錐体路(上位運動ニューロン)が障害されると、脊髄反射に対する抑制が外れて出現しやすくなります。つまりホフマン反射陽性は、末梢神経ではなく中枢側の問題を示唆するサインとして扱われます。
ホフマン反射のやり方
特別な器具は必要なく、ベッドサイドでも実施できます。以下の手順で行います。
- 前腕・手指の力を抜くよう伝える
- 検者は患者の手関節を軽度背屈位で保持し、中指を軽く伸展位に保つ
- 患者の中指の中節骨を、検者の示指と中指ではさんで固定する
- 中指の末節(爪側)を、検者の母指で掌側へ素早くはじく
- 母指の内転・屈曲、示指の屈曲が起こるかを観察する
- 反対側でも同様に行い、左右差を比較する
判定は次のように読み取ります。
| 所見 | 反応 | 解釈 |
|---|---|---|
| 陰性 | 母指・示指に屈曲は起こらない | 正常 |
| 陽性 | 母指の内転・屈曲、示指の屈曲がみられる | 上位運動ニューロン障害の疑い |
| 両側性・軽度 | 左右対称にごくわずかに出現 | 健常者(反射亢進体質)でもみられる |
| 片側性・著明 | 一側のみ明らかに出現 | 病的意義が高い |
実施時に押さえておきたいポイントは以下のとおりです。
- 手指に力が入っていると偽陽性・偽陰性になりやすいため、リラックスを促す
- 単独で判断せず、必ず左右を比較する
- 腱反射亢進・痙縮・クローヌスなど他の錐体路徴候と併せて評価する
- 陽性の場合は頸髄(C5〜T1)より上位の障害を示唆することが多い
上位運動ニューロンとは?
上位運動ニューロンは、大脳皮質の運動野から出て脳幹・脊髄を下行し、脊髄前角細胞や脳神経運動核へ至る神経経路のことを指します。代表的なものが錐体路(皮質脊髄路)です。
これに対して、脊髄前角細胞から筋へ向かう経路が下位運動ニューロンです。どちらが障害されるかによって、出現する症状はまったく異なります。
| 項目 | 上位運動ニューロン障害 | 下位運動ニューロン障害 |
|---|---|---|
| 筋緊張 | 亢進(痙縮) | 低下(弛緩) |
| 深部腱反射 | 亢進 | 低下・消失 |
| 病的反射 | 出現する | 出現しない |
| 筋萎縮 | 軽度・廃用性 | 著明(神経原性) |
| 線維束性収縮 | みられない | みられることがある |
| 主な障害部位 | 大脳・脳幹・脊髄(錐体路) | 脊髄前角・末梢神経 |
ホフマン反射は、この表のうち「病的反射」に該当します。上位運動ニューロンによる抑制が失われることで、通常なら現れない反射が出現するという仕組みです。
トレムナー反射・バビンスキー反射との違い
ホフマン反射と混同されやすい病的反射に、トレムナー反射とバビンスキー反射があります。
| 反射名 | 刺激部位 | 刺激方法 | 陽性所見 | 示唆する障害 |
|---|---|---|---|---|
| ホフマン反射 | 中指の末節(爪側) | 掌側へ素早くはじく | 母指の内転・屈曲、示指の屈曲 | 上肢の錐体路障害(頸髄より上位) |
| トレムナー反射 | 中指の末節(掌側) | 背側へ素早くはじく | 母指の内転・屈曲、示指の屈曲 | 上肢の錐体路障害(ホフマン反射とほぼ同義) |
| バビンスキー反射 | 足底の外側縁 | 踵から母趾に向けてこすり上げる | 母趾の背屈、他趾の開扇 | 下肢の錐体路障害 |
ホフマン反射とトレムナー反射は、はじく方向が逆なだけで臨床的な意味はほぼ同じです。一方、バビンスキー反射は下肢で確認する反射であり、錐体路障害のより特異度の高い所見とされています。
上肢と下肢の両方を確認することで、障害レベルの推定に役立ちます。
疑われる主な疾患
ホフマン反射が陽性となる場合、上肢を支配する錐体路のどこかに障害があると考えられます。代表的な疾患は次のとおりです。
| 疾患・病態 | 特徴 |
|---|---|
| 頸椎症性脊髄症 | 加齢性変化による脊柱管狭窄で頸髄が圧迫される。手指の巧緻運動障害や歩行障害を伴いやすい |
| 頸椎椎間板ヘルニア | 髄核の突出で頸髄・神経根が圧迫される。頸部痛や上肢のしびれを伴うことが多い |
| 後縦靱帯骨化症(OPLL) | 後縦靱帯の骨化により頸髄が慢性的に圧迫される。緩徐に進行する |
| 脳血管障害(脳梗塞・脳出血) | 一側の錐体路が障害され、対側に片麻痺と病的反射が出現する |
| 多発性硬化症 | 中枢神経の脱髄により、再発と寛解を繰り返しながら錐体路徴候が出現する |
| 筋萎縮性側索硬化症(ALS) | 上位・下位運動ニューロンがともに障害される。筋萎縮と反射亢進が同居する点が特徴 |
| 脊髄腫瘍・脊髄空洞症 | 頸髄の占拠性病変や空洞形成により錐体路が圧迫される |
伴いやすい自覚症状
ホフマン反射陽性の背景に頸髄レベルの障害がある場合、患者さんは次のような症状を訴えることがあります。
- ボタンがかけにくい、箸が使いにくいといった手指の巧緻運動障害
- 手指や前腕のしびれ・感覚鈍麻(両手に及ぶこともある)
- 細かい作業をすると手が疲れやすい、力が入りにくい
- 足がもつれる、階段の昇り降りがぎこちないなどの歩行障害
- 体幹や下肢の締めつけ感(バンド様の絞扼感)
- 頻尿・残尿感・尿意切迫などの膀胱直腸障害
- 頸部から肩・上肢にかけての痛みやこわばり
なかでも手指の巧緻運動障害と歩行障害は、頸髄症の進行を示す重要なサインです。
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