【パッと確認】救急カート物品の用途と注意点まとめ

救急カートとは、急変時に必要な医療物品を迅速に取り出せるよう、決まった配置で整備された移動式のカートです。
救命処置・薬剤投与・気道確保・輸液管理などを行うために使用されます。
救急カートの中身は、病院や病棟の特色によっても違います。
急変時に備えるためには、救急カート内の物品や薬剤が常に適切に整備された状態で保たれていることが重要です。
使用期限切れや数量の不足がないよう、定期的に点検を行い、早期に異常を発見・対応する必要があります。
また、誰が使用してもすぐに取り出せるように、物品の配置や管理体制を統一・明確にしておくことが求められます。
以下は救急カートの主な物品と薬剤の使用用途と注意点を簡単にまとめたものになります。
救急カート(物品)
物品名 | 用途 | 注意点 |
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バッグバルブマスク(BVM) | 呼吸停止や重度の呼吸抑制患者に対し、手動で陽圧換気を提供する器具。酸素ボンベ接続により高濃度酸素投与が可能。 | 患者の顔面にフィットさせて使用。リーク防止に注意し、サイズ選定を正確に行う。 |
口腔エアウェイ | 舌根沈下による気道閉塞を防止し、人工換気を補助するために口腔内に挿入する器具。 | 嘔吐反射のある患者には使用禁忌。適切なサイズ(口角〜耳たぶ間)を選び、無理な挿入を避ける。 |
鼻腔エアウェイ | 気道確保困難時に鼻腔を通じて気道を維持する補助具。意識が保たれている患者にも使用可能。 | 鼻出血や顔面外傷のある患者には禁忌。潤滑剤を用い、片側の鼻腔から緩やかに挿入する。 |
酸素マスク / カニュラ | 低酸素血症時の酸素投与手段。カニュラは軽度〜中等度、マスクは中等度〜重度に対応。 | マスク装着時は会話困難になるため、患者状態に応じて選択。酸素流量の調整が必要。 |
吸引器 / カテーテル | 口腔内・気道内の分泌物・血液・嘔吐物を除去し、誤嚥や窒息を予防。 | 吸引圧と時間(10秒以内)に注意。使用後はカテーテルを廃棄し、器具を清潔に保つ。 |
除細動器 / AED | 心室細動や無脈性心室頻拍に対する電気的除細動を行うための医療機器。 | パッドの位置(右胸上・左脇下)と患者との接触状況に注意し、除細動前は「離れて!」の声かけを徹底。 |
心電図モニター | 心拍リズム・心電図波形をリアルタイムで表示し、致死的不整脈の早期発見に使用。 | 電極は皮膚を清拭後に貼付し、誤作動防止のためしっかりと固定する。導線の接触・断線に注意。 |
経皮ペーシングパッド | 一時的ペーシングにより、重度徐脈や心停止直前の徐脈に対応。 | 胸部・背部にしっかり密着させ、強い疼痛を伴う可能性があるため鎮痛薬併用を検討。 |
留置針(18G~24G) | 緊急時の静脈路確保に使用。太径針(18G)は大量輸液や輸血に適す。 | 穿刺部位と患者の血管状態に応じた針サイズを選択。固定不良による抜去に注意。 |
輸液セット | 輸液や薬剤の投与経路として用いられる滴下式システム。 | ドリップチャンバーの液量と滴下速度管理を徹底。エア混入を防ぐため接続時のエア抜き必須。 |
三方活栓 / 延長チューブ | 薬剤投与や採血をしやすくするため、ルートの分岐・延長に使用。 | 誤投与防止のため各ラインにラベル記載。バルブ開閉位置を常に確認する。 |
シリンジ(1mL〜20mL) | 薬剤の吸引・注入・ルートフラッシュ等に用いる注射器。 | 滅菌状態を保持し、使い捨てを厳守。容量選択を誤ると過量投与リスクあり。 |
注射針(皮下注・筋注・翼状) | 薬剤の皮下注・筋注・採血時に使用。翼状針は穿刺の安定性が高い。 | 針のゲージ・長さを正確に選定し、針刺し事故防止策(セーフティ針等)を講じる。 |
アルコール綿 / 消毒綿 | 穿刺・処置部位の消毒、器具清拭に使用。 | 十分に拭き取り、乾燥後に処置。ヨード・クロルヘキシジンと使い分ける。 |
止血帯 / テープ類 | 静脈確保時の血管怒張補助および針・ルートの固定に使用。 | 止血帯の長時間使用は避ける。皮膚トラブル防止のためテープは優しく除去。 |
手袋 / ガウン / アイガード | 感染防御用の個人防護具(PPE)として使用。 | 使用順・廃棄順を遵守し、破損時は速やかに交換。患者毎に交換を徹底。 |
バイタル記録用紙 / ペン | 蘇生中の処置内容・薬剤投与時間・バイタル変化を記録。 | 記録漏れ防止のため即時記入。他者と共有できる文字で記載。 |
タイマー / ストップウォッチ | CPRの2分間周期・薬剤投与時間の管理に使用。 | 正確な時間管理が救命率に影響。開始・終了のタイミングを声掛けで共有。 |
感染性廃棄物容器 | 使用済注射針や体液付着器具の安全な廃棄に使用。 | 投入口を超えないようにし、7~8分目で交換。破損防止のため移動時に注意。 |
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薬剤名 | 用途 | 注意点 |
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ボスミン®注1mg(アドレナリン) | 心停止時の一次救命薬としてCPR中に静注、アナフィラキシーでは皮下注や筋注投与。 | 心停止時は1mgを3〜5分毎に静注。溶解不要。末梢静脈投与も可。過量投与で頻脈・高血圧・心室性不整脈に注意。 |
アドレナリン注0.1%シリンジ「テルモ」 | 蘇生時の即時使用、低心拍・ショック状態時の昇圧補助。 | プレフィルドシリンジで迅速投与が可能。遮光保存。反復投与時は用量と間隔を確認。 |
ノルアドレナリン®注1mg | 敗血症性ショックや心原性ショックに対する昇圧薬。末梢血管収縮作用により血圧維持。 | 5%ブドウ糖で希釈。生食での投与は血管炎リスクあり。中心静脈ルート推奨。持続注入時はポンプ使用。 |
イノバン®注0.3%シリンジ(ドパミン) | 低心拍出量や心原性ショック時の昇圧・強心補助。 | 用量依存性作用あり(中等量でβ刺激、⾼用量でα刺激)。末梢投与は短時間のみ。組織壊死に注意。 |
アミオダロン塩酸塩静注150mg「TE」 | 持続性心室頻拍・心室細動への抗不整脈治療薬。除細動抵抗性VFにも適応。 | 生食では沈殿の危険あり、必ず5%ブドウ糖で希釈。血圧低下・徐脈に注意。投与後はQT延長をモニタリング。 |
リドカイン静注用2%シリンジ「テルモ」 | 急性心筋梗塞に伴う心室性不整脈、特に心室性期外収縮や心室頻拍の抑制。 | 初回静注後は持続投与を考慮。肝機能低下時は代謝遅延に注意。酸性薬剤とは混合不可。 |
ジアゼパム注射液10mg「NIG」 | けいれん重積・アルコール離脱症状への初期抗けいれん治療。 | 静注はゆっくり行う(1分間に5mg以下)。高pH(アルカリ性)のため他剤との混合厳禁。呼吸抑制に注意。 |
ミダゾラム注10mg「サンド」 | けいれん発作の制御、人工呼吸管理時の鎮静補助薬。 | 静注・筋注・持続投与可能。呼吸抑制と血圧低下に注意。投与後の呼吸モニタリング必須。 |
アトロピン注0.05%シリンジ「テルモ」 | 洞性徐脈や房室ブロックなどの徐脈性不整脈への対症療法。 | 1回0.5mg(10mL)静注、最大3mgまで。過量で頻脈・口渇・錯乱。プレフィルドシリンジですぐに投与可。 |
カルチコール®注射液8.5% | 高カリウム血症やカルシウム拮抗薬中毒の治療、低カルシウム血症の補正。 | 緩徐な静注が必要。急速投与は心停止のリスクあり。中心静脈投与推奨。沈殿防止のため他剤混合不可。 |
ソル・コーテフ®注射用100mg | アナフィラキシー・副腎不全・重症感染症の補助療法としてのステロイド。 | 注射用水で溶解後すみやかに静注または点滴。冷所保存。糖尿病患者では高血糖に注意。 |
ソル・メドロール®静注用125mg | 中枢神経圧迫(脳浮腫)や重度アレルギー反応の緊急対応。 | 溶解後速やかに使用。感染症併発のリスクがあるため、使用後は経過観察必須。 |
メイロン静注7% 250mL | 代謝性アシドーシスや薬物中毒時の緩衝液として使用。 | 静注速度は調整し、過剰なアルカリ負荷による代謝性アルカローシスに注意。他剤との混合不可。 |
ソルラクト®輸液、ラクテック®注 | 電解質バランスの補正および維持、細胞外液の補充。 | 乳酸含有のため肝障害患者では使用慎重。アルカローシスを誘発する可能性あり。薬剤混合時は安定性に注意。 |
生理食塩液「ヒカリ」500mL | 薬剤の溶解・希釈、低血圧時のボーラス輸液など多用途。 | ノルアドレナリンなどとの併用不可。大量投与で高ナトリウム血症・浮腫に注意。 |
キシロカイン®ゼリー2% | 気管挿管時の咽頭麻酔、導尿時の尿道麻酔として使用。 | 粘膜使用専用。静脈内使用は禁忌。最大使用量を超えると中毒症状(痙攣、意識障害)に注意。 |
ヘパリンNaロック用10単位/mLシリンジ | 末梢ルート閉塞予防として、薬剤投与後のロックに使用。 | 用量誤りや抗凝固薬との併用による出血リスクあり。必ずラベル確認し、静脈内に押し込まないよう注意。 |
ナロキソン塩酸塩注射液 | オピオイド系鎮痛薬の過量投与による呼吸抑制時の拮抗薬。 | 作用時間が短いため再沈静化に備えて連続観察。過量投与・依存症例では禁断症状誘発あり。 |
グルカゴン注・50%ブドウ糖注 | 意識障害を伴う重度低血糖の緊急補正。 | ブドウ糖は静脈刺激が強く高浸透圧性。グルカゴンは嘔吐の副作用あり、誤嚥に注意。 |
フルマゼニル注射液 | ベンゾジアゼピン過量摂取に伴う意識障害・呼吸抑制の拮抗。 | 発作歴ある患者には禁忌。急激な覚醒による興奮・けいれん誘発リスクあり。投与は慎重に。 |
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