言語聴覚士はなぜ少ない?STの現状を解説します

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介護やリハビリテーションの現場で欠かせない存在となっている言語聴覚士。

それなのになぜ言語聴覚士の数は理学療法士や作業療法士と比べて少ないのでしょうか?

この記事では、言語聴覚士が少ない理由と現状について解説しています。

言語聴覚士の数が少ない理由には、国家資格の合格率の低さや整形外科分野への就業先がないこと、認知度の低さなどが挙げられます。

一方で、医療現場での需要は高く、言語聴覚士を必要とする分野は数多く存在します。

それでは実際に言語聴覚士が少ない理由と現状について、詳しく見ていきましょう。

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数字で見る言語聴覚士の現状

言語聴覚士は、患者さんが抱える言葉や音声、飲み込みの障害を評価・訓練し、改善を図る非常に専門性の高い職業です。

数字で見ると、言語聴覚士の数は増加傾向にありますが、それが医療や福祉現場のニーズに追い付いているとは言い難いのが実情です。

また、PTやOTと比べて国家資格取得を目指す人が増えていないこと、国家資格の合格率が低いことで全体の数が伸び悩んでいます。

言語聴覚士の国家資格保有者数

言語聴覚士の国家資格保有者数は、2008年以降、毎年1,500~2,000人ずつ増えています。

日本言語聴覚士協会のデータによれば、言語聴覚士の数はようやく一定の数値に達しつつあると言われており、その数は約4万人に達しています。

しかし、その数は日本の超高齢社会において増え続けるリハビリテーションのニーズと比較するとまだまだ不足しているのが実情です。

地域差もあり、特に地方では専門的なリハビリテーションを提供する言語聴覚士が不足している地域が多くあります。

そのため、地域社会からの求人倍率や期待は高まっているものの、現状ではニーズに応えられていないのが現実です。

言語聴覚士数の推移

言語聴覚士数の推移

引用:一般社団法人 日本言語聴覚士協会 言語聴覚士とは

国家試験合格者数

言語聴覚士になるためには、国が定める国家試験に合格する必要があります。

その合格率は必ずしも高いわけではありません。

例年60~70%台を推移しており、PTやOTのように80~90%台となる年はいまだありません。

言語聴覚士国家試験の合格者数

合計者累計

引用:一般社団法人 日本言語聴覚士協会 日本言語聴覚士協会について

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言語聴覚士が少ない3つの理由

ここでは、言語聴覚士が不足している背景として、いくつかの理由を探っていきます。

国家資格の合格率が低い

言語聴覚士になるためには国家資格を取得する必要がありますが、先ほどご紹介したようにこの資格試験の合格率が低いことが問題の一つに挙げられます。

PTやOTと比べて試験科目数が多く、試験範囲を満遍なく勉強するのに時間がかかってしまうことが他のリハビリ職と比較して合格率が低い理由とも言われています。

また言語聴覚士に限った話ではありませんが、言語聴覚士の治療や医学の分野は常に研究がされていて、時代の変化に伴い技術や使用する機器なども新しくなります。

国として地域や在宅を重視したリハビリが求められるようになったり、医療DXの導入などにより国家試験の出題基準も更新されることで、過去問を解いているだけでは合格しづらい現状があるのかもしれません。

整形外科分野への就業先が少ない

別の理由として、整形外科分野での言語聴覚士の就業先が限られているという点があります。

一般に、言語聴覚士は脳神経外科や小児科、耳鼻咽喉科といった分野でのニーズが高いとされていますが、整形外科分野では専門の知識が活かせる場が少ないです。

整形外科患者さんは言語聴覚士の処方が対象外となるため、言語障害や嚥下障害などがあっても対応がなされないというケースがほとんどです。

中にはそれに対応している病院やクリニックもありますが、ほんの一部という点では、言語聴覚士が整形外科分野へ就職するのはなかなかに難しいと言えます。

その結果、整形外科に強い興味を持つ言語聴覚士が他の職種への転職を検討するケースもあり、言語聴覚士全体の数が増加しづらい背景があります。

認知度が低い

最後に挙げられるのが、言語聴覚士という職種自体の認知度が低いことです。

言語聴覚士はその専門性から、特定の患者層と関わることが多く、一般の人々の間では存在を知られていない場合が多いです。

理学療法士や作業療法士とは、部活動で怪我をしたときなどに関わる機会があり、それをきっかけに目指す学生も多いですが、学生時代に言語聴覚士の存在を知っているという人はあまり多くないです。

そのため、言語聴覚士に関心を持つ人が少なく、そもそも言語聴覚士を目指す人が少ないというのも一因となっています。

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言語聴覚士の需要が高い分野

脳血管・神経疾患(急性期〜回復期)

脳卒中や頭部外傷の後遺症では、失語症・構音障害・嚥下障害などへの早期介入が欠かせません。

急性期のベッドサイド評価から、回復期・生活期の訓練、家族指導や社会復帰支援まで、継続的に関わる場面が多くあります。

摂食嚥下(VF/VE評価を含む)

高齢化に伴い「むせる」「飲み込みにくい」といった訴えは増えています。

嚥下内視鏡(VE)や嚥下造影(VF)で状態を正確に把握し、食形態の調整や姿勢・環境づくり、口腔ケアの連携まで含めた総合的な支援を行う領域です。

病院だけでなく、在宅・施設でもニーズが高まっています。

小児(発達・聴覚・構音・吃音)

ことばの遅れや発音の問題、吃音、聴覚障害などに対して、医療・療育・教育の現場が連携して支援します。

保護者への関わりや家庭での練習支援も重要で、成長段階に合わせた長期的なフォローが求められます。

耳鼻咽喉科領域(音声・聴覚・人工内耳)

声帯の疾患による発声のしづらさや、補聴器・人工内耳装用後の聞き取り・発話のトレーニングなどで専門性を発揮します。

発声・共鳴の訓練、聞き取りの学習、コミュニケーション方法の工夫など、生活に直結する支援が中心です。

認知症・フレイル(生活期・在宅)

認知症の方のコミュニケーション支援や、誤嚥性肺炎の予防を目的とした食支援は、在宅・施設で特に需要が高い分野です。

食事環境の整備、飲み込みやすい姿勢の提案、家族や介護職への助言など、多職種連携での関わりが進んでいます。

がんリハビリテーション(頭頸部がん術後など)

手術や化学放射線療法の影響で嚥下や発声が難しくなるケースに対し、機能の再獲得と生活の質の向上を目指して訓練を行います。

栄養、歯科、看護との連携を取りながら、無理なく続けられる食事・コミュニケーション方法を一緒に探っていきます。

まとめ

言語聴覚士の数は年々増加していますが、医療や福祉現場での需要に追いついていないのが現状です。

言語聴覚士が少ない理由としては、以下のようなことが考えられます。

  • PTやOTと比べて国家試験の範囲が広く、国家資格の合格率が低いこと。
  • 整形外科分野への就業先が少ないこと。
  • 関わる機会が少なく、認知されていなかったり興味を持つ人が少ないこと。

一方で需要は高いため、医療や福祉現場では言語聴覚士を採用するために条件や待遇を上げたり、働き方の見直しをしているところもあります。

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