言語聴覚士になって後悔する理由は?原因の見極め方と辞める前にできること

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言語聴覚士として働き始めたものの、「思い描いていた仕事と違う」「この先も続けられるだろうか」と後悔を感じている方は少なくありません。給料が思うように上がらない、希望していた領域に関われない、職場に言語聴覚士が自分ひとりしかいない、といったように悩みの中身は人それぞれです。

ただ、その後悔をひとつずつ言葉にしていくと、言語聴覚士という職種そのものではなく、今いる職場の環境に原因が行き着くケースが多く見られます。原因の切り分けができないまま「自分には向いていない」と結論を出してしまうと、本当はまだ選べたはずの道を見落としてしまいます。

この記事では、言語聴覚士が後悔しやすい理由を整理したうえで、原因が職種にあるのか職場にあるのかを見極める方法と、辞める前にできることを解説します。

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言語聴覚士になって後悔する主な理由

机に向かってこめかみに手を当て悩む様子

言語聴覚士の後悔には、リハビリ職に共通するものと、言語聴覚士だからこそ感じるものがあります。特に後者は、資格の歴史が浅いことや有資格者の人数が少ないことに由来しており、ほかの職種の人には伝わりにくい悩みです。

ここでは、現場で聞かれることの多い5つの理由を取り上げます。自分の後悔がどれに近いのかを確かめながら読み進めてみてください。

給料が上がりにくい

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)によると、言語聴覚士の賃金は年収443.6万円、平均年齢は36.2歳です。決して低い水準ではありませんが、「経験を積んでも思ったほど上がらない」と感じる方が多い職種でもあります。

背景にあるのが、リハビリの収益構造です。医療機関のリハビリは診療報酬に基づいて算定され、1単位20分という時間の単位で報酬が決まり、1人のセラピストが1日に算定できる単位数にも上限があります。個人がどれだけ丁寧に関わっても、売上そのものが大きく伸びる仕組みにはなっていません。

さらに、リハビリ部門の管理職ポストは限られています。言語聴覚士は理学療法士や作業療法士に比べて人数が少なく、リハビリ科全体をまとめる役職には人数の多い職種が就くことが多いため、役職手当による昇給の機会も広くはありません。

医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)でも、言語聴覚士の正社員求人の月給中央値は27万円で、年齢や経験による差よりも職場による差のほうが大きく出ています。

言語聴覚士の収入・雇用を4つの指標で見る

収入と働き方を数字で確認

443.6万円
年収
26.3万円
求人賃金(月額)
157時間
労働時間(月間)
92.9%
正規の職員・従業員
正規雇用が中心で月157時間。収入は安定型で、大きく伸びる要素が少ない構造

希望する領域で働けない

言語聴覚士が扱う領域は、失語症や高次脳機能障害、嚥下障害、構音障害、聴覚障害、ことばの発達支援など多岐にわたります。しかし、実際に働ける場は均等に開かれているわけではありません。

日本言語聴覚士協会の会員動向(令和8年3月31日現在)では、正会員の勤務先は医療分野が60.7%で最も多く、介護分野が16.7%、福祉分野が5.26%と続きます。医療機関の割合が高く、そこで中心になるのは成人の失語症や嚥下障害への対応です。

言語聴覚士 正会員の勤務先分野別内訳
22,511正会員数(人)
60.7%医療分野
17.33%その他
16.71%介護分野
5.26%福祉分野

医療分野だけで6割。介護・福祉・その他の合計39.3%を上回ります

  • 小児のことばの発達支援に関わりたかったが、配属は成人の嚥下リハビリだった
  • 聴覚領域を学んできたが、聴覚に特化した職場の求人自体が少ない
  • 発達障害領域を希望したが、経験者採用が中心で新卒では入りにくい

医療キャリアナビ掲載求人データでも、言語聴覚士の求人3,111件のうち小児に関わる放課後等デイサービス・児童発達支援は約2割にとどまり、病院・介護老人保健施設・訪問リハビリなど成人や高齢者を対象とする職場が大半を占めています。

希望と求人数のずれが、後悔につながりやすい部分です。

職場に言語聴覚士が自分1人しかいない

日本言語聴覚士協会の正会員数は22,511人(令和8年3月31日現在)で、リハビリ職のなかでは人数が限られています。そのため、1つの施設に配置される言語聴覚士が1人だけという「1人職場」は珍しくありません

1人職場では、評価や訓練の方針に迷ったときに相談できる相手がいません。自分の判断が適切なのかを確かめる機会がなく、技術的な指導を受けられないまま経験年数だけが積み上がっていきます。学会や勉強会で外部とつながっている方でも、日々の細かな判断を共有できないもどかしさは残ります。

新人のうちからこの状態に置かれると、不安が積み重なって「この職種を選んで良かったのか」という後悔に変わりやすくなります。

他職種に専門性を理解されない

言語聴覚士の資格は、1997年(平成9年)の言語聴覚士法によって定められた比較的新しい国家資格です。1965年(昭和40年)に制度化された理学療法士・作業療法士と比べると30年以上あとにできたことになります。

リハビリ関連の国家資格 制定年の比較

言語聴覚士は理学療法士・作業療法士より32年遅れて誕生した資格です

1965昭和40年
理学療法士及び作業療法士法 制定
PT・OTが国家資格として社会に位置づけられる
この間 32年
1997平成9年
言語聴覚士法 制定
言語聴覚士が国家資格として誕生する
現在
正会員22,511人の資格として現場に浸透する途上
歴史の浅さと人数の少なさが他職種の理解不足につながりやすい

制度が新しく人数も少ないため、医療や介護の現場でも「言語聴覚士が何をする職種なのか」が正確に共有されていない場合があります。その結果、次のような場面が起こります。

  • 食事介助の担当者としてしか見られず、訓練としての評価が伝わらない
  • カンファレンスで意見を求められる機会が少ない
  • 記録の整理や物品管理など、専門性と関係のない業務が集まりやすい

自分の仕事の価値が職場で認められていないと感じる状態が続くと、業務内容そのものへの不満よりも深い後悔になります。

やりがいを感じられない

言語聴覚士が関わる機能は、回復までに時間がかかるものが多い点も特徴です。失語症の改善は数か月から年単位で進むことも多く、担当している期間内に大きな変化が見えないまま担当が終わることもあります。

「もっと目に見える成果を出せると思っていた」という理想と、実際の進み方との差が、やりがいを感じにくい原因になります。特に、成果を数値で示しにくいぶん、周囲からの評価も得づらく感じられます。

給料・領域・人間関係・評価は、それぞれ解決の方法が違います。まとめて「言語聴覚士に向いていない」と考えず、何に対して後悔しているのかを分けて捉えることが第一歩です。

参考:厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「言語聴覚士 – 職業詳細」日本言語聴覚士協会「会員動向」e-Gov法令検索「言語聴覚士法」e-Gov法令検索「理学療法士及び作業療法士法」

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後悔の原因は「職種」ではなく「職場」であることが多い

手すりやベッドが並ぶリハビリ室

後悔している理由を並べてみると、その多くは言語聴覚士という職種そのものではなく、今いる職場の環境に原因があります。相談できる相手がいない、専門性が評価されない、希望の領域に関われないという悩みは、いずれも「どこで働くか」によって変わる部分だからです。

たとえば、1人職場で専門性を理解されずに悩んでいた言語聴覚士が、嚥下リハビリに力を入れる病院へ移ったケースがあります。移った先には言語聴覚士が複数在籍しており、評価の方針をその場で相談できる環境がありました。カンファレンスでも嚥下機能の評価者として意見を求められるようになり、同じ資格・同じ経験年数のまま、働き方への納得感が大きく変わっています。

待遇の面でも職場による差は表れます。医療キャリアナビ掲載求人データでは、言語聴覚士の正社員求人の月給中央値は職場の種類によって開きがあります。同じ資格を持っていても、評価のされ方も働きやすさも職場が変わるだけで大きく違ってきます

言語聴覚士 職場別 正社員求人の月給中央値

010万円20万円30万円
訪問リハビリ求人939
30.0万円
有料老人ホーム求人56
27.02万円
クリニック求人143
27.0万円
児童発達支援求人266
26.5万円
介護老人保健施設求人330
26.03万円
放課後等デイサービス求人395
25.75万円
特別養護老人ホーム求人108
25.55万円
デイケア・デイサービス求人254
25.49万円
病院求人559
25.0万円

最も高い訪問リハビリと最も低い病院の差は4.5万円

もちろん、職種そのものが自分に合っていないと感じる場合もあります。大切なのは、その判断をする前に原因を切り分けることです。「言語聴覚士に向いていない」と自分を責める前に、後悔の理由が職種に由来するのか、それとも今の職場に由来するのかを一度整理してみてください。

参考:日本言語聴覚士協会「会員動向」

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後悔したときに考えたいこと

チェックリストと書かれた紙とペン

後悔を感じている状態が続くと、判断そのものが難しくなります。ここでは、辞めるかどうかを決める前に踏んでおきたい3つのステップを紹介します。

順番に進めることで、感情と事実を切り分けやすくなります。

後悔している理由を書き出す

まずは、何が不満で何を変えたいのかを言葉にすることから始めます。頭の中だけで考えていると、複数の不満が混ざったまま「もう無理かもしれない」という漠然とした結論になりがちです。

不満を仕分ける3ステップ
1
すべて書き出す
今の仕事で不満に感じていることを、頭の中だけで考えず言葉にして並べます。
2
1つずつ「職場を変えれば解決するか」を判定する
書き出した項目に、解決の可能性があるかどうかを書き添えます。
解決する職場に原因がある不満
解決しない職種そのものへの不満
3
解決しないものだけを残す
残った項目が、職種の見直しまで含めて考える対象になります。

書き出してみると、残るものは意外と少ないことがほとんどです。相談相手がいない、希望領域に関われない、専門性が評価されないといった項目は、いずれも職場を変えることで解決の余地があります。

一方で、「ことばや嚥下という領域そのものに関心が持てない」という項目が残った場合は、職種の見直しも含めて考える段階にあるといえます。

職場を変えることで解決しないか考える

書き出した不満の多くが職場に由来するものであれば、転職という選択肢が現実的です。言語聴覚士の職場は病院だけでなく、介護老人保健施設、訪問リハビリ、デイケア、放課後等デイサービス、児童発達支援と幅広くあります。

職場を変える前に確認したい4項目

01
力を入れている領域か
希望する領域(嚥下・失語・小児など)に力を入れている施設の求人かを確認します。
02
複数在籍かどうか
言語聴覚士が自分1人だけの職場か、複数在籍していて相談し合える職場かを確認します。
03
単位数と残業の実態
1日に担当する単位数や記録にかかる時間、残業の実際の量を面接や見学で確認します。
04
教育体制と研修補助
院内の教育体制や、外部研修・学会参加への費用補助があるかを確認します。

同じ言語聴覚士の仕事でも、対象となる患者さんや利用者さんの層、1日の流れ、チーム体制は職場ごとに大きく異なります。今の職場で感じている働きにくさが、そのままどこでも起こるとは限りません

動く前にここだけ確かめて
  • 不満は「職場を変えれば消えるか」で仕分けると迷いが減ります
  • 見学では1日に担当する単位数と記録の時間を必ず聞いておきましょう
  • 言語聴覚士が何人いるかは、入職後の相談しやすさに直結します
キャリアパートナー

心身が限界なら無理をしない

一方で、仕事に行くこと自体が本当につらい、眠れない、食欲が落ちているなど体調に影響が出ている場合は、原因の分析より先に休むことを考えてください。状態が悪いまま転職活動を進めても、判断が偏りやすく良い選択につながりません

厚生労働省は「こころの耳」という働く人向けのメンタルヘルス・ポータルサイトを運営しています。用意されているのは次のような窓口や仕組みです。

  • 電話での相談
  • SNSでの相談
  • メールでの相談
  • 職場のストレスのセルフチェック

職場の人に話しにくい内容でも、外部の窓口であれば相談しやすい場合があります。

休職や退職も含めて、健康を最優先に考えてよい状況があります。まず心身を回復させてから、あらためて今後を考えるという順番で問題ありません。

眠れない・食欲がないなどのサインが出ているときは、転職活動より先に休養と相談を。原因の分析や職場探しは、回復してからでも間に合います。

参考:厚生労働省「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」

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言語聴覚士を続けている人が感じているやりがい

杖をついた高齢者の手を取る医療者の手元

後悔の理由を見てきましたが、一方で言語聴覚士を長く続けている人も多くいます。日本言語聴覚士協会の会員動向によると、正会員の有職率は85.4%、そのうち常勤が80.1%を占めています。資格を取得したあとも働き続けている人が多い職種です。

85.4% が資格を活かして働き続けている
常勤 80.1% 非常勤 5.3% 就業状況不明 14.6%
常勤 80.1%
14.6%

正会員22,511人のうち有職率は85.4%(常勤80.1%・非常勤5.3%)

92.9% は正規の職員・従業員として勤務

続けている人が挙げるやりがいとして多いのが、関わる機能そのものの重みです。言語聴覚士法では、音声機能・言語機能・聴覚に障害のある方の機能の維持向上を図ることが業務として定められており、加えて嚥下訓練なども担います。「話す」「聴く」「食べる」という、生きるうえで欠かせない機能の回復に関われる職種です。

また、患者さんやご家族から直接感謝を伝えられる機会が多い点も特徴です。ことばが出るようになった、口から食べられるようになったという変化は、本人にも家族にもはっきりと伝わります。日々の積み重ねが目の前で形になる場面に立ち会えます。

働き方の面では、夜勤がない職場がほとんどで、体力的な負担が比較的軽い点が挙げられます。結婚や出産、家族の介護などライフステージが変わっても働き方を調整しやすく、長く続けやすい職種といえます。

さらに、人数が少ないからこそ頼られる場面も多くあります。嚥下機能の評価やコミュニケーション支援の方法について、看護や介護の担当者から助言を求められることは日常的にあります。専門性が理解されにくいという悩みの裏返しで、きちんと発信できる環境に身を置けば、少数職種であることは強みになります

後悔の理由と魅力の両面を知ったうえで、自分にとってどちらが大きいのかを判断してみてください。

参考:日本言語聴覚士協会「会員動向」e-Gov法令検索「言語聴覚士法」

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自分に合う職場を選ぶポイント

求人票とペン

後悔を繰り返さないためには、次の職場を選ぶときの確認事項をあらかじめ決めておくことが役立ちます。言語聴覚士は少数職種であるぶん、職場による差が働きやすさを大きく左右します。

確認しておきたいのは、配置人数・力を入れている領域・専門性の評価体制・単位数と残業の実態という4つの観点です。それぞれ何を見て、どう確認するかを整理しました。

職場選びで確認したい4つの基準
基準見るポイント確認方法
配置人数言語聴覚士が複数在籍しているか求人票の職員構成・面接で人数を確認する
力を入れている領域嚥下・失語・小児などその施設が注力している分野求人票の対象疾患や面接での症例傾向の説明を確認する
専門性の評価体制役職への登用、学会参加や研修費の補助の有無面接で研修制度・補助制度の有無を質問する
単位数と残業の実態1日の担当単位数、記録が勤務時間内に終わるか面接や見学で具体的な単位数・残業量を質問する

なかでも見落とされやすいのが、単位数と残業の実態です。求人票の勤務時間だけでは分からないため、面接や見学の場で「1日に何単位を担当することが多いか」「記録は勤務時間内に終わるか」を具体的に聞いておくと、入職後のずれを減らせます。

医療キャリアナビ掲載求人データでは、言語聴覚士の正社員求人のうち賞与ありが72%、退職金制度ありが52%、社会保険完備が95%となっており、待遇面の条件は求人によって差があります。条件面は入職後に交渉しにくい部分なので、応募前に確認しておくことが大切です

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)では、言語聴覚士の平均年齢は36.2歳とされています。20代から30代で働き方を見直す方が多い職種であり、経験を積んだうえで環境を変えることは特別なことではありません。

今の職場だけが選択肢ではないという前提で、情報を集めてみてください。

参考:日本言語聴覚士協会「会員動向」厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「言語聴覚士 – 職業詳細」

まとめ

言語聴覚士になって後悔する理由には、給料が上がりにくいこと、希望する領域で働けないこと、1人職場で相談相手がいないこと、他職種に専門性を理解されないこと、やりがいを感じにくいことなどがあります。いずれも実際に現場で起きている悩みです。

ただ、その多くは言語聴覚士という職種そのものではなく、今いる職場の環境に原因があります。相談できる相手の有無も、関われる領域も、専門性が評価されるかどうかも、職場によって大きく変わるからです。

後悔を感じたときは、まず理由を書き出して「職場を変えれば解決するか」を確かめてみてください。解決の余地があるなら、言語聴覚士が複数在籍しているか、希望する領域に力を入れているか、単位数や残業の実態はどうかという観点で次の職場を探す方法があります。そして、心身に不調が出ている場合は、判断より先に休むことを優先してください。

自分に合う環境を選び直すことは、これまでの経験を手放すことではありません。原因を切り分けたうえで、納得して働ける場所を探していきましょう。

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この記事を書いた人
医療キャリアナビ編集部

医療キャリアナビ編集部

記事の執筆・編集は、医療業界に精通した編集スタッフが担当しています。日々の転職支援業務で得た現場のリアルな情報と、厚生労働省をはじめとする公的機関のデータに基づき、信頼性の高いコンテンツをお届けしています。

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