整骨院の経営が厳しい・難しいのは本当?柔道整復師が生き残るための対策を解説
整骨院を開業したものの、思うように収益が伸びず経営が厳しいと感じている方や、これから独立したいけれど「整骨院は経営が難しい」という話を聞いて不安を抱えている柔道整復師の方は多いのではないでしょうか。
実際、整骨院を取り巻く環境はここ10年ほどで大きく変化し、かつてのように保険収入だけで安定した経営を続けることは難しくなっています。
この記事では、整骨院の経営が厳しいといわれる理由を公的データで整理したうえで、生き残るための具体的な対策や、開業前に準備しておきたいことまでをわかりやすく解説します。現状を正しく理解し、次の一手を考えるための参考にしてください。
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整骨院の経営が厳しいと言われる理由

整骨院の経営が厳しいといわれる背景には、単なる景気の問題ではなく、業界そのものの構造変化があります。
かつては健康保険による療養費で安定した収益が見込めましたが、保険が使える範囲は限られ、審査も年々厳しくなりました。そこへ施術所の増加による競合激化が重なり、保険収入に依存した従来型の経営モデルは成り立ちにくくなっています。
ここでは、経営を圧迫している主な要因を5つに分けて見ていきます。
療養費(保険収入)の減少
整骨院の収益を長く支えてきたのが、健康保険から支払われる療養費です。しかし、この療養費は近年減少が続いています。柔道整復の療養費は平成24年度をピークに減少へ転じ、令和3年度には推計で約2,867億円まで縮小しました。
療養費が減った分、施術1回あたりの保険収入も伸び悩んでいます。保険収入だけを前提にした経営は、今後さらに苦しくなると考えられます。まずは自院の売上のうち保険がどれだけの割合を占めているかを把握することが、経営を見直す第一歩になります。
保険請求の審査厳格化
療養費が減少している背景には、保険請求に対する審査の厳格化があります。一部で不正・不適切な請求が問題となったことを受け、保険者による点検や患者さんへの照会が強化されました。
そもそも柔道整復師の施術で健康保険が使えるのは、骨折・脱臼・打撲・捻挫(いわゆる肉離れを含む)といった、急性・亜急性の外傷性のケガに限られます。慢性的な肩こりや筋肉疲労、日常的な腰痛への施術は保険の対象外で、全額自己負担が原則です。
以前は曖昧に運用されていた部分も、審査の厳格化によって保険が通りにくくなっています。
なお、不正請求は返還や行政処分、免許取消につながる重大な行為であり、絶対に行ってはいけません。保険に頼れる範囲が狭まっている今、保険外の収益をどう作るかが経営の分かれ道になります。
整骨院と接骨院の違いや保険の考え方については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
施術所の増加による競合激化
保険収入が減る一方で、整骨院の数そのものは増え続けてきました。柔道整復の施術所は令和6年時点で全国に50,924か所あり、はり・きゅうやあん摩マッサージ指圧を含めた治療院全体では14万か所を超えます。これはコンビニエンスストアの店舗数より多い数です。
限られた地域の中で似たようなサービスを提供する整骨院が増えれば、1院あたりの来院者数はどうしても分散します。近隣に競合が多いエリアでは、保険施術だけで集客し続けるのは難しくなっています。
集客・差別化の難しさ
施術所が増えたことで、「どの整骨院を選ぶか」は患者さんにとって迷いやすくなりました。技術に自信があっても、その価値が伝わらなければ選ばれません。とくにWebでの情報発信やクチコミ対策が不十分な院は、新規の患者さんに見つけてもらう機会そのものを失いがちです。
「腰痛ならここ」「産後の骨盤ケアならここ」といったように、他院と何が違うのかを明確に打ち出せていない整骨院は、価格競争に巻き込まれやすくなります。
差別化ができていないことは、経営が伸び悩む大きな原因のひとつです。
資金計画・経費管理の甘さ
経営が厳しくなる整骨院に共通しやすいのが、資金計画や経費管理の甘さです。開業時に内装や機器へ資金を使いすぎ、手元の運転資金が不足したまま船出してしまうケースは少なくありません。
売上が安定するまでには時間がかかります。その間の家賃や人件費、生活費をまかなう運転資金が足りないと、軌道に乗る前に資金がショートしてしまいます。毎月の固定費や損益分岐点を把握しないまま経営を続けることは、厳しい環境で大きなリスクになります。
数字を見ながら経営判断ができるかどうかが、生き残りを左右します。
参考:厚生労働省「社会保障審議会(医療保険部会 柔道整復療養費検討専門委員会)」 / 厚生労働省「柔道整復師等の施術にかかる療養費の取扱いについて」 / 厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」 / 日本フランチャイズチェーン協会「コンビニエンスストア統計データ」
整骨院が生き残るための対策

経営環境が厳しいのは事実ですが、工夫次第で安定して続けている整骨院も数多くあります。共通しているのは、保険収入への依存から脱却し、自院ならではの価値を明確にして、数字を見ながら経営していることです。
ここでは、厳しい時代を生き抜くための具体的な対策を5つ紹介します。
自費メニューを導入して保険依存から脱却する
まず取り組みたいのが、保険外の自費メニューの導入です。保険が使える範囲が限られている以上、保険施術だけで収益を伸ばすには限界があります。骨盤矯正や産後ケア、美容鍼灸、スポーツ整体、姿勢改善プログラムなど、患者さんの悩みに応える自費メニューを整えることで、1人あたりの単価を高められます。
自費メニューは、保険に左右されない安定した収益の柱になります。ただし、価格を設定するだけでは選ばれません。その施術で何が改善するのかを丁寧に説明し、価値を感じてもらうことが定着のカギになります。
保険外で導入できる主な施術メニュー
Web・MEO・SNSで集客を強化する
整骨院を探す人の多くは、まずスマートフォンで検索します。そのため、Googleマップ上での見え方を整えるMEO対策や、ホームページ、SNSでの情報発信は欠かせません。
とくにGoogleビジネスプロフィールを整備し、施術内容や写真、クチコミを充実させることは、来院のきっかけとして大きな効果があります。SNSでは施術の様子やセルフケアの情報を発信し、院の雰囲気や専門性を伝えることで、初めての患者さんの不安を和らげられます。
広告費をかけなくても、こうした地道な発信の積み重ねが新規集客につながります。
整骨院の集客強化
プロフィール整備
継続的に集める
症状ページを充実
施術を発信
運転資金を十分に確保し数値を管理する
安定経営には、十分な運転資金と数値管理が欠かせません。運転資金は、家賃・人件費・生活費などを含めて数か月分をあらかじめ確保しておくと、売上が変動しても慌てずに対応できます。
あわせて、客単価・リピート率・新規患者数・損益分岐点といった指標を毎月チェックしましょう。どの数字が伸び、どこに課題があるのかを把握できれば、感覚ではなく根拠に基づいた経営判断ができます。数字に強い経営者ほど、環境の変化に早く対応できます。
整骨院経営者が毎月確認すべき4つの指標
コンセプトを明確にして差別化する
「誰の、どんな悩みに応える整骨院なのか」というコンセプトを明確にすることも重要です。すべての患者さんに対応しようとすると、かえって特徴がぼやけてしまいます。
たとえば「産後の骨盤ケア専門」「スポーツ外傷とパフォーマンス改善」「デスクワークの慢性痛対策」など、ターゲットと強みを絞り込むことで、その悩みを抱える人に「ここに行きたい」と思ってもらえます。差別化は価格競争から抜け出し、選ばれ続けるための土台になります。
柔道整復師の今後の働き方やキャリアの広げ方については、こちらの記事も参考になります。
リピート率を高める
新規の患者さんを集めることと同じくらい、来院した方に継続して通ってもらうことも大切です。新規集客には広告費や労力がかかるため、リピート率が低いと売上が安定しません。
施術後の経過を丁寧に確認し、次回来院の目安やセルフケアを伝えることで、患者さんは通う意味を実感できます。予約の取りやすさや院内の居心地のよさ、スタッフの対応といった細やかな配慮の積み重ねが、リピートにつながります。
既存の患者さんに満足してもらうことが、結果として安定した経営を支えます。
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開業前に準備しておきたいこと

これから独立を考えている方にとって、開業前の準備は経営の成否を大きく左右します。整骨院を成功させるには、施術の技術だけでなく、経営・集客・数値管理の知識、自費メニューを提供できる技術力、十分な開業資金、そして患者さんとの信頼関係を築く力が求められます。
開業資金の目安として、日本政策金融公庫の調査では新規開業費用の中央値は約580万円(全業種平均の参考値)とされています。
整骨院でも内装や施術機器、当面の運転資金を含めると、まとまった資金が必要です。自己資金が不足したまま開業すると、経営が軌道に乗る前に苦しくなりかねません。
こうした準備は、一朝一夕には整いません。だからこそ、いきなり独立するのではなく、勤務柔道整復師として働きながら経験を積む選択肢も有効です。勤務先で経営や集客のノウハウを学び、自費施術のスキルを磨き、開業資金を蓄えておくことは、厳しい環境を生き抜くための確かな準備になります。
- 勤務先で経営・集客・数値管理のノウハウを学ぶ
- 自費メニューを任される中で施術の幅を広げる
- 開業資金を計画的に準備し、無理のない自己資金を蓄える
求人情報では、勤務条件や職場の雰囲気、教育体制などを見比べられます。将来の開業を見据えて、経験を積める職場を探してみるのもおすすめです。
柔道整復師の求人を探す整骨院の経営に関するよくある質問
整骨院の経営について、これから開業する方や現役の経営者からよく寄せられる質問にお答えします。数字や制度にまつわる疑問を整理しておくことで、現実的な見通しを立てやすくなります。
整骨院の廃業率は本当に高い?
整骨院に限定した廃業率を示す公的な統計はなく、「〇年で〇割が廃業する」といった数字は民間の参考値にとどまります。そのため、廃業率の高さを断定することはできません。
ただし、療術業界全体で経営が厳しくなっている傾向はうかがえます。東京商工リサーチによると、鍼灸院や接骨院などを含むマッサージ業の倒産は2025年度に108件と、1996年度以降の30年間で最多となりました。
倒産した事業者の多くは資本金1,000万円未満の小規模事業者で、原因の多くを販売不振が占めています。小規模で資金に余裕のない院ほど、環境の変化に耐えにくいといえます。
(1996年度以降で最多)
「販売不振」の割合
の小規模事業者
今のあなたの状況は?
整骨院経営で年収1000万円は可能?
結論からいえば、整骨院経営で年収1,000万円を実現している方もいますが、誰もが達成できるわけではありません。勤務柔道整復師の給与水準は、医療キャリアナビ掲載の求人データ(2026年時点)で月給の中央値が26万5,000円ほどです。
開業して自費メニューを軌道に乗せ、リピーターを確保できれば、勤務時代を大きく上回る収入も見込めます。
一方で、売上がそのまま手元に残るわけではありません。家賃・人件費・材料費・広告費などの経費を差し引いた利益が経営者の収入です。高収入を目指すなら、自費メニューの充実とリピート率の向上、経費のコントロールが欠かせません。
保険診療だけで経営を続けられる?
保険診療だけで整骨院を続けることは、年々難しくなっています。療養費の減少と審査の厳格化により、保険で得られる収益は限られているためです。保険が使えるのは急性・亜急性の外傷性のケガに限られ、慢性的な症状には使えません。
そのため、保険施術を土台にしつつも、自費メニューを組み合わせて収益の柱を複数持つことが現実的です。保険と自費のバランスをとりながら、地域の患者さんに選ばれる院づくりを進めることが、長く経営を続けるコツといえます。
参考:東京商工リサーチ「マッサージ業の倒産が過去30年で最多の108件」
まとめ
整骨院の経営が厳しいといわれる背景には、療養費(保険収入)の減少、審査の厳格化、施術所の増加による競合激化、集客・差別化の難しさ、資金管理の甘さといった構造的な要因があります。かつてのように保険収入だけに頼る経営は、成り立ちにくくなっているのが現実です。
しかし、自費メニューの導入やWeb・MEOでの集客強化、十分な運転資金の確保と数値管理、コンセプトの明確化、リピート率の向上といった対策を積み重ねれば、厳しい環境でも安定した経営は十分に目指せます。これから独立する方は、いきなり開業せず、勤務柔道整復師として経験と資金を蓄えることが確かな準備になります。現状を正しく理解し、一つずつ手を打っていくことが、生き残るための近道です。





