緩和ケアに向いている看護師の特徴5選!仕事内容やホスピスとの違いを解説
「もっと患者さん一人ひとりに寄り添いたい」「緩和ケアに関心がある」と感じたことはありませんか。
緩和ケアは、終末期の看護だけではなく、その人らしい生き方を支える看護です。
この記事では、緩和ケアに向いている看護師の特徴を詳しく解説するとともに、緩和ケアの具体的な仕事内容やホスピスとの違い、よくある疑問について詳しく説明します。
そもそも緩和ケアとは何か

緩和ケアの定義
緩和ケアとは、命を脅かす病に直面している患者とその家族に対して、身体的・心理的・社会的・スピリチュアルな苦痛を総合的に和らげるための医療とケアのことです。
これは、世界保健機関(WHO)の定義に基づき、近年日本でも広く採用されています。
つまり、緩和ケアは「がんの終末期に行う特別な医療」ではなく、
“その人らしい生活を支え、より良い時間を過ごすための支援”を目的としています。
以前は「終末期の看護」というイメージが強かったですが、現在ではがんや慢性疾患の早期から導入されるケアとして認識されています。
緩和ケアの対象
従来は「がん患者の終末期ケア」というイメージが強かった緩和ケアですが、現在では対象が広がっています。
- がん患者(診断時から終末期まで全ての段階)
- 心不全、呼吸不全などの非がん疾患患者
- 神経難病患者
- その他の慢性疾患患者
緩和ケア病棟とホスピスとの違い
ホスピスとは、人生を穏やかに支える思想・理念のことですが、日本では、ホスピス=終末期を支える施設として使われることが多いです。
| 項目 | 緩和ケア病棟 | ホスピス(施設) |
|---|---|---|
| 設置場所 | 総合病院や大学病院などの一般病院内 | 病院とは独立した専門施設 |
| 対象患者 | がんや非がん疾患で、症状緩和が必要な患者 | 主に終末期のがん患者(余命数週間〜数ヶ月程度) |
| 対象時期 | 比較的早期から終末期まで幅広く対応 | 終末期に限定されることが多い |
| 治療との関係 | 必要に応じて他科との連携や、一定の検査・治療も可能 | 延命治療は行わず、苦痛緩和とQOL向上に特化 |
| 入院期間 | 症状が安定すれば退院・転院もあり、比較的柔軟 | 看取りまで過ごすことを前提としている場合が多い |
| 保険適用 | 医療保険適用(一般病棟より入院費は高め) | 医療保険適用(緩和ケア病棟と同等の費用) |
「緩和ケア病棟」と「ホスピス」は、どちらも痛みや不安を和らげ、患者が穏やかに過ごせるよう支える場ですが、対象患者や対象時期などが異なります。
緩和ケアに向いている看護師の特徴5選

共感力が高く、患者や家族の想いに寄り添える
緩和ケアでは、患者さんや家族の不安、悲しみ、葛藤といった複雑な感情に向き合う場面が多くあります。
「なぜ自分だけがこんな病気に」「家族に迷惑をかけたくない」「死ぬのが怖い」といった言葉にならない想いを、表情や仕草から感じ取り、寄り添うことが求められます。
共感力が高い人は、相手の立場に立って物事を考え、その人の痛みを自分のことのように理解しようとするでしょう。
ただし、感情移入しすぎると自分自身が疲弊してしまうため、適度な距離感を保つバランス感覚も大切です。
傾聴力があり、相手の言葉を最後まで受け止められる
緩和ケアでは、患者さんや家族の話をじっくり聴く時間が重要です。
不安や恐怖、後悔、感謝など、さまざまな感情が込められた言葉を、急かすことなく最後まで受け止める姿勢が求められます。
傾聴とは、ただ聞くことではなく、相手の話に集中し、言葉の裏にある本当の気持ちを理解しようとする積極的な姿勢です。
時には沈黙を共有し、時には相槌を打ち、相手が安心して話せる雰囲気を作ることが大切です。
忙しい病棟では、ゆっくり話を聴く時間がなかなか取れないこともあったでしょう。
「もっと話を聴いてあげたかった」と感じたことがある方には、緩和ケアの環境がフィットするかもしれません。
冷静な判断力と観察力を持つ
緩和ケアでは、患者さんの微細な変化を見逃さない観察力と、状況に応じて適切に判断する力が必要です。
痛みの性質や程度の変化、呼吸状態の悪化、精神的な不安定さなど、様々なサインを早期にキャッチし、医師や他職種と連携しながら迅速に対応することが求められます。
特に疼痛管理では、患者さんの訴えを正確に評価し、適切なタイミングでレスキュー薬を使用するなど、的確な判断が必要です。
また、患者さんの容態が急変した際や、家族が動揺している場面でも、冷静さを保ちながら状況を整理し、落ち着いて次に取るべき行動を判断する力が求められます。
ストレスに対するセルフケアができる
緩和ケアでは、患者さんの死に直面する機会が多くあります。
特に関わりの深かった患者さんとの別れは、看護師自身も悲しみを感じるものです。
しかし、その感情に飲み込まれすぎず、次の患者さんのケアに向かう切り替えも必要です。
「感情をコントロールできる」とは、感情を押し殺すことではありません。
自分の感情を認識し、適切に表現しながらも、仕事に支障が出ないよう調整できることを意味します。
同僚との感情の共有、仕事とプライベートの切り替え趣味やリフレッシュの時間を持つなど、セルフケアの習慣を持つことが大切です。
多くの緩和ケア病棟では、デスカンファレンスやスタッフ同士のサポート体制が整っています。
一人で抱え込まず、チームで支え合いながら働ける環境があることも知っておいてください。
チーム医療を大切にできる
緩和ケアは、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、栄養士、ソーシャルワーカー、臨床心理士など、多職種が協働するチーム医療の典型です。
それぞれの専門職が持つ知識や技術を尊重し、お互いに補い合いながら、患者さんと家族にとって最善のケアを提供します。
看護師は、患者さんに最も近い存在として、他職種をつなぐ調整役を担うことも多くあります。
また、看護師同士の支え合いも重要です。
精神的に辛い場面や判断に迷う場面で、先輩や同僚に相談し、助け合える関係性があることで、長く緩和ケアに携わることができます。
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緩和ケア看護師の仕事内容と一日のスケジュール例

緩和ケアでの看護師の役割は、患者さんの苦痛を緩和し、生活の質(QOL)を維持、または高められるようサポートすることです。
ここでは緩和ケア看護師の具体的な仕事内容、1日のスケジュール例を紹介します。
緩和ケア看護師の主な仕事内容
オピオイド(医療用麻薬)やその他の鎮痛薬の効果と副作用を観察し、医師と連携しながら適切な疼痛コントロールを行います。レスキュー薬のタイミングや、痛みの性質の変化を見逃さないことが重要です。
体位の工夫、酸素療法、薬物療法などを組み合わせて、患者さんの呼吸困難感を和らげます。
悪心・嘔吐、便秘、食欲不振などに対して、薬物療法や食事の工夫、環境調整などを行います。
休息と活動のバランスを考え、患者さんが無理なく過ごせるよう支援します。
不安、恐怖、怒り、悲しみなど、様々な感情を受け止め、安心して話せる関係性を築きます。
治療の選択、療養場所の選択、延命治療に関する意向など、重要な意思決定の場面で患者さんと家族を支えます。
医師からの病状説明に同席し、患者さんや家族が理解できているか確認し、追加の質問や不安に対応します。
「なぜ自分が」「人生の意味は」といった、人生や死に関する深い問いに寄り添います。患者自身が自分の想いを見つめ直し、その人らしい時間を過ごせるよう支えます。
体力に合わせた清拭や入浴介助を行い、清潔を保ちながらリラックスできる時間を提供します。
食べたいものを食べられるよう、食事形態の工夫や食べやすい時間帯の調整などを行います。
尊厳を守りながら、排泄の介助や管理を行います。
患者さんの希望や体力に合わせて、散歩やリハビリ、趣味の時間などを調整します。
自宅での介護方法、薬の管理方法などを具体的に指導します。
家族の不安や疲労に配慮し、話を聴いたり、休息を勧めたりします。
患者さんが亡くなる前から、また亡くなった後も、家族の悲しみに寄り添います。
多職種が集まり、患者さんの状態やケア方針について話し合います。
医師、薬剤師、理学療法士、栄養士、ソーシャルワーカーなどと密に連携します。
在宅移行を希望する患者さんのために、訪問看護ステーションや地域の医療機関と連携します。
個室や静かな環境を確保し、患者さんがリラックスできる空間を作ります。
面会時間の対応や、家族が泊まれる環境の提供など、家族との時間を大切できるようサポートします。
起床時間、就寝時間、食事時間など、病院のスケジュール通りではなく、可能な限り患者さんの希望を尊重します。
アロマセラピー、音楽療法、マッサージなど、心地よさを感じられるケアを取り入れます。
緩和ケア看護師の1日のスケジュール例(病棟)
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緩和ケア看護師のやりがいと大変なこと

緩和ケア看護師のやりがい
患者さんの「その人らしさ」を支えられる
患者さんの価値観や希望を尊重したケアができることは、大きなやりがいです。
「最期は自宅で過ごしたい」「家族と食事をしたい」といった願いを叶えるサポートができたとき、看護の本質を実感できます。
患者さん一人ひとりの人生観や大切にしていることを知り、その人にとって最善のケアを一緒に考えていくプロセスそのものが、深い充実感につながります。
苦痛を和らげることができたという実感ができる
痛みで苦しんでいた患者さんが、適切な疼痛管理によって穏やかな表情を取り戻す瞬間。
呼吸困難で不安そうだった患者さんが、ケアによって安心して眠れるようになる瞬間。
こうした変化を間近で見られることは、大きな達成感と看護師として何よりの喜びを感じられます。
家族を含めたケアができる
「あのとき支えてもらえて本当に良かった」「おかげで後悔なく見送れました」と、患者さんが亡くなった後に遺族から感謝の言葉をもらえることがあります。
介護に疲れた家族に休息を勧めたり、意思決定に迷う家族に寄り添ったり、患者さんを中心に家族全体のQOLを高められることも、緩和ケアならではのやりがいです。
専門性が向上する
緩和ケアは専門性の高い分野であり、学び続けることで確実にスキルアップできます。
疼痛管理、症状マネジメント、コミュニケーション技術など、多様な専門知識を身につけられます。
認定看護師や専門看護師としてのキャリアパスもあり、プロフェッショナルとしての成長を実感できます。
学んだことが直接患者さんのケアに活かされ、目に見える形で成果が現れることも、大きなやりがいです。
緩和ケア看護師の大変なこと
精神的負担が大きいと感じる
緩和ケアでは、患者さんの死と日常的に向き合います。
特に若い患者さんや、子育て中の患者さん、長期間関わった患者さんが亡くなるときには、深い悲しみや喪失感を感じます。
また、家族の悲嘆に寄り添う場面では、遺族の激しい感情に触れることもあります。
看護師自身も感情的に揺さぶられ、仕事が終わった後も患者さんのことが頭から離れないこともあるでしょう。
特に思い入れのある患者さんとの別れが重なったりすると、精神的に疲弊してしまうこともあります。
看護の限界を感じてしまう
どんなに最善を尽くしても、痛みや苦痛を完全には取り除けないことがあります。
患者さんが苦しんでいる姿を目の当たりにしながら、「もっと何かできることはないか」と悩み、無力感に襲われることもあります。
また、患者さんが「家に帰りたい」と希望しても、医療的な理由や家族の介護力の問題で在宅移行が難しいとき、患者さんの願いを叶えられない悔しさを感じます。
医学的にできることが限られている中で、「治す」のではなく「支える」ケアに徹することに、葛藤を感じる看護師もいます。
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緩和ケア看護師の働き方に関する疑問

緩和ケア看護師は「つらい」仕事ではないの?
A.患者さんや家族との別れに立ち会うこともあり、精神的に負担を感じることがあります。
確かに、患者さんの死に直面する機会が多く、感情的な負担を感じることはあります。
しかし、緩和ケアの現場は「悲しみ」だけでなく、その人らしい時間を支える温かさに満ちた仕事です。
実際に緩和ケアで働く看護師の多くは、「辛いこともあるが、それ以上にやりがいを感じる」と語ります。
辛さはありますが、それは「関わった証」でもあり、その経験を通じて人間として成長できる仕事だと言えます。
緩和ケア看護師の仕事は難しい?
A.薬物療法や心理支援など専門知識が求められるため、最初は難しく感じるかもしれません。
疼痛コントロールをはじめとする症状マネジメントには、専門的な知識と経験が必要です。
オピオイドの使い方、レスキュー薬のタイミング、副作用への対処などを学ぶ必要があります。
また、鎮静の判断、延命治療の中止、患者さんと家族の意向が異なる場合など、倫理的な判断を迫られる場面も少なくありません。
正解のない問いに向き合う難しさがあります。
さらに、「余命を知りたくない」という患者さんへの関わり方、悪い知らせの伝え方など、繊細なコミュニケーションスキルが求められます。
しかしながら、どの分野においても初めは難しいものです。
緩和ケアは、これまでに病棟で培った観察力・判断力・コミュニケーション力が活かせる分野です。
経験を重ねるほど自信がつき、やりがいを感じるようになります。
緩和ケア看護師の給与はどのくらい?
A.緩和ケア看護師の給与は、一般病棟の看護師と大きくは変わりません。
緩和ケアだから高くなる、というよりは病院によって給与水準は異なります。
大学病院や総合病院の緩和ケア病棟の場合、比較的高水準となります。
また、職場の形態(外来・病棟)によっても差があります。
夜勤なし・日勤中心。勤務時間が安定している。
夜勤あり。
緩和ケア看護師になるには資格が必要?
A.緩和ケアに携わるだけであれば、特別な資格は不要です。
看護師免許があれば、緩和ケア病棟や緩和ケアチームで働くことができます。
より専門性を高めたい場合は、以下のような資格があります。
- 緩和ケア認定看護師
- がん看護専門看護師
- ELNEC-J(End-of-Life Nursing Education Consortium Japan)修了
- 緩和ケア研修会修了
いずれも実務経験と教育課程修了が必要ですが、キャリアアップとして人気の高い資格です。
まとめ
緩和ケアは、患者さんとその家族の苦痛を緩和し、その人らしい人生を支える、深いやりがいのある看護の分野です。
緩和ケアに向いている看護師の特徴の多くは、看護師として病棟勤務を続けてきた皆さんが、すでに身につけているものです。
多くの患者さんと関わり、様々な場面で判断を下し、チームの中で役割を果たしてきた経験は、緩和ケアで大いに活かすことができます。
「もっと一人ひとりの患者さんとじっくり向き合いたい」「その人らしさを大切にした看護がしたい」と感じている方にとって、充実したキャリアの選択肢となるでしょう。
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