看護師の腰痛や身体的負担を軽減|医療現場を支える企業の取り組みを紹介
看護師は医療現場に欠かせない存在です。しかし、移乗介助や体位変換など、日々の業務には大きな身体的負担が伴います。特に深刻なのが腰痛で、多くの看護師が痛みを抱えながら働いている現状があります。そんな看護師の負担を軽減しようと、最新の技術や製品で医療現場をサポートする企業が動き出しています。
この記事では、看護師の身体を守るための取り組みと、それを支える企業の技術を紹介します。
看護師に腰痛や身体的負担が多い理由

日本医療総合研究所が2012年に実施した調査によると、急性期一般病院で働く看護職員の約7割(68.1%)が腰痛を抱えており、看護職についてから一度でも腰痛を経験した人は85.6%にも上ります。なぜこれほど多くの看護師が腰痛に悩まされているのでしょうか。
参考:日本医労連|急性期一般病院における看護職員の腰痛・頸肩腕痛の実態調査(2012年)
腰痛が発生しやすい業務
看護師が腰痛を抱えやすい原因は下記のようなものがあります。
- 移乗介助
- ベッドや医療機器の搬送
- 体位変換
- 長時間の立ち仕事
- 前かがみでの細かい作業
- 夜勤による生活リズムの乱れ
- 入浴介助
これらの業務は一日に何度も繰り返され、夜勤による生活リズムの乱れも加わることで、疲労が蓄積し、慢性的な腰痛につながっていきます。
離職・労災・安全面への影響
日々の業務による身体的負担は、看護師個人の問題にとどまりません。医療現場全体に深刻な影響を与えています。腰痛が原因で休職や離職となるケースも少なくありません。これが慢性的な人手不足をさらに悪化させています。実際、保健衛生業で発生する業務上疾病全体の約8割を腰痛が占めています。
参考:厚生労働省・中央労働災害防止協会|医療保健業の労働災害防止(看護従事者の腰痛予防対策)
身体の疲労は集中力の低下も招きます。これが医療ミスや患者さんへの安全リスクにつながる可能性もあります。看護師が無理をしながら働く環境は、結果的に患者さんにとっても良くありません。
人手不足が進む中で求められる支援のかたち
医療現場では長年、「体力勝負」「根性で乗り切る」という考え方が根強くありました。しかし最近では、その常識が変わりつつあります。人手不足が深刻化しているからこそ、看護師が健康に長く働ける環境を整える必要性が認識されるようになってきました。
そこで注目されているのが、「技術で支える」という考え方です。最新の機器やアイデアを使って、今まで”当たり前”だった身体の負担を減らす。看護師がより安全に、健康に働ける環境をつくろうという動きが広がっています。
身体的負担や腰痛を軽減する取り組み|医療現場を支える3つの企業

①ジェイテクトマシンシステム「ラクステア」
ベッドでの搬送の”見えない負担”を軽減する電動アシスト
「ラクステア」は、ベッドでの搬送の負担を軽くするために開発された電動アシスト装置です。今使っているベッドに後付けで取り付けられて(限定機種のみ)、ベッドを押すだけでモーターがサポートしてくれます。
病院内でのベッドでの搬送は毎日のように発生する業務ですが、その負担は見過ごされがちです。検査室への移動、手術室への搬送、病棟間の転棟。ベッドを押して移動する場面は一日に何度も訪れます。押す、引く、曲がる、止まる。一つひとつは単純な動作に見えますが、長い廊下や坂道では、腰や腕にずっと負荷がかかり続けます。特に夜勤で少人数の時は、さらに大変です。
ラクステアを使えば、押す力が大幅に減るので、身体への負担が軽くなり、疲れにくくなります。
ラクステアの特徴と効果
最大の特徴は、今あるベッドにそのまま取り付けられること。病院が使っているベッドを活かせるので、大きな設備投資がいりません。操作も簡単で、特別な訓練は必要なし。坂道で自動制御してくれたり、長距離でも安定して搬送できたり、安全面でも高評価です。
導入した施設からは「搬送時の腰や腕への負担が明らかに減った」という声が多く聞かれます。日常業務の”見えない負担”を減らすことで、看護師がケアに集中できる環境づくりに役立っています。
②あかね福祉「移乗ですⅤ」
“持ち上げない介助”で移乗時の腰痛リスクを低減
患者さんの移乗介助は、看護師の約5割が腰に負担を感じる業務として挙げています。
参考:日本医労連|急性期一般病院における看護職員の腰痛・頸肩腕痛の実態調査|(2012年)
「移乗ですⅤ」は、持ち上げずに滑らせる動作で患者さんを移せる福祉用具。電源を使わないシンプルな構造で、すぐに使えるのが特徴です。
患者さんにもやさしい設計
持ち上げる動作が要らないので、腰への負担を減らすだけでなく、患者さんにも無理な力がかかりません。安心して介助を受けられます。忙しい現場でもすぐに対応できて、”持ち上げない介助”の実践を後押ししてくれます。
③イノフィス「マッスルスーツEvery」
装着型アシストスーツで、あらゆる”持ち上げ”をサポート
「マッスルスーツEvery」は、人工筋肉を使った装着型のアシストスーツです。
圧縮空気で腰の動きを補助して、重いものを持ち上げる動作を物理的に支えてくれます。電力を使わず、軽くて動きやすいので、長時間つけていても大丈夫です。
看護師一人ひとりを支える道具
医療機器の移動、リネンの運搬、清掃作業など、腰に負担がかかるいろいろな場面で活躍します。年齢や体力に関係なく働ける環境をサポート。「無理をしない働き方」を後押しするツールとして、導入が進んでいます。
看護師の腰痛や身体的負担は深刻な問題ですが、それを軽減するための製品や技術が開発されています。転職や職場選びの際には、こうした取り組みを導入しているかどうかも、一つの判断材料になるでしょう。