【一覧で比較】介護老人保健施設の5種類!看護師のやりがいやメリットから注意点も紹介

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「介護老人保健施設(老健)ってどんな種類があるの?」

「病院や他の介護施設と何が違うんだろう?」

「看護師として働くメリットや大変なことは?」

介護老人保健施設は、地域の高齢者の在宅復帰を支える重要な役割があります。

しかし、その役割や種類、他の施設との違いについて、よく知らない方も多いでしょう。

そこでこの記事では以下について解説します。

  • 介護老人保健施設とは
  • 介護老人保健施設の5種類
  • 介護老人保健施設とその他の施設の違い
  • 介護老人保健施設で働く看護師のやりがいやメリット
  • 介護老人保健施設で働きたい看護師の注意点

介護老人保健施設での新しいキャリアを考えている方は、ぜひ最後までお読みいただき、次のステップに役立ててください。

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介護老人保健施設(老健)とは?

介護老人保健施設とは、介護が必要な方が、居宅で生活を送れるようにするためのサービスを提供する施設で「老健」と呼ばれることもあります。

施設の特徴や入所条件、サービス内容を見ていきましょう。

1.介護老人保健施設の特徴

介護老人保健施設は施設サービス計画に基づき、医学的管理のもと看護や介護、機能訓練、医療などを行うことを目的としています。

医師や看護師の他、リハビリスタッフなどの配置も義務付けられています。

自宅復帰が目標であり、入居期間はおおむね3〜6か月程度です。

2.入所条件

介護老人保健施設を利用できる方は、以下の条件を満たす方です。

  • 介護保険法の被保険者
  • 原則65歳以上で要介護1以上の認定を受けている方(特定疾患が原因で要介護認定を受けている40~64歳の方も対象)
  • 病状が安定しており入院の必要がない方
  • 在宅復帰を目指し、リハビリテーションを受けられる方

例えば、脳梗塞を発症し、ADL(日常生活動作)に介助が必要な方が入所します。

急性期病院での治療、回復期リハビリテーション病棟でのリハビリを行い、一定の改善は見られるものの、身の回りのことが十分にできない場合などです。

また、病気や加齢の影響で、在宅介護が困難になったときにも利用可能です。

3.サービス内容

老健で提供される主なサービスの内容は以下のとおりです。

  • 医師による医学的管理(診察、投薬など)
  • 医師の指示による医療行為
  • 看護、介護ケア
  • リハビリ専門職によるリハビリ
  • 栄養管理
  • 食事や入浴などの日常サービス

さまざまな専門職が連携し、利用者さんが地域で安心して暮らせるようにサポートします。

参考:期待される老健の役割/公益社団法人 全国老人保健施設協会

参考:介護老人保健施設/厚生労働省 老健局

4.費用の目安

介護老人保健施設を利用する際は、施設サービス費の他に居住費、食費、日常生活費などが必要です。

1か月あたり9~20万円程度かかります。

要介護3・利用者負担1割の方が、基本型施設を利用する場合を例に見ていきましょう。

介護費用表
要介護3の方の月額費用(介護施設サービス費Ⅰ・基本型・多床室)
サービス費用 828円×30(日)=24,840円
居住費 13,000円(日額437円)
食費 44,000円(日額1,445円)
日常生活費 10,000円(理美容代・新聞・雑誌など)
91,840円

サービス費用は、介護や医療サービスにかかる費用です。

介護度や施設の種類によって異なり、体制が充実している場合は、さまざまな加算が発生します。

居室のタイプによっても料金が異なります。

参考:介護事業所・生活関連情報検索「介護老人保健施設」/厚生労働省

参考:令和6年8月からの 特定入所者介護(予防)サービス費の見直しに係る周知への協力依頼について/厚生労働省 

介護老人保健施設の5種類

介護老人保健施設は、在宅復帰・在宅療養支援機能に対する評価により、5つに分類されるのが特徴です。

在宅復帰・在宅療養支援等指標の合計点数と、算定要件を満たすかどうかで変わります。

2025年7月現在では、以下の5つがあります。

  1. 超強化型老健
  2. 在宅強化型老健
  3. 加算型老健
  4. 基本型老健
  5. その他型老健

現在の5分類になったのは2018年(平成30年)です。それまでは、強化型、加算型、従来型の3種類でした。

2017年(平成29年)の制度改正で、介護老人保健施設の役割が「在宅復帰・在宅療養支援」であることが明確になり、報酬体系の見直しが行われました。

その中で、在宅復帰・在宅療養支援機能に対する評価指標が加えられ、現在の5分類となっています。

算定要件は以下のとおりです。

リハビリテーション要件表
超強化型 在宅強化型 加算型 基本型 その他型
在宅復帰・在宅療養支援等指標(最高値:90) 70以上 60以上 40以上 20以上 左記の要件を満たさない
退所時指導等 要件あり 要件あり 要件あり 要件あり
リハビリテーションマネジメント 要件あり 要件あり 要件あり 要件あり
地域貢献活動 要件あり 要件あり 要件あり 要件なし
充実したリハ 要件あり 要件あり 要件なし 要件なし

在宅復帰・在宅療養支援等指標、評価項目ごとの算定要件は以下をご参照ください。

参考・引用:介護老人保健施設/厚生労働省

1.超強化型

超強化型は、在宅復帰・在宅療養支援等の指標が70以上で、さらに他の要件をすべて満たしている施設です。

医師や看護師、リハビリスタッフなど多職種が連携し、退院後の生活を見据えたリハビリテーションを行っています。

退院時指導や、地域連携が高く評価され、在宅復帰に力を入れた体制づくりをしています。

2.強化型

強化型は、在宅復帰・在宅療養支援等の指標が60以上で、他の要件もすべてクリアしている施設です。

超強化型に次いで、在宅復帰に向けたサポートが充実しています。

リハビリの提供体制や医療との連携も重視されており、短期間で在宅復帰を目指す場合の選択肢の一つです。

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3.加算型

加算型は、在宅復帰・在宅療養支援等の指標が40以上の施設です。

基本的な医療・介護サービスに加え、退院時指導やリハビリテーションマネジメント、地域貢献の算定要件を満たす取り組みを行っています。

一定の在宅復帰支援体制を整えており、要介護度やリハビリの必要性に応じた柔軟な支援が可能です。

4.基本型

基本型は、在宅復帰・在宅療養支援等の指標が20以上の施設です。

超強化型・強化型・加算型と比べると、在宅復帰の取り組みは限定的ですが、医療・介護を組み合わせたサービスを提供しています。

2018年には最も多くの割合を占めていた種類で、幅広い方に対応しています。

5.その他型

在宅復帰・在宅療養支援等の指標や算定要件など、いずれも満たさない施設です。

基本的な介護サービスは受けられますが、在宅復帰のための支援は少なめで、療養や介護が中心となる傾向があります。

介護老人保健施設5種類の施設類型推移

介護老人保健施設の5種類の施設類型推移を見ていきます。

超強化型は、2018年(平成30年)5月時点の7.8%から、2023年(令和5年)2月時点で28.6%に増加しています。

2018年で最も大きな割合を占めていた基本型は、2018年5月時点の51.1%から、2023年2月時点で24.1%に減少しました。

2023年2月時点で最も多いのは加算型で、31.6%です

在宅復帰支援やリハビリテーションに力を入れ、専門職を手厚くしている施設が増えていることがわかります。

介護老人保健施設とその他施設との違いをわかりやすく

介護施設はさまざまな種類があるため、違いがよくわからない方もいるかもしれません。

代表的な介護施設と介護老人保健施設の違いをみていきましょう。

1.介護老人福祉施設との違い

介護老人保健施設と介護老人福祉施設の主な違いは以下のとおりです。施設の目的や入所期間に大きな違いがあります。

介護施設比較表
介護老人保健施設 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
目的 在宅復帰に向けたリハビリ・医療ケア・介護 在宅での生活が困難な方の長期的な生活支援
入所期間 原則3~6か月 長期入所が可能・看取り対応
医療体制 常勤医師が1人以上配置・看護・介護ケア、リハビリが手厚い 1人以上の配置医(嘱託医)や協力医療機関との連携
対象者 病状安定期にあり、在宅復帰を目指す要介護1以上の方 原則要介護3~5の方(特例の要件を満たせば要介護1~2の方も可)

2.有料老人ホームとの違い

介護老人保健施設と有料老人ホームの主な違いは以下のとおりです。

運営母体や医療体制、費用などが大きく異なります。

有料老人ホームの費用は高額になりやすいため、入所が難しいケースも少なくありません。

介護施設比較表2
介護老人保健施設 有料老人ホーム
目的 在宅復帰に向けたリハビリ・医療ケア・介護 高齢者の生活支援、必要に応じた介護サービス
運営母体 医療法人・社会福祉法人など 民間企業が中心
医療体制 常勤医師が1人以上配置・看護・介護ケア、リハビリが手厚い 医師の配置義務はない・看護師が配置されていない施設もある
費用 介護保険が適用 高額になる傾向・介護保険サービスを利用するときは、外部の訪問系・通所系サービスが利用できる。(介護付き有料老人ホームの介護サービスは介護保険適用)

3.グループホームとの違い

介護老人保健施設とグループホームの主な違いは以下のとおりです。目的や規模、医療体制が大きく異なります。

介護施設比較表3
介護老人保健施設 グループホーム
目的 在宅復帰に向けたリハビリ・医療ケア・介護 認知症の高齢者が少人数で共同生活を送る
規模 100人以上など比較的規模が大きい 1ユニット5~9人・施設で最大3ユニットまで。
医療体制 常勤医師が1人以上配置・看護・介護ケア、リハビリが手厚い。 医師・看護師の配置は義務付けられていない・医療ケアは限定的。
対象者 病状安定期にあり、在宅復帰を目指す要介護1以上の方 認知症の診断を受けた要支援2・要介護1以上の方

4.小規模多機能型居宅介護事業所との違い

介護老人保健施設と小規模多機能居宅介護事業所の主な違いは、提供するサービスです。

小規模多機能は通いと泊まり、訪問を組み合わせて利用できるのが特徴です。

介護施設比較表4
介護老人保健施設 小規模多機能型居宅介護事業所
サービス 入所して医療ケア・介護・リハビリのサービスを受ける 通い・泊まり・訪問を組み合わせた在宅サービス
利用形態 入所 在宅生活を継続しながら利用
医療体制 常勤医師が1人以上配置・看護・介護ケア、リハビリが手厚い。 医療ケアは限定的・看護師が常駐しない場合も多い

介護老人保健施設で働く看護師のメリットややりがい

介護老人保健施設で働く看護師の主なやりがいは、退所を目指した計画的なケアを提供できることや、多職種で連携してケアを提供できることなどです。

メリットややりがいを一つずつ解説します。

1.退所を目指した計画的なケアが提供できる

介護老人保健施設は、利用者の在宅復帰が目標です。

看護師は医師やリハビリスタッフ、ケアマネジャーと連携し、利用者さん一人ひとりにあった個別性の高いプランを計画する必要があります。

利用者さんが徐々に回復し、自宅へ退院する姿を見届けられることは、達成感とやりがいにつながります。

2.多職種連携で包括的なケアを提供できる

介護老人保健施設では、さまざまな職種のスタッフが働いており、連携してケアを提供できます。

配置が義務付けられている職種は以下のとおりです。

  • 医師
  • 看護師
  • リハビリ職(理学療法士、作業療法士、または言語聴覚士)
  • 介護職員
  • 管理栄養士
  • 支援相談員
  • ケアマネジャー

それぞれの専門性を活かし、利用者さんの生活がよりよいものとなるようサポートします。

カンファレンスや情報共有を通し、全身状態やADLの改善、生活の質の向上を目標とし、ケアを提供します。医療的な視点でアドバイスをすることは、看護師の重要な役割です。

多職種と連携することで幅広い知識が身につき、スキルアップにも役立ちます。

3.利用者の生活をサポートしながら関われる

介護老人保健施設の看護は、利用者さんの生活を支える視点が大切です。

食事や入浴、排泄に関わる身体的な援助から、不安や悩みに対する精神面のケアも欠かせません。

生活全般の支援をすることが重要です。

利用者さんの入所期間は3か月〜半年程度です。

利用者さん、ご家族と信頼関係を築き、人生背景や価値観を尊重したケアをする必要があります。

生活に密着したケアは、病院勤務では得られないやりがいとなるでしょう。

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4.プライベートとの両立がしやすい傾向にある

介護老人保健施設は、シフト勤務のところが多いです。

看護師は夜勤をするケースも多いですが、病棟勤務と比較すると以下のメリットがあります。

  • 緊急入院や手術がない
  • 重篤な状態の方は比較的少ないため、精神的負担が軽減できる
  • ルーチン業務が多く、残業が発生しにくい

プライベートとの両立を重視したいときは、夜勤の頻度や平均残業時間、有給の取得状況、子育てや介護の支援制度を確認するとよいでしょう。

介護の支援制度については、「介護と仕事の両立は可能?両立するための方法や支援制度をご紹介|ツクイスタッフ研修サービス」も参考にしてみてください。

5.高齢者看護の専門性を高められる

超高齢社会において、介護老人保健施設のニーズは高いといえます。

看護師は、高齢者の身体的・精神的・社会的特徴を理解した上で看護を提供しなければなりません。

そのため、高齢者看護の専門性を高められます。

また、認知症ケアや嚥下障害への対応、ターミナルケアなどの知識やスキルを習得できます。

将来高齢者看護のスペシャリストを目指したい方にとっては、貴重な経験を積める職場です。

介護老人保健施設で働きたい看護師の注意点

介護老人保健施設は病院と異なる点が多いため、転職を希望する際は、事前に違いを理解しておくことが大切です。

夜勤やオンコール体制の有無も確認しておきましょう。注意点を詳しく見ていきます。

1.病院看護師との看護観の違いを理解する

介護老人保健施設の利用者さんは、生活の質を向上させ、在宅復帰を目指す方が対象であり、病状は比較的安定しています。

日常生活の援助やリハビリテーションが重視され、医療処置は病院より少なめです。

急性期看護や救急に関わってきた人は、環境の違いに戸惑う可能性があります。

目的や価値観が、病院とは異なることを理解しておく必要があるでしょう。

2.介護業務が発生する場合がある

施設によっては、看護師が食事介助や排泄介助、入浴介助を行うケースも多いです。

介護業務を行うことを想定していない場合、ミスマッチだと感じてしまう可能性があります。

入職前に業務範囲を確認しておきましょう。

看護師が介護業務も行う場合があることを、理解しておくのも肝心です。

3.夜勤やオンコール体制の有無を確認する

介護老人保健施設では、夜勤やオンコール体制がある施設も少なくありません。

ワークライフバランスを重視したい方は、応募前に条件をよく確認しましょう。

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この記事の監修・執筆者
北村由美
北村由美
看護師・専業ライター

看護師として総合病院、地域病院、訪問看護ステーション等で約30年勤務。超低出生体重児から103歳の高齢者まで看護を経験。 自らが家族の介護を行う中「自分の知識、経験が困っている人の役に立てるのではないか」と考えるようになり、ライターを開始。「読者が共感できる記事」をモットーに医療・健康分野の記事、看護師向け記事を執筆している。

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