精神科訪問看護がきついと感じる理由5選!対処法ややりがいも紹介

「精神科訪問看護がきつくて、続けていける自信がない」
「そもそも自分は精神科訪問看護に向いているんだろうか?」
精神科訪問看護の仕事がきついと感じ、このような悩みや不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
一人で利用者の生活の場へ訪問し、複雑な精神状態と向き合うことは、心身に大きな負担となる場合があります。
一方で、利用者の回復を実感できることが、大きなやりがいにつながるのも事実です。
そこで本記事では以下について解説します。
- 精神科訪問看護がきついと感じる理由
- 精神科訪問看護がきついときの対処法
- 精神科訪問看護のやりがいやメリット
- 精神科訪問看護に向いている人
最後までお読みいただくと、悩みや不安の原因が明らかになり、対処方法がわかります。
記事を参考に、今後の対策を考えてみてください!
精神科訪問看護がきついと感じる理由5選

精神科訪問看護は、一般的な訪問看護と異なる点で「きつい」と感じることがあります。
利用者と関係性を築く難しさや、コミュニケーション上のトラブル、訪問先の衛生環境などが主な理由です。
それぞれについて詳しく解説します。
1.利用者と信頼関係を築くのが難しい
訪問看護は、看護師と利用者さんとの信頼関係で成り立ちます。
しかし、精神科訪問看護では、利用者との信頼関係の構築が難しいこともあります。
利用者の疾患は「統合失調症・妄想性障害」「気分障害」などが多い傾向です。
疾患の影響で、他者との関わりに慎重になる場合や、信頼関係の構築が難しい場合もあります。
「訪問に来てほしくない」「看護師が苦手」といわれるときもあります。
仕事上の訪問とはいえ、何度も続くと心が折れそうになり、つらく感じてしまうのです。
参考:精神科訪問看護に係る実態及び精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおける役割に関する調査研究 報告書/2021年3月. 一般社団法人 日本精神科看護協会
2.回復まで長期間にわたるケースが多い
精神疾患の回復は、ケガや風邪が治るのとは異なり、長い期間を要します。
一進一退を繰り返しながら、その人なりの安定した生活を送ることが目標です。
聖路加国際病院による調査では、調査対象となった183名の精神科訪問看護の利用期間は、5〜10年が(26.2%)が最も多い結果でした。
利用者の回復が見えにくいため、自分の看護に自信を持てなくなり、悩んでしまう看護師もいます。
参考:地域における支援ニーズの高い者に対する精神科訪問看護の実態調査 報告書 /2023年3月.学校法人 聖路加国際大学
3.コミュニケーション上のトラブルや安全面で配慮が必要な場合がある
精神科訪問看護では、身の危険を感じる場面に遭遇することもあり、きついと感じる要因になる場合があります。
幻聴や幻覚、被害妄想などの症状により、突然大声を出すなどの行動が見られるケースもあるためです。
看護師は研修や自己学習で対処法を学んでいますが、一人で対応する場面では不安やストレスを感じることもあります。
4.訪問先の衛生状態がよくないことがある
訪問看護の特徴は、利用者の生活の場を訪問することです。
精神科の利用者は、疾患の影響でセルフケアが難しくなり、掃除が十分にできない場合や、部屋が片付けにくくなることもあります。
こうした環境がストレスの要因となり、つらく感じてしまうこともあります。
5.看護師としてのキャリアに不安を感じる
精神科訪問看護では、採血や点滴、医療処置を行う機会は少なめです。
そのため、アセスメント能力や緊急対応のスキルが衰えるのではないかと、不安になる看護師もいます。
将来を考えたときに、他の職場でも通用するのか不安になり、モチベーションが低下することが、きつさの一因となります。
精神科訪問看護がきついときの対処法5つ

精神科訪問看護がきついと感じるときは、理由を整理したり、管理者や先輩に相談したりするなど、5つの対処法があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.きついと感じる理由を整理する
具体的に何がきついのか、その原因を探りましょう。
紙に書き出すことで、自分の中のモヤモヤを整理でき、次にとるべき行動も明らかになります。
例えば以下の内容です。
- 人間関係 (利用者、同僚や上司)
- 業務内容 (記録業務が多い、オンコールがストレス)
- 労働条件 (給与が低い、休みが取れない)
- 身体的・精神的負担 (移動が疲れる、精神的に消耗する)
- キャリアへの不安 (スキルアップできないと感じる)
自分で解決できるのか、他者の協力が必要なのかも判別できます。
2.管理者や先輩に相談する
悩みは一人で抱え込まず、誰かに相談するのがおすすめです。
信頼できる上司や先輩看護師、同僚などに相談してみましょう。
もし、利用者との関係に悩んでいるときは、受け持ちの変更や、複数の看護師での訪問を検討してもらえる可能性もあります。
自分で代替案を検討し、提示することも大切です。
3.看護師のキャリアプランを見直す
精神科訪問看護を続けるか、他の分野で働くのかなど、キャリアプランを見直してみましょう。
精神科訪問看護を続けるなら「精神科認定看護師」や「精神看護専門看護師」などの資格取得を目指すのも一つの方法です。
別の分野に興味が出てきた場合は、キャリアチェンジを検討してみてもよいでしょう。
精神科で培った高度なコミュニケーションスキルは、他の分野でも活かせます。
自分の将来像を明確にすることで、仕事への向き合い方や次のステップも見えてきます。
4.定期的にリフレッシュする
仕事のことばかり考えず、さまざまな方法でリフレッシュするのも大切です。
自分の心と体を労りましょう。
スポーツで汗を流したり、映画や音楽を楽しんだり、旅行に出かけるのもおすすめです。
友達とのおしゃべりや家族との外出も有効な手段です。
好みの入浴剤を使ってお風呂にゆっくり浸かることも、リラックスにつながります。
5.異動や転職を検討する
さまざまな方法をとりいれてみても状況が改善しないときは、環境を変えることも検討してみてください。
異動や転職は、自分を守るための選択肢でもあります。
看護師転職エージェントに登録して、相談してみるのもおすすめです。
転職するかどうか決めていなくても登録可能で、情報収集だけでも利用できます。
さまざまな求人があるため、自分の可能性を広げられるでしょう。
精神科訪問看護のやりがいやメリット

精神科訪問看護がきついと感じることは少なくありません。
しかし、やりがいやメリットもあります。
きつさを上回るメリットややりがいを感じ、続けている人も多いです。
1.利用者さんの回復に関われる
精神科訪問看護の大きなやりがいは、利用者の生活に寄り添い、その人らしい生活をサポートできることです。
訪問開始時は警戒心で心を閉ざしていた利用者が、次第に心を開いてくれるようになり、笑顔が見られるようになったときなどは、嬉しくなるものです。
就労やボランティア活動といった社会参加ができるようになったときは、利用者と一緒に喜びを分かち合えます。
長期的に見守れることも、精神科訪問看護ならではのやりがいといえるでしょう。
2.精神科訪問看護の知識やスキルを身につけられる
精神科訪問看護は、精神科に特化した知識やスキルを身につけられます。
例えば以下についてです。
- 言葉にならない思いをくみ取る観察力
- 信頼関係を築くためのコミュニケーション能力
- 訪問時に得られた情報から最適なケアを導き出すアセスメント能力
自立支援医療制度や、地域の福祉サービスなどの社会資源に関する知識も身につきます。
利用者に関わる医療・福祉職との連携も図れます。
3.ワークライフバランスを保ちやすい
訪問看護は、利用者の生活リズムに合わせ、日中に行います。
事業所によりますが、土日祝日を定休にしているところが多いため、家族や友人との予定も合わせやすいです。
規則正しい生活リズムで動けるため、健康を保つ上でメリットとなります。
また、常勤だけでなくパートタイムや時短勤務などの働き方も選びやすいです。
「家庭の状況に合わせ週3日のパートで働く」「ライフステージに応じて常勤勤務に切り替える」といった働き方もできます。
ただし、オンコール体制をとっている事業所もあるため、日中のみの働き方を希望する際は、事前に確認しておくことが大切です。
精神科訪問看護師に向いている人

1.一人で訪問することが苦にならない人
訪問看護は、精神科も一般的な訪問看護も一人で訪問することが基本です。
自分だけで状況を判断し、ケアを行う必要があります。
病院とは異なり、すぐに相談できる看護師や医師がいるわけではありません。
一人での訪問にプレッシャーを感じにくい方や、責任を持って行える方が適しています。
2.的確な状況判断ができる人
利用者の中には、疾患の影響で意思疎通が難しい方もいます。
環境の変化や表情、態度から状況をアセスメントしなければなりません。
状況を的確に判断できる人は、精神科訪問看護で活躍できるでしょう。
3.忍耐力がある人
利用者さんと信頼関係を築くには、長い時間が必要です。
自分が行ったケアの成果が現れにくかったり、変化がなかったりすることもあります。
そのため、人によってはモチベーションが低下するかもしれません。
利用者のペースに寄り添い、対応できる忍耐力が求められます。
精神科訪問看護では重要な資質といえるでしょう。
4.精神科の専門性を高めたい人
精神科看護を追求したい人や、専門性を高めたい人に向いています。
精神科でのキャリアアップを目指す場合、以下の資格を取得しておくと有利です。
資格 | 認定機関 | 求められる役割 |
---|---|---|
認知症看護認定看護師 | 日本看護協会 | ・認知症の症状マネジメント及び生活・療養環境の調整 ・認知症の病期に応じたコミュニケーション手段の提案と意思決定支援 ・家族への心理的・社会的支援 ・身体所見から病態を判断し、抗けいれん剤、抗精神病薬及び抗不安薬の臨時の投与ができる知識・技術 |
精神看護専門看護師 | 日本看護協会 | 精神疾患患者に対して水準の高い看護を提供する。また、一般病院でも心のケアを行う「リエゾン精神看護」の役割を提供する。 |
精神科認定看護師 | 日本精神科看護協会 | ・すぐれた看護実践能力を用いて、質の高い精神科看護を実践すること ・精神科看護に関する相談に応じること ・精神科看護に関する知識の発展に貢献すること |
精神科訪問看護に関するよくある質問

精神科訪問看護に関する、よくある質問と回答をまとめました。
Q:精神科は未経験でも働けますか?
精神科訪問看護は、看護師資格があれば未経験でも働くことができます。
ただし、厚生労働省では、精神科訪問看護基本療養費を算定する場合、「精神疾患に関する看護の経験を有する人」が訪問看護を行うことと定めています。
精神科訪問看護基本療養費の届出を満たす要件は以下のとおりです。
- 精神科を標榜する保険医療機関において、精神病棟又は精神科外来に勤務した経験を1年以上有する者
- 精神疾患を有する者に対する訪問看護の経験を1年以上有する者
- 精神保健福祉センター又は保健所等における精神保健に関する業務の経験を1年以上有する者
- 国、都道府県又は医療関係団体等が主催する精神科訪問看護に関する研修を修了している者
未経験の場合、算定要件を満たすための研修を受ける必要があります。
研修は、日本訪問看護財団、全国訪問看護事業協会などで実施されています。
参考:保発0305第12号. 令和6年3月5日.訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う 実施上の留意事項について /厚生労働省保険局長
Q:精神科訪問看護師の給与はどれくらいですか?
訪問看護全体での税込給与額は、病院勤務よりも低い傾向が見られます。
病棟勤務では夜勤がある一方、訪問看護では夜勤がないことが主な理由です。
2021年の看護職員実態調査では、以下のような結果が出ています。
<勤務場所と税込給与総額(正規雇用職員対象)>
勤務場所 | 平均額 |
---|---|
全体平均 | 384,546円 |
病院 | 386,045円 |
診療所 | 354,562円 | 訪問看護ステーション | 367,775円 |
介護施設 | 346,236円 |
訪問看護は事業所によって手当が異なり、管理職手当やオンコール手当、インセンティブなどを設けているところも多くあります。
事業所のホームページやハローワークで情報を確認してみるとよいでしょう。
自分で確認しにくいときは、看護師転職エージェントを利用するのも一つの方法です。
参考:日本看護協会調査研究報告<No.98>2022.2021年 看護職員実態調査/日本看護協会
環境を変えたいなら、看護師転職エージェントを頼るのも手

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