鍼灸師の仕事の本音|年収の実態とキャリアの選び方を現場目線で解説

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鍼灸師の仕事には、患者さんから感謝される喜びがある一方で、将来への不安を抱えている方も少なくありません。

収入の実態や身体への負担、過当競争の現実など、養成学校では教わらない現場のリアルが気になる方も多いでしょう。

本記事では、現場で働く鍼灸師の本音をもとに、収入の実態からキャリア戦略までをわかりやすくまとめました。

自分に合った働き方を考えるヒントにしてみてください。

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鍼灸師の現場で聞くリアルな声

鍼灸師は「人に感謝される仕事」というイメージがある一方、ネット上では「食えない」「やめとけ」という声も見られます。

実際のところはどうなのか、現場で聞こえてくるリアルな声を4つの視点から整理します。

やりがいはあるが生活が苦しい

鍼灸師の多くが感じているのは「やりがいと生活のバランスが取りにくい」ということです。

患者さんの痛みが和らいで笑顔で帰っていく姿には達成感がある一方、給与を見て現実に戻されるという声は少なくありません。

鍼灸師の年収ギャップ
全体の平均年収
約459万円
20〜24歳の平均年収
約313万円

厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」によると、鍼灸師の平均年収は約459万円です。

全産業の平均と大きな差はないように見えますが、若手のうちは年収300万円台からのスタートとなり、学費の奨学金返済と重なって生活に余裕を感じにくい構造です。

収入の詳しい内訳は後述の「収入の実態」で解説します。

参考:厚生労働省 |職業情報提供サイト「jobtag」

患者さんからの感謝が最大のモチベーションになっている

厳しい環境でも鍼灸師を続けている方の多くは、「患者さんからの感謝の言葉」をやりがいに挙げます。

長年の腰痛から解放された方が笑顔を見せてくれたり、不妊治療のサポートをした患者さんから出産の報告を受けたりする瞬間は、ほかの仕事ではなかなか味わえない喜びでしょう。

鍼灸はWHOが43の疾患に対して有効性を認めており、医学的な裏付けのある施術を自分の手で行えるという点も、仕事の誇りにつながっています。

さらに、鍼灸師は法律で独立開業が認められている数少ない医療系資格のうちの1つです。自分の治療方針を自由に貫けることに魅力を感じている方も多くいます。

拘束時間が長く休みが取りにくい

鍼灸院では仕事帰りの患者さんが来院しやすい夕方以降に予約が集中するため、勤務時間が長くなりがちです。

朝の準備から閉院後のカルテ整理、院内清掃までを含めると、拘束時間が12時間を超える日もあります。

土日や祝日が出勤になることも多く、休みは平日に取るのが一般的です。

プライベートとの両立の難しさは、離職の大きな理由の1つになっています。

人間関係のストレスがある

鍼灸師が感じる人間関係のストレスは、主に「患者さんとの関係」と「職場内の関係」の2つに分かれます。

患者さんとの関係では、痛みや不調を抱えた方の不安を正面から受け止め続けることで、精神的に消耗する「共感疲労」に陥ることがあります。

職場内では、歩合制を導入している治療院の場合、指名数がそのまま収入に直結するため、同僚間に競争意識が生まれやすくなります。

小規模な鍼灸院では院長との距離が近く、治療方針の食い違いが対立に発展することも考えられます。

就職前に職場の雰囲気を自分の目で確認しておくことが大切です。

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「鍼灸師は食えない」は本当か?収入の実態とは

「鍼灸師は食えない」という声をネット上で目にしたことがある方も多いでしょう。

結論から言えば、鍼灸師の収入は「働く場所」と「キャリアの積み方」で大きく変わります。

ここでは公的データをもとに、収入の仕組みを具体的に見ていきます。

鍼灸師の平均年収

鍼灸師の平均年収は約459万円ですが、この数字は全年齢・全地域の合算値にすぎません。

実態をつかむには、年齢や地域ごとの内訳を確認することが大切です。

年齢別の平均年収

年齢層 平均年収 月給(目安)
20〜24歳 約313万円 約23万円
25〜29歳 約390万円 約28万円
30〜34歳 約440万円 約32万円
40〜44歳 約490万円 約36万円
50〜54歳(ピーク) 約533万円 約39万円

地域別の平均年収(上位)

地域 平均年収
東京都 約543万円
大阪府 約480万円
愛知県 約460万円
全国平均 約459万円

参考:厚生労働省 職業情報提供サイト「jobtag」のデータをもとに作成

20〜24歳の平均年収は約313万円で、50〜54歳の約533万円と比べると約220万円の差があります。

地域別では東京都が約543万円と最も高く、地方との格差は大きくなっています。

20〜24歳の月給は約23万円で、以前と比べると改善傾向にあるものの、若手のうちは生活に余裕を感じにくい構造です。

勤務先による待遇の格差

同じ鍼灸師でも、勤務先の規模によって年収は大きく異なります。

大手法人は社会保険・賞与・退職金が整っていることが多い一方、個人経営の鍼灸院ではこれらがないケースも珍しくありません。

歩合制を採用している治療院では、患者さんからの指名数がそのまま給与に反映されるため、技術力だけでなく「選ばれ続ける力」が収入を左右します。

就職や転職の際には、月給の額面だけでなく、社会保険の加入状況・残業代・休日数といった条件も必ず確認してください。

開業鍼灸師は経営の厳しさがある

独立開業に成功すれば年収700万〜1,000万円以上を目指すことも可能です。

しかし、一人で経営する鍼灸院の年収は300万〜400万円程度にとどまるケースが多く、施術に加えて集客・経理・顧客管理まで一人でこなす必要があります。

開業鍼灸師の年収と閉院リスク
軌道に乗った場合
700万〜1,000万円以上
一人経営の実態
300万〜400万円程度
閉院に至る3大原因
1
立地のリサーチ不足
2
集客ノウハウの欠如
3
運転資金の不足

東京商工リサーチの調査によると、2018年のマッサージ業・接骨院等の倒産件数は過去10年で最も多い93件を記録しました。

閉院に至る主な原因は、立地のリサーチ不足、集客ノウハウの欠如、運転資金の不足の3つです。

技術だけでなく、マーケティングや経営の知識も欠かせない時代になっています。

参考:東京商工リサーチ「マッサージ業・接骨院の倒産動向」

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鍼灸師の仕事の本音から見える「やめとけ」と言われる理由

鍼灸師は人の体に直接触れ、痛みや不調を改善できるやりがいのある仕事です。

しかし現場の声を集めると、厳しいと言われるだけの理由もいくつか見えてきます。

これから鍼灸師を目指す方にとって、こうした現実を知っておくことは将来の判断材料になるでしょう。

資格取得にかかるコスト

鍼灸師になるには、国が認めた養成学校で最低3年間学び、国家試験に合格する必要があります。

専門学校の学費は全日制で3年間400万〜500万円程度が相場で、大学では4年間で700万円以上かかる学校もあります。

これに教科書や鍼の道具、白衣などの教材費が10万〜30万円ほど加わります。

国家試験は「はり師」と「きゅう師」の2つを受ける必要があり、受験手数料は合計39,000円(1試験19,500円×2)です。

鍼灸師になるまでにかかる費用
学費(専門学校)
400万〜500万円
全日制・3年間
教材費
10万〜30万円
教科書・鍼道具・白衣等
受験手数料
39,000円
はり師+きゅう師の2試験
合計の目安(専門学校の場合)
約420万〜540万円
※ 大学の場合は4年間で700万円以上になることもあります

前述のとおり若手の年収は300万円台からのスタートとなるため、奨学金の返済が負担になるという声は根強くあります。

鍼灸師のなり方については以下も参考にしてみてください。

施術所の過当競争

鍼灸師の収入が伸びにくい大きな原因の1つが、施術所の増加です。

厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、はり・きゅうの施術所は2024年時点で約3万5千カ所あり、増加傾向が続いています。

整骨院や整体院まで含めると施術所の総数は全国で18万〜20万件規模に達しており、コンビニの約3倍にあたります。

経験も知名度もない若手や新規開業者が、この中で患者さんを集めるのは簡単ではありません。

一方で、鍼灸やマッサージ等の施術を利用したことがある方は全体の約16%にとどまっており、まだ開拓されていない市場が大きく残っているともいえます。

参考:厚生労働省|令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況

身体への負担と現場で多い職業病

鍼灸師の施術は前かがみの姿勢が続くため、腰痛が慢性化しやすい傾向があります。

一日何人もの施術をこなすと、数年で症状が定着してしまうケースも珍しくありません。

腱鞘炎も代表的な職業病の1つです。鍼を刺す・ひねるといった手指の細かい動作を一日中繰り返すことで、手首や親指の付け根に炎症が起きやすくなります。

悪化すると指の動きに制限が出て、施術そのものが困難になることもあります。

さらに、細い鍼を神経や血管を避けながら正確に刺す作業は高い集中力を要するため、精神的な疲労も蓄積します。

こうした症状は初期のうちは我慢できても、年齢とともに回復が遅くなり、働き方を見直すきっかけになる方は少なくありません。

それでも鍼灸師を続ける人が語るやりがい

収入の厳しさや体への負担がある中で、それでも鍼灸師を続けている方には明確な理由があります。

ここでは現場で感じているやりがいの本音を整理します。

患者さんの症状改善に直接貢献できる喜び

鍼灸師のやりがいの本質は「自分の手で体を変えられる」という実感にあります。

病院のように診療科ごとに分業する体制とは異なり、鍼灸師は問診から施術、経過の確認までを一人で担います。

回復の過程に最初から最後まで関われるからこそ、改善の手応えを直接感じ取ることができます。

この実感の強さが、厳しい環境の中でもこの仕事を続ける原動力になっているといえるでしょう。

技術力がそのまま収入に直結する実力主義

鍼灸の世界は年功序列よりも技術と実績が重視される傾向があります。

患者さんから信頼される施術者ほど指名が増え、収入が伸びる仕組みです。

保険診療に頼らず、患者さんが全額を自己負担する自費の施術で高単価メニューを提供できれば、収入をさらに伸ばすことも可能です。

努力の方向さえ間違えなければ報われる余地がある点は、この仕事の大きな魅力といえます。

適応症の広さに感じる将来性

鍼灸が対応できる症状は、腰痛や肩こりだけにとどまりません。

頭痛、自律神経の不調、胃腸のトラブル、更年期障害など幅広い症状が対象とされています。

国内では高齢化に伴う予防医療や、ストレス社会でのメンタルケア、不妊・産後ケアの分野で需要の拡大が見込まれています。

前述のとおり鍼灸の利用経験者は全体の約16%にとどまっており、まだ届いていない層に価値を届けられれば、活躍の場は広がる余地があるといえるでしょう。

独立開業で理想の施術を追求できる自由度

開業の厳しさはあるものの、それでも独立を目指す方が多いのは、自分の治療方針を自由に貫ける点に魅力があるからです。

スポーツ選手のケアに特化した院、女性の不調に寄り添う専門院、通院が難しい高齢者のための訪問鍼灸など、自分の強みに合わせた働き方を設計できます。

勤務先の方針に左右されず、「この患者さんにはこの施術が最善だ」と信じる治療を提供できる自由度は、この仕事ならではの魅力です。

鍼灸師の転職、プロが伴走します

鍼灸師に向いている人・向いていない人の特徴

「自分は鍼灸師に向いているのか」という不安は、資格取得を目指す学生にも、現場に出ている若手にも共通する悩みです。

ここでは現場の目線から、向き不向きの判断材料を整理します。

鍼灸師に向いている人の特徴

鍼灸師に求められるのは、流暢に話す力よりも、患者さんの言葉を丁寧に聴き取る力と、表情や姿勢から体の不調を読み取る観察力です。

問診では「どこが痛いか」だけでなく、生活習慣や心理的な背景まで引き出す必要があります。

また、鍼灸の技術や医学知識は日々進歩しているため、資格取得後も学び続ける向上心が欠かせません。

体力面では一日中立ちっぱなしの仕事になりますが、手先の器用さは訓練でカバーできるため、過度な心配は不要です。

鍼灸師に向いている人の特徴
  • 人の体に直接触れることに抵抗がない
  • 指先の感覚を使う繊細な作業が得意
  • 患者の話を丁寧に聞き取れるコミュニケーション力がある
  • 新しい知識や技術を学び続けることを楽しめる
  • 「自分の手で誰かのつらさを和らげたい」という思いがある

鍼灸師に向いていない人の特徴

勤務先の規模によって福利厚生には大きな差があり、歩合制の職場では収入が変動します。

こうした不安定さに強いストレスを感じる方には厳しい環境かもしれません。

また、鍼は体に直接刺す医療行為であり、知識や技術の更新を怠ると患者さんに危険が及ぶ可能性があります。

安定を最優先にしたい場合は、福利厚生の整った大規模法人を選ぶか、別の道も視野に入れるのが現実的な判断です。

鍼灸師に向いていない人の特徴
  • 収入や雇用条件の安定を最優先にしたい
  • 体力的にきつい仕事を長く続ける自信がない
  • 資格取得後に新しい知識を学び続けることに抵抗がある
  • 患者さんの痛みや不安を受け止めることに精神的な負担を感じやすい

本音を踏まえた鍼灸師のキャリア戦略と選択肢

鍼灸師のキャリアには厳しい現実がある一方で、選べる道も複数あります。

大切なのは「今の環境で耐え続ける」以外の選択肢を知っておくことです。

転職・副業・職場選びの3つの視点から、具体的な戦略を紹介します。

鍼灸師の3つのキャリア戦略
1
異分野への転職
解剖学・生理学の知識や対人スキルを活かし、医療・介護・美容分野へキャリアチェンジ
例:医療機器営業/機能訓練指導員
2
副業から段階的に独立
本業で収入を確保しつつ、訪問鍼灸などで経験と顧客を積み上げてから開業に移行
例:休日の訪問施術/出張鍼灸
3
職場選びとセルフケア
福利厚生やキャリアパスの整った法人を選び、日々のストレッチや姿勢改善で身体を守る
例:大手治療院グループ/施術姿勢の見直し

異分野への転職をする

鍼灸師の専門知識は、形を変えれば別の分野でも活かせます。

解剖学や生理学の知識を活かせる医療機器メーカーの営業職や、健康関連企業の商品企画職が具体的な転職先として挙げられます。

介護の現場では、利用者さんの体の機能回復を指導する「機能訓練指導員」として働く道もあります。

「鍼灸をやめる=失敗」ではなく、経験をより自分に合った環境で活かすための方向転換と捉えることが大切です。

鍼灸師の経験が活きるフィールド
  • 解剖学・生理学の知識医療機器メーカーの営業職
  • 患者さんの訴えを聞き取る力健康関連企業の商品企画職
  • 原因を突き止めて改善策を提案する力介護施設の機能訓練指導員

副業から段階的に独立する

鍼灸師は法律で独立開業が認められているため、本業を続けながら休日や空き時間に施術を行う働き方も可能です。

訪問鍼灸であれば店舗を構える必要がなく、初期費用を抑えて始められます。

本業で安定した収入を確保しつつ、副業で臨床経験と顧客を積み上げ、軌道に乗った段階で独立に切り替えるという段階的なルートは、いきなり開業するリスクを大きく下げられます。

収入源を複数持つ発想は、将来への安心感にもつながるでしょう。

長く働ける職場選びとセルフケアを実践する

鍼灸師として長く現役を続けるには、職場選びとセルフケアの両方が欠かせません。

就職や転職の際には、月給だけでなく社会保険・残業代・休日数・研修体制まで確認してください。

社会保険や休業時の補償が整った職場であれば、体調を崩しても収入が途絶えるリスクを抑えられます。

年齢とともに施術の現場に立ち続けることが難しくなる可能性も踏まえ、管理職や教育担当へのキャリアパスが開かれているかも重要な判断基準です。

身体のメンテナンスも日々の習慣にしておきたいところです。

施術の合間に腰や手首のストレッチを行う、ベッドの高さを自分の体格に合わせる、中腰を減らすために膝で重心を下げる動作を意識するなど、小さな工夫の積み重ねが症状の慢性化を防ぎます。

5年後・10年後の自分を守れる環境と習慣をセットで整えることが、長く働くための現実的な戦略になります。

まとめ

鍼灸師の仕事の本音に向き合うと、厳しい現実と大きな可能性の両方が見えてきます。

施術所の過当競争や若手時代の低賃金といった課題はあるものの、福利厚生の整った法人への就職や自費診療での差別化など、戦略的にキャリアを築けば収入を伸ばすことは十分に可能です。

体への負担は小さくありませんが、培った専門性は介護や美容の分野でも活かせる一生ものの力になります。

まずは自分に合った働き方を見極め、将来に向けた一歩を踏み出してみてください。

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