トリアージタッグとは?色の優先順位・つける場所・書き方・実践方法を解説

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災害や多傷病者発生時、「誰から治療・搬送すべきか」を短時間で判断するのがトリアージです。

その判断結果を“見える化”し、現場全体で共有するために使うのがトリアージタッグ

医療従事者として正しい知識と実践方法を身につけることは、一人でも多くの命を救うために不可欠です。

本記事では、トリアージタッグとは何かから、つける場所・書き方・色の優先順位・実践方法・注意点まで、現場で迷いやすいポイントを整理します。

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そもそもトリアージとは?

トリアージタグを手に持った男性

トリアージとは、災害や大規模事故などで多数の傷病者が発生した際、全員に同じ密度の医療を提供するのは難しいため、最大多数に最大の医療(救命)を目指して治療や搬送の優先順位を付ける医療行為です。

フランス語の「trier(選別する)」が語源となっており、一人でも多くの命を救うことを目的としています。

平時の医療では「重症者から順番に」という原則で診療を行いますが、災害時のトリアージでは「救命可能性の高い傷病者」を優先するという、通常とは異なる判断基準が求められます。

限られた医療資源を最大限に活用し、可能な限り多くの命を救うことを目的としています。

トリアージが必要となる状況

自然災害
地震、津波、台風、洪水、土砂災害、火山噴火、竜巻

人為災害
列車事故、航空機事故、交通の多重事故
大規模火災、爆発事故、テロ、無差別殺傷事件

その他の状況
感染症の大規模発生(パンデミック)
化学物質や放射性物質による集団被害
大規模イベントでの群衆事故

これらの状況では、通常の医療体制では対応できない数の傷病者が短時間に発生するため、迅速かつ的確なトリアージが不可欠となります。

トリアージで大切なのは、医療者の経験だけに依存せず、現場で共通言語として判断を揃えること。

そこで活躍するのが次の「トリアージタッグ」です。

トリアージタッグについて

トリアージタッグとは、トリアージ結果(優先度)や観察事項、処置内容などを記録し、傷病者の状態を現場全体で共有するためのタグです。

日本では、JIS規格により全国統一様式が定められており、どの地域の医療従事者でも同じ基準で判断・対応できるよう標準化されています。

トリアージタッグは単なる識別票ではなく、以下の重要な役割を果たします。

トリアージタッグの役割
優先順位が一目で伝わる(色分け)
傷病者の安否情報として利用できる
どの時点で誰が判断したか追える
処置・観察・搬送先などの情報が引き継げる
再評価(再トリアージ)がしやすい

トリアージタッグの標準的な構造

トリアージタッグは3枚複写式の構造になっています。

医療機関用(1枚目)

搬送先の医療機関で保管

搬送機関用(2枚目)

救急隊や搬送部隊が保管

災害現場用(3枚目)

災害対策本部で集計・管理

切り取り式の色別タグ

タッグの下部には、赤・黄・緑・黒の4色の帯が順番に配置されており、該当する色以下を切り取ることで、優先順位を表示します。

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トリアージタッグのつける場所・正しい書き方

防災訓練のトリアージ判定患者

トリアージタッグをつける場所の優先順位

トリアージタグは、視認性と医療処置への影響を考慮して、以下の優先順位で装着します。

トリアージタッグ装着位置
1
右手首
第一選択
2
左手首
①不可時
3
右足首
①②不可時
4
左足首
最終選択
5
特殊時

1. 右手首(第一選択)

最も推奨される装着部位です。

視認性が高く、脈拍確認と同時に装着でき、多くの医療処置の妨げになりません。

輸液ルートは通常左手に確保されることが多いため、右手首への装着が原則となります。

2. 左手首(右手首が使用できない場合)

右手首に外傷がある、既に点滴ルートが確保されている、ギプス固定されているなどの理由で右手首が使用できない場合に選択します。

3. 右足首(両手首が使用できない場合)

両上肢に重篤な外傷がある、両手首に医療機器が装着されているなど、上肢への装着が困難な場合に使用します。

靴下や靴は必要に応じて除去し、確実に装着します。

4. 左足首(最終選択)

他の3か所すべてが使用できない場合にのみ選択します。

下肢の外傷や循環障害の評価に影響する可能性があるため、慎重に判断します。

5. 首(四肢切断等の特殊な状況)

四肢すべてに装着できない特殊な状況では、専用のネックストラップを用いて首に装着します。

ただし、気道確保や頸椎保護の妨げにならないよう、細心の注意が必要です。

トリアージタッグ装着時の注意

・きつく締めすぎないようにする(指1本入る程度)

・タグが紛失しないよう確実に固定する(テープで補強も可)

トリアージタッグの正しい書き方

必須記載事項

傷病者情報

氏名:判明している場合は漢字とカタカナを併記

年齢:不明の場合は推定年齢を記載(例:推定30歳代)

性別:外見から判断、不明な場合は空欄も可

住所:少なくとも市区町村レベルまで記載

連絡先:本人または家族の電話番号

トリアージ実施情報

実施日時:24時間表記で記載(例:12/29 13:35)

実施者名:フルネームで記載、医療資格も併記(例:アベナナコ 看護師)

実施場所:具体的な場所を記載(例:○○大型バス事故現場)

医療情報や特記事項の記載

主要症状・所見

簡潔かつ的確に記載します。

良い例:「右大腿部開放骨折、活動性出血あり」

悪い例:「足のけが」(具体性に欠ける)

バイタルサイン

意識レベル:JCSまたはGCSで記載

呼吸:回数と性状(例:R24回/分、努力様)

脈拍:回数と性状(例:P120回/分、微弱)

血圧:可能な限り測定値を記載

特記事項に書くべき事柄

実施した処置

止血、固定、気道確保などの処置内容と実施時刻

使用した薬剤

薬剤名、投与量、投与経路、投与時刻を記載

記載時の注意点
筆記具の選択
  • トリアージタッグは3枚複写式の構造です。そのため複写された文字(青色)と区別できるように黒色のボールペンなどを使用します。
文字の記載方法
  • トリアージは、1回だけでは終わらないので、数行記載できるように上に詰めて記入します。
  • 略語は標準的なもののみ使用(BP、HR、RRなど)
  • 判読困難な文字は避ける
修正方法
  • 修正液や修正テープは使用しない
  • 誤記を訂正する場合は、二重線で抹消する
  • 容態変化などで追記する場合は、二重線で抹消することなく、同一欄の下側スペースに追記
タグの管理
  • 一度装着したタグは原則外さない
  • 紛失した場合は速やかに再装着
  • 番号管理により重複を防ぐ

参考:東京都保健医療局 トリアージハンドブック

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トリアージタッグの色別の優先順位

ブルーシートの上に置かれたトリアージタグ

トリアージタッグの優先順位は色ごとに分けられています。

トリアージ分類表
識別色 分類 傷病状態
及び病態
赤色
(I)
最優先
治療群
(重症群)
生命を救うため、直ちに処置を必要とするもの。窒息、多量の出血、ショックの危険のあるもの
黄色
(II)
待機的
治療群
(中等症群)
・ 多少治療の時間が遅れても、生命には危険がないもの。
・ 基本的には、バイタルサインが安定しているもの
緑色
(III)
保留群
(軽症群)
上記以外の軽易な傷病で、ほとんど専門医の治療を必要としないものなど。
黒色
(O)
無呼吸群 気道を確保しても呼吸がないもの
死亡群 既に死亡しているもの、又は明らかに即死状態であり心肺蘇生を施しても蘇生の可能性のないもの

トリアージタッグの色の変更方法

対応傷病者の状態が改善した場合

状態改善時は、より優先度の低い色に変更します。

医師または経験豊富な看護師が再評価し、改善を確認したら該当色より下の部分を切り取ります。

また、変更時刻と理由を余白に記載します。

 記載例:「10:45 意識レベル改善JCS 3→1、赤→黄へ変更 看護師○○」

切り取った部分は廃棄せず、災害診療録に貼付して保管することが望ましいです。

対応傷病者の状態が悪化した場合

状態悪化時は、新しいタグを使用することが原則です。

新しいタグに現在の情報を転記し、変更理由を明確に記載します。

 記載例:「11:20 呼吸状態悪化 RR35回/分、SpO2 88%、黄→赤 医師△△」

古いタグは除去せず、新しいタグを上から装着し二重装着している状態にします。

色変更の判断基準色の変更は医学的根拠に基づいて行います。

色の変更を検討すべき状況
バイタルサインの著明な変化(±20%以上)
意識レベルの2段階以上の変化
新たな症状の出現(胸痛、呼吸困難など)
出血のコントロール状態の変化
疼痛の著明な増悪または軽減

参考:東京都保健医療局 トリアージハンドブック

トリアージタッグの実践方法

救急搬送の様子

ここでは実際にトリアージタッグをつけるまでの流れを説明いたします。

トリアージの実施手順
1 安全確認
  • 二次災害の危険性を評価
  • 必要に応じて傷病者を安全な場所へ移動
  • 自身の安全装備を確認(ヘルメット、手袋など)
2 傷病者数の概算
  • 現場全体を見渡し、傷病者数を把握
  • 応援要請の必要性を判断
  • 医療資源との対比を評価
3 トリアージポストの設置
  • 傷病者の流れを考慮した配置
  • 各色別のエリアを設定
  • 標識やテープで明確に区分
4 トリアージチームの編成
  • リーダー(経験豊富な医師または看護師)
  • トリアージ実施者(医師、看護師)
  • 記録係
  • 搬送係
5 トリアージの実施
  • START法に従い迅速に実施
  • 大声で明確に指示
  • タグの装着と記載を確実に実施
6 再トリアージの実施
  • 定期的(30分~1時間ごと)に再評価
  • 状態変化に応じてタグの色を変更
  • 変更内容を明確に記録

START法でのトリアージの手順

トリアージをする際に用いられるのがSTART法です。

START法は、30秒以内で1人の傷病者をトリアージする迅速な方法です。

以下の手順で実施します。

STEP.1
歩行可能か確認
STEP.2
呼吸の確認(呼吸回数、呼吸の有無)
STEP.3
循環の評価(橈骨動脈の触知)
STEP.4
意識レベルの確認

STEP1:歩行可能か確認

「歩ける方はこちらに集まってください」と大声で呼びかけます。

歩行可能 → 緑タグ(軽症者エリアへ誘導)

歩行不能 → Step2へ進む

STEP2:呼吸の確認

呼吸の有無と呼吸回数を評価します。

自発呼吸なし → 気道確保(用手的気道確保)

気道確保後も呼吸なし → 黒タグ

呼吸回数30回/分以上 → 赤タグ

呼吸回数10回/分未満 → 赤タグ

呼吸回数10-29回/分 → STEP3へ進む

STEP3:循環の評価

橈骨動脈の触知またはCRT(毛細血管再充満時間)で評価します。

橈骨動脈触知不可 → 赤タグ

CRT 2秒以上 → 赤タグ

循環良好 → STEP4へ進む

CRT(毛細血管再充満時間)の評価方法

・CRT(毛細血管再充満時間)とは、指の爪などを5秒間圧迫して白くした後、元の赤い色に戻るまでの時間を測定するもの。

・2秒以内が正常、2秒以上(3秒以上も)かかる場合は脱水や循環不全(ショックなど)のサインとされ、末梢循環の状態を確認する簡便な指標です。

STEP4:意識レベルの確認

簡単な指示への反応で評価します。

「手を握ってください」「目を開けてください」などの簡単な指示を出します。

指示に従えない → 赤タグ

指示に従える → 黄タグ

トリアージ実施時のポイント
1 迅速性と正確性のバランス

1人30秒を目標としつつ、重要な所見を見逃さないよう注意します。判断に迷った場合は、より重症側に分類します。

2 感情のコントロール

悲惨な現場でも冷静さを保ち、客観的な判断を維持します。黒タグの判定時は特に慎重に、しかし決断は明確に行います。

3 チームワークの重視

単独での判断を避け、可能な限り複数の医療従事者で確認します。疑問がある場合は、遠慮なくリーダーに相談します。

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トリアージタッグの注意点

1)「タグをつけたら終わり」になりやすい(再トリアージ不足)

トリアージの一番の落とし穴は、一度つけた色が固定化してしまうことです。

多傷病者現場では、待機中に状態が変わるのが普通に起きます。

起きやすい変化

・黄で待機中に呼吸状態が悪化 → 赤へ

・赤で初期処置(止血・気道・酸素など)後に安定 → 黄へ

・緑に見えたが痛みや不安で訴えが強く、実は内出血が進行 → 黄/赤へ

対策

タグの「再評価欄」「経過欄」を必ず使う

いつ再評価したか(時刻)を書き残す

現場ルールとして「〇分ごと」など再評価のリズムを作る(例:赤は頻回、黄は定期的、緑も状況で見直し)

2)情報が古い・読めない・伝わらない(タグが“機能不全”になる)

トリアージタグは「色」だけでなく、判断根拠と経過を共有する記録です。ところが混乱時ほど、情報が使えなくなりがちです。

起きやすい事故

・時刻がない → それが“今の状態”なのか分からない

・字が潰れて判読不能 → 引き継げない

・「苦しそう」「出血多い」など主観語 → 受け手によって解釈が変わる

・記入者が不明 → 追加確認ができない

対策

タグのまずは最低限、色/時刻/判定者/呼吸・循環・意識を記す

“短く・事実ベース”で書く(例:「呼吸数30/分」「橈骨動脈触知弱い」「JCSⅡ-10」など、現場の共通フォーマットに合わせる)

追記するたびに時刻を添え「いつ更新されたか」を残す

3)つける場所ミスで「見落とし」「外れ」「処置の邪魔」

タグは「誰が見ても一瞬で分かる」が価値なので、場所が悪いと効果が落ちます。

起きやすい事故

・上着の中に入って見えない

・搬送で外れて、タグのない傷病者になる

・点滴・固定・止血の邪魔になる部位につけてしまう

対策

原則は視認性×固定性×処置の邪魔にならない

手首・足首など、現場で統一しやすい場所を基本に

服の上からでも見える位置を意識(状況により調整)

4)“色”の付け方がブレる(チームで同じ判断にならない)

トリアージは個人競技ではなく、チームで判断を揃える作業です。

判断基準が揃っていないと、現場全体の優先順位が崩れます。

対策

使うアルゴリズム(例:STARTなど)や評価項目を事前に統一

可能なら「判定の根拠(呼吸・循環・意識)」をタグに短く残す

新規参入者(応援者)が増えるほど、“タグの書き方”が共通言語になる

5)オーバートリアージ/アンダートリアージを防ぐ

オーバートリアージとは(過大評価)

本来は黄や緑でよい人を、赤(最優先)として扱ってしまうこと。

意図せず赤が増えると、赤の処置・搬送枠が埋まり、本当に赤の人が後回しになるリスクがあります。

起きやすい例

・「念のため赤」に寄りすぎる(不確実性への過剰反応)

・痛みや不安の訴えが強く、重症に見えてしまう

・“歩けない=重症”と短絡する(実際は整形外科的理由なども)

対策

判断根拠を「呼吸・循環・意識」に戻す(主観より客観)

赤の基準をチームで共有し、迷ったら再評価前提で黄に置く運用も検討(

“赤にした理由”を短く記録(あとで見直せる)

アンダートリアージとは(過小評価)

本来は赤や黄なのに、軽く判定してしまうこと。

こちらは直接的に、救命機会の損失につながり得るため、より危険です。

起きやすい例

・外見が軽症に見える(内出血、頭部外傷、胸腹部損傷など)

・静かな患者(ショックで反応が乏しい、低体温、意識障害)を見逃す

・“歩ける=緑”で止めてしまう(歩けても危険所見がある場合)

対策

一次トリアージで拾い切れない前提を持ち、黄・緑も再評価

呼吸数・脈・皮膚所見・意識など、短時間でも“危険サイン”を確認

タグに「気になる点(疑い)」を一言残す(例:「腹部打撲+冷汗」「頭部打撲・嘔気」など)

6)“オーバー/アンダー”を防ぐカギは「再評価」と「記録」

結局、トリアージは一発で完璧に当てるものではなく、更新して精度を上げる仕組みです。

迷ったら「色+根拠+時刻」を残す

後から見た人が判断の意図を追える状態にする

再評価で色を動かすことを“正しい運用”として前提化する

この運用ができると、オーバートリアージで赤が膨らみ続けるのも、アンダートリアージで黄・緑が放置されるのも防ぎやすくなります。

まとめ 

トリアージタッグは災害医療において、限られた医療資源を最大限活用し、一人でも多くの命を救うための重要なツールです。

トリアージタッグは、その判断結果を色分けで共有し、所見や処置内容、判定時刻などを記録して、現場での情報伝達と引き継ぎを確実にするために使われます。

タグは見つけやすく外れにくい場所につけ、色だけでなく「いつ・誰が・どんな根拠で」判定したかが追えるように、短く事実ベースで記入することが重要です。

また、トリアージは一度の判定で完結するものではなく、待機中や搬送前に状態が変化する前提で、再評価(再トリアージ)を繰り返しながら更新していきます。

判断のブレを減らすには、客観的な所見に基づく判定、時刻付きの記録、そして定期的な再評価を徹底することが、トリアージタグ運用の要になります。

日頃からトリアージの知識を更新し、訓練に積極的に参加することで、いざという時に冷静かつ適切な判断ができるよう準備しておくことが大切です。

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