慢性心不全看護認定看護師とは?役割と仕事内容・資格取得の流れを解説
心不全で入退院をくり返す患者さんを受け持つたびに、「退院後の生活まで支えられる看護がしたい」と感じている看護師もいるのではないでしょうか?
慢性心不全看護認定看護師は、心不全の患者さんと家族を、病棟・外来・在宅をまたいで支える専門の看護師です。 現在は特定行為研修を組み込んだB課程で「心不全看護」という分野名に変わっており、これから目指す場合はこちらが入り口になります。
この記事では、慢性心不全看護認定看護師の役割と仕事内容、資格を取るまでの流れと費用、資格を活かせる職場をまとめています。
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慢性心不全看護認定看護師とは?

慢性心不全看護認定看護師は、心不全看護の分野で熟練した看護技術と知識を持つ看護師として、日本看護協会の認定を受けた看護師です。 2019年の制度改正以降、新しく教育を受けて認定される人はB課程の「心不全看護認定看護師」になります。
2025年12月末時点の登録者数は、A課程の慢性心不全看護が479人、B課程の心不全看護が128人で、合わせて607人です。
「心不全看護認定看護師」への名称変更
日本看護協会は2019年に認定看護師規程を改正し、特定行為研修を組み込まない教育課程を「A課程」、組み込んだ教育課程を「B課程」としました。B課程では「心不全看護」という分野名に変わっています。
急性心不全の多くは慢性心不全の急性増悪であることから、急性期と慢性期を分けずに支える分野として位置づけ直されました。
| A課程 | B課程 | |
|---|---|---|
| 分野名 | 慢性心不全看護 | 心不全看護 |
| 特定行為研修 | 教育課程に含まない | 教育課程に含む |
| 認定の開始 | 2012年6月 | 2021年5月 |
| 認定審査 | 2029年度まで実施 | 実施中 |
| 名乗れる呼称 | 認定看護師 | 特定認定看護師も可 |
2026年度にA課程で慢性心不全看護を開講している教育機関はないため、これから資格を目指す場合はB課程の「心不全看護」に進むのが前提です。 一方で、A課程の慢性心不全看護認定看護師の資格はそのまま有効で、更新審査を受ければ継続できます。
A課程とB課程の違いや、認定看護師制度全体のしくみは以下の記事で紹介しています。
対象となる患者と病期
対象は、心不全の患者さんとその家族です。 A課程の分野説明では、安定期・増悪期・終末期の各病期に応じた生活調整とセルフケア支援、心不全を悪化させる要因の評価とモニタリングが中心に挙げられています。
B課程ではこれに加えて、増悪期の重症化予防や、症状を和らげるためのマネジメントにも踏み込みます。
心不全の原因となる病気は、虚血性心疾患、弁膜症、心筋症、不整脈などさまざまです。 高血圧や腎不全、糖尿病、COPDといった合併症を抱える患者さんも多く、心臓だけでなく全身と生活全体を見る視点が求められます。
急性期から終末期まで、病気の経過全部に付き合う分野なんだね!
活躍する職場
慢性心不全看護・心不全看護の認定看護師の9割以上は病院に所属しています。 病院のほかには、クリニック・診療所や訪問看護ステーションで働く人もいます。
病院では循環器病棟に所属しながら、院内の心不全チームや外来でも活動するケースがあります。
看護師の求人を探す参考:日本看護協会「分野別所属先種別登録者数一覧(2025年12月)」 / 日本看護協会「認定看護師教育機関別の開講状況・定員数一覧(A課程)」
慢性心不全看護認定看護師の3つの役割

認定看護師には、日本看護協会の規程で「実践」「指導」「相談」の3つの役割が定められています。 心不全看護の分野では、この3つを入院中だけでなく、退院後の外来や在宅までつなげて果たすのが特徴です。
実践
実践は、患者さんと家族に対して、高い臨床推論力と病態判断力に基づいた水準の高い看護を提供する役割です。 心不全看護では、身体・精神・社会的な側面のアセスメント、心不全症状のモニタリングと評価、症状を和らげるケア、療養生活の支援が中心になります。
B課程の教育課程には、2つの特定行為区分の研修が組み込まれています。 修了した認定看護師は、医師の手順書に沿って、持続点滴中の薬剤の量を調整するといった特定行為を、患者さんの状態を判断しながら行えます。
- 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整
- 脱水症状に対する輸液による補正
- 持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整
- 持続点滴中のナトリウム、カリウム又はクロールの投与量の調整
- 持続点滴中の降圧剤の投与量の調整
- 持続点滴中の糖質輸液又は電解質輸液の投与量の調整
- 持続点滴中の利尿剤の投与量の調整
指導
指導は、看護実践を通してほかの看護職に知識や技術を伝える役割です。 病棟スタッフに向けた心不全の勉強会を開いたり、ベッドサイドで体重や浮腫の見方、患者指導のポイントを一緒に確認したりします。
心不全の患者さんは循環器病棟以外にも入院します。 ほかの病棟や在宅のスタッフが同じ視点で観察できるように支えることで、施設全体の心不全ケアの水準を底上げできます。
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相談
相談は、看護職などからのコンサルテーションに応じる役割です。 「利尿剤が変わった患者さんの観察ポイントを知りたい」「退院指導がうまく伝わらない」といった相談を受け、解決の糸口を一緒に探します。
相談の相手は院内の看護師に限りません。 訪問看護師やケアマネジャーなど、在宅で患者さんを支える人から相談を受けることもあり、地域の中での相談窓口としての役割も担います。
実践・指導・相談の全部で、病院と地域をつなぐのがカギだね!
参考:日本看護協会「認定看護師」 / 日本看護協会「認定看護師教育基準カリキュラム 分野:心不全看護(B課程教育機関)」
慢性心不全看護認定看護師の具体的な仕事内容

心不全は、よくなったり悪くなったりをくり返しながら進んでいく病気です。 そのため、慢性心不全看護認定看護師の仕事は、入院中の治療を支えるだけでなく、次の入院を防ぐことに重きが置かれます。
症状モニタリングと悪化の予防
心不全の悪化は、体重の増加やむくみ、息切れなど、少しずつ現れるサインから始まることが多いです。 認定看護師は、フィジカルアセスメントで呼吸や循環の状態を評価し、悪化の兆候を早めにつかむ役割を担います。
悪化したときは、塩分や水分のとりすぎ、服薬の中断、感染、過労など、何がきっかけになったのかをあわせて評価します。 きっかけが分かれば、次の悪化を防ぐための生活の見直しにつなげられます。
セルフケアに向けた療養指導
退院後の生活で悪化を防ぐには、患者さん自身が体の変化に気づき、早めに受診できる力が欠かせません。 認定看護師は、患者さんが自宅で続けられるセルフモニタリングの方法を一緒に考えます。
- 体重の測定と記録
- 血圧・脈拍・体温の測定
- 息切れ、むくみ、動悸、だるさ、眠れなさなどの自覚症状
- 薬の飲み忘れや副作用の有無
療養指導では、食事と栄養、活動と休息、入浴、服薬、感染予防、定期受診と緊急時の受診の目安など、生活全体を扱います。 大切なのは、決まりごとを一方的に伝えるのではなく、患者さんの暮らし方や価値観に合わせて続けられる形を探すことです。
「分かってるけど続かない」って気持ちに寄り添うのが大事だよね
心不全看護外来での継続支援
病院によっては、認定看護師などが担当する心不全看護外来を設けているところもあります。 退院後も定期的に面談し、体重や血圧の記録を一緒に振り返りながら、生活の困りごとや服薬の状況を確認します。
外来では、入院中に立てた療養の目標が自宅で実際に続けられているかを確認し、必要に応じて計画を修正します。 患者さんが「ちょっと息切れが増えた」と相談できる場所があることで、悪化を早い段階で受診につなげやすくなります。
看護師の求人を探す多職種および地域との連携
心不全の治療と療養は、医師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、医療ソーシャルワーカーなど、多くの職種がかかわるチーム医療です。 認定看護師は、患者さんの生活に最も近い看護師の視点から情報をつなぎ、チーム医療のキーパーソンとして動きます。
退院後の生活を支えるために、訪問看護ステーションやかかりつけ医、ケアマネジャーとの連携も担います。 在宅酸素療法などを使いながら自宅で過ごす患者さんもいるため、介護保険や障害者福祉などの社会資源の活用もあわせて調整します。
終末期における緩和ケアへの関与
心不全が進行すると、治療を続けても息苦しさやだるさが残る時期を迎えます。 認定看護師は、呼吸困難や倦怠感、不眠、不安などの症状を和らげるケアに加え、人生の最終段階をどう過ごすかの話し合いにもかかわります。
植え込み型除細動器(ICD)などのデバイス治療を続けるか、どこで最期を過ごすかといった選択は、患者さんと家族にとって重い決断です。 ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の話し合いに参加し、本人の思いが治療やケアの方針に反映されるよう支えます。
慢性心不全看護認定看護師になるには?

これから慢性心不全看護の認定看護師を目指す場合は、B課程の「心不全看護」分野で教育を受け、認定審査に合格する流れになります。
- 1実務経験を積む通算5年以上、うち心不全看護分野3年以上
- 2出願・入学試験入学前年の夏〜秋
- 3教育課程を修了B課程で約1年
- 4認定審査書類審査と筆記試験
- 5認定登録B課程認定看護師名簿に登録
- 65年ごとに更新書類審査で資格を継続
実務経験の要件
認定審査を受けるには、次の要件をすべて満たす必要があります。
- 日本の看護師免許を持っている
- 免許を取得後、通算5年以上の実務研修を受けている
- そのうち通算3年以上は、心不全看護分野での実務研修である
- 認定看護師教育機関を修了している
心不全看護分野の「3年以上」の中身は、日本看護協会が次のように定めています。
-
経験した部署心不全患者さんの多い病棟で通算3年以上(外来・在宅ケア部門での経験を含めてよい)
-
担当した事例増悪期から回復期にある心不全患者さんの看護を5例以上担当している
-
現在の勤務先心不全患者さんの多い病棟、外来、在宅ケア部門での勤務が望ましい
-
あると望ましい技術二次救命処置など、救急蘇生の知識と技術
出願時に、担当した事例の報告書や勤務証明書、所属長の推薦書を求める教育機関があります。経験年数をどの時点で数えるかも教育機関ごとに違うため、受けたい教育機関の募集要項で早めに確認しておきましょう。
教育機関と教育課程
2026年度にB課程の心不全看護分野を開講している教育機関は、全国で2課程、定員は合計27人です。 開講している教育機関や定員は年度によって変わるため、日本看護協会の開講状況一覧や教育機関検索で、受験する年度の情報を確認しましょう。
教育課程は約1年で、合計800時間(45分を1時間とみなす「みなし時間」)のカリキュラムを学びます。
教育機関が限られるため、住んでいる地域によっては遠方の教育機関で1年間学ぶことになります。 講義や演習を原則平日の週5日で行い、一部の科目をeラーニングで受講できる教育機関もあります。 特定行為研修の実習を所属施設で行う教育機関もあるため、通学か転居かを含めて、職場と相談しながら計画しておきましょう。
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認定審査の受験と認定登録
教育課程を修了したら、日本看護協会が年1回実施する認定審査を受けます。 審査は書類審査と筆記試験で、2026年(第34回)の日程と形式は次のとおりです。
| 申請期間 | 7月7日〜7月16日 |
|---|---|
| 筆記試験 | 10月7日 |
| 合否の確認 | 12月23日(予定) |
| 試験の形式 | マークシート・四肢択一全40問・100分 |
| 出題範囲 | 一般問題はB課程の共通科目状況設定問題は心不全看護の専門科目 |
| 合格基準 | 150点中105点以上一般・状況設定それぞれ70%以上 |
合格したら認定料を振り込んで登録します。 2026年の審査では、12月23日〜2027年1月8日が認定料の振込期間で、期限までに振り込まないと登録できません。
B課程の名簿に登録されると、「特定認定看護師」と名乗ることもできます。 認定の有効期間は5年で、5年ごとに書類審査による更新審査を受けます。 現在は「過去5年間に50点以上の自己研鑽などの実績」が更新の条件で、2028年度からは申請の要件が変わる予定です。
取得にかかる期間と費用
看護師免許を取ってから、通算5年の実務経験、約1年の教育課程、秋の認定審査を経て登録されるまで、最短でもおよそ7年かかります。
教育機関への出願は入学前年の夏から秋ごろが多く、出願から認定登録までは2年以上の計画になります。
費用は、教育機関に払う学費と、日本看護協会に払う審査料・認定料に分かれます。 2027年度の川崎医療福祉大学 看護実践・キャリアサポートセンター(心不全看護分野)の募集要項をもとにすると、目安は次のとおりです。
このほかに、教材費やパソコンなどの機器、研修期間中の交通費・宿泊費が自己負担になります。 費用の負担を軽くする制度には、次のようなものがあります。
-
日本看護協会の奨学金認定看護師教育課程の受講者に、学費と生計費を貸与
-
教育訓練給付制度厚生労働大臣の指定講座なら、条件を満たすと受講費用の一部が支給される
-
勤務先の支援制度学費の負担や、在籍のまま研修として受講できる制度がある病院も
教育訓練給付制度の対象かどうかは教育課程ごとに違うため、募集要項や厚生労働省の講座検索で確認しておきましょう。
道のりは長いけど、段取りが見えると動き出しやすいね!
参考:日本看護協会「第34回(2026年)認定看護師(CN)認定審査 審査・申請の手引き」 / 川崎医療福祉大学「令和9年度 認定看護師教育課程(B課程)【心不全看護分野】募集要項」
資格を活かせる職場と今後の需要

病院に勤める慢性心不全看護・心不全看護の認定看護師551人のうち、6割以上は病棟に所属しています。 次いで外来、ICU・CCU・HCUなどの集中治療部門が多く、入院から外来までの幅広い場面で資格が活かされています。
循環器病棟・CCU
循環器病棟は、心不全で入院する患者さんが最も多く集まる場所です。 急性増悪で入院した患者さんの状態を見極めながら治療を支え、回復に合わせて退院後の生活を見すえた療養指導を始めます。
CCUなどの集中治療部門では、急性期の全身管理の中で、特定行為研修で身につけた病態判断を活かせる場面が多くなります。 急性期の循環器看護の働き方は、以下の記事も参考になります。
心不全看護外来などの外来部門
外来は、退院した患者さんが悪化せずに過ごせているかを継続して確認できる場所です。 令和8年度の診療報酬改定では、心不全の再入院予防に向けた継続的な管理を評価する管理料が新設され、認定看護師の教育が算定要件の研修に位置づけられました。
心不全の再入院予防に取り組む病院にとって、資格を持つ看護師の存在は、制度の面からも評価されるようになっています。
病棟でも外来でも在宅でも、活かせる場面はたくさんあるよ!
訪問看護ステーション
訪問看護では、患者さんの自宅で体重や血圧、むくみ、息切れの様子を確認し、生活の中で悪化のサインを見つけます。 訪問看護ステーションに所属する慢性心不全看護・心不全看護の認定看護師はまだ少ないものの、在宅で療養する心不全患者さんの身近で専門性を発揮できる職場です。
病院に所属する認定看護師が、訪問看護師やケアマネジャーからの相談を受け、在宅での療養を後方から支える働き方もあります。
- 正看護師求人9,633件のうち訪問看護は2,535件
- 訪問看護は病院(1,368件)より求人が多い
- 研修補助ありの求人は187件と少なめ
心臓リハビリテーション部門
心臓リハビリテーションは、運動療法や生活指導を通して、心不全の患者さんの再入院予防や生活の質の向上を目指す取り組みです。 B課程の教育課程でも、心臓リハビリテーションを受ける心不全患者さんへの支援が学習内容に含まれています。
認定看護師は、理学療法士などと連携しながら、運動中の症状や血圧・脈拍の変化を観察し、自宅でも続けられる活動量を一緒に考えます。 運動の場面は、患者さんの生活の様子を聞き取り、療養指導につなげる機会にもなります。
参考:日本看護協会「病院勤務者の分野別所属部署別登録者数一覧(2025年12月)」 / 日本看護協会「認定看護師・専門看護師教育における研修が算定要件に該当する診療報酬項目一覧」
まとめ
慢性心不全看護認定看護師は、心不全の患者さんの悪化と再入院を防ぐために、病棟・外来・在宅をまたいで実践・指導・相談を担う看護師です。 現在はB課程の「心不全看護」に分野名が変わっていて、これから目指すならB課程に進むのが前提になります。
この記事のポイント
- B課程では分野名が「心不全看護」に変わっている
- A課程の資格は有効で、更新やB課程への移行もできる
- 実務5年以上(心不全看護分野3年以上・5例以上)が条件
- 2026年度の開講は全国2課程・定員27人
- 審査料・認定料は各51,700円、別に学費がかかる
まずは日本看護協会の開講状況一覧で受験したい年度の教育機関を確認し、募集要項を取り寄せましょう。 あわせて、今の職場に受講を後押しする制度があるかを確かめておくと、1年間の学びに集中しやすくなります。


