脳卒中看護認定看護師になるには?受験条件と教育課程・特定行為の内容
脳卒中の患者さんを受け持つうちに、「もっと根拠をもって関わりたい」と脳卒中看護認定看護師を意識し始めた方もいるのではないでしょうか?
脳卒中看護認定看護師になるには、看護師として通算5年以上(うち脳卒中看護の経験3年以上)の実務経験を積み、日本看護協会が認定した教育課程を修了して認定審査に合格する必要があります。
この記事では、2026年度時点の制度をもとに、受験条件・教育課程の中身・特定行為研修の区分・期間と費用までまとめています。
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脳卒中看護認定看護師とは?

脳卒中看護認定看護師は、脳卒中の患者さんと家族に対して、熟練した看護技術と知識を用いて水準の高い看護を実践する看護師です。 日本看護協会の認定資格で、「実践」「指導」「相談」の3つの役割を担います。
「脳卒中リハビリテーション看護」との関係
脳卒中の認定看護分野には、A課程の「脳卒中リハビリテーション看護」とB課程の「脳卒中看護」の2つの名称があります。 2019年の認定看護師制度の改正で分野が再編され、特定行為研修を組み込んだB課程では「脳卒中看護」という分野名になりました。
| A課程 | B課程 | |
|---|---|---|
| 分野名 | 脳卒中リハビリテーション看護Stroke Rehabilitation Nursing | 脳卒中看護Stroke Nursing |
| 分野の特定 | 2008年2月 | 2019年2月 |
| 特定行為研修 | 含まない | 2区分を含む |
| 認定審査 | 2029年度で終了 | 2021年度から実施 |
| 登録される名簿 | A課程認定看護師名簿 | B課程認定看護師名簿(特定認定看護師) |
A課程の認定審査は2029年度で終了することが決まっています。 2026年度にA課程の「脳卒中リハビリテーション看護」を開講している教育機関は1か所(定員20人)だけで、これから目指すならB課程の「脳卒中看護」が中心になります。
すでにA課程で資格を取った人は、特定行為研修を修了して手続きをすれば、B課程の認定看護師名簿に移ることができます。 移行せずにA課程のまま更新を続けることも可能です。
名前が2つあるから、別の資格かと思ってた!
A課程とB課程の違いや、認定看護師制度全体のしくみは以下の記事で紹介しています。
対象となる患者と病期
対象は、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血などで脳卒中を発症した患者さんと、その家族です。 関わる時期は発症直後の急性期だけでなく、回復期、そして退院後の生活期まで続きます。
急性期は重篤化を防ぐモニタリングと早期離床、回復期は日常生活動作の自立に向けた支援、生活期は再発予防と在宅生活の継続が中心です。 病期をまたいで「生活の再構築」を一貫して支えるのが、この分野の特徴です。
活躍する職場
脳卒中看護認定看護師は、脳卒中の患者さんが多い次のような職場で活動しています。
- 急性期病院の脳神経外科・脳神経内科病棟
- 脳卒中ケアユニット(SCU)や救急病棟
- 回復期リハビリテーション病棟
- 訪問看護ステーションなど在宅療養の現場
病棟の所属スタッフとして働きながら、院内の脳卒中看護の相談役や勉強会の講師を担うケースが多くあります。
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参考:日本看護協会「認定看護師」 / 日本看護協会「認定看護師教育機関別の開講状況・定員数一覧(A課程認定看護師教育機関)」
脳卒中看護認定看護師になるまでの流れ

脳卒中看護認定看護師になるまでには、実務経験を積む→教育機関に入学・修了する→認定審査に合格する、という3段階があります。 教育機関の出願から認定登録まで、最短でも2年ほどかかります。
- 2026年11〜12月入学教育機関へ出願
- 2027年1月入学入学試験・合格発表・入学手続き
- 2027年4月〜教育教育課程で1年間学ぶ(2028年3月修了)
- 2028年7月ごろ審査認定審査をオンライン申請
- 2028年10月ごろ審査筆記試験
- 2028年12月〜登録合否発表→認定料を振り込み認定登録
実務経験年数の要件
認定審査を受けるには、看護師免許を取得後、通算5年以上の実務研修が必要です。 そのうち通算3年以上は、脳卒中看護の分野での実務研修でなければなりません。
非常勤で働いた期間は、実際の勤務時間150時間を1か月分として数えます。 准看護師として働いた期間は含まれないので、准看護師から看護師になった人は、看護師免許を取ってからの年数を数えましょう。
求められる症例の要件
脳卒中看護の3年以上の経験は、「脳卒中患者の多い部署」での看護実績であることが条件です。 あわせて、脳卒中の患者さんの看護を5例以上担当した実績が求められます。
教育機関によっては、担当した事例を報告書にまとめて出願書類として提出します。 病態のアセスメントから看護問題の解決までを書くため、日頃から受け持ち事例の経過を記録しておくと準備が楽になります。
現在も脳卒中の患者さんが多い施設で働いていることが「望ましい」とされているため、異動や転職を考えている場合は出願のタイミングも意識しておきましょう。
看護師の求人を探す教育機関への出願と選考
教育課程に入るには、各教育機関の入学試験に合格する必要があります。 選考は、筆記試験・小論文・面接と出願書類で総合的に判定するのが一般的です。
出願書類には、勤務証明書や推薦書、受験許可書など、勤務先に書いてもらう書類が含まれます。 長期間職場を離れることになるため、出願を決めたら早めに上司へ相談しておくとスムーズです。
認定看護師教育課程の修了
入学後は、B課程なら約800時間のカリキュラムを1年かけて学びます。 すべての科目の試験と実習に合格すると修了となり、認定審査の受験資格が得られます。
B課程を修了すると、あわせて厚生労働省の特定行為研修の修了証も交付されます。 教育内容の詳細は次の章で紹介します。
認定審査の受験と認定登録
教育課程を修了したら、日本看護協会の認定審査を受けます。 例年7月ごろにオンラインで申請し、10月に筆記試験、12月下旬に合否が発表されます。
2026年度の審査料は51,700円で、合格後に認定料51,700円を振り込むと認定看護師として登録されます。 B課程の修了者は、「特定認定看護師」と名乗ることもできます。
資格の有効期間は5年で、5年ごとの更新審査(書類審査)があります。 更新には過去5年間で50点以上の自己研鑽の実績が必要で、審査料30,800円と認定料20,900円がかかります。
準備期間も含めると、長い道のりになるよね
参考:日本看護協会「認定看護師(CN)認定審査 審査・申請の手引き 2026年」 / 日本看護協会「認定看護師(CN)認定更新審査 審査・申請の手引き 2026年」
脳卒中看護分野の教育課程で学ぶ内容

B課程の脳卒中看護分野のカリキュラムは、日本看護協会の「認定看護師教育基準カリキュラム」で内容と時間数が決められています。 合計は797時間で、特定行為研修の内容が組み込まれているのがA課程との大きな違いです。
共通科目と専門科目の構成
カリキュラムは、全分野で共通の「共通科目」、脳卒中看護に特化した「認定看護分野専門科目」、「特定行為研修区分別科目」、「演習・実習」の4つで構成されています。
共通科目では、臨床推論やフィジカルアセスメント、臨床薬理学など、特定行為の実践に必要な医学的知識を幅広く学びます。
専門科目では、脳卒中の病態生理や機能障害の評価に加え、急性期の重篤化回避と早期離床の支援技術にそれぞれ45時間が割り当てられています。
特定行為研修に含まれる区分
B課程の脳卒中看護分野には、「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」と「精神及び神経症状に係る薬剤投与関連」の2区分の特定行為研修が組み込まれています。
- 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整食事摂取量や栄養状態などを確認
- 脱水症状に対する輸液による補正皮膚の乾燥や排尿回数、電解質などを確認
- 抗けいれん剤の臨時の投与発熱や頭痛・嘔吐、発作の様子などを確認
- 抗精神病薬の臨時の投与興奮状態やせん妄の有無などを確認
- 抗不安薬の臨時の投与不安の程度や継続時間などを確認
なかでも抗けいれん剤の臨時の投与は、脳卒中後のけいれん発作に対応するうえで重要な実践範囲です。
特定行為は、看護師が独自の判断で行えるものではありません。医師があらかじめ作成した手順書にもとづき、患者さんの身体所見や検査結果が医師の指示した病状の範囲内にあることを確認してから実施します。
実習の内容
臨地実習は150時間で、脳卒中の急性期、呼吸障害、運動機能障害、高次脳機能障害などの状況にある患者さん2〜3事例を受け持ち、看護過程を展開します。
看護職への指導やコンサルテーション、入退院支援・退院調整、チームカンファレンスへの参加も実習の課題に含まれます。
-
臨地実習(150時間)受け持ち患者さんの看護過程の展開、指導・相談の実践、入退院支援
-
統合演習(15時間)臨地実習で受け持った事例のケースレポート作成・発表
-
特定行為の実習区分別科目の中で、患者さんへの実技を行為の難しさに応じて5例または10例程度
特定行為の実習は、原則として受講者の所属施設(自施設)で行う教育機関もあります。 その場合、医師を含む指導者を自施設で確保する必要があるため、入学前から看護部や医師と調整を進めておくことになります。
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開講している教育機関
2026年度にB課程の脳卒中看護分野を開講しているのは、熊本保健科学大学キャリア教育研修センターの1課程のみ(定員7人)です。
A課程の「脳卒中リハビリテーション看護」は、国立障害者リハビリテーションセンター学院(埼玉県)が2026年度に開講しています。
- 所在地
- 熊本県熊本市
- 定員
- 7人(編入学者含む)
- 期間
- 4月〜翌3月(1年間)
- 修了時
- 認定審査の受験資格+特定行為研修修了証
- 所在地
- 埼玉県所沢市
- 定員
- 20人
- 期間
- 9月〜翌3月(7か月間)
- 修了時
- 認定審査の受験資格
開講する教育機関や定員は年度ごとに変わります。 出願を考え始めたら、日本看護協会の「教育機関別開講状況・定員数一覧」や「教育機関検索」で最新の開講状況を確認しましょう。
教育機関が全国で限られているのは知っておきたいポイントだね!
参考:日本看護協会「認定看護師教育基準カリキュラム(B課程教育機関)分野:脳卒中看護」 / 日本看護協会「認定看護師教育機関別の開講状況・定員数一覧(B課程認定看護師教育機関)」
取得にかかる期間と費用

教育課程の期間は、B課程(熊本保健科学大学)が4月から翌年3月までの1年間、A課程(国立障害者リハビリテーションセンター学院)が9月から翌年3月までの7か月間です。
費用は学費と認定審査の費用に加えて、教育機関が遠方の場合は交通費や滞在費もかかります。
| 項目 | B課程熊本保健科学大学(2027年度) | A課程国立障害者リハビリテーションセンター学院 |
|---|---|---|
| 教育課程 | ||
| 入学検定料 | 50,000円 | 31,000円 |
| 入学金 | 50,000円 | 記載なし |
| 授業料B課程は特定行為研修分を含む | 1,200,000円 | 600,000円 |
| その他 | 5,470円研修補償制度の保険料 | 約100,000円教科書・教材・臨地実習費等 |
| 日本看護協会の認定審査 | ||
| 審査料 | 51,700円 | |
| 認定料 | 51,700円 | |
| 合計 | 1,408,870円 | 約834,400円 |
| 更新(5年ごと) | 51,700円審査料30,800円+認定料20,900円 | |
B課程の場合、学費と認定審査・登録の費用を合わせて約141万円です。 これに教材費や、実習先への移動・宿泊費が自己負担で加わります。
看護師の求人を探す遠方から受講する場合の過ごし方
B課程の教育機関は熊本県の1か所のため、多くの人にとっては遠方での受講になります。 ただし、1年間ずっと熊本に滞在するわけではなく、4月から8月中旬まではeラーニングで自宅から受講できます。
eラーニング期間も週5日・1日3〜4時間の受講時間が必要なため、働きながら受講するなら勤務時間の調整が欠かせません。
8月中旬以降は熊本での集合教育、自施設での特定行為実習、福岡・熊本での臨地実習と続くため、この期間は休職や研修扱いでの長期不在を勤務先と相談しておきましょう。
奨学金と勤務先の補助制度
学費の負担を減らす方法として、次のような制度があります。
-
日本看護協会の認定看護師教育課程奨学金学費や生活費に使える貸与型の奨学金
-
専門実践教育訓練給付熊本保健科学大学の脳卒中看護分野は厚生労働大臣の指定講座。条件を満たせばハローワークへの申請で経費の一部が支給される
-
勤務先の資格取得支援学費の負担や研修扱いでの受講など、病院独自の制度
教育訓練給付は、受講開始前に本人がハローワークで手続きをしなければなりません。 勤務先の支援は「修了後〇年間の勤務」を条件にしていることがあるため、条件を確認してから申し込みましょう。
- 「研修補助あり」の看護師求人は約2%(187件)
- 正看護師の掲載求人は全体で9,633件
- 支援内容は面接で具体的に確認するのが確実
資格を取ったあとの手当の相場は、以下の記事が参考になります。
参考:熊本保健科学大学「令和9(2027)年度 認定看護師教育課程 脳卒中看護分野 募集要項」 / 国立障害者リハビリテーションセンター学院「令和8年度 研修生募集要項」
脳卒中看護認定看護師の役割と仕事内容

脳卒中看護認定看護師の仕事は、急性期のモニタリングから在宅生活への引き継ぎまで、病期ごとに重点が変わります。
- 重篤化回避のモニタリング
- 早期離床と廃用症候群の予防
- 意識障害・呼吸障害のケア
- 日常生活動作の自立支援
- 高次脳機能障害のケア
- 退院後の生活を見据えた調整
- 再発予防の患者・家族指導
- 社会資源の活用支援
- 在宅ケアを担う職種との連携
神経徴候のモニタリングと重症化の予防
発症直後は、意識レベル・瞳孔・麻痺の程度・血圧などの変化から、再出血や脳浮腫などの重篤化の兆候をいち早くとらえることが大切です。 認定看護師は、病態の判断にもとづいてモニタリングの方法を組み立て、病棟スタッフが同じ視点で観察できるように指導します。
B課程の認定看護師は、手順書があれば、けいれん発作時の抗けいれん剤の臨時投与や、脱水時の輸液による補正も実施できます。 必要な処置のタイミングを逃しにくくなるのが、特定行為研修を修了した強みです。
生活の再構築に向けた支援
急性期から、病態に合わせた早期離床と廃用症候群の予防を進め、日常生活動作の自立につなげます。 麻痺や高次脳機能障害、嚥下障害、排泄障害など、障害が日常生活に及ぼす影響を予測してケアを組み立てるのも大切な役割です。
脳卒中看護の研修は、栄養サポートチーム加算や摂食嚥下機能回復体制加算、排尿自立支援加算などの診療報酬の算定要件にも該当しています。 チーム医療の一員として、嚥下や排泄の専門チームに加わる場面もあります。
患者さんの「できる」を一緒に増やしていけるのは大きなやりがいだね!
患者・家族への指導と意思決定支援
脳卒中は再発しやすいため、血圧管理や服薬、食事などの生活調整について、患者さんと家族に指導します。 また、治療や療養の場所を選ぶ場面では、患者さんと家族の権利を守り、自己決定を尊重する関わりが求められます。
障害を抱えて生活を送ることへの不安や、介護を担う家族の負担にも目を向け、心理面・社会面から支えていきます。
回復期・在宅への引き継ぎと多職種連携
急性期の病棟から回復期リハビリテーション病棟、さらに自宅や施設へと療養の場が移るときには、入退院支援や退院調整に関わります。 脳卒中の患者さんは摂食嚥下障害を合併することも多く、摂食嚥下障害看護認定看護師と連携する場面もあります。
退院に向けては、医師やリハビリ職、医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャーなどと連携し、介護保険や身体障害者手帳などの社会資源の活用につなげます。
参考:日本看護協会「認定看護師・専門看護師教育における研修が算定要件に該当する診療報酬項目一覧」
まとめ
脳卒中看護認定看護師は、急性期から生活期まで脳卒中の患者さんと家族を支える、日本看護協会の認定資格です。 A課程の「脳卒中リハビリテーション看護」とB課程の「脳卒中看護」は同じ系統の分野で、これから目指すならB課程が中心になります。
この記事のポイント
- 看護師経験5年以上、うち脳卒中看護3年以上と5例以上の担当実績が必要
- B課程は特定行為研修2区分を含む797時間のカリキュラム
- 2026年度のB課程は熊本の1か所・定員7人のみ
- B課程の学費と認定審査・登録費用は合計約141万円
- 取得後は5年ごとに更新審査がある
まずは自分の実務経験が要件を満たしているかを確認し、教育機関の開講状況と募集時期をチェックしてみましょう。
受講中の勤務調整や資格取得支援の有無は職場によって大きく変わるため、支援制度が整った職場を探したいときは転職エージェントに相談するのも一つの方法です。


