貧血の種類と分類|MCVでわかる5つの貧血の特徴と看護のポイント

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貧血とは

貧血とは、血液中のヘモグロビン(Hb)濃度が基準値を下回った状態を指します

赤血球の数そのものではなく、酸素を運ぶヘモグロビンの量で定義される点がポイントです。ヘモグロビンが減ると全身への酸素供給が不足し、倦怠感・動悸・息切れ・めまいといった症状が現れます。

対象貧血とされるHb値(WHO基準)
成人男性Hb 13g/dL未満
成人女性(非妊娠)Hb 12g/dL未満
妊婦Hb 11g/dL未満
ポイント

貧血は疾患名ではなく「状態」です。そのため、まず何が原因で貧血になっているのかを絞り込むことが重要になります。

MCVで貧血を分類する

貧血の原因を絞り込む手がかりになるのが、MCV(平均赤血球容積)です。

赤血球1個あたりの大きさを示す指標で、正常値は80〜100fLです。

血算(CBC)を採れば必ず出てくる値なので、現場でもっとも使いやすい分類軸といえます。

MCVの値分類疑われる貧血の種類
80fL未満小球性低色素性貧血(赤血球が小さい)鉄欠乏性貧血、鉄芽球性貧血、サラセミアなど
80〜100fL正球性正色素性貧血(赤血球の大きさは正常)溶血性貧血、再生不良性貧血、腎性貧血、急性出血など
100fL超大球性貧血(赤血球が大きい)巨赤芽球性貧血(B12・葉酸欠乏)、アルコール多飲、甲状腺機能低下症など
ポイント

MCVは貧血の原因を絞り込む「入り口」です。小さい(小球性)→鉄が足りない、大きい(大球性)→B12か葉酸が足りない、正常(正球性)→作れないか壊されすぎ、と整理すると覚えやすくなります。

主な貧血の種類と特徴

鉄欠乏性貧血(小球性)

もっとも頻度の高い貧血です。ヘモグロビンの材料である鉄が不足することで、小さく色の薄い赤血球がつくられます。

項目内容
主な原因鉄の喪失・需要増大。月経過多、消化管出血(胃潰瘍・大腸がんなど)、妊娠・授乳、偏食や菜食主義による摂取不足
検査の特徴小球性低色素性(MCV↓・MCHC↓)、血清鉄↓、フェリチン↓、TIBC↑
看護・治療のポイント鉄剤の投与(経口・静注)と出血源の検索。経口鉄剤では便が黒くなること、悪心・便秘などの消化器症状が出やすいことを事前に説明する
こんなとき疑う若年女性の慢性的な倦怠感、黒色便、健診でのHb低値。男性や閉経後女性の鉄欠乏では消化管出血の検索が欠かせない

巨赤芽球性貧血(大球性)

ビタミンB12または葉酸の不足によりDNA合成がうまくいかず、大きく未熟な赤血球がつくられる貧血です。

項目内容
主な原因ビタミンB12欠乏(胃切除後、内因子欠乏による悪性貧血)、葉酸欠乏(妊娠、アルコール多飲、極端な偏食)
検査の特徴大球性(MCV 100fL超)。白血球・血小板も減る汎血球減少を伴うことがある
看護・治療のポイント胃切除後や内因子欠乏ではビタミンB12を経口で吸収できないため、注射による補充が必要。葉酸欠乏は経口補充で対応する。しびれ・歩行不安定などの神経症状の観察も重要
こんなとき疑う胃全摘の既往がある、手足のしびれや歩行のふらつきを訴える、大量飲酒の習慣がある

溶血性貧血(正球性)

赤血球が寿命より早く壊されてしまうことで起こる貧血です。壊れた赤血球の中身が血中に出るため、特徴的な検査値の変化が見られます。

項目内容
主な原因赤血球の破壊亢進。自己免疫性(自己抗体による)、遺伝性(遺伝性球状赤血球症など)、薬剤性、人工弁などの機械的要因
検査の特徴正球性、間接ビリルビン↑、LDH↑、ハプトグロビン↓、網赤血球↑(骨髄は活発に作っている)
看護・治療のポイント黄疸や尿の色の観察、原因薬剤の確認。自己免疫性ではステロイド治療の管理と副作用の観察
こんなとき疑う貧血に黄疸を伴う、尿が濃い褐色をしている

再生不良性貧血(正球性)

骨髄の造血幹細胞が障害され、赤血球だけでなく白血球も血小板も作れなくなる貧血です。国の指定難病にもなっています。

項目内容
主な原因造血幹細胞の障害による骨髄の造血能低下。多くは原因不明(特発性)だが、薬剤・放射線・ウイルス感染が関与することもある
検査の特徴正球性、汎血球減少(赤血球・白血球・血小板すべて↓)、網赤血球↓(骨髄が作れていない)
看護・治療のポイント白血球減少による感染予防と、血小板減少による出血予防が看護の重点。輸血・免疫抑制療法・造血幹細胞移植などが行われる
こんなとき疑う貧血に加えて発熱や感染を繰り返す、あざができやすい、鼻出血や歯肉出血が止まりにくい

腎性貧血(正球性)

腎臓でつくられる造血ホルモン、エリスロポエチンの産生が低下することで起こる貧血です。CKD(慢性腎臓病)の患者に多く見られます。

項目内容
主な原因腎機能低下によるエリスロポエチン産生の低下。CKDの進行に伴って徐々に出現する
検査の特徴正球性。eGFR↓・血清クレアチニン↑など腎機能低下の所見を伴う
看護・治療のポイントESA製剤やHIF-PH阻害薬による治療管理。効果を出すには鉄が足りていることが前提のため、鉄の評価もあわせて行う
こんなとき疑うCKDや透析中の患者に、緩やかに進行する貧血が見られる

貧血を見つけたときの考え方

検査値で貧血に気づいたとき、どの順番で原因を絞り込んでいくのか。基本的な流れを整理しておきます。

  1. Hb値で貧血の有無と程度を確認する(成人男性13g/dL未満、成人女性12g/dL未満)
  2. MCVを見て、小球性・正球性・大球性のどれかに分類する
  3. 小球性なら鉄関連検査(血清鉄・フェリチン・TIBC)、大球性ならビタミンB12・葉酸を確認する
  4. 正球性なら網赤血球を見る。高ければ溶血や出血、低ければ骨髄の造血障害や腎性貧血を疑う
  5. 白血球・血小板もあわせて確認し、汎血球減少があれば再生不良性貧血などを考える
  6. 問診で月経・便の色・食事内容・飲酒歴・既往(胃切除・CKD)を確認し、原因像とつなげる

貧血の観察ポイント

貧血に共通する症状と、種類ごとに注意すべき観察ポイントを確認します。

  • 顔色・眼瞼結膜の蒼白(貧血の基本所見)
  • 倦怠感・易疲労感・動悸・息切れ・頭痛・めまい
  • Hb・MCV・血清鉄・フェリチン・網赤血球などの検査値の変化
  • 黄疸・濃い尿(溶血性貧血を疑うサイン)
  • 出血傾向・発熱(再生不良性貧血では血小板↓・白血球↓も)
  • 食事摂取状況(鉄・B12・葉酸の摂取、アルコール多飲の有無)
  • 月経過多・消化管出血など慢性出血の有無
注意

貧血の症状(倦怠感・息切れ・動悸)は非特異的で、他の疾患と区別しにくいことがあります。高齢者では症状を「年のせい」と感じて見逃されることもあります。検査値の変化とあわせて総合的に評価し、貧血の種類によって治療・ケアが異なるため、原因の鑑別が重要です。

印刷して活用しよう

ここまでの内容を、MCV分類表・5種類の対比表・観察ポイントとして1枚にまとめました。ナースステーションに貼ったり、実習記録やポケットノートに挟んで使えます。

下のフォームから、印刷用のPDFを無料でダウンロードできます。

貧血の種類と分類

貧血の種類と分類

MCVによる貧血の分類と、主な5種類の貧血(鉄欠乏性・巨赤芽球性・溶血性・再生不良性・腎性)の原因・検査所見・看護のポイントを1枚にまとめた早見表です。

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