TKA術後におけるアイシングの正しいタイミングと時間

TKA術後におけるアイシングの正しいタイミングと時間 イメージ

人工膝関節全置換術(TKA)後は、術部の炎症や疼痛管理の一環として、アイシングを行うことが一般的です。

しかし、ただ冷やせばいいわけではありません。

正しい知識を持ってアイシングを行わないと、その後の回復を遅らせてしまったり、リハビリに影響が出ることもあります。

TKA術後の患者さんの対応をする上では、アイシングの重要性を知り、適切なタイミングと継続時間について把握しておくことが重要です。

それではどのような点に注意し、アイシングすべきなのか確認してみましょう。

TKA術後のアイシングはなぜ重要なのか

TKA術後でアイシングが重要となるのは、疼痛緩和によりその後の訓練への支障を減らすことができるためです。

アイシングにより皮膚表面や内部組織の温度が低下し、神経の伝達速度を遅らせられることで、疼痛の閾値が上がり痛みの感覚は鈍くなります。

TKA術後は、疼痛や炎症による腫脹が起こるのが正常な回復過程ですが、術後早期に膝の可動域訓練を開始して可動域改善を図る必要があります。

一方で、疼痛が原因で可動域訓練がうまく進まないことはよくあることで、いかに疼痛管理をして術中の可動域まで改善を図れるかが予後に関わってきます。

疼痛管理が適切に行われれば、早期から可動域訓練だけでなく荷重訓練も積極的に行えるため、正しいアイシングの方法を熟知しておくことが不可欠です。

疼痛緩和以外にもアイシングにより細胞の新陳代謝を低下させることで、手術によりダメージを受けた組織の二次的な低酸素状態を抑制することができたり、局所的な腫脹を軽減することが可能です。

アイシングは、術後リハビリテーションの重要な一角を担う治療法と言えます。

アイシングの正しいタイミングと時間

アイシングは疼痛緩和に有効な手段ですが、方法を間違えるとかえって回復を遅らせてしまう原因にもなります。

術後の経過を良好にするためにも、アイシングの正しいタイミングと時間を知っておくことは不可欠です。

早速アイシングの適切なタイミングと継続時間について確認しましょう。

アイシングのタイミング

アイシングは、TKA術後すぐに開始します。

手術直後から発生する可能性のある激しい腫れや疼痛を抑えるため、早期からアイシングを行うことが推奨されています。

術後日数に関わらず、リハビリ直後や術部周囲に熱感がある場合は、積極的にアイシングを行います。

MEMO

手の甲で触診すると熱感がわかりやすいです。

ただし、過剰なアイシングを避けるために、夜間や睡眠中は行わないようにするのが望ましいです。

アイシングの時間を適切に管理できるようであれば、夜間や睡眠中のアイシングも検討してみてください。

夜間に痛みが強くなる患者さんも一定数いるため、就寝前のアイシングは有効だと考えられています。

アイシングの時間

アイシングの継続時間に関しては、一概に正しい時間が存在するわけではありませんが、一般的には15分から20分が推奨されています。

脂肪量や筋肉量により深部組織まで冷えるのにかかる時間には個人差がありますが、触れた感覚がなくなり始める時間が15分~20分なので、参考にしてみてください。

アイシングを行った後は、少なくとも1時間は皮膚の温度を戻す時間を設けることも大切です。

アイシングバッグ(氷嚢)やアイスノンなど使う物品も病院や施設によって様々ですが、この時間が目安です。

注意点としては、長時間にわたる冷却は逆に皮膚や組織の損傷を引き起こす可能性があるため、必要以上に継続することは避けるようにしましょう。

アイシングによって血流が制限されることで炎症や腫脹を抑える効果がありますが、ある程度の血流は組織の修復や回復に必要です。

適切な間隔を空けることで、アイシングの利点を生かし、過冷却によるリスクを避けることができます。

\転職のご相談はコチラ/

アイシングする際の注意点

アイシングを行う上での注意点は先ほどもいくつか紹介してきましたが、ここでも改めて確認しておきましょう。

基本的には回復を阻害させる、新しく組織の損傷を引き起こさせるようなアイシングをしないことを心がける必要があります。

適切な時間と頻度を守る

長時間のアイシングは、皮膚や組織の損傷を引き起こす可能性があるため、20分以上のアイシングは避けるようにしましょう。

MEMO

15分~20分のアイシングを1時間以上の間隔を空けて繰り返すことが、術後の回復を促進し、別の組織損傷を引き起こさないポイントです。

特に夜間や睡眠時のアイシングは、患者さん自身が管理できる、もしくは医療スタッフが時間を気にして対応できる状態でなければ過冷却につながる危険があるので注意が必要です。

術部(皮膚)を保護する

アイシングをする際は、直接アイシングバッグやアイスノンを肌に当てることはやめましょう。

直接当ててしまうと、凍傷や皮膚を損傷してしまう危険性が高まります。

対応としては薄い布やタオルで包み、それを熱感がある部位に当てるようにします。

また、アイシングの前後には必ず皮膚の状態を観察し、熱感だけでなく発赤、腫脹、感覚の麻痺等がないかを評価するようにしましょう。

患者さん個々の状態を観察する

当たり前のことですが、患者さんによって年齢や体格、術後の経過に違いがありますので、事前に適切な評価を行い、個人の体質を考慮した上でアイシングを行う必要があります。

特に、循環器系に問題を抱えている患者さんや、神経感覚が鈍くなっている患者さんは、アイシングによる影響を受けやすいため、通常よりも慎重なアプローチが求められます。

患者さんにお願いされたからアイシングをするのではなく、患者さんの状態や訴える痛みの強さ、不快感などを総合的に評価して適宜、アイシングの方法を変更する柔軟性も必要です。

まとめ

TKA術後には、疼痛と炎症を管理するためにアイシングが推奨されていますが、その方法やタイミングを誤ると回復を遅らせたり組織を損傷してしまうリスクがあります。

TKA術後のアイシングは、正しいタイミング、時間を守ることが重要で、一般的には15分から20分のアイシングが推奨されており、それを数時間おきに繰り返します。

過剰なアイシングを避けるため夜間や睡眠中のアイシングは制限されることが多いですが、患者さんの状態や対応する医療スタッフ・現場の体制に応じて夜間のアイシングも検討してみてください。

またアイシングは直接肌に当てず、タオルなどで包んで使用するのも忘れないようにしましょう。

\ ご登録はコチラ /

転職をご検討中の方へ

医療業界に詳しいキャリアパートナーが無料で転職サポートをさせていただきます!新着・非公開求人の紹介も可能です!