エッセンシャルワーカーとは?職種一覧と該当の判断基準・待遇面の課題
「エッセンシャルワーカーって、どんな仕事が該当するの?」と気になったことはありませんか?
エッセンシャルワーカーとは、医療や介護、物流、インフラなど、社会の生活を支えるために現場で働く人を指す言葉です。 ただ、法律で決められた定義はなく、どこまでを含めるかは使う人や場面によって変わります。
この記事では、政府資料での使われ方をもとにエッセンシャルワーカーに含まれる職種を整理し、自分の仕事が当てはまるかを考える3つの判断基準、待遇面の課題と支援の取り組みを紹介します。
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エッセンシャルワーカーとは?

エッセンシャルワーカー(essential worker)は、英語で「欠かせない(essential)働き手(worker)」という意味です。 日本では新型コロナウイルスの感染が広がった2020年ごろから、医療・介護や物流、小売など、外出自粛の中でも現場で働き続けた人を指す言葉として広く使われるようになりました。
エッセンシャルワーカーという言葉そのものに、法律で決められた定義はありません。「〇〇の職種がエッセンシャルワーカー」と国が一律に決めた一覧もないため、記事やメディアによって含まれる職種が少しずつ違います。
政府の資料でもこの言葉は使われています。 たとえば「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太の方針)では、「アドバンスト・エッセンシャルワーカー」をデジタル技術なども活用して、今より高い賃金を得るエッセンシャルワーカーと説明し、その育成に取り組むとしています。
ただし、エッセンシャルワーカー自体がどの職種を指すかまでは書かれていません。
公的な線引きに近いものとしては、感染症の流行時に「止めてはいけない仕事」を示した次の2つがあります。
| 新型インフルエンザ等対策政府行動計画 | 新型コロナの社会機能維持者 | |
|---|---|---|
| 示された時期 | 2024年7月(改定) | 2022年1月(厚生労働省の事務連絡) |
| 使われる場面 | ワクチンの特定接種の対象を決めるとき | 濃厚接触者の待機を早く解除するとき |
| 対象の書き方 | 医療の提供の業務または国民生活・国民経済の安定に寄与する業務を行う事業者 | 社会機能を維持するために必要な事業に従事する者 |
| 範囲を決めるのは | 国が基準を定め、厚生労働大臣が事業者を登録 | 国の業種リストを参考に、自治体が判断 |
1つ目の政府行動計画は、新型インフルエンザなどが流行したときに、社会を支える業務に就く人へワクチンを優先して接種する「特定接種」の考え方を定めたものです。
2つ目は、新型コロナの流行時(2022年)に、濃厚接触者の待機期間を短くできる対象として厚生労働省が示した「社会機能維持者」です。 このとき国が示したのは参考となる業種のリストで、具体的な範囲は自治体の判断に任されていました。
国が一律に「この職種までがエッセンシャルワーカー」と線を引いたわけではありません。
ブルーカラー・ホワイトカラーとの違い
エッセンシャルワーカーは、ブルーカラーやホワイトカラーと混同されることがあります。 ブルーカラー・ホワイトカラーは「現場での作業か、事務・管理の仕事か」という働き方による分け方で、エッセンシャルワーカーは「社会の生活を支えるのに欠かせないか」という役割による分け方です。
そのため、看護師や介護職員のようにどちらにも分けにくい専門職も、エッセンシャルワーカーと呼ばれます。 反対に、ブルーカラーの仕事でも、止まったときの生活への影響が小さければ、エッセンシャルワーカーとは呼ばれにくくなります。
決まった定義がないなら、誰が決めているの?
参考:内閣感染症危機管理統括庁「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」 / 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の感染急拡大が確認された場合の対応について」
エッセンシャルワーカーに含まれる職種

エッセンシャルワーカーに含まれる職種は、新型コロナの基本的対処方針(2022年1月変更時点)で「事業の継続が求められる事業者」として示された業種をもとに考えると整理しやすくなります。
このリストは、感染が広がる中でも「三つの密」を避ける取り組みをしながら事業を続けるよう求められた業種です。
ここで紹介する職種は代表的な例で、これ以外の仕事が含まれないという意味ではありません。
医療・介護・福祉
医療・介護・福祉は、エッセンシャルワーカーの代表として真っ先に挙げられる分野です。 基本的対処方針では「全ての医療関係者」の事業継続を求めており、医療関係者には病院・薬局のほか、次のような事業も含まれるとしています。
- 医薬品・医療機器の輸入・製造・販売
- 献血を実施する採血業
- 入院者への食事提供
- 患者さんの治療に必要な物資・サービスに関わる製造業・サービス業
介護・福祉では、介護老人福祉施設や障害者支援施設の運営に関わる人に加え、施設の入所者への食事提供など、高齢者や障害のある人の生活に必要なサービスに関わる人も対象とされています。 医師や看護師だけでなく、薬剤師やリハビリ職、臨床検査技師、医療事務など、病院や施設を支える職種は幅広くいます。
医療現場で働く職種の内訳は、以下の記事で紹介しています。
保育・教育
保育所などの児童福祉施設や放課後児童クラブは、「育児サービス」として事業継続が求められました。 保護者が医療や物流の現場で働き続けるには、子どもを預けられる場所が欠かせないためです。
学校についても、児童生徒や学生の学びを続ける観点から、事業継続が求められました。 保育士や放課後児童支援員、教員などがこの分野の代表的な職種です。
条件にあった求人を探してもらう公務・警察・消防
警察や消防、その他の行政サービスは、社会の安定を保つための事業として挙げられています。 警察官や消防士・救急隊員のほか、市区町村の窓口や保健所で働く職員も、災害時や感染症の流行時に業務を止められない仕事です。
物流・交通
物流・交通の分野では、鉄道、バス・タクシー・トラック、海運・港湾、航空・空港、郵便、倉庫などが挙げられています。 宅配も、自宅で過ごす人の生活を支えるサービスとして含まれています。
トラックや宅配のドライバー、鉄道やバスの運転士、倉庫の作業スタッフなどが代表的な職種です。 物が届かなければ、病院の医薬品や店の商品も補充できなくなります。
小売・販売
スーパー、コンビニ、ドラッグストア、ホームセンター、百貨店などの生活必需品を扱う小売業も対象です。 レジや品出しのスタッフ、ドラッグストアで働く薬剤師・登録販売者などがこの分野に入ります。
電気・ガス・水道
電力、ガス、上下水道、通信・データセンターなどの「インフラ運営」は、自宅で過ごす人の最低限の生活に欠かせない事業とされています。 ごみの収集・運搬・処分、配管工や電気技師といった家庭設備のメンテナンスも同じ考え方で挙げられています。
農林水産業
農業・林業・漁業や、飲食料品の製造・加工・流通も「飲食料品供給」として事業継続が求められました。 農家や漁業者、食品工場のスタッフなど、食卓に食べ物を届ける仕事が該当します。
医療や介護を支える周辺の仕事も入っているんだね!
参考:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の感染急拡大が確認された場合の対応について」
エッセンシャルワーカーかどうかの判断基準

職種一覧に自分の仕事が載っていなくても、エッセンシャルワーカーに当てはまる場合があります。 公的な一覧が「業種」で示されていることを踏まえると、次の3つの軸で考えると判断しやすくなります。
- 現場に出ないと成立しない仕事か
- 止まると生活インフラが維持できないか
- 代替できる人材が限られているか
一覧に載っていなくても、気にしなくて大丈夫だよ~
現場に出ないと成立しない仕事か
1つ目の軸は、在宅勤務やオンラインでは代わりがきかないかです。 患者さんの体に触れるケアや、荷物の配送、設備の点検などは、その場に行かなければできません。
感染症の流行時に注目されたのも、外出を控えるよう求められる中で出勤し続けなければならない人たちでした。 同じ会社の中でも、現場の担当者と在宅でできる事務の担当者では、この軸での当てはまり方が変わります。
止まると生活インフラが維持できないか
2つ目の軸は、その仕事が数日止まったときに、人の命や暮らしに影響が出るかです。 医療や介護、電気・水道、食料の供給は、止まるとすぐに生活が立ち行かなくなります。
直接患者さんに関わらない仕事でも、それがなければ医療が止まる場合は、この軸に当てはまります。
今のあなたの状況は?
代替できる人材が限られているか
3つ目の軸は、資格や経験が必要で、急に別の人と交代できないかです。 看護師や薬剤師、介護福祉士のような国家資格職は、人手が足りなくなっても資格を持たない人で穴埋めできません。
資格が要らない仕事でも、地域の道路や設備に詳しい人、特定の機械を扱える人など、経験の積み重ねで代わりがききにくい仕事もあります。
| 仕事 | 現場に出る | 止まると影響 | 代替しにくい | 基本的対処方針での扱い |
|---|---|---|---|---|
| 医療事務 | ○ | ○ | △ | 病院・薬局などの医療関係者 |
| 医療機器メーカーの供給・保守 | ○ | ○ | ○ | 医療機器の輸入・製造・販売として明記 |
| 病院給食の委託スタッフ | ○ | ○ | △ | 入院者への食事提供として明記 |
| 病院の清掃・設備管理 | ○ | ○ | △ | ビルメンテナンスとして明記 |
3つの軸はどれか1つでも当てはまれば、社会を支える仕事としての性質を持っていると考えられます。 「エッセンシャルワーカーかどうか」は肩書きではなく、仕事の中身で決まる面が大きいといえます。
- 一覧にない仕事は3つの軸で考えてみる
- 医療・介護を支える周辺の仕事も含まれ得る
- 呼び方より待遇と働き方の確認が大切
エッセンシャルワーカーが注目された背景

エッセンシャルワーカーという言葉が広まったきっかけは新型コロナウイルスの感染拡大で、その後は少子高齢化による人手不足の問題とあわせて語られることが増えています。
新型コロナウイルスの感染拡大
2020年に新型コロナウイルスの感染が広がり、緊急事態宣言が出されると、多くの人が外出を控え、在宅勤務に切り替えました。 その一方で、医療・介護の現場や、物流、スーパーなどで働く人は出勤を続け、「社会はこうした人たちに支えられている」と改めて意識されるようになりました。
国土交通省は、大臣から「全てのエッセンシャルワーカーの皆様」へ感謝のメッセージを出し、公共交通や物流、公共工事に携わる人などを挙げてねぎらいました。 国の機関がこの言葉を使って呼びかけたことも、言葉が定着した理由の一つです。
少子高齢化による人手不足
新型コロナが落ち着いた後も、エッセンシャルワーカーへの関心は続いています。 背景にあるのは、高齢者が増えて需要が高まる一方で、働き手が減っていくという人口構造の変化です。
介護の分野では、都道府県の推計を集計すると、必要な介護職員の数は2040年度まで増え続けると見込まれています。
内閣官房の日本成長戦略本部の資料(2026年4月)でも、「医療・福祉等の分野のエッセンシャルワーカーの人材確保」に向けて、ハローワークの機能を強めるとしています。
医療・介護の担い手をどう確保するかは、国の成長戦略でも課題として位置づけられています。
現場の人手不足、肌で感じている人も多いよね
参考:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」 / 内閣官房日本成長戦略本部事務局「分野横断的課題への対応の方向性」
エッセンシャルワーカーが抱える課題

社会に欠かせない仕事である一方、エッセンシャルワーカーの働き方には、待遇や負担の面でいくつかの課題があります。
業務の重要性と賃金が見合わない
エッセンシャルワーカーの課題として最もよく挙げられるのが、仕事の重要性に対して賃金が低いという点です。 医療や介護、保育の賃金は、診療報酬や介護報酬などの公的な価格(公定価格)で決まる部分が大きく、物価や他業種の賃上げに合わせて自由に引き上げにくい仕組みです。
国も介護分野の処遇について、他の仕事との差を縮めることを課題として示しています。
人手不足による長時間労働
人手が足りない職場では、1人あたりの仕事量が増え、残業や休日出勤が増えやすくなります。 看護師や介護職員が辞めると、残った職員の負担がさらに重くなり、また離職が出るという悪循環に陥ることもあります。
条件にあった求人を探してもらう不規則なシフトで生活が組みにくい
24時間・365日止められない仕事が多いため、夜勤や土日祝日の出勤、早番・遅番といった不規則なシフトになりやすい点も課題です。 家族と休みが合わない、子どもの預け先が見つかりにくいなど、生活リズムや家庭との両立に悩む人も少なくありません。
シフト制や変則勤務の仕組みは、以下の記事で紹介しています。
感染症などの健康リスク
人と直接関わる仕事が多いため、感染症にかかるリスクを避けにくい点もエッセンシャルワーカーの特徴です。 医療・介護職は感染した患者さんや利用者さんのケアにあたることがあり、物流や小売の仕事でも多くの人と接します。
体への負担も見逃せません。 移乗介助や重い荷物の運搬による腰痛、夜勤による睡眠リズムの乱れなど、仕事の性質上の健康リスクがあります。
差別や偏見を受ける場面がある
新型コロナの流行時には、医療・介護従事者やその家族が差別や偏見を受ける事例が起きました。 政府の分科会の下に置かれたワーキンググループが2020年11月にまとめた報告では、次のような事例が挙げられています。
報告では、交通・流通や小売、警察関係者など、仕事で多くの人と接する職業でも同じような事例があったとしています。 感染症の流行が終わっても、社会を支える仕事への理解を広げることは課題として残っています。
頑張っているのに傷つけられるのはつらいよね
参考:内閣官房「偏見・差別とプライバシーに関するワーキンググループ これまでの議論のとりまとめ」 / 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」
エッセンシャルワーカーへの支援の取り組み

エッセンシャルワーカーの待遇を改善するため、国・自治体・企業がそれぞれ取り組みを進めています。 医療・介護の分野では、賃上げの仕組みが診療報酬や介護報酬の中に組み込まれています。
国による処遇改善の施策
国は、診療報酬や介護報酬に「処遇改善」のための評価を設け、その収入を職員の賃金に充てる仕組みをつくってきました。
| 制度 | 始まった時期 | 主な対象・内容 |
|---|---|---|
| 診療報酬看護職員処遇改善評価料 | 2022年10月 | 地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関の看護職員。収入を3%程度(月平均1.2万円相当)引き上げる |
| 診療報酬ベースアップ評価料 | 2024年度改定 | 主に医療に従事する職員の賃金の改善 |
| 介護報酬介護職員等処遇改善加算 | 2024年6月 | それまでの3つの処遇改善の加算を一本化 |
2026年度(令和8年度)の改定では、医療・介護の両方で賃上げの評価が拡充されました。
診療報酬では、ベースアップ評価料の対象が事務職員や40歳未満の医師・歯科医師・薬局薬剤師にも広がりました。 また、看護職員処遇改善評価料やベースアップ評価料による収入を、夜勤手当の増額に使えるようになりました。
介護報酬では、処遇改善加算の対象が介護職員から介護従事者に広がり、これまで対象外だった訪問看護や訪問リハビリテーション、居宅介護支援などにも加算が新設されました。
訪問看護ステーションで働く看護師やリハビリ職も、2026年6月から加算の対象になっています。
処遇改善の手当と加算の違いは、以下の記事で詳しく紹介しています。
自治体による支援
国の制度に加えて、自治体が独自に手当や補助を出している地域もあります。 たとえば東京都は、国が必要な見直しをするまでの間、介護職員や介護支援専門員に「居住支援特別手当」を支給する介護事業所を補助しています。
自治体の支援は、地域の人材不足の状況に合わせて内容が決まるため、住んでいる地域や働く地域によって受けられる支援が変わります。 転職や引っ越しを考えるときは、都道府県や市区町村のホームページで介護・医療職向けの支援がないか確認しておくと安心です。
制度を知っておくと、職場選びの目が変わるね!
企業による待遇改善
国や自治体の制度とは別に、勤め先の企業や法人が独自に待遇を改善するケースもあります。 夜勤手当や資格手当の引き上げ、住宅手当の支給、シフトの柔軟化などは、法人ごとに差が出やすいポイントです。
お探しの求人は?
同じ職種でも、処遇改善加算やベースアップ評価料を取得しているかどうか、それをどう配分しているかは職場によって違います。 求人を比べるときは、基本給だけでなく、手当の内訳や処遇改善の取得状況まで確認しておきましょう。
参考:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 1. 賃上げ対応」 / 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」
まとめ
エッセンシャルワーカーは、社会の生活を支えるために現場で働く人を指す言葉で、法律上の定義はありません。 公的な線引きとしては、感染症の流行時に示された政府行動計画の考え方や、基本的対処方針の「事業の継続が求められる事業者」が参考になります。
この記事のポイント
- エッセンシャルワーカーに法律上の定義はない
- 職種の目安は基本的対処方針の業種リスト
- 一覧になくても3つの判断基準で考えられる
- 賃金・人手不足・不規則な勤務などの課題がある
- 2026年度改定で医療・介護の賃上げ評価が拡充
医療・介護の仕事は、エッセンシャルワーカーの中でも処遇改善の制度が整ってきている分野です。 ただ、制度をどう使うかは職場によって違うため、待遇に不満があるときは、ほかの職場の条件と比べてみるのも一つの選択肢です。
自分に合った働き方を探したいときは、転職エージェントに相談すると、求人票だけでは分からない手当の内訳や職場の様子まで確認してもらえます。


