バビンスキー反射のやり方・判定基準・疑われる疾患と自覚症状
バビンスキー反射とは、足底の外側を踵から擦り上げたときに、母趾がゆっくりと背屈する(反り返る)反応のことです。
この反応が出ることを「バビンスキー徴候陽性」と呼び、脳から脊髄へ運動指令を伝える錐体路(皮質脊髄路)が障害されているサインとして扱われます。
バビンスキー反射のやり方
用意するものは、打腱器の柄など「先端が鈍いもの」だけです。鍵や爪楊枝のような鋭利なものは皮膚を傷つけるうえ、痛みによる逃避反応を招くため適していません。
- 背臥位になってもらい、全身の力を抜いてもらう(膝伸展・足関節中間位)。
- 打腱器の柄など、先端の鈍い器具を持つ。
- 足底の外側縁を、踵から小趾側に向けて2〜3秒かけてゆっくり擦り上げる。
- 母趾球の手前まで来たら、内側へ弧を描くように向きを変える。
- 母趾の動きを観察する。刺激後1〜2秒はゆっくり見る。
- 反対側も同じ手技で行い、左右を比較する。
判定のしかた
| 反応 | 所見 | 意味 |
|---|---|---|
| 陰性 | 母趾が底屈する、または反応なし | 正常 |
| 陽性 | 母趾がゆっくり背屈する。 他趾が扇状に開くこともある |
錐体路障害の疑い |
| 判定不能 | 下肢全体を引っ込める逃避反応が出る | 刺激が強すぎる。 刺激を弱めて再検する |
ポイントは「速さ」です。逃避反応による母趾の動きは素早く不規則ですが、バビンスキー徴候による背屈はゆっくりと持続的に起こります。判断に迷ったら、刺激をさらに弱めて数回繰り返し、再現性があるかを確認します。
- 刺激はゆっくり行う。強すぎると逃避反応が出て判定しにくい。
- 2歳未満では陽性が生理的にみられるため、年齢を確認する。
- 足の冷えや緊張、不随意運動があると判定しにくい。
- 片側のみ陽性の場合は、中枢神経の病変を疑う。
- 反射だけで診断せず、他の神経所見や画像検査と併せて評価する。
うまく誘発できないときの変法
足底がくすぐったくて力が入ってしまう場合や、足底に創傷がある場合は、変法を使います。いずれも陽性であれば母趾が背屈します。
| 名称 | 刺激のしかた |
|---|---|
| チャドック反射 | 外果(外くるぶし)の下を、後方から前方へこする |
| オッペンハイム反射 | 脛骨前面を、母指と示指で上から下へ強く押し下げる |
| ゴードン反射 | 下腿三頭筋(ふくらはぎ)を強くつまむ |
| シェーファー反射 | アキレス腱を強くつまむ |
上位運動ニューロンとは?
上位運動ニューロンとは、大脳皮質の運動野から出発し、放線冠・内包・大脳脚・延髄の錐体を通って脊髄前角細胞に至るまでの神経細胞のことです。この経路は錐体路(皮質脊髄路)とも呼ばれ、随意運動の指令を伝えると同時に、脊髄反射を抑制する役割ももっています。
上位運動ニューロンが障害されると、この抑制がはずれて脊髄レベルの原始的な反射が現れます。
一方、脊髄前角細胞から筋肉までを担うのが下位運動ニューロンで、障害されたときの症状は正反対になります。
| 項目 | 上位運動ニューロン障害 | 下位運動ニューロン障害 |
|---|---|---|
| 麻痺の型 | 痙性麻痺 | 弛緩性麻痺 |
| 筋緊張 | 亢進(折りたたみナイフ現象) | 低下 |
| 腱反射 | 亢進、クローヌス出現 | 低下〜消失 |
| 病的反射 | 出現する | 出現しない |
| 筋萎縮 | 軽度(廃用性が主) | 高度で早期から出現 |
| 線維束性収縮 | なし | みられることがある |
トレムナー反射・ホフマン反射との違い
トレムナー反射とホフマン反射は、どちらも上肢で行う病的反射です。この2つは主に頸髄より上位の障害を拾うために使われます。
頸椎症性脊髄症のように上肢症状が主体の病態では、下肢だけでなく上肢の病的反射も確認することが重要です。
| 項目 | バビンスキー反射 | ホフマン反射 | トレムナー反射 |
|---|---|---|---|
| 部位 | 下肢(足底) | 上肢(中指) | 上肢(中指) |
| 刺激方法 | 足底外側を踵から擦り上げる | 中指の爪をつまみ、掌側へ弾く | 中指の指腹を下から上へ弾く |
| 陽性所見 | 母趾の背屈、開扇現象 | 母指・示指が屈曲する | 母指・示指が屈曲する |
| 主に示す病変 | 錐体路障害全般 | 頸髄より上位の障害 | 頸髄より上位の障害 |
| 健常者での出現 | まれ(特異度が高い) | 両側性に出ることがある | 両側性に出ることがある |
ホフマン反射とトレムナー反射は、腱反射が全体に亢進している人では健常でも軽く出ることがあります。
そのため単独での判断は避け、左右差があるか、腱反射亢進やクローヌスなど他の錐体路徴候を伴うかを合わせて評価します。
疑われる主な疾患
バビンスキー反射が陽性のとき、錐体路のどこかに障害があると考えます。
| 障害部位 | 主な疾患 | 特徴 |
|---|---|---|
| 大脳・脳幹 | 脳梗塞、脳出血、脳腫瘍、頭部外傷 | 片側性に出やすく、顔面の麻痺や失語を伴うことがある |
| 脊髄 | 頸椎症性脊髄症、脊髄損傷、脊髄腫瘍 | 両側下肢に出やすく、感覚障害のレベルがみられる |
| 脱髄・変性 | 多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS) | ALSでは上位・下位運動ニューロン徴候が混在する |
| 代謝・感染 | ビタミンB12欠乏(亜急性連合性脊髄変性症)、HTLV-1関連脊髄症 | 経過が緩徐で、深部感覚障害や排尿障害を伴いやすい |
| 周産期・発達 | 脳性麻痺 | 2歳を過ぎても陽性が残存する |
伴いやすい自覚症状
バビンスキー反射そのものに自覚症状はありませんが、陽性となる背景には錐体路障害があるため、患者さんは日常生活のなかで次のような変化を訴えることがあります。
- 手足が動かしにくい、力が入りにくい
- 足がつっぱる、こわばる(痙縮)
- 歩きにくい、つまずきやすい、階段を下りるのが怖い
- ボタンをかける、箸を使うなど細かい動作がしにくい(巧緻運動障害)
- 手足のしびれや感覚の鈍さ
- 足がガクガクと震える(クローヌス)
- 尿が出にくい、間に合わないなどの排尿障害
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