ペインフルアークサインの実施方法・注意点と陽性所見
ペインフルアークサイン(Painful Arc Sign)は、肩を自分の力で挙げていく途中の特定の角度だけに痛みが出るかどうかを確認する、肩関節のスクリーニングテストです。
およそ60°〜120°の範囲でだけ痛みが出現し、その範囲を超えると痛みが軽くなるという現象を指します。痛みが出る角度の帯が弧(arc)のように見えることから、有痛弧徴候とも呼ばれます。
この角度帯では、上腕骨大結節と腱板が肩峰や烏口肩峰靭帯の下を通過します。腱板や肩峰下滑液包に炎症・損傷があると、この通過の瞬間に挟み込み(インピンジメント)が起こり、痛みとして現れます。
チェックできるのは主に次の病態です。
- 肩峰下インピンジメント症候群
- 腱板炎(特に棘上筋腱)
- 腱板断裂(部分断裂・完全断裂)
- 肩峰下滑液包炎
- 肩鎖関節(AC関節)の障害 ※終末域で痛む場合
ペインフルアークサインの実施方法
検査自体はシンプルですが、必ず患者自身の力で動かす「自動運動」で行う点が重要です。検者が持ち上げる他動運動では筋の収縮が起こらず、痛みが出にくくなります。
- 患者は立位または座位をとり、上肢を体側に下ろした状態(外転0°)から始める。
- 検者は患者の背面または側方に立ち、肩甲骨と体幹の動きが見える位置を確保する。
- 患者自身の力で、肩甲骨面に沿ってゆっくり最大挙上まで外転してもらう。
- 同じ経路でゆっくり下ろしてもらい、挙上時・下降時の両方を観察する。
- 痛みが出現した角度・消失した角度と、痛みの部位を記録する。

左右差を見るため、健側から先に実施すると患者が動きを理解しやすく、比較もしやすくなります。
陽性所見の判定基準
痛みが出る角度によって、疑われる病変の部位が変わります。「どこで痛むか」を角度とセットで記録することが鑑別の手がかりになります。
| 痛みが出る外転角度 | 判定 | 示唆される病態 |
|---|---|---|
| 約60°~120°で痛み、それを超えると軽減 | 陽性 | 肩峰下インピンジメント、腱板炎・腱板断裂・肩峰下滑液包炎 |
| 約170°~180°の終末域で痛み | 高位弧(陽性) | 肩鎖関節(AC関節)の障害 |
| 全可動域で痛む・挙上できない | 判定保留 | 広範囲腱板断裂、凍結肩、骨性病変などを鑑別 |
| 痛みなし | 陰性 | 肩峰下での挟み込みは考えにくい |
痛みの部位は、肩峰下の前外側であればインピンジメントや腱板病変、肩鎖関節の真上であればAC関節の障害を示唆します。関節の奥深くに感じる痛みの場合は、関節唇や上腕二頭筋長頭腱の病変も念頭に置きます。
実施時の注意点
偽陰性・偽陽性を減らすために、次の点に気をつけましょう。
- 必ず自動運動で行う。他動運動では痛みが誘発されにくく、偽陰性になりやすい。
- 代償動作を見逃さない。体幹の側屈、肩をすくめる動き(shrug sign)、肩甲骨の早期上方回旋が出ていると、痛みの角度を正しく評価できない。
- 痛みの部位を必ず確認する。肩峰下前外側か、関節の奥か、AC関節上かで鑑別が変わる。
- 外傷直後は避ける。骨折や脱臼が疑われる場合、急性炎症が強い場合は無理に実施しない。
- 左右を比較する。可動域制限や疼痛の程度は健側との差で評価する。
印刷して活用しよう
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ペインフルアークサイン
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