異常呼吸パターンの見分け方|波形と特徴を一覧で解説
主な異常呼吸パターンの一覧
| 呼吸パターン | 特徴 | みられやすい状態 |
|---|---|---|
| 正常呼吸 | 深さ・間隔が一定 | 安定した状態 |
| チェーン・ストークス呼吸 | 漸増→漸減→無呼吸を繰り返す | 心不全、脳障害、終末期など |
| クスマウル呼吸 | 深く大きい規則的呼吸 | 代謝性アシドーシス、糖尿病性ケトアシドーシスなど |
| ビオー呼吸 | 不規則な呼吸と無呼吸 | 中枢神経障害、髄膜炎、頭蓋内圧亢進など |
| 失調性呼吸 | 深さ・間隔ともに極めて不規則 | 延髄障害など重篤な状態 |
| 下顎呼吸(あえぎ呼吸) | 単発的で弱い呼吸 | 心停止前後、重度低酸素など |
※原因や病態はあくまで代表例であり、実際は全身状態を総合して判断します。
呼吸パターン別の見分け方
チェーン・ストークス呼吸

浅い呼吸から徐々に深く大きくなり、その後また徐々に浅くなって無呼吸に至る、という一連の流れを周期的に繰り返す呼吸です。
無呼吸の時間は数秒から数十秒に及ぶこともあります。
- 浅い呼吸から徐々に深くなる(漸増)
- ピークを過ぎると徐々に浅くなる(漸減)
- 途中で無呼吸をはさむ
- これを周期的に繰り返す
心不全や脳障害、終末期などでみられることがあります。
無呼吸の場面だけを見ると呼吸停止と紛らわしいため、1周期を通して観察し、漸増・漸減のパターンがあるかを確認することが見分けるポイントです。
クスマウル呼吸

深く大きい呼吸が規則的に続くのが特徴です。
呼吸困難でつらそうにあえいでいるというより、「深く速めの大きな呼吸が淡々と続く」印象になります。
- 1回換気量が大きく、深い呼吸
- リズムは規則的で、無呼吸をはさまない
- 本人が呼吸苦を訴えないこともある
代謝性アシドーシスや糖尿病性ケトアシドーシスなどでみられることがあります。
呼吸数がそれほど多くなくても深さが大きいため、回数だけを数えていると見逃しやすいパターンです。
ビオー呼吸

数回の呼吸のあとに無呼吸が入ることを繰り返す呼吸です。
呼吸の深さも間隔も不規則で、チェーン・ストークス呼吸のような滑らかな漸増・漸減がみられません。
- 深さも間隔も不規則
- 数回の呼吸のあとに無呼吸が入る
- パターンに規則性が乏しい
中枢神経障害、髄膜炎、頭蓋内圧亢進などでみられることがあります。
チェーン・ストークス呼吸との違いは「漸増・漸減があるかどうか」です。
深さがなだらかに変化していればチェーン・ストークス呼吸、急に始まって急に止まるようであればビオー呼吸を疑います。
失調性呼吸

呼吸の深さも間隔もばらばらで、まったく規則性がない呼吸です。
ビオー呼吸よりもさらに不規則で、次にいつ、どの程度の呼吸が来るのか予測できません。
- 呼吸の深さ・間隔ともにばらばら
- 非常に不規則で予測がつかない
- 重篤な中枢障害でみられることがある
延髄の呼吸中枢の障害など、重篤な状態でみられることがあります。
ビオー呼吸と失調性呼吸は文献によって定義や区分が異なることがあるため、記録に残す際は施設で使用している成書の用語・定義に統一すると混乱が避けられます。
下顎呼吸(あえぎ呼吸)

単発的で途切れ途切れの、弱く不十分な呼吸です。
口や下顎だけが動くように見えることから、下顎呼吸と呼ばれます。
- 単発的で途切れ途切れ
- 下顎呼吸のようにみえることがある
- 心停止前後や重度低酸素など、切迫した状態でみられる
ここで最も重要なのは、下顎呼吸を「呼吸がある」と判断してはいけないという点です。
見た目には胸や顎が動くため呼吸をしているように見えますが、有効な換気は行われていません。
心停止の初期にしばしばみられ、応援要請や胸骨圧迫の開始が遅れる原因になります。
反応がなく、正常な呼吸ではないと判断した場合は、施設の急変対応手順に沿ってただちに応援を要請します。
呼吸数・深さの異常
| 名称 | 状態 |
|---|---|
| 頻呼吸 | 呼吸数が増える(1回の深さは大きく変わらない) |
| 徐呼吸 | 呼吸数が減る |
| 浅呼吸 | 1回の呼吸が浅くなる |
| 過換気 | 呼吸数・深さがともに増加し、換気量が過剰になる |
数値は年齢や施設の基準によって幅があるため、絶対値そのものより「その患者さんの普段と比べてどうか」を重視して評価します。
呼吸パターンを観察するときのポイント
- 患者さんに意識させずに観察する:呼吸を数えていると伝えると呼吸が変化しやすいため、脈拍測定の流れなどで自然に観察します
- 1分間しっかり数える:15秒×4では、無呼吸や周期的な変動を見落とすことがあります
- 深さ・リズム・間隔をみる:回数だけでなく、胸郭の上がり方と呼吸と呼吸の間隔を確認します
- 無呼吸の有無と長さを確認する:無呼吸があれば、何秒続くかを記録します
- 努力呼吸の有無をみる:胸郭や肩の動き、陥没呼吸、鼻翼呼吸などを確認します
- 他のバイタルとあわせて評価する:意識状態、SpO₂、脈拍、血圧を組み合わせて判断します
- 経時的な変化を追う:普段と違う呼吸になっていないか、前回の観察と比較します
観察項目は、次の9点をセットで確認すると漏れがありません。
- 呼吸数
- 深さ・リズム
- 無呼吸の有無と長さ
- SpO₂
- 努力呼吸(陥没呼吸・鼻翼呼吸・肩呼吸など)
- チアノーゼ
- 意識状態
- 他のバイタルサイン(脈拍・血圧・体温)
- 普段の呼吸との比較
なお、呼吸状態が悪化しているときは、SpO₂の低下より先に呼吸数や呼吸努力が変化することがあります。
モニターの数値だけで安心せず、患者さんを直接見て評価することが大切です。
早めの報告につなげたい変化
次のような変化がみられた場合は、注意が必要なサインとして早めの報告を検討します。
- 新たに出現した呼吸困難や努力呼吸
- 呼吸数の急激な変化(増加・減少のいずれも)
- 無呼吸がみられる
- SpO₂の低下
- 会話が続かない、文章で話せない
- チアノーゼ、冷汗
- 意識状態の変化(呼びかけへの反応が鈍いなど)
報告基準は患者さんの状態や施設によって異なります。普段との変化と全身状態を確認したうえで、施設の基準に沿って対応してください。
判断に迷う場合は、抱え込まずに早めに相談することが安全につながります。
印刷して活用しよう
ここまで紹介した6つの呼吸パターンの波形イラストと特徴、観察のポイント、早めに報告したい変化を、A4サイズ1枚にまとめました。波形は文字だけでは伝わりにくいため、図で確認できるようにしています。
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異常呼吸パターン
正常呼吸を含む6つの呼吸パターンの波形イラストと特徴、観察のポイント、早めに報告したい変化をA4 1枚にまとめた早見表です。