訪問看護師が辞める理由とは?
高齢化が進み、在宅療養する人がどんどん増えてきており、訪問看護の需要も増加しています。
しかし、多くの訪問看護師さんが仕事を続けられずに悩む現状があります。
こちらの記事では、訪問看護師の離職率や辞める理由について解説していきます。
訪問看護師の離職率
神奈川県の2022年度(令和4年) 看護職員就業実態調査 によると、病院で働く看護師の離職率は 13.9%でした。
一方で訪問看護師の離職率は 18.1%で、訪問看護師の方が離職率が高いことがわかります。
参照:令和4(2022)年度 看護職員就業実態調査結果(訪問看護ステーション)
訪問看護師の辞めたい理由
令和2(2020)年度 看護職員就業実態調査結果(訪問看護ステーション)によると、訪問看護師の離職理由の上位3つは以下でした。
辞める理由 | 割合 |
---|---|
心身の不良 | 12.1% |
勤務負担の重さ | 9.0% |
職場の人間関係 | 8.4% |
参照:令和2(2020)年度 看護職員就業実態調査結果(訪問看護ステーション)
具体的な訪問看護師を辞めたい理由を以下で見ていきましょう。
身体的な負担
訪問看護は車や、自転車での訪問になります。
天候に関係なく訪問先に行かなければならないため、移動での疲れがたまりやすいです。
また、一人で患者さんの体を支えたり、医療機器を持ち運んだりするため、腰や肩への負担が大きいです。
病室とは違い、一般家庭の狭いスペースでの移乗や移動の介助は身体的負担が大きいと感じる方も多いでしょう。
1日に10㎞ほど自転車移動する日もありました。
精神的な負担
一人で患者さんのお宅を訪問するため、その場での判断をすべて自分で行わなければなりません。
「この症状は病院に連絡したほうがいいのだろうか」「この処置は今すぐ必要なのだろうか」など、常に緊張感を持って仕事をしています。
また、患者さんやご家族から、時には厳しい要望や苦情を受けることもあり、精神的なストレスが溜まりやすい環境です。
すぐに相談したいことがあったとき、他の看護師も同様に訪問の仕事をしているため、その場で相談しづらい環境でした。
勤務負担の重さ
一日に回る患者さんの数が多く、移動時間も含めるとかなりタイトなスケジュールになります。
訪問の合間に記録を書いたり、報告書を作成したりする事務作業も必要です。
また、予定外の対応が入ることも多く、定時に帰れないことがしばしばあります。
休憩時間も十分に取れないことが多く、体を休める時間が少ないのが現状です。
職場の人間関係
小規模な訪問看護ステーションが多いため、人間関係が密になりやすい環境です。
職場の雰囲気が良くないと、相談もしづらく、一人で悩みを抱え込んでしまいがちです。
また、経験の浅い看護師と熟練看護師の間で、考え方の違いが生じることもあります。
訪問看護は一人で行動することが多いため、職場での人間関係の悩みを解消する機会も限られています。
オンコールの負担
夜間や休日も、患者さんからの緊急連絡に備える必要があります。
突然の呼び出しで、睡眠が十分に取れないこともあります。「いつ呼び出されるかわからない」という精神的な負担も大きく、プライベートな時間の計画が立てにくい状況です。
特に、一人暮らしの高齢者や、医療依存度の高い患者さんを担当している場合は、より緊張感の高い待機となります。
結婚や育児との両立
不規則な勤務時間や急な呼び出しがあるため、家庭生活との両立が難しい環境です。
子どもの学校行事や急な病気にも対応しづらく、子育て中の看護師さんにとって大きな悩みとなっています。
また、夜間のオンコール対応があるため、子どもが小さいうちは仕事を続ける懸念点になるでしょう。
保育園の送り迎えの時間も考慮しなければならず、働き方の調整が必要になります。
自分の看護師スキルへの不安
病院と違って、訪問看護の現場では一人で判断・対応する場面がほとんどです。
しかし、多くの訪問看護ステーションでは教育体制が十分に整っていません。
特に経験の浅い看護師にとっては、不安な状況と考える方も多いでしょう。
また、小規模な事業所が多いため、勉強会や研修に参加する時間を確保が困難な場合もあります。
先輩看護師に相談したくても、訪問で忙しく、ゆっくり指導を受ける時間を作れないことも多いです。
このように、自分の看護スキルに不安を感じながら働き続けることは、大きなストレスとなり、離職理由の一つとなっています。
1度先輩の訪問につかせていただき、その後は一人で訪問することになりました。すぐに一人で訪問に行くことが不安でした。
訪問看護師を辞めたくなったら
人に相談する
悩みを抱え込まずに職場や家族、友人などに相談することが大切です。
人に話すことによって、自分の気持ちや思考の整理にもつながります。
休日にリフレッシュする
オンコールもあり、休日の自由度が少ない日もあるかと思いますが、休日にはしっかり体と心をリフレッシュすることが大切です。
辞めたい原因と向き合う
なぜ辞めたいと考えるのかを整理することで解決方法を導き出します。
自分自身のスキル不足による負担感や、心身の疲れの場合は、仕事に慣れることにより改善する場合や、相談をして職場の人と解決方法を探ることができる場合があります。
辞めたい原因が自分自身で改善できるものでない場合は、転職も一つの解決方法です。
神奈川県の看護職員就業実態調査結果によると、訪問看護ステーションを辞めた看護師のうち40.8%は、他の訪問看護ステーションに転職しています。(他病院や特養、老健と答えた人は38.1%)
たくさんの訪問看護ステーションがあるので、希望や条件を明確にすることで、自分に合う転職先を見つけられるよう準備しましょう。
参照:令和2(2020)年度 看護職員就業実態調査結果(訪問看護ステーション)