膝蓋腱反射・アキレス腱反射の評価方法と所見の見方

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膝蓋腱反射とアキレス腱反射は、神経学的所見を短時間で確認できる代表的な深部腱反射です。打腱器ひとつで反射弓の状態を評価でき、上位運動ニューロン障害と下位運動ニューロン障害の鑑別に役立ちます。

深部腱反射とは?

深部腱反射(DTR)は、腱を叩打して筋紡錘を急激に伸張させたときに、脊髄レベルで反射的に筋収縮が起こる現象です。

伸張された筋紡錘からの求心性インプットが脊髄後根に入り、前角細胞を介して同じ筋が収縮する「伸張反射」がその本体で、大脳を経由しないため意識的にコントロールできません。

反射弓は次の要素で構成されており、どこか一か所でも障害されると反射は減弱・消失します。

  • 受容器(筋紡錘)
  • 求心性線維(Ia群線維)
  • 脊髄の反射中枢(前角細胞)
  • 遠心性線維(α運動神経)
  • 効果器(骨格筋)

一方で、脊髄より上位にある錐体路は反射を抑制する働きを持っています。そのため脳卒中や脊髄損傷などで錐体路が障害されると抑制が外れ、反射は亢進します。

反射の左右差や上下肢での差を見ることで、障害されている高位を推定できるのが深部腱反射の大きな利点です。

下肢で最もよく用いられるのが、膝蓋腱反射(PTR)とアキレス腱反射(ATR)です。

項目 膝蓋腱反射(PTR) アキレス腱反射(ATR)
打腱部位 膝蓋骨下縁の膝蓋腱 踵骨付着部やや上のアキレス腱
正常反応 大腿四頭筋の収縮による膝関節伸展 下腿三頭筋の収縮による足関節底屈
責任髄節 L2〜L4(主にL4) S1〜S2(主にS1)
末梢神経 大腿神経 脛骨神経

膝蓋腱反射(PTR)の評価方法

膝蓋腱反射は大腿四頭筋の伸張反射で、L4髄節・大腿神経の機能を反映します。座位でも背臥位でも実施できるため、対象者の状態に合わせて選択します。

共通して重要なのは、膝関節が軽度屈曲位にあり、大腿四頭筋が完全に脱力していることです。

座位での評価手順

1
ベッドや椅子の端に腰かけてもらい、下腿を自然に下垂させる。足底が床につくと反射が出にくいため、床から離れる高さに調整する。
2
手を軽く大腿の上に置くよう促し、大腿四頭筋の力を抜いてもらう。
3
膝蓋骨の下縁を触知し、その直下にある膝蓋腱の位置を確認する。
4
手首のスナップを使い、打腱器で膝蓋腱を垂直に一定の強さで叩打する。
5
膝関節が伸展する反応の大きさと、左右差の有無を観察する。

背臥位での評価手順

臥床中の患者や、座位保持が難しい対象者では背臥位で実施します。検者が下肢の重さを支えることがポイントです。

1
背臥位で全身をリラックスさせ、膝を伸ばした状態にしてもらう。
2
検者の前腕を両膝窩の下に差し入れ、膝関節が軽度屈曲(30〜45度程度)する高さまで下肢を持ち上げて支える。
3
下腿の重さを完全に検者が支え、大腿四頭筋が脱力していることを確認する。
4
膝蓋腱を打腱器で叩打し、膝関節の伸展反応を観察する。
5
もう一方の下肢も同じ支え方・同じ強さで実施し、左右を比較する。

アキレス腱反射(ATR)の評価方法

アキレス腱反射は下腿三頭筋の伸張反射で、S1髄節・脛骨神経の機能を反映します。腰椎椎間板ヘルニアによるS1神経根障害や、糖尿病性末梢神経障害の初期の変化を捉える際に重視される反射です。

足関節をあらかじめ軽く背屈させ、アキレス腱に適度な張りをつくっておくことが重要です。

座位での評価手順

1
ベッド端に腰かけ、膝関節が約90度屈曲する高さに調整する。足部は床から離しておく。
2
検者は足底(母趾球あたり)を手掌で軽く支え、足関節をわずかに背屈させてアキレス腱に張りをつくる。
3
踵骨付着部よりやや近位のアキレス腱を触知する。
4
打腱器でアキレス腱を叩打し、足関節が底屈する反応を観察する。
5
反応が乏しい場合は、椅子の上で膝立ち位となり、足部を下垂させる方法でも確認できる。

背臥位での評価手順

1
背臥位で、評価する側の股関節を軽く外旋させ、膝関節を軽度屈曲位にする。反対側の下腿の上に足部を乗せる形(数字の4の字)でも実施できる。
2
検者は足底を手掌で支え、足関節を軽く背屈させてアキレス腱を伸張させる。
3
アキレス腱を打腱器で叩打し、足関節の底屈と下腿三頭筋の収縮を確認する。
4
反応が出にくいときは、足底に当てた検者の手指の上から叩打する方法もある。
5
左右で同じ肢位・同じ強さの叩打を行い、比較する。

反射の評価段階と記録方法

深部腱反射の強さは、「-」「±」「+」「++」「+++」と表記することが一般的です。左右差やクローヌスの有無も併せて記載します。

段階 所見 判定
反射消失(増強法を用いても出現しない) 異常
± 減弱(わずかに出現する) 正常〜異常
+ 正常な反応 正常
++ 亢進(やや過剰だがクローヌスはない) 正常〜異常
+++ 著明な亢進(クローヌスを伴う) 異常

1+や3+は健常者でも見られることがあるため、単独では異常と断定できません。左右差があるか、他の神経学的所見(筋力低下、感覚障害、病的反射)と一致するかを合わせて判断します。

所見の解釈

深部腱反射の異常は、大きく「反射を抑制する上位運動ニューロンの障害」と「反射弓そのものを構成する下位運動ニューロン・末梢の障害」に分かれます。

所見 推定される障害部位 代表的な疾患・病態
亢進 上位運動ニューロン(錐体路)の障害 脳梗塞・脳出血、脊髄損傷、頸髄症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)
減弱・消失 下位運動ニューロン・反射弓の障害 腰椎椎間板ヘルニア(神経根症)、糖尿病性末梢神経障害、ギラン・バレー症候群、脊髄前角の障害

高位の推定としては、膝蓋腱反射の低下・消失はL2〜L4(特にL4)、アキレス腱反射の低下・消失はS1の障害を示唆します。腰下肢痛を訴える患者でアキレス腱反射が片側だけ消失していれば、S1神経根の圧迫を疑う根拠になります。

反射亢進に加えて次のような所見が併存する場合は、錐体路障害の可能性が高まります。

  • 足クローヌス(足関節を急速に背屈させると律動的な底屈が続く)
  • バビンスキー反射などの病的反射が陽性
  • 痙縮による筋緊張の亢進
  • 反射域の拡大(叩打部位から離れた場所の刺激でも反射が起こる)

また、高齢者ではアキレス腱反射が生理的に低下していることがあり、加齢による変化と病的な減弱の区別には他の所見との照合が欠かせません。

正確に評価するためのポイント

深部腱反射は手技の影響を受けやすく、「出ない=異常」と即断できません。次の点を確認してから判定します。

  • 被検者が緊張していると反射は抑制される。
  • 叩打は手首のスナップを使い、左右で同じ強さ・同じ角度で行う。
  • 叩打する位置がずれると反応は出にくい。
  • 関節の肢位(膝の屈曲角度、足関節の背屈量)を左右でそろえる。
  • 反射が出にくいときは増強法を用いる。両手の指を鉤状に組ませ、左右へ強く引っ張らせた瞬間に叩打する。

印刷して活用しよう

膝蓋腱反射・アキレス腱反射の打腱部位、正常反応、責任髄節、肢位別の評価手順、評価段階、所見の解釈をA4サイズにまとめた資料を用意しました。実習やスタッフ教育、ベッドサイドでの確認用としてご活用ください。

膝蓋腱反射・アキレス腱反射

膝蓋腱反射・アキレス腱反射

膝蓋腱反射・アキレス腱反射の打腱部位と責任髄節、座位・背臥位での評価手順をA4サイズのPDFにまとめた資料です。実習やベッドサイドでの確認にご活用ください。

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