エリクソンの発達課題|一覧表と看護の関わり方
エリクソンの発達課題とは
エリク・エリクソンは、人間の発達を乳児期から老年期まで8つの段階に分け、各段階に「心理社会的危機」があると提唱しました。
危機を乗り越えることで「強さ(徳)」が獲得され、次の段階へと進みます。失敗しても取り返しがつかないわけではなく、後の段階で再び取り組むチャンスがあるとされています。
看護師にとってこの理論が重要なのは、患者の年齢・ライフステージに応じた心理的背景を理解し、その人に合ったケアと声かけができるからです。たとえば「なぜこの患者は治療を拒否するのか」「なぜ入院がこれほど辛そうなのか」という行動の背景を、エリクソンの枠組みで読み解けます。
8段階の覚え方(語呂合わせ)
順番と「獲得される強さ」をセットで押さえると、組み合わせを問う問題にも対応しやすくなります。
エリクソン8段階の覚え方
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①信乳児期基本的信頼vs 不信
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②自幼児前期自律性vs 恥・疑惑
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③自幼児後期自主性vs 罪悪感
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④勤学童期勤勉性vs 劣等感
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⑤同青年期同一性vs 役割混乱
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⑥親成人前期親密性vs 孤立
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⑦生成人後期生殖性vs 停滞
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⑧統老年期自我統合vs 絶望
各段階の特徴と看護師の関わり方

第1段階:乳児期(基本的信頼 vs 不信)/0〜1歳
生まれてから1歳ごろまでの時期です。養育者に一貫してニーズを満たされる経験が「世界は安全だ」という基本的信頼の形成につながります。入院中の乳児では、処置による痛みや親との分離が不信感を強める要因になります。
できる限り親が付き添える環境を整え、処置後はすぐにあやすことが大切です。処置は手早く行い、終わったら抱っこや声かけで安心感を回復させます。
第2段階:幼児前期(自律性 vs 恥・疑惑)/1〜3歳
1〜3歳ごろ、「自分でやりたい」という意志が芽生える時期です。過剰な制限や失敗への叱責が恥・疑惑の感覚を生みます。入院中は「できること」と「制限が必要なこと」を丁寧に区別します。
安全の範囲で「自分でできること」を残し、できた時に認める声かけが重要です。「ダメ」「やめて」より「こうやってみようか」という言い換えを意識します。
第3段階:幼児後期(自主性 vs 罪悪感)/3〜6歳
3〜6歳ごろ、自分で考えて行動しようとする時期です。「入院は自分が悪いことをしたから?」と感じやすい年齢でもあります。罪悪感を持ちやすい時期であることを念頭に置いてかかわります。
「病気はあなたのせいではない」と明確に伝えることが重要です。処置の説明はぬいぐるみや絵を使ってわかりやすく行い、「やってもいいよ」という選択肢を小さく作ります。
第4段階:学童期(勤勉性 vs 劣等感)/6〜12歳
6〜12歳ごろ、学校・友人関係を通じて「できる自分」を積み上げていく時期です。長期入院で学習や活動が制限されると劣等感が生まれやすくなります。
院内学級・リハビリ・ベッドサイドでの勉強支援など、何か「やり遂げる体験」を作ることが回復意欲にもつながります。小さな達成を具体的に言葉にして返します。
第5段階:青年期(同一性 vs 役割混乱)/12〜20歳
12〜20歳ごろ、「自分はどういう人間か」というアイデンティティを確立しようとする時期です。慢性疾患・障害・長期入院はこのプロセスを大きく揺さぶります。「病気の自分」と「本来の自分」の折り合いをどうつけるかという葛藤を抱えています。
押しつけでなく伴走する姿勢が重要です。「どう思う?」「どうしたい?」と本人の言葉を引き出し、自己決定を尊重します。プライバシーへの配慮も忘れずに。
第6段階:成人前期(親密性 vs 孤立)/20〜40歳
20〜40歳ごろ、恋愛・結婚・親友などの深い関係を築く時期です。入院・治療によってパートナーや友人との関係が損なわれることへの不安が大きくなります。
家族・パートナーを「一緒にケアを考える存在」として積極的に関わらせることが孤立感の予防になります。面会・電話の機会を確保し、関係が維持できるよう環境を整えます。
第7段階:成人後期(生殖性 vs 停滞)/40〜65歳
40〜65歳ごろ、次の世代を育て社会に貢献することに意味を見出す時期です。仕事・育児・介護と治療の両立に苦しむ患者が多い年代です。
「入院中も役割を果たせている」と感じられるよう、面会や電話・テレビ電話の活用を支援します。復職・社会復帰への具体的な見通しを一緒に考えることも重要です。
第8段階:老年期(自我同一性の統合 vs 絶望)/65歳〜
65歳以降、自分の人生全体を振り返り「これでよかった」と受け入れられるかどうかの時期です。後悔・喪失・死への恐怖が絶望につながることもあります。キューブラー・ロスの受容過程ともこの段階は重なります。
看護師は「人生の聴衆」として患者の語りに耳を傾けます。回想法的な関わりが自我統合を支えます。「よく生きてこられた」という姿勢で接することが尊厳を守ります。
臨床で活用するときのポイント
エリクソンの発達課題を現場で使う際に、押さえておきたい視点を整理しました。
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「今どの段階の課題に取り組んでいるか」を意識する
同じ「治療を拒否する」という行動でも、青年期の患者ならアイデンティティの問題、老年期の患者なら人生の統合という文脈で読み解く必要があります。
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年齢だけで段階を決めつけない
発達段階は年齢だけで決まらず、その人の経験・文化・環境によって前後します。「65歳だからこの段階のはず」ではなく、患者自身の言葉から今どこにいるかを探ります。
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「失敗=取り返しがつかない」ではない
ある段階で危機を乗り越えられなくても、後の段階で再び取り組むチャンスがあるとされています。過去の評価ではなく、今できる支援に目を向けます。
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家族・キーパーソンの発達段階も見る
成人後期の家族が仕事・育児・介護の板挟みになっているなど、支える側の課題を把握すると支援の設計が変わります。
他の発達理論との違い
混同しやすいため、それぞれが何に着目した理論なのかをセットで押さえておきます。
| 理論 | 段階数 | 着目するもの | 主な対象範囲 |
|---|---|---|---|
| エリクソン 心理社会的発達理論 |
8段階(乳児期〜老年期) | 各段階の「心理社会的危機」と、乗り越えて得られる「強さ(徳)」 | 生涯を通じた人格・対人関係の発達 |
| ピアジェ 認知発達理論 |
4段階(感覚運動期・前操作期・具体的操作期・形式的操作期) | 思考のしくみが段階的にどう変化するか | 乳児期〜青年期の「考える力」の発達 |
| ハヴィガースト 発達課題 |
6段階(乳幼児期〜老年期) | 各時期に達成すべき具体的な社会的課題 | 社会的役割の獲得 |
| キューブラー・ロス 死の受容過程 |
5段階(否認・怒り・取引・抑うつ・受容) | 死を告げられた人が受容に至るまでの心理過程 | 終末期の心理。エリクソン第8段階と重なる |
特に第8段階の老年期は、キューブラー・ロスの死の受容過程と重なる場面が多く、終末期看護では両方の視点を持つと患者の語りを理解しやすくなります。
印刷して活用しよう
8段階の内容を、年齢の目安・心理社会的危機・獲得される強さ・看護との関連の4軸で1枚にまとめました。
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エリクソンの発達課題
エリクソンの8段階の発達課題を、年齢・心理社会的危機・獲得される強さ・看護のかかわりの4軸で1枚にまとめた早見表です。国試対策の暗記にも、病棟での患者理解にもそのまま使えます。