320,000円 ÷ 30日 = 10,667円/日
看護師の転職と失業保険:知っておくべき基礎知識
看護の仕事は心身ともに負担が大きいため、転職の際にはいったん休養を取りながら、新たな職場を探したいと考える方も多くいらっしゃいます。
転職を考える際、気になるのが失業保険(正式名称:雇用保険)についてです。
この記事では、失業保険の基礎知識や申請方法を具体的な給付例を用いながら解説します。
失業保険(雇用保険)とは
失業保険は、労働者が失業した場合に、生活の安定と再就職を支援するための制度です。
主な給付内容には、求職者給付(基本手当など)、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付があります。
これらの給付を通じて、失業中の生活保障だけでなく、再就職やスキルアップの支援も行っています。
失業保険の受給資格
失業保険を受給するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
主な条件として、離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あることが挙げられます。
また、労働の意思および能力があり、積極的に求職活動を行っていることも求められます。
看護師の場合、正社員だけでなく、パートタイムやアルバイトでも一定の条件を満たせば被保険者になれます。ただし、雇用保険に加入していても、短期間で退職すると受給資格を得られない場合があるので注意が必要です。
失業保険の基本手当と受給期間、待期期間について
基本手当について
基本手当の日額は、離職時の年齢や賃金に応じて決定されます。
給付日数は、年齢、被保険者であった期間、離職理由によって異なります。
一般的に、離職前6か月の賃金の平均の50〜80%(年齢により異なる)が日額として支給されます。
年齢区分 | 上限額 | 下限額 |
---|---|---|
30歳未満 | 7,149円 | 2,171円 |
30歳以上45歳未満 | 7,935円 | 2,171円 |
45歳以上60歳未満 | 8,764円 | 2,171円 |
60歳以上65歳未満 | 7,487円 | 1,913円 |
参考:年齢別基本手当日額の上限額・下限額(令和6年8月1日改定)(厚生労働省)
給付額は離職時の年齢で決定され、受給期間中に年齢が変わっても変更されません。上記の上限額は賃金水準を元に年に1回(8月1日)に改定されます。
基本手当の給付日数
基本手当の給付日数は、離職時の年齢、被保険者であった期間、離職理由によって決められています。
自己都合退職であった場合は、給付日数は以下の表になります。
被保険者であった期間(注2) | 離職時の年齢 | 給付日数 |
---|---|---|
10年未満 | すべての年齢 | 90日 |
10年以上20年未満 | すべての年齢 | 120日 |
20年以上 | すべての年齢 | 150日 |
参考:一般の離職者(自己都合退職等)の給付日数(ハローワークインターネットサービス)
具体的な給付例(月給32万円、30歳、自己都合退職の場合)
月給32万円の30歳の看護師が失業した場合の基本手当を計算してみましょう。
日額の計算
基本手当日額の計算(30歳の場合、給付率は原則65%)
10,667円 × 65% = 約6,934円/日
30歳の上限額
7,935円 → 計算された日額(6,934円)は上限額(7,935円)を下回っているため、6,934円が基本手当日額
28日分の支給額の計算
6,934円 × 28日 = 194,152円/4週間
この金額が、失業中に4週間ごとに支給される基本手当の額となります。
この基本手当には課税されますが、一定の控除があるため、全額が課税対象となるわけではありません。実際の支給額は端数処理により若干異なる場合があります。
待機期間
失業保険の給付を受けるには、原則として以下の待機期間があります。
●基本的な待機期間
失業の認定を受けた日から7日間
●給付制限期間(自己都合退職の場合)
原則として2か月間
※直近5年間で自己都合退職を2回以上している方は3か月間
基本的な7日間の待機期間は全ての申請者に適用されます。
この期間中は失業状態であっても給付は行われません。
自己都合による退職の場合、基本的な待機期間に加えて2~3か月の給付制限期間が設けられます。
これは、安易な離職を防ぐためのものです。
ただし、健康上の理由、家族の介護の必要性、著しい労働条件の低下、ハラスメントなどの職場環境の問題といった正当な理由がある場合は、給付制限期間が短縮または撤廃されることがあります。
また、この期間中にアルバイトなどの短期的な仕事に就くことは可能です。
待機期間中の注意点
待機期間中も失業の認定を受けるために、定期的にハローワークに来所する必要があります。
また、この期間を利用して積極的に求職活動を行うことが推奨されます。
待機期間中の生活費については事前に計画を立てておくことが重要です。貯蓄や退職金を活用し、この期間をしのぐ準備をしておきましょう。
失業保険の申請手続き
失業保険の申請は、離職後に居住地のハローワークで行います。
ハローワークの開庁時間は自治体によって異なりますが、失業保険の申請は平日のみとなっていることがほとんどです。
申請時には以下の書類が必要となりますので、事前に準備しておきましょう。
●申請時に必要な持ち物
会社から受け取るもの
① 雇用保険被保険者証
雇用保険に加入したことの証明書。一般的には離職日に手渡しで渡されることや、離職票とともに退職後に自宅に郵送されることが多いです。紛失の場合も居住地のハローワークで再発行されます。
② 離職票-1、離職票-2
退職してから会社から本人宛に発行されます。離職票が手元に届くまでに1週間から10日程を有します。
自分で用意するもの
❶ マイナンバーカードまたは通知カード
➋ 運転免許証などの本人確認書類
❸ 写真2枚(縦3cm×横2.5cm)❹ 銀行通帳またはキャッシュカード(本人名義のもの)
これらの書類がそろっていないと申請手続きが滞る可能性があるので、漏れがないか確認してください。
離職票は手元になくても、失業保険の仮申請ができます。
早急に失業保険を受給したい人は、退職日の翌日以降、なるべく早めにハローワークに行きましょう。
給付までは待期期間があるので、速やかに申請に行けるようにしましょう。
再就職手当について
再就職手当は、失業給付を受けている方が、早期に安定した職業に就いた場合に支給される手当です。
支給残日数が多い段階で再就職するほど、より多くの手当を受け取ることができます。
支給要件と給付額
再就職手当を受け取るためには、安定した職業に就くことが必要です。
具体的には、雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇用される場合や、事業主として税務署に開業届を提出して事業を開始する場合が該当します。
また、待期期間及び給付制限期間が経過していることも要件となります。
支給額は、基本手当の支給残日数に応じて以下のように計算されます。
所定給付日数の2/3以上の支給残日数がある場合
基本手当日額 × 支給残日数 × 70%
所定給付日数の1/3以上~2/3未満の支給残日数がある場合
基本手当日額 × 支給残日数 × 60%
再就職手当を給付されるためには、はじめに失業保険の申請をしていなければなりません。
再就職手当は、再就職の旨をハローワークに報告後、一括で振り込まれます。
申請手続きと注意点
再就職手当の申請は、就職した日の翌日から1か月以内に行う必要があります。
申請の際には、雇用保険受給資格者証、採用証明書、雇用契約書などの写しが必要となります。
なお、再就職手当を受給した場合、その後の基本手当は支給されなくなります。
また、就職後1年以内に離職した場合は、原則として再就職手当の返還が必要となるため、慎重に検討することが重要です。
過去3年以内に再就職手当や就業促進定着手当の支給を受けたことがある場合も、再就職手当は支給されません。
詳しくはこちらの再就職手当の案内(厚生労働省)を参照ください。
よくある質問
A. 原則として受給できません。ただし、次の就職までに1か月以上空く場合は受給できる可能性があります。
A. 可能です。ただし、収入に応じて給付額が調整されます。
アルバイトが4時間以上の就労日は失業の日とカウントされず、収入制限を超えると基本手当が減額します。
また、週に20時間以上働く場合は失業保険は受給できません。
A. 適応障害と診断された場合でも失業保険を受給できます。
この場合は特定理由離職者扱いになるため、2か月間の待期期間はありません。
7日間の待期期間後に給付を受けることができます。
まとめ
失業保険は、慎重に時間をかけて転職活動をしたいという看護師を支える重要な制度です。
不明点がある場合は、必ずハローワークや専門家に相談しましょう。
転職先が決まっておらず、給付を受けたい場合は、必要物品を用意して早めに申請に行きましょう。
失業保険制度を上手に利用して、自分らしいキャリアを築いていってください!
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