理学療法士が教える廃用症候群のリハビリテーション 効果的なアプローチとは?

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廃用症候群は、長期の不動や活動低下によって引き起こされる深刻な機能障害です。

超高齢社会への突入と共に、廃用症候群の予防と効果的なリハビリテーションの重要性が高まっています。

私たちリハビリ職にとって、患者さんの早期回復と生活の質の向上は最大の目標です。

しかし、廃用症候群の複雑な症状に対し、どのようなリハビリプログラムを組み立てるべきか悩むことも少なくありません。

本記事では、廃用症候群に効果的なリハビリテーションから、患者さんのモチベーション維持のコツまで、現場ですぐに活用できる実践的な情報をお届けします!

理学療法士や作業療法士の方はもちろん、廃用症候群に関わるすべての医療従事者の方々にとって、本記事が日々の臨床実践の一助となれば幸いです。

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廃用症候群とは?

廃用症候群の定義と主な原因

廃用症候群は、長期的な不動や活動低下によって引き起こされる身体機能や精神機能の低下を指します。

発生原因として代表的なものには以下があります。

●長期入院や寝たきり状態
●骨折や手術後の安静
●慢性疾患による活動制限
●高齢者の生活不活発

これらの状況が継続することで、全身の機能低下が進行し、ADLの著しい低下を招きます。

廃用症候群により発生する症状と影響

筋力低下と筋萎縮

特に影響を受けやすい筋肉は、大腿四頭筋や臀筋群などの筋断面積が大きい筋肉です。

これにより、立ち上がり動作が困難になったり、歩行の安定性低下や歩幅の狭小化につながり、転倒リスクが高まります。

関節可動域制限

関節可動域の制限は、関節が動かされない状態が続くことで、関節内の組織が硬直し、可動域が狭まることから発生します。

特に肩関節、股関節、足関節が影響を受けやすく、筋力低下同様に立ち上がり動作や歩行困難につながったり、着替えや洗体動作にも支障をきたします。

心肺機能の低下

心肺機能の低下により軽い運動や歩行でも息切れや疲労を感じやすくなります。

特に重要なポイントは、心肺機能の低下が単に身体的な症状だけでなく、ADL全般や社会参加にまで影響を及ぼすという点です。

離床することだけでも負担が大きくなってしまうと、リハビリの進行も少しずつ進めていく必要があります。

骨粗鬆症の進行

骨粗鬆症の進行により、特に大腿骨や脊椎の骨折が発生しやすくなります。

筋力低下や筋萎縮によりバランス機能が低下している場合、転倒による骨折リスクも高まります。

骨折が生じてしまうとより活動が制限され、廃用症候群の進行を加速させます​。

認知機能の低下

認知機能の低下は、身体活動や外部からの刺激が減少することにより、脳の働きが鈍くなることで発生します。

これにより、記憶力や判断力が低下し、認知症のリスクが高まります。

また、認知機能の低下は、患者の自立度を著しく下げ、介護が必要な状態を引き起こすことが多いです。

うつ症状や意欲低下

うつ症状や意欲低下は、身体的な制約や社会的な孤立感から発生する精神的な問題です。

これにより、患者さんは日常生活への関心を失い、さらに活動が減少するという悪循環に陥ります。

うつ症状は、全体的な健康状態をさらに悪化させる要因となり得ます。

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廃用症候群に対するリハビリの重要性

早期からのリハビリテーション介入は、廃用症候群の予防と回復に極めて重要です。

機能低下の予防、合併症の予防、ADLの維持、社会復帰の促進などリハビリにより予防できることが数多くあり、回復においても加速が見込めます。

すでに廃用症候群による影響で何かしらの症状が発生していたり、ADLに支障をきたしている場合、その症状に対してリハビリを進めていくと同時に、廃用症候群の改善に向けたリハビリも行っていく必要があります。

リハビリによる効果的なアプローチ

関節可動域運動(ROM訓練)

ROM訓練は廃用症候群のリハビリテーションの基本です。

  • 他動ROM訓練から開始し、徐々に自動介助、自動運動へ移行
  • 各関節を生理的な動きの範囲内でゆっくりと動かす
  • 1日2-3回、各関節10-15回程度の反復を目安に実施
注意点

●疼痛の出現に注意し、無理な動きは避ける
●骨折や手術部位など、制限のある関節は医師の指示に従う
●関節の過伸展に注意し、適切なエンドフィールを確認しながら実施

筋力トレーニング

筋力トレーニングは、段階的に負荷を上げていくことが重要です。

  • 重力除去位での等尺性運動から開始
  • 徐々に抗重力位での運動へ移行
  • 自重負荷→軽い重錘→マシンの順で負荷を増加
  • 週3-5回、1セット10-15回を2-3セットを目安に実施
  • 2週間を目安に再評価し、負荷や回数を調整
注意点

●オーバーワークに注意し、疲労度を確認しながら実施
●呼吸を止めないよう指導(特に高齢者や心疾患患者)
●適切なフォームを維持し、代償動作に注意

有酸素運動

有酸素運動は、患者さんの心肺機能に合わせてベッド上、座位、立位で実施します。

● ベッド上

  • ペダリング運動
  • 上肢エルゴメーター

● 座位

  • エルゴメーター
  • ステッピング運動

● 立位

  • トレッドミル歩行
  • 平地歩行
注意点

●患者さんの状態や年齢、性別、基礎疾患を考慮し負荷を設定する
●リハビリの中止基準に注意し、修正Borgスケールの3~4を目安に行う
●まずは5分くらいから開始し、徐々に10分→15分へと時間を伸ばしていく

呼吸筋トレーニング

呼吸筋トレーニングは、廃用症候群患者さんの全体的な回復過程において極めて重要な役割を果たします。

呼吸筋トレーニングにより吸気筋、呼気筋の強化、ガス交換の効率化、労作時の息切れ改善など様々な好影響があります。

口すぼめ呼吸

  • 鼻から深く吸気し、口をすぼめてゆっくりと呼気をおこなう(吸気:呼気 = 1:2)
  • 1日3-4回、各セッション5-10分を目安に実施
  • 呼気時間を徐々に延長していく

横隔膜呼吸トレーニング

  • 仰臥位または座位で片手を胸部、もう片手を腹部に置き、腹部の手が上がるように深く吸気し、ゆっくりと口から呼気する
  • 1日3-4回、各セッション5-10分を目安に実施
  • 呼吸の深さと回数を徐々に増加していく

患者さんのモチベーションを維持するための工夫

廃用症候群の回復には長期的なリハビリの継続が必要なため、患者さんのモチベーション維持も重要な要素となります。

モチベーションを維持するためには様々な工夫が必要で、患者さんに合った方法を見つけていくのが重要です。

ここでは一例として、患者さんのモチベーションを維持するための工夫をご紹介します。

視覚的にフィードバックする

  • グラフや数値で進捗を可視化する
  • 写真や動画で変化を一緒に確認、フィードバックする

達成可能な小目標を設定する

  • 日単位、週単位、月単位で患者さん自身が達成感を得られる目標を設定する
  • 目標達成時の報酬システムの導入

リハビリに変化をつける

  • リハビリを実施する環境や器具、プログラムの内容を適宜変える
  • アプリやAI、テレビゲームなどを使い、リハビリに楽しさの要素を取り入れる

社会参加を促進する

  • 集団リハビリを活用し、気分転換や離床の機会を設ける
  • 屋外歩行やスタッフとの談笑などの機会を設ける

家族の協力を得る

  • 家族から励ましや精神的サポートをしてもらう
  • 面会時に家族と一緒にできる簡単なリハビリを提案する
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