シバリングとは筋肉を小刻みに震わせることで体温を保とうとする生理現象のことで、さまざまな原因によって引き起こされることがあります。
【現場で役立つ】シバリングの理解と適切な対応|身体に与える影響もまとめて紹介
身体が小刻みに震えている状態は、いわゆる「シバリング」が生じている状態です。
この症状は医療現場で働く医療職にとっては見慣れた光景かもしれませんが、その背景には複雑な生理学的メカニズムが働いています。
この記事ではシバリングとは何か、生じるメカニズムから身体に与える影響、適切な介入方法まで、看護の専門性を磨くための基本知識をご紹介します。
シバリングとは?医療職が知っておくべき基本知識

医療現場でしばしば遭遇するシバリングは、医療職にとって理解しておくべき重要な現象です。
特に術後の患者さんに見られる場合が多く、体温低下を防ぐための自然な反応として起こることが多いのですが、病的な状態が隠れていることもあります。
したがって、シバリングを見極めることは、医療職にとって必要不可欠なスキルと言えます。
この現象をきちんと理解し、迅速かつ適切な介入を行うためにも、生じるメカニズムや身体に与える影響を把握することが大切です。
シバリングが生じるメカニズム
シバリングは、体温が下降するとき身体を温めようとする反応として自然に起こる現象です。
具体的には、低体温時における体温維持のために、体内での代謝活動が活発化し、筋肉が収縮することで熱を作り出そうという行為がシバリングであり、これには自律神経系が大きく関わっています。
また、外科的手術による麻酔後などで見られるシバリングは、体の外部からの温度刺激や麻酔薬の影響によって自律神経のバランスが崩れることが引き金となって生じることがあります。
このような場合、筋肉の振動は体内のエネルギーを急速に消耗させるため、患者さんの負担が増大する可能性があります。
医療職としては、体温を正しく保つための経皮的な暖房方法や、必要に応じた医薬品の投与など、体温調節に配慮したケアが求められます。
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身体に与える影響
シバリングは省エネルギー機構の一環として機能しますが、それが激しい場合や長時間続く場合には、逆に患者さんの身体に負担をかけてしまう可能性があります。
例えば、筋肉の反復動作により、酸素消費率が増加し、心臓に過度なストレスをかけることがあります。
これにより、心筋虚血や不整脈などのリスクが高まったり、回復段階にある患者さんにとっては疲労感の増大や回復遅延の原因となることもありえます。
シバリングが身体に与える影響の一例 ▼
| 項目 | 変化 | 生理学的説明 |
|---|---|---|
| 骨格筋の収縮(熱産生) | ↑ 上昇 | 不随意の細かな筋収縮(シバリング)で熱産生が増加し、体温維持に寄与。 |
| 代謝率 | ↑ 上昇 | 全身代謝が亢進。基礎代謝に対して一時的に大きく上乗せされる。 |
| 酸素消費(VO₂)・CO₂産生(VCO₂) | ↑ 上昇 | 筋活動増加に伴い酸素需要と二酸化炭素産生が増える。 |
| 交感神経・カテコールアミン | ↑ 活性化 | 交感神経緊張が高まり、ノルアドレナリン等の分泌が増える。 |
| 循環(心拍数・血圧・心拍出量) | ↑ 上昇 | 交感神経活性化と代謝需要増により循環動態が上向く。 |
| 末梢血管トーン・皮膚温 | 収縮/低下 | 末梢血管が収縮して熱放散を抑制。皮膚温は下がり、四肢が冷たく感じる。 |
| 深部体温(コア温) | 維持・低下防止 | 熱産生↑と熱放散↓の相乗で重要臓器の体温低下を防ぐ。 |
| 代謝基質の利用 | 配分変化 | 軽度寒冷では脂質利用が中心、強い寒冷やシバリング強度↑で糖質利用が優位に。 |
| 非ふるえ熱産生(褐色脂肪) | 個人差 | 褐色脂肪の活動が低い人ほど、シバリング(筋由来熱産生)への依存が高い。 |
シバリングへの対応

シバリングを防ぐための予防的介入
シバリングを予防するためには、予防的な薬物投与だけでなく、室温の調節、暖かい衣類の提供、保温ブランケットの活用など、患者の身体を暖めるための対策が含まれます。
現在多くの医療現場で利用されている温水マットや空気で膨らます式の保温具、電気毛布などが、その具体的な道具です。
また患者さんの精神的な安心感を提供することも重要で、不安を和らげるための対話や説明が効果的です。
予防的介入は、少なからずシバリングの発生を低減させることができ、患者の全体的な回復をサポートします。
ただし、予防的介入を行う際には細心の注意を払う必要があります。
温度管理が十分でないと、低体温だけでなく高体温という別のリスクを生じさせてしまうこともあります。
またシバリングが生じている最中は、クーリングは行わないのが基本です。
人為的に体温を下げることは更なる体力の消耗や自律神経の乱れを起こす原因になりかねないので、シバリングが治まってから必要に応じてクーリングを行います。
適切な温度設定と患者さんの体温を定期的にチェックし、必要であれば調節を行いながら、最適な体温を維持していくことがシバリングにおいては大切です。
シバリング発生時の適切な介入
患者さんにシバリングが生じているときは、はじめにバイタルサインのチェックから始めます。
体温、心拍数、呼吸数、血圧の迅速な測定は、患者さんの身体がどのような状態にあるのかを把握するのに不可欠です。
体温の測定は定期的に実施し、その数値の変動を把握することが重要です。
またシバリング自体のアセスメント・観察も同時に行います。
症状の発生時刻と終了時刻、発生頻度や強度などを記録することも肝心です。
シバリングと同時に起こった他の身体反応や、行った介入の効果も記録しましょう。
次に、患者さんの最近の医療歴、薬の使用、既存の症状などの情報を踏まえたアセスメントを行います。
これらの情報を基に、必要なケアプランを迅速に立て、適切な対処を実施し、医師や他の専門職にその情報を提供する必要があります。
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まとめ
シバリングは、体温が下がる際に自然に起こる非自発的な筋肉活動であり、体を温めるための反応として発生します。
病的な状態が隠れている可能性もあるため、医療職にとってはシバリングの正確な理解と迅速な介入が必要です。
適切な介入には、バイタルサインのチェック、体温の定期的な測定、シバリング自体の詳細なアセスメントが必要です。
これにより患者の状態を正確に把握し、迅速にケアプランを立て、必要な対処を実施することができます。
初めてシバリングの症状を目の当たりにした際は、慌てず医師や他の専門職に報告し、連携しながら対応を心がけましょう。
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