セラピスト向け SOAPの書き方のコツと記入例

セラピスト向け SOAPの書き方のコツと記入例 イメージ

セラピストや医療従事者が患者さんの診療記録を整理し、効率的に情報を共有するための記録方法の一つがSOAPです。

SOAPは、Subjective(主観的情報)、Objective(客観的情報)、Assessment(評価)、Plan(計画)の頭文字を取ったもので、患者さんの症状や治療の経過を体系的に記録する際の枠組みとして広く使用されています。

具体的には、患者さんの自己申告(Subjective)による痛みの程度や気分の変化、医療従事者による検査値や観察データ(Objective)、その結果を基にした診断や症状の評価(Assessment)、そして今後の治療方針や目標(Plan)などを記載します。

とは言っても、SOAPを使うことのメリットが分かっていないと、書き方のコツもイメージすることができません。

まずはSOAPを使うことのメリットを理解した上で、記入例を参考にして書き方のコツを掴んでいきましょう。

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SOAPを使うことのメリット

SOAPを使ってカルテを記載することで、体系的な情報整理が可能になります。

SOAPは4つの要素に分けて情報を記録するため、患者さんの状態や治療の進捗を一貫して記録できます。

これにより、情報の漏れや重複を防ぐことができます。

次に、効果的な治療評価と計画が行えます。

主観的情報と客観的情報を基にした評価は、患者さんの問題点や治療効果を正確に把握するための重要な手段です。

また、休みの日の情報の引継ぎやコミュニケーションの向上にも繋がります。

SOAP形式で記載されたカルテは、他の医療スタッフとの情報共有がスムーズに行えるだけでなく、誰が見ても理解しやすいのが特徴です。

これらのメリットがあることで、問題点を可視化して考察する習慣が身についたり、リハビリ目標に向かって筋の通った考え方ができるようになります。

結果的に患者さんの為にもなるため、医療現場でSOAPが普及しているのはこれが理由の一つとも言えます。

それでは、SOAPの各要素の書き方のコツと、記入例について見てみましょう。

S:主観的情報の書き方のコツと記入例

「S」とは、患者さんから得られる主観的情報を記載する部分です。

これは患者さん自身の感じ方や意見、体験を表す部分で、具体的には、痛みの感じ方や日常生活での困りごと、リハビリの進捗感、最近の変化などが該当します。

Sを記載するときに意識するポイントはこちらです。

患者さんの言葉を尊重してそのまま記載する

Sを記載する際は、患者さんが表現した言葉をそのまま使用することが重要です。

例えば、患者さんが「歩くときに膝がズキズキするんだよね」と言った場合、そのまま「歩くときに膝がズキズキするんだよね」と記載します。

具体的な状況を記載する

患者さんの発した言葉をそのまま記載するだけでは、他の人が見たときに状況がわからないこともあります。

そのようなときは、患者さんの感じる症状や問題点について、具体的な状況を詳しく記載します。

例えば、患者さんが「膝が痛い」と表現した場合、セラピストであれば「時間帯はいつ?」「どんな動作をしたとき?」「痛みを表現するとどんな感じ?」など補足情報を取得すると思います。

そこで知り得た情報を「(朝起きた直後に)膝が痛い」と補足して記載してもいいですし、次に出てくるO(客観的情報)に疼痛に関する評価結果として詳細を記載しても問題ないです。

変化が分かるように記載する

リハビリによる変化や経過がわかるように、問題点となっていることに関するSのみを毎回記載するのも良い記載の仕方です。

「前回よりも痛みが減った」「膝の痛みが落ち着いたから少し歩きやすくなった」などの記載が該当します。

このように記載していくと、過去のカルテを見返したときに、Sを見て患者さん自身が感じている膝の痛みの変化が読み取れるようになります。

リハビリや入院生活に関する感想や希望を記載する

患者さんの中には、「膝が痛い」のように主訴がある人とそうではない人がいます。

その場合は、患者さんがリハビリに対して持っている感想や希望、入院生活に対して感じていることなどを記載します。

例えば、「ボールを使ったバランスの運動が難しかった」「今日の訓練は簡単だった」「隣のベッドの人の寝息がうるさくてあまり寝れなかった」などです。

これは治療や訓練を再考する際の大事な情報になりますし、入院生活のQOLを低下させないことにもつながります。

「お寿司が食べたい」「いい天気だね」などの発言をSに記載することは間違いではないですが、できるだけ問題点の改善に向けて変化や経過を追うことができる情報の方が望ましいです。

O:客観的情報の書き方のコツと記入例

「O」とは、セラピストが直接観察、測定、評価したデータや事実に基づく情報を記載する部分です。

具体的には、リハビリの評価結果、身体機能の変化、姿勢・動作分析、検査結果などが含まれます。

Oを記載するときに意識するポイントはこちらです。

具体的な数値や指標を記載する

リハビリの評価や測定結果を具体的な数値や指標で記載します。

関節可動域の測定結果、筋力テストの結果、歩行距離や歩行時間などが該当しますです。

リハビリ前後に測定したバイタルサインもここに記載しておくと、患者さんの平均的なバイタルサインが分かり、ちょっとした体調変化に気付けることもあります。

ROMを測定したのであれば、「ROM 肩屈曲(R/L):180°/160°、伸展(R/L):50°/35°」のように記載します。

筋力テストの結果であれば、「Quad(R/L):5/4、Ham(R/L):5/5」のように記載します。

Oにはあくまでも客観的情報のみを記載し、主観的な感想や意見、考察は記載しません。

観察した内容を詳細に記載する

具体的な数値、指標以外にも患者さんの動作や姿勢、反応など、観察した内容を記載します。

例えば、「右膝屈曲が前回の評価時よりも10°改善」「平行棒歩行を連続で3往復後、著明な息切れ、呼吸数の増加あり」「右IC~LRにかけて膝過伸展が生じる」といったような記載です。

実際には毎日新しい評価や測定をすることはないので、観察した内容の記載が多くなります。

治療や介入の実施内容を記載する

実施したリハビリの内容や介入方法を記載します。

例えば、「座位バランス訓練を10分間実施」「TMT-A、-B評価を実施」といったことを記載します。

これは代行時に、同じ訓練・アプローチをしてもらうための簡単な申し送りとしての役割も果たします。

治療や介入の実施内容だけを記載するというわけではなく、プラスして、それを観察して得られた情報や評価結果を記載すると、上記で紹介している内容も網羅した記載ができます。

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A:評価の書き方のコツと記入例

「A」とは、SとOの情報を基に患者さんの現状の問題点や進捗を考察し、評価・アセスメントを記載する部分です。

具体的には、患者さんの治療やリハビリの効果、現状の問題、次のステップへの提案などが含まれます。

Aを記載するときに意識するポイントはこちらです。

SとOを総合的に評価して記載する

主観的情報(S)と客観的情報(O)を統合して、患者さんの状態を総合的に評価します。

例えば、SとOにそれぞれ以下のように記載していたとしましょう。

S:「階段を降りるときに右膝が痛い」

O:「Quad(R/L):3/5」「階段降段時の右下肢立脚相において、右膝の屈曲制動が行えていない」

実際にはもっと詳細に、他にも色々と記載しているかもしれませんが、この情報を基にAを記載するとこのようになります。

A:「右内側広筋の筋力低下により階段降段時の右立脚相における荷重時に右膝関節の急激な屈曲が生じ、それに伴い右下腿外旋も生じている。この下腿外旋の増大により右膝蓋骨外側付近に疼痛が生じていると考えられる」

Aは自分の評価・アセスメントを記載する部分なので、正解も不正解もありません。

最初はこのAの部分を考えるのに時間がかかるかもしれません。

ですが繰り返しSOAPを使ってカルテを書いているうちに、筋の通った評価・アセスメントができるようになってきますので安心してください。

SとOを踏まえて一貫した評価・アセスメントになっているかどうかは常に心がけておく必要があります。

問題点や改善点を明確に記載する

現在のリハビリの進捗や問題点、改善点を明確に記載します。

例えば、「階段降段時の右立脚相における右下腿外旋は前回より改善しているが、右膝の疼痛が依然として課題である」といった記載です。

この場合、Oの部分にNRSで評価した疼痛の程度を記載しておくと、現時点での問題点と改善点が明確になります。

階段昇降訓練を開始してみたものの、まだ早かったと評価したのであれば、現時点で妥当な訓練、必要な訓練は何なのか進捗がわかるように記載するのも良い記載の仕方です。

リハビリの効果を記載する

リハビリの介入がどの程度効果を発揮しているかを記載します。

即時的に効果があった介入や学習が見られた動作などについて記載しておくと、次回のリハビリに活かすことができます。

例えば、「2動作歩行での階段降段よりも3動作歩行の方が右下腿外旋が減少し、一定リズムでの降段が行えている」といったような記載です。

これにより、3動作歩行の方が良いかどうかを次回のリハビリで再確認し、より考察を深めることができます。

P:計画の書き方のコツと記入例

「P」とは、今後の計画を記載する部分です。

前段階で行った評価(A)に基づいて、患者さんの治療やリハビリテーションの具体的な計画や次のステップを記載します。

具体的には、どのようなリハビリや治療を行うのか、頻度や期間、目標などが含まれます。

Pを記載するときに意識するポイントはこちらです。

具体的なリハビリ計画を記載する

具体的なリハビリの内容を記載します。

例えば、次に実施する訓練や治療の種類、方法、頻度などを書きます。

全てを記載すると膨大な量になりかねないですし、当日の状態を考慮しておこなう訓練もあるので、「右下肢筋力ex 10回×3セット」「Tcane歩行 100m×3回 + 歩行後の血圧変動の確認」など、最低限おこなう予定のリハビリを記載するのがよいでしょう。

短期的な目標や目標の変更があれば記載する

長期的な目標は初めに決めていると思いますので、短期的な目標設定があればそれを記載します。

例えば、「2週間後に歩行距離を500mに増やす」「1ヶ月後に介助なしで階段昇降をスムーズに行う」といった目標を記載します。

またカンファレンスや家族面談などで、最終的な目標が変更になった場合は、そのことについても記載しておきます。

患者さんや家族への指導内容を記載する

自宅でのエクササイズや生活上の注意点、セルフケアの方法など、患者さんに対する具体的な指導内容がある場合は、それを記載します。

例えば、「1日3回、自室で膝伸展exを続ける」「術部に熱感が生じたらアイスノンで冷やす」といったことが該当します。

最後に

SOAPを使うことのメリットは、問題点を可視化して考察する習慣が身についたり、目標に向かって一貫した考え方ができるようになることです。

ここまで色々と書き方のコツを紹介してきましたが、綺麗なカルテを書くことが目的ではなく、あくまでもセラピストとして正しい考察ができたり、それを習慣化することがSOAPの目的です。

これができれば、多職種との情報共有やカンファレンスでも自分の意見をしっかり伝えることができます。

勤務先によってSOAPの記載方法に特徴があったり、カルテ記載の時間がなく必要最低限のことしか記載しないこともあると思います。

そんなときでも、自分の治療はちゃんと一貫したものになっているのか、他人に説明を求められたら答えることができるのかということを念頭に置いて、日々の臨床にあたることが当たり前になれると素敵ですね。

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