TMT-A|注意障害の評価方法と年齢別カットオフ値
TMT-A(Trail Making Test Part A)は、1944年に米国陸軍が開発した神経心理学的検査のひとつです。用紙上にランダムに配置された1〜25の数字を、できるだけ速く正確に順番通りに線で結ぶ課題です。
主に以下の認知機能を評価します。
視覚的探索能力
用紙上から次の数字を素早く見つける力
注意の持続性
25個の数字を途切れずに追い続ける力
情報処理速度
視覚情報を処理して運動に変換する速さ
運動速度・協調性
ペンを正確に動かす力
TMT-Aは単独でも使用されますが、TMT-B(数字とひらがなを交互に結ぶ課題)と組み合わせて実施されることが多く、両者の所要時間の差(B-AまたはB/A比)から注意の切り替え能力をより詳細に評価できます。

TMT-Aの実施手順
TMT-Aを正確に実施するためには、以下の手順に従います。
- 環境の準備:静かで明るい環境を用意し、被検者を椅子に座らせ、机の上に評価用紙を置く
- 筆記具の準備:被検者にペン(鉛筆)を利き手で持たせる
- 教示の説明:「この用紙には1から25までの数字が丸の中に書いてあります。1から順番に、できるだけ速く線で結んでください」と伝える
- 練習試行の実施:練習用の用紙がある場合は実施し、被検者が課題を理解していることを確認する
- 計測開始:「始めてください」の合図とともにストップウォッチで計測を開始する
- 誤りへの対応:被検者が間違った数字に線を引いた場合は、すぐに誤りを指摘し、正しい数字に戻らせる(計測は止めない)
- 計測終了:25に到達した時点でストップウォッチを止め、所要時間(秒)を記録する
年齢別カットオフ値
TMT-Aの所要時間は年齢によって大きく異なります。以下は健常者における年齢別の平均値とカットオフ値(異常判定の目安)です。Tombaugh(2004)の研究データを基にまとめています。
| 年齢層 | 平均値(秒) | カットオフ値(秒) |
|---|---|---|
| 18〜24歳 | 22.93 | 40 |
| 25〜34歳 | 24.40 | 42 |
| 35〜44歳 | 28.54 | 50 |
| 45〜54歳 | 32.54 | 57 |
| 55〜59歳 | 35.10 | 63 |
| 60〜64歳 | 35.96 | 67 |
| 65〜69歳 | 39.14 | 75 |
| 70〜74歳 | 42.47 | 82 |
| 75〜79歳 | 50.81 | 101 |
| 80〜84歳 | 58.19 | 120 |
| 85〜89歳 | 73.22 | 147 |
カットオフ値を超えた場合は注意機能の低下が疑われますが、教育年数や検査環境など他の要因も考慮して総合的に判断する必要があります。
実施時の注意点
| 誤りの即時修正 | 被検者が間違った数字に線を引いた場合は、すぐに指摘して正しい位置に戻す。計測は中断せず続行する。 |
|---|---|
| 計測の正確性 | 所要時間はストップウォッチで正確に計測する。誤り修正にかかった時間も含めた合計時間が結果となる。 |
| 練習試行の実施 | 本試行の前に必ず練習試行を行い、被検者が課題を正しく理解していることを確認する。 |
| 教育年数の考慮 | 教育年数が少ない場合、数字の認識に時間がかかることがあるため、結果の解釈に注意が必要。 |
| 視覚・運動機能の確認 | 視力低下や上肢の運動障害がある場合、結果に影響するため事前に確認しておく。 |
| 再検査時の注意 | 練習効果が生じるため、経時的に評価する場合は一定の間隔を空けて実施する。 |
| TMT-Bとの併用 | TMT-Aのみでは注意の切り替え能力は評価できない。TMT-Bと併せて実施し、B/A比やB-A値を算出することで、より詳細な注意機能の評価が可能になる。 |
印刷して活用しよう
TMT-Aの評価用紙を印刷用PDFとして用意しました。1〜25の数字がランダムに配置されており、そのまま臨床で使用できます。下のフォームからダウンロードしてご活用ください。
TMT-A
TMT-A(Trail Making Test Part A)の評価用紙です。1〜25の数字を順番に線で結ぶ注意機能の検査に使用できます。