TMT-B|注意障害の評価方法と年齢別カットオフ値
TMT-B(Trail Making Test Part B)は、注意障害や遂行機能障害を評価するための代表的な神経心理学的検査です。
高次脳機能障害のスクリーニングやリハビリテーションの効果判定に広く活用されています。
TMT-Bとは
TMT(Trail Making Test)は、1944年に米国陸軍が開発した神経心理学的検査で、現在では世界中の臨床現場で広く使用されています。TMTにはPart AとPart Bの2種類があり、それぞれ異なる認知機能を評価します。
TMT-Aは、ランダムに配置された数字(1〜25)を順番に線で結ぶ課題です。主に視覚的探索能力や処理速度を評価します。一方、TMT-Bは数字(1〜13)とひらがな(あ〜し)を「1→あ→2→い→3→う…」のように交互に結ぶ課題で、注意の分配・切り替え能力(セットシフティング)を評価します。
TMT-Bの所要時間がTMT-Aに比べて著しく延長している場合、注意の切り替え障害や遂行機能障害の存在が示唆されます。B/A比(TMT-Bの所要時間÷TMT-Aの所要時間)も重要な指標で、一般的にB/A比が2.5〜3.0を超えると前頭葉機能の低下が疑われます。

TMT-Bの実施手順
TMT-Bは以下の手順で実施します。正確な評価のために、手順を遵守することが重要です。
- 検査用紙を被検者の正面に置き、ペンを渡します。検査用紙は動かさないよう指示します。
- 「この用紙には数字とひらがなが書かれています。数字とひらがなを交互に、1→あ→2→い→3→う…の順番で線を引いてください」と教示します。
- 練習試行を実施します。被検者が課題の意味を十分に理解したことを確認してから本試行に進みます。
- 「できるだけ速く、正確に行ってください。では始めてください」と告げ、ストップウォッチで計測を開始します。
- 被検者が誤りを犯した場合は、すぐにその場で指摘し、正しい位置から再開させます。誤りの指摘中も時間計測は止めません。
- 最後の「し」に到達した時点でストップウォッチを止め、所要時間(秒)を記録します。エラー数も記録します。
年齢別カットオフ値
TMT-Bの所要時間は年齢によって大きく異なります。以下は日本版TMT-Bの年齢別目安値です。カットオフ値を超える場合は注意障害や遂行機能障害の可能性が考えられ、詳細な評価が推奨されます。
| 年齢層 | 平均値(秒) | カットオフ値(秒) |
|---|---|---|
| 20〜29歳 | 約50〜70 | 90 |
| 30〜39歳 | 約55〜75 | 100 |
| 40〜49歳 | 約60〜85 | 120 |
| 50〜59歳 | 約70〜100 | 140 |
| 60〜69歳 | 約90〜130 | 180 |
| 70〜79歳 | 約120〜170 | 240 |
| 80歳以上 | 約150〜210 | 300 |
※上記の値は複数の研究報告に基づく目安です。使用する版(原版・日本版)や施設によって基準値が異なる場合があります。実際の臨床判断では、施設で採用している標準値を優先してください。
実施時の注意点
TMT-Bを正確に実施するために、以下の点に留意してください。
- 検査環境は静かで集中できる場所を確保し、十分な照明のもとで実施します。
- 検査用紙は被検者の正面に置き、用紙を回転させないよう指示します。利き手でペンを持たせてください。
- 練習試行を必ず行い、被検者が課題を正しく理解していることを確認してから本試行に進みます。
- 誤りがあった場合はすぐに指摘して正しい位置に戻しますが、時間計測は止めません。誤りの回数も記録します。
- 視力や上肢の運動機能に問題がある場合は、検査結果の解釈に注意が必要です。運動障害の影響を除外するため、TMT-Aとの比較(B/A比)を活用します。
- 再検査を行う場合は練習効果を考慮し、少なくとも数週間以上の間隔を空けることが望ましいとされています。
- TMT-Bの結果は単独で判断せず、TMT-Aやその他の神経心理学的検査と組み合わせて総合的に評価します。
印刷して活用しよう
以下のTMT-B評価用紙は、数字(1〜13)とひらがな(あ〜し)がランダムに配置されています。印刷してそのまま臨床で使用できます。下のフォームからPDF版をダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
TMT-B
TMT-B(Trail Making Test Part B)の評価用紙です。数字とひらがなを交互に結ぶ課題で、注意の切り替え能力や遂行機能を評価できます。