薬剤師レジデントのデメリット6つ|給与差の試算と修了後のキャリア
病院で臨床を学べる薬剤師レジデントに興味はあるものの、「給料が安い」「修了後の就職が不安」という声を聞いて迷っていませんか?
薬剤師レジデントのデメリットは、研修手当の水準、雇用期間の区切り、修了後の進路が保証されない点に集中しています。
この記事では、デメリット6つを整理したうえで、公開されている募集要項をもとに給与差を2〜3年の累計で試算し、修了後のキャリアと研修先の選び方まで紹介します。
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薬剤師レジデント制度とは?

薬剤師レジデント制度は、薬剤師免許を取ったあと、病院で給与を受けながら1〜3年ほど体系的な臨床研修を受ける仕組みです。 医師の臨床研修とは違い、法律で定められた制度ではなく、各病院が独自に運営しています。
病院で2〜3年かけて研修する仕組み
薬学部が6年制になってから、大学病院などの一部の中核病院が、通称「薬剤師レジデント制度」と呼ばれる研修を始めました。 2014年には日本薬剤師レジデント制度研究会が立ち上がり、40以上の病院が参加しているとされています。
研修内容の標準化に向けて、厚生労働省は2024年3月に「薬剤師臨床研修ガイドライン」を公表しました。 ガイドラインでは、研修期間を原則1年以上とし、調剤業務3か月程度・病棟業務6か月程度・在宅訪問を必修にしています。
2026年度も厚生労働省の調査検討事業が続いていて、複数の病院や薬局が連携して研修する「研修施設グループ」の構築などが検討されています。
制度は整備の途中で、ガイドラインに沿った研修を受けられるかどうかは病院ごとに確認が必要です。
正規職員との雇用形態の違い
レジデントは「研修期間が決まった雇用」である点が、期間の定めなく働く正規職員との大きな違いです。 身分は病院によって異なり、常勤職員として採用する病院もあれば、非常勤職員や時給制で採用する病院もあります。
同じ「レジデント」という名前でも、給与・賞与・退職金の扱いを正規職員と別の規程で決めている病院があります。 応募前に、募集要項の「身分」「処遇」欄で雇用形態を必ず確かめておきましょう。
同じレジデントでも、病院ごとに身分がバラバラなんだね
参考:厚生労働省「薬剤師臨床研修ガイドライン」 / 厚生労働省「令和6年度薬剤師臨床研修の効果的な実施のための調査検討事業 報告書」
薬剤師レジデントのデメリット

薬剤師レジデントのおもなデメリットは次の6つです。 どれも「すべての病院に当てはまる」わけではなく、病院ごとの条件しだいで重さが変わります。
- 給与が正規職員より低い
- 雇用期間が限られている
- 修了後の就職が保証されない
- 研修プログラムの質に差がある
- 手当や福利厚生がつかない場合がある
- 同期より実務の開始が遅れる
給与が正規職員より低い
レジデントの給与は、正規職員の給与表ではなく、研修者向けの規程や時給で決めている病院があります。 たとえば筑波大学附属病院の薬剤師レジデントは、1年目が時給1,500円、2年目が時給1,600円です。
ただし、すべてのレジデントが低いわけではありません。 国立がん研究センターのように月額30万円台を支給する病院もあり、「レジデント=給料が安い」と一律には言えません。 具体的な金額の差は、次の章で試算しています。
雇用期間が限られている
レジデントは研修期間が終われば雇用も区切られるのが基本です。 筑波大学附属病院では任期が1年ごとの更新で最長2年とされています。
研修の後半には、修了後の就職活動を研修と並行して進める必要があります。 同じ時期に新卒で入職した人より、早い段階で「次の職場」を考えることになります。
修了後の就職が保証されない
研修先の病院にそのまま採用される保証はありません。 修了後の採用枠を設けている病院でも、採用試験を受けて選ばれる形をとる場合があり、全員が残れるとは限りません。
研修先に残れない場合は、他の病院や薬局へ移ることになります。 希望の病院に欠員が出るタイミングと修了時期が合うとは限らない点も、不安の種になりやすいです。
薬剤師の求人を探す研修プログラムの質に差がある
レジデント制度は各病院が独自に作っているため、研修期間・ローテーションする部署・研究指導の有無などがそろっていません。
厚生労働省の事業でも、診療科が限られている、マンパワーが足りないなどの理由でガイドラインに沿った研修を提供しにくい施設があることが課題に挙げられています。
| 病院 | 期間 | 特色 |
|---|---|---|
| 国立がん研究センター(中央・東) | 3年 | がん医療に関わる病院薬剤業務が中心 |
| 京都大学医学部附属病院 | 2年 | 臨床研究の立案・実施まで行う |
| 筑波大学附属病院 | 1年+1年 | 初期研修で調剤室・ICU・手術室などを回る |
| 福岡徳洲会病院 | 1〜2年 | へき地・離島医療も学ぶ |
見学会や説明会で、ローテーション表や指導体制を見せてもらえるかどうかで、ある程度は見分けられます。 確認するポイントは、記事後半の「研修先を選ぶときの確認ポイント」でまとめています。
手当や福利厚生がつかない場合がある
時給制や非常勤の身分では、正規職員と同じ手当や福利厚生がつかない場合があります。 筑波大学附属病院の募集要項では、各種手当は通勤手当・時間外勤務手当などで、退職金は「なし」と明記されています。
一方で、非常勤でも賞与や住宅手当を支給する病院もあり、身分だけでは判断できません。 賞与・退職金・住宅手当・宿舎の4つは、募集要項で一つずつ確認しておきましょう。
- 薬剤師求人の66%が「賞与・ボーナスあり」
- 「退職金制度あり」は57%
- 「住宅補助あり」は23%にとどまる
同期より実務の開始が遅れる
レジデントも薬剤師として働きますが、2〜3年間は「研修者」の立場で、決まったローテーションに沿って部署を回ります。
そのため、病院や薬局に正規職員として就職した同期と比べると、一つの部署を任される時期や昇給・役職のスタートが遅れやすいです。
病院側も「1年では足りない」と考える傾向があり、研修期間が長いほど、正規職員としてのスタートは後ろにずれます。
2〜3年の遅れって、やっぱり気になっちゃうよね
参考:筑波大学附属病院「薬剤師レジデントプログラム」 / 厚生労働省「令和8年度薬剤師臨床研修の効果的な実施のための調査検討事業の実施について」
給与の差は2〜3年でいくらになる?

「給料が安い」かどうかは、比べる相手と期間で大きく変わります。 公開されている募集要項の金額と、医療キャリアナビ掲載求人の月給を使って、2〜3年の累計でどのくらい差が出るかを試算しました。
レジデントの研修手当の相場
研修手当は病院ごとの差が大きく、「相場は〇円」と一つの数字では言えません。 募集要項で金額を公開している病院を見ると、月額20万円前後から30万円台まで幅があります。
| 病院 | 身分 | 給与 | 賞与・手当など |
|---|---|---|---|
| 国立がん研究センター | 常勤職員 | 月額 302,300円2年目305,600円・3年目310,200円 | 賞与 年1か月分/住居手当 最大28,000円 |
| 福岡徳洲会病院 | 非常勤職員 | 月額 238,950円 | 賞与 年2回/住宅手当 上限24,000円・家族手当 |
| 筑波大学附属病院 | 時給制 | 時給 1,500円2年目1,600円(月約21万〜22.4万円の試算) | 退職金なし/宿舎利用可(空き状況による) |
| 京都大学医学部附属病院 | 特定有期雇用 | 月額 約26.9万円6年制大学卒の場合 | 期末勤勉手当/住居手当・扶養手当など |
身分が非常勤でも賞与や住宅手当がつく病院があり、月額だけでなく手当まで含めて比べるのがおすすめです。 金額は年度ごとに改定されることがあるため、応募する年度の募集要項で確認しましょう。
病院の正規職員との差
医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)を見ると、薬剤師の病院求人(正社員)の月給中央値は300,500円です。 この金額と各病院のレジデント給与を、賞与や手当を除いた月給だけで2年間積み上げて比べました。
筑波大学附属病院(時給を月20日・実働7時間で月給に換算した試算)では約200万円、福岡徳洲会病院では約148万円、京都大学医学部附属病院では約76万円の差になります。
一方、国立がん研究センターは病院求人の中央値とほぼ同じ水準で、2年間の月給合計はわずかに上回ります。
病院求人の月給には経験者向けの求人も含まれるため、新卒で入職した場合の実際の差はこれより小さくなる可能性があります。 「最大でこのくらい」という目安として見るのがおすすめです。
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調剤薬局・ドラッグストアとの差
医療キャリアナビ掲載の調剤薬局求人(正社員)の月給中央値は365,000円で、病院求人より6.5万円ほど高めです。 同じ方法で2年間の月給合計を比べると、差は筑波大学附属病院の試算で約355万円、福岡徳洲会病院で約303万円、京都大学医学部附属病院で約230万円、国立がん研究センターで約147万円です。
研修期間が3年の国立がん研究センターでは、3年間の月給合計で約212万円の差になります。 ドラッグストアは当サイトの掲載求人が少ないため、数値での比較はしていません。
応募先の候補にある場合は、各社の募集要項の初任給で同じように計算してみましょう。
病院薬剤師全体の給与水準については、以下の記事で詳しく紹介しています。
差額をどう判断するか
試算した差額は、2〜3年分の「研修費用」と考えると判断しやすくなります。 その費用で得られる経験が、自分のキャリアにとって見合うかどうかを比べましょう。
住居手当や宿舎がある病院では、家賃の負担が減るぶん実質的な差は小さくなります。
奨学金の返済がある場合は、研修期間中の手取りで返済と生活費をまかなえるかを先に計算しておくと安心です。
「安い」じゃなくて「いくら差が出るか」で考えるのが大事だね
参考:国立がん研究センター「2027年度(令和9年度)薬剤師レジデント募集要項」 / 福岡徳洲会病院「2027年度 福岡徳洲会病院 薬剤師レジデント 募集要項」
レジデント修了後のキャリア

修了後の進路は、研修先への採用、他の病院への就職、薬局や企業への転職、大学院への進学などに分かれます。 どの道を選ぶにしても、研修1年目の終わりごろから進路を考え始めると動きやすくなります。
研修先にそのまま採用される場合
修了後の採用枠を用意している病院では、研修中に採用試験を受けて残る道があります。 京都大学医学部附属病院では、修了後の進路として当院での雇用(任期付き正職員)を挙げており、採用試験は2年目の4月に実施するとしています。
福岡徳洲会病院のように、募集要項に「修了後、当院優先採用あり」と書いている病院もあります。
このように採用後も「任期付き」の場合があり、雇用形態は改めて確認が必要です。
他の病院へ移る場合
研修先に残らない場合は、他の病院の中途採用に応募することになります。 修了の時期に合わせて、希望の病院が薬剤師を募集しているとは限りません。
希望する病院がある場合は、研修2年目に入るころから募集の状況を見ておくと、選択肢を逃しにくくなります。
薬剤師の求人を探す薬局・企業へ移る場合
病棟業務や多職種連携の経験は、在宅医療に力を入れる薬局や、医療機関とのやりとりが多い職場でも生かせます。 製薬企業や治験関連の仕事に進む人もいますが、企業の採用では臨床経験に加えて、その職種で求められる経験やスキルも問われます。
薬局と病院では給与水準も業務も違うため、職場ごとの特徴を比べてから決めるのがおすすめです。
転職市場でレジデント経験がどう評価されるか
レジデント経験の評価を示した公的な統計はなく、評価は応募先や伝え方によって変わります。 「2〜3年の研修」だけでは伝わりにくいため、何をどれだけ経験したかを具体的に示すことが大切です。
- ローテーションした部署と期間
- 担当した病棟の診療科と患者さんの数
- チーム医療(感染制御・がん化学療法など)への参加
- 学会発表や臨床研究の実績
- 取得した認定や、要件を満たしつつある資格
研修期間を「遅れ」ではなく「同期より幅広い部署を経験した期間」として説明できれば、病院の中途採用ではプラスに受け取られやすくなります。
経験を具体的に話せれば、2〜3年はちゃんと強みになるよ!
参考:京都大学医学部附属病院薬剤部「薬剤師レジデント研修の概要」 / 京都大学医学部附属病院薬剤部「2027年度 京都大学医学部附属病院 薬剤部 薬剤師レジデント募集要項」
デメリットを踏まえても得られるもの

給与や雇用の面で不利な点があっても、レジデントを選ぶ薬剤師がいるのは、短期間で幅広い臨床経験と指導を受けられるからです。
病棟業務を体系的に経験できる
レジデントは、調剤室・病棟・手術室・集中治療室などを決まった期間ずつ回ります。 配属先によって経験できる部署が限られる働き方と比べ、最初の2〜3年で複数の診療科の病棟を経験できるのは大きな違いです。
たとえば京都大学医学部附属病院では、病棟を約3か月ずつローテートし、持参薬確認・服薬指導・退院時指導などを担当します。
筑波大学附属病院では、2年目に抗菌化学療法・がん治療・腎・自己免疫疾患などのコースに分かれ、専門・認定薬剤師の指導を受けながら病棟業務を経験します。
いろんな病棟を回れるのは、レジデントならではだね!
専門・認定資格の要件を満たしやすい
専門薬剤師の資格には、研修施設での研修歴や学会発表、論文などの要件があります。 日本医療薬学会の医療薬学専門薬剤師では、学会が認定する研修施設で1年以上の研修歴があることが要件の一つです。
京都大学医学部附属病院や筑波大学附属病院のように、学会の研修施設認定を受け、研修の中に学会発表や臨床研究を組み込んでいる病院もあります。
レジデント期間が要件のどこに数えられるかは資格ごとに違うため、目指す資格が決まっている場合は応募前に確認しておきましょう。
専門薬剤師の種類や取得のメリットは、以下の記事で紹介しています。
症例数と指導体制が確保されている
厚生労働省の事業の調査では、レジデント制度を実施する病院は、ほかの病院と比べて病床数・薬剤師数の平均がもっとも多い結果でした。
指導する側の要件を決めている病院もあり、筑波大学附属病院では、病院での臨床経験5年以上・2年以上の指導経験・認定薬剤師などの資格をすべて満たす薬剤師を指導薬剤師としています。
決まった指導者がつき、評価の基準もある環境で基礎を固められるのは、レジデントならではの利点です。
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研修先を選ぶときの確認ポイント

デメリットの重さは研修先しだいで変わるため、応募前に次の4点を確認しておきましょう。 厚生労働省の事業で作られた募集要項のひな形でも、研修者の身分・処遇や研修を行う場所などを明示するよう示されています。
修了生の進路が公開されているか
修了生がどこに就職したかは、研修の成果を知る手がかりになります。 研修先への採用人数、他の病院・薬局・企業へ進んだ人数を、説明会や見学会で聞いてみましょう。
進路を具体的に答えられる病院は、修了後のキャリアまで含めて支援している可能性が高いです。
自分に合うかどうか、いろんな病院を比べて考えたいよね
ローテーションする診療科の範囲
ローテーションする部署・病棟と、それぞれの期間を確認します。 ガイドラインで必修とされる在宅訪問を、連携する薬局で経験できるかどうかも確認しておくと、プログラムの質を比べやすくなります。
| 確認したいこと | 見る欄 | 書かれていなければ |
|---|---|---|
| 部署・病棟の範囲 | 研修実施場所・期間 | 見学会でローテーション表を見せてもらう |
| 在宅訪問の研修 | 研修協力施設(薬局) | 連携する薬局があるかを聞く |
| 指導体制 | 管理体制・指導薬剤師 | 指導薬剤師の人数と担当の決め方を聞く |
| 給与・待遇 | 研修者の身分・処遇 | 年収の目安と賞与の有無を聞く |
研修手当と福利厚生の内容
月給(時給)・賞与・住居手当・宿舎・退職金・社会保険の有無を、募集要項で一つずつ確認します。 金額が公開されていない場合は、説明会で年収ベースの目安を聞いておくと、他の就職先と比べやすくなります。
修了後の採用枠があるか
修了後の採用枠の有無、採用試験の時期、採用後の雇用形態(任期の有無)を確認しましょう。 「優先採用あり」と書かれていても、人数や条件は年度によって変わるため、直近の実績を聞いておくと安心です。
向いている人・向いていない人の目安
- 向いている人:病棟業務や専門資格を早い段階で目指したい
- 向いている人:2〜3年の給与差を家計で吸収できる
- 別の道が合うかもしれない人:早く収入を安定させたい
- 別の道が合うかもしれない人:在宅や地域の薬局で経験を積みたい
まとめ
薬剤師レジデントのデメリットは、給与・雇用期間・修了後の進路・プログラムの質に集中しています。 ただし、条件は病院によって大きく違い、「給料が安い」も一律ではありません。
この記事のポイント
- レジデントは法律で定められた制度ではない
- 研修手当は月20万円前後から30万円台まで幅がある
- 月給が低めの病院では2年で約150万〜350万円の差
- 研修先への採用は保証されず、任期付きの場合もある
- 修了生の進路と採用枠は応募前に確認する
まずは気になる病院の募集要項を並べて、給与差と得られる経験を比べてみましょう。 レジデントと正規職員のどちらが合うか迷うときは、転職エージェントに相談すると、病院や薬局の求人条件を横並びで比べてもらえます。


