試用期間とは?期間の目安と給与・社会保険の扱い、解雇や退職のルール
求人票に「試用期間3か月」と書かれていても、その間の給与や社会保険、途中で辞めたくなったときの扱いまではよく分からないものです。
試用期間とは、入職後に働きぶりや適性を見て本採用するかを判断する期間のことで、期間中も労働契約は成立しています。
この記事では、試用期間の意味と期間の目安、給与・社会保険・有給休暇の扱い、本採用拒否や退職のルールを、法令と厚生労働省の資料をもとに紹介します。
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試用期間とは?

試用期間は、入職後に働きぶりや適性を確かめ、本採用するかどうかを判断するための期間です。 病院やクリニック、介護施設などの医療・福祉の職場でも、正職員の採用で設けられることがあります。
法律上の名称ではありませんが、労働基準法には「試の使用期間」という言葉で登場します。
試用期間を設ける目的
面接や書類だけでは、実際の仕事ぶりや職場との相性までは分かりません。 そこで職場は、一定期間働いてもらったうえで本採用を最終判断します。
- 仕事に必要な知識・技術が身についているかを確かめる
- 勤務態度や遅刻・欠勤の状況を見る
- チームや職場の方針になじめるかを確かめる
働く側にとっても、職場の雰囲気や業務量、患者さんや利用者さんへの接し方が自分に合うかを確かめられる期間です。
条件にあった求人を探してもらう研修期間・契約期間との違い
試用期間と混同しやすいのが「研修期間」と「契約期間」です。 研修期間は仕事を覚えるための教育の期間、契約期間は労働契約そのものの期間で、本採用を判断するための期間かどうかが試用期間との大きな違いです。
| 比べる点 | 試用期間 | 研修期間 | 契約期間 |
|---|---|---|---|
| 目的 | 適性を見て本採用を判断する | 仕事の知識・技術を教える | 労働契約が続く期間を決める |
| 期間が終わると | 本採用に移る(拒否には合理的理由が必要) | 通常業務に移る | 契約終了か更新 |
| 主な根拠 | 就業規則・労働契約 | 職場の教育制度 | 労働契約(有期契約) |
| 重なることは? | 試用期間中に研修を受けることもあり、両方が同時に進む場合がある | ||
求人票や雇用契約書に「研修期間」とだけ書かれている場合、その期間に本採用の判断があるのか、給与などの条件が変わるのかは職場によって違います。 気になる場合は、面接や内定時に確認しておくと安心です。
試用期間中の労働契約の扱い
試用期間中も、入職した時点で労働契約は成立しています。 裁判例では、試用期間は「適性がないと判断したときに契約を解約できる権利を、使用者が留保している期間」と考えられています(解約権留保付労働契約)。
そのため、試用期間中だからといって、職場がいつでも自由に辞めさせられるわけではありません。
「お試し」でも、ちゃんとした雇用契約なんだね!
労働条件は、試用期間の有無や長さも含めて、入職時に書面で受け取っておきましょう。 雇用契約書や労働条件通知書がもらえないときの対処法は、次の記事で紹介しています。
参考:厚生労働省「確かめよう労働条件 試用期間|裁判例」 / 厚生労働省「労働政策審議会労働条件分科会 第47回資料」
試用期間の長さと延長の可否

試用期間の長さを直接決めた法律はなく、職場ごとに就業規則や労働契約で定めます。 ただし、どれだけ長くしてもよいわけではなく、延長にも一定の歯止めがあります。
一般的な期間の目安
厚生労働省の審議会資料で紹介された調査(労働政策研究・研修機構、平成16年)では、試用期間を設けている企業は73.2%でした。 期間は「3か月程度」が新規学卒者で69.1%、中途採用者で68.1%と最も多く、6か月程度までに収まる企業が99.1%です。
20年以上前の調査なので現在の運用と同じとは限りませんが、求人票の期間を見るときの目安になります。 6か月を超える期間が書かれている場合は、延長の有無とあわせて、その理由を面接で聞いてみるのもよいでしょう。
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延長が認められる条件
試用期間の延長は、職場の一方的な都合で自由にできるものではありません。 争いになった場合には、次のような点が考慮されやすいとされています。
- 就業規則や雇用契約書に延長があり得ることが書かれているか
- 適性を判断しきれない具体的な事情(長期の欠勤など)があるか
- 延長の期間が必要な範囲にとどまっているか
- 延長の理由と期間を本人にきちんと説明しているか
延長を告げられたら、理由・延長後の期間などを書面かメールで残しておくと、あとで話し合うときの材料になるよ!
長すぎる試用期間の扱い
試用期間中は本採用されるか分からない不安定な立場に置かれます。 そのため裁判例では、適性の判断に必要な合理的期間を超える長い試用期間は、公序良俗に反し、その限りで無効とされたことがあります。
どこからが「長すぎる」かは、職種や業務内容、延長の経緯によって個別に判断されます。 1年を超えるような試用期間や、何度も延長が繰り返されている場合は、一度専門の窓口に相談してみましょう。
試用期間って、延ばされたら言われるがままなの?
参考:厚生労働省「労働政策審議会労働条件分科会 第47回資料」 / 厚生労働省「確かめよう労働条件 試用期間|裁判例」
試用期間中の給与と待遇の扱い

試用期間中の給与や待遇は、求人票と労働条件通知書でいちばん確認しておきたいポイントです。
本採用後より給与を低くできる範囲
試用期間中の給与を本採用後より低く設定すること自体は、労働条件として事前に明示され、合意していれば認められています。 平成16年の調査では、本採用になる際に賃金の昇給や手当の追加がある企業は35.3%でした。
ただし、試用期間中でも最低賃金を下回ってはいけません。 例外は、職場が都道府県労働局長の許可を受けた「最低賃金の減額の特例」の場合に限られます。
減額の特例は、本採用の労働者の賃金水準が最低賃金と同程度であるなど、限られた条件で認められる仕組みです。 試用期間中の給与を時給に換算して最低賃金を下回っているようなら、職場か労働基準監督署に確認しましょう。
条件にあった求人を探してもらう社会保険の加入時期
健康保険・厚生年金保険は、試用期間中でも報酬が支払われていれば、入職日から加入の対象です。 日本年金機構も、試用期間中でも報酬が支払われる場合は使用関係が認められるとしています。
雇用保険も、本採用の前かどうかに関係なく、週20時間以上などの加入要件を満たしていれば入職時から被保険者になります。 「本採用になってから社会保険に入れる」と言われた場合は、給与明細で保険料が引かれているか、保険証が届いているかを確認してみましょう。
有給休暇が付与される時期
年次有給休暇は、雇入れの日から6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤すると10日付与されます(労働基準法第39条)。 この「継続勤務」は在籍している期間のことなので、試用期間も勤務期間に含めて数えます。
- 入職日健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入(要件を満たす場合)
- 15日目以降解雇するときの30日前予告のルールが適用される
- 試用期間の満了本採用に移る(給与などの条件が変わる職場もある)
- 入職から6か月8割以上出勤していれば年次有給休暇10日
入職後6か月を待たずに有給休暇を前倒しで付与する職場もあります。 付与のタイミングは就業規則に書かれているので、入職前に聞いておくと予定を立てやすくなります。
試用期間中でも、保険や有給の扱いは本採用とほぼ同じなんだね
参考:日本年金機構「適用事業所と被保険者」 / 福岡労働局「最低賃金の減額の特例許可申請について ~試の使用期間中の者(最低賃金法第7条第2号)~」
試用期間中に解雇・本採用拒否されるケース

試用期間中や満了時に本採用しないことは、法律上は「解雇」にあたります。 本採用拒否が有効かどうかは個別の事情で判断が変わるため、ここでは争いになった場合に考慮されやすい要素を紹介します。
本採用拒否に必要な合理的な理由
前述の三菱樹脂事件の判決のとおり、試用期間中の解約権の行使は通常の解雇より広い範囲で認められる一方、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます(解雇全般のルールを定めた労働契約法第16条と同じ考え方)。
本採用拒否の理由として争われやすいのは、次のようなケースです。
-
勤務態度無断欠勤や遅刻が続き、注意しても改善されない
-
能力・適性指導を受けても業務に必要な水準に届かない
-
経歴の虚偽採用の判断に関わる資格や経歴に偽りがあった
能力不足が理由の場合、職場が指導や改善の機会を与えていたかどうかも考慮されやすいポイントです。
試用開始から14日以内と15日以降の違い
労働基準法第20条では、解雇するときは少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。 この予告のルールは、第21条により「試の使用期間中の者」には適用されませんが、14日を超えて引き続き使用された場合は適用されます。
| 試用開始から | 14日以内 | 15日以降 |
|---|---|---|
| 30日前の解雇予告 | 不要 | 必要 |
| 予告がない場合の手当 | 不要 | 30日分以上の平均賃金 |
| 合理的な理由・相当性 | どちらも必要 | |
14日以内の例外は、あくまで「予告や手当が要らない」というルールです。 14日以内なら理由なく辞めさせてよい、という意味ではありません。
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不当と判断されやすいケース
本採用拒否が争われたときの結論は個別の事情で変わりますが、次のような違いが判断の分かれ目になりやすいとされています。
- 指導や注意をほとんどせずに能力不足と判断した
- 経費削減など、本人の適性と関係ない理由
- 試用期間を知らされていなかった
- 理由を示さない延長を何度も繰り返した
- 注意・指導を重ねても改善がなかった
- 無断欠勤など勤務態度の問題が続いた
- 採用の判断に関わる重大な経歴の偽り
本採用を拒否されて納得できない場合は、まず理由を書面で出してもらいましょう(労働基準法第22条の退職時等の証明)。
相談できる公的な窓口
- 総合労働相談コーナー(予約不要・無料。解雇や採用の問題も対象)
- 労働基準監督署(解雇予告手当の未払いなど法違反の疑いがあるとき)
急に本採用しないって言われたら、頭が真っ白になりそう…
参考:e-Gov法令検索「労働基準法」 / e-Gov法令検索「労働契約法」
試用期間中に退職したいときの進め方

試用期間中でも、働く側から退職を申し出ることはできます。 「思っていた職場と違った」と感じたら、早めに気持ちを整理して動くほうが、職場にとっても自分にとっても負担が少なくなります。
申し出の時期と方法
期間の定めのない雇用契約なら、民法第627条により、退職を申し出てから2週間が経過すると契約は終了します。
就業規則で「1か月前までに申し出る」などと定めている職場もあるので、まずは規則を確認し、できるだけ職場のルールに沿って伝えるのが無難です。
有期契約で雇われている場合は、契約期間の途中で辞めるには原則として「やむを得ない事由」が必要とされる(民法第628条)など、ルールが変わります。 雇用契約書で契約期間の定めがあるかを確かめておきましょう。
伝え方と退職理由
退職の意思は、まず直属の上司に口頭で伝え、その後に職場のルールに沿って退職届を出すのが一般的です。 試用期間中の退職は「合わなかった」ことが理由になりやすいため、職場を責める言い方は避け、自分の判断として伝えるとスムーズです。
- 理由は「自分には合わなかった」と短く伝える
- 退職希望日と引き継ぎの案をセットで話す
- 勤務シフトが組まれる前に早めに切り出す
体調不良やハラスメントが理由の場合は、無理に言い換える必要はありません。 話し合いが難しいときは、人事担当者や外部の相談窓口を頼りましょう。
次の転職活動での職歴の扱い
試用期間中に辞めた場合でも、雇用契約を結んで働いていた以上、履歴書の職歴には入職と退職を記載するのが基本です。 社会保険や雇用保険の加入記録が残るため、省略すると次の職場で採用後に経歴の食い違いが見つかり、トラブルになることがあります。
| 年 | 月 | 職歴 |
|---|---|---|
| 2026 | 4 | 医療法人〇〇会 〇〇病院 入職 |
| 2026 | 6 | 一身上の都合により退職(試用期間中) |
短い職歴も、次の職場選びに活かせばちゃんと意味があるよ!
面接で短期離職の理由を聞かれたら、事実を簡潔に伝え、その経験から次の職場選びで何を重視するようになったかを話すと前向きな印象になります。 職歴欄での「入職」「入社」の使い分けは、次の記事が参考になります。
参考:e-Gov法令検索「民法」 / 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
まとめ
試用期間は本採用を判断するための期間ですが、入職した時点で労働契約は成立しており、給与・社会保険・有給休暇などの基本的なルールは本採用後と大きく変わりません。
この記事のポイント
- 試用期間は3か月程度が最も多い
- 長すぎる試用期間や理由のない延長は争いになりやすい
- 試用期間中も最低賃金・社会保険加入のルールは適用
- 14日を超えると解雇予告のルールが適用される
- 退職は申し出から2週間で契約終了が民法の原則
応募の段階で、求人票の試用期間の長さと期間中の条件を確認しておくと、入職後の「こんなはずじゃなかった」を防げます。 本採用拒否や延長の扱いに納得できないときは、一人で抱えずに総合労働相談コーナーや労働基準監督署に相談しましょう。


