理学療法士は将来性がない!?技術の進展が業務に与える影響と需要の変化を人口と制度から解説
「理学療法士は将来性がない」という言葉を目にして、不安になった方も多いのではないでしょうか。有資格者の増加、給与の伸び悩み、AIによる代替への懸念。どれも簡単には片づけられない話です。
この記事では、理学療法士の将来性を人口動態と制度の2軸に分けて整理します。地域によって見通しが違うこと、領域ごとに方向が分かれること、技術の進展が業務のどこに影響するのか。公的なデータをもとに、判断の材料になる事実を確認していきます。
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「将来性がない」と言われる根拠

まず、何が問題として語られているのかを整理します。よく挙がるのは、有資格者の増加、給与の伸び悩み、技術による代替の3つです。
有資格者が増え続けていること
理学療法士の国家試験合格者は、令和8年度までの累計で247,546人に達しています。第61回国家試験(令和8年2月23日実施)では受験者12,436人のうち11,156人が合格し、合格率は89.7%でした。毎年1万人以上が新たに資格を得ている計算です。
背景にあるのは養成校の増加です。平成7年度は80校・入学定員2,640人でしたが、令和8年度は274校・入学定員14,142人となっています。30年ほどで定員は5倍を超えました。
ただし、直近の動きは反転しています。入学定員は令和6年度の14,954人をピークに2年連続で減少し、養成校数も279校から274校へ減りました。有資格者の総数は当面増え続けますが、その入り口はすでに縮小に転じているという点は押さえておきたいところです。
養成校 入学定員の30年推移
給与が上がりにくいこと
賃金構造基本統計調査では、理学療法士は作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士と同じ区分で集計されており、理学療法士単独の平均年収は公表されていません。
令和7年の調査(企業規模10人以上・男女計)では、この区分の所定内給与額は298,200円、年間賞与を加えた推計年収は約443万円でした。平均年齢は36.2歳、労働者数は279,650人です。
全産業の一般労働者の所定内給与額は340,600円、医療・福祉分野は315,700円(平均44.0歳)ですから、金額としては低い位置にあります。ただし平均年齢が8歳ほど若いため、単純比較はできません。
年齢階級別の推計年収を見ると、20〜24歳の337.5万円から50〜54歳の548.8万円まで上昇し、そこがピークです。
リハビリテーションの収入源である診療報酬・介護報酬は国が定める公定価格で、施設が受け取れる額に上限があります。給与の伸びにくさは個人の努力不足ではなく、報酬の決まり方に由来する構造的な話だといえます。
技術による代替への懸念
AIやロボットの発達で理学療法士の仕事がなくなる、という懸念もよく語られます。ただ、この議論は「リハビリテーション」を一つのかたまりとして扱うため、話が漠然としがちです。業務を分けて考えれば、影響の出方は同じではありません。
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参考:公益社団法人日本理学療法士協会「統計情報」 /e-Stat「賃金構造基本統計調査 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」 / e-Stat「賃金構造基本統計調査 5 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」
需要は人口動態と制度の2つで決まる

理学療法士の需要は、リハビリテーションを必要とする人がどれだけいるか(人口動態)と、その人にどれだけの量を提供できる仕組みになっているか(制度)の掛け算で決まります。
人口動態から見た需要
介護保険で要介護・要支援の認定を受けた人は、令和4年度で681.4万人です。平成24年度の545.7万人から135.7万人増え、65歳以上の被保険者の19.0%を占めています。
注目したいのは年齢による差です。認定を受けている人の割合は65〜74歳では数%にとどまりますが、85歳以上では要介護だけで44.5%と一気に上がります。
つまり需要を左右するのは「高齢者が増えるかどうか」ではなく、「75歳以上、とくに85歳以上がどれだけ増えるか」です。65歳以上人口という大きな枠でとらえると、実態からずれた見通しになりかねません。
制度から見た需要
対象となる人が増えても、報酬上の位置づけが変われば提供量は変わります。制度が需要を規定している例を見てみましょう。
回復期リハビリテーション病棟入院料の施設基準には、配置すべき職種と人数が明記されています。令和8年度診療報酬改定後の入院料1では専従の理学療法士3名・作業療法士2名・言語聴覚士1名が必要で、入院料3ではその人数が減ります。病棟が算定する入院料の種類が、そのままそこで働く理学療法士の人数を決めています。
回復期リハビリテーション病棟入院料の施設基準
| 項目 | 入院料1 | 入院料2 | 入院料3 | 入院料4 |
|---|---|---|---|---|
| 点数(1日) | 2,346点 | 2,274点 | 2,062点 | 2,000点 |
| 専従理学療法士 | 3名 | 3名 | 2名 | 2名 |
| 専従作業療法士 | 2名 | 2名 | 1名 | 1名 |
| 専従言語聴覚士 | 1名 | 1名 | - | - |
| 看護配置 | 13対1 | 13対1 | 15対1 | 15対1 |
| 重症患者割合 | 3割5分以上 | 3割5分以上 | 2割5分以上 | 2割5分以上 |
※「-」は配置の定めがない職種
提供できる量にも枠があります。疾患別リハビリテーション料は1単位20分で、患者さん1人あたり原則1日6単位までです。回復期リハビリテーション病棟の患者さんなど、定められた対象では9単位まで認められます。
さらに令和8年度改定では、訓練の中身によって評価が分かれるようになりました。ベッド上から移動せずにポジショニングや拘縮の予防だけを行った場合は、所定点数の90%に減算され、1日2単位までしか算定できません。時間をかけたかどうかではなく、何をしたかが問われる形です。
介護保険側も同じ方向です。通所介護では、利用者さんのADLの維持・改善の度合いに応じてADL維持等加算(Ⅰ)30単位・(Ⅱ)60単位が1月ごとに算定でき、ADLや栄養状態などのデータを提出する科学的介護推進体制加算は1月40単位です。
参考:内閣府「2 健康・福祉|令和7年版高齢社会白書(全体版)」 / 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 / 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」
「高齢化するから需要が増える」は地域によって異なる

高齢化による需要増は、全国を平均した話です。都道府県ごとに見ると、高齢者人口がピークを迎える時期も、その後の減り方もかなり違います。
高齢者人口のピーク時期は地域で違う
国立社会保障・人口問題研究所の日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)は、令和2年の国勢調査をもとに令和32年までを5年ごとに推計したものです。この推計で、令和2年から令和32年までのあいだに65歳以上人口が最大となる年次を都道府県別に数えると、令和22年が15道県で最も多く、次いで令和7年が12県となっています。
減少局面に入る時期もばらけます。令和17年から令和22年にかけて65歳以上人口が減るのは13県ですが、令和22年から令和27年では36道県、令和27年から令和32年では44道府県に広がります。全国で見て増えているあいだも、多くの県ではすでに減り始めているということです。
すでに減少に転じている地域がある
秋田県、島根県、山口県、高知県など9県では令和2年時点が65歳以上人口のピークで、そこから令和32年に向けて減り続ける見通しです。
逆方向の地域もあります。東京都・愛知県・沖縄県は令和2年から令和32年まで一貫して増加する見通しです。全体で見ると、令和2年を100としたときの令和32年の指数が100を下回るのは26道県にのぼります。
なお、高齢化率(65歳以上人口の割合)はどの都道府県でも上がり続けます。令和32年には秋田県が49.9%、東京都が29.6%です。割合が上がることと、対象となる人数が増えることは別の話だという点は混同しないようにしたいところです。
働く地域を考えるうえでの見方
需要の側だけでなく、その地域にすでに何人の理学療法士がいるかも見ておきたい情報です。日本理学療法士協会の都道府県別会員数(2026年3月末)を総務省統計局の人口推計(2024年10月1日現在)で割ると、人口10万人あたりの会員数は全国で117.0人になります。
最も多い高知県と最も少ない神奈川県のあいだには約3.1倍の開きがあります。ただし秋田県は95.7人と全国平均を下回っており、高齢者人口のピークを過ぎた県が必ずしも理学療法士の多い地域とは限りません。
高齢者人口の見通しと、その地域の理学療法士の多さは、別々に確認する必要があります。
ここで示したのはあくまで一定の前提に基づく推計であり、特定の地域に将来性がないという話ではありません。同じ県でも都市部と周辺部では事情が異なります。
理学療法士の求人を探す参考:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口 令和5(2023)年推計」 / 総務省統計局「人口推計(2024年(令和6年)10月1日現在)」 / 公益社団法人日本理学療法士協会「統計情報」
【領域別】需要の方向

「活躍の場が広がる」とまとめられがちですが、実際には伸びる方向と縮む方向があります。日本理学療法士協会の会員の分布(2026年3月末・支援者を除く)から、領域ごとの規模と、制度がどちらを向いているかを見ていきます。
急性期
急性期の病院・センターには24,101人の会員が3,008施設に在籍しています。高度急性期は5,602人が419施設で、1施設あたりの人数はさらに多くなります。
制度は早期介入をさらに評価する方向に動きました。令和8年度診療報酬改定では早期リハビリテーション加算が見直され、入院直後ほど高い点数が付く形になっています。加えて、土曜・休日の実施を評価する休日リハビリテーション加算が新設されました。
在院日数が短くなるなかで、いかに早く離床させ、退院後の生活につなげるかが問われる領域です。
回復期
回復期リハビリテーション病棟には19,102人が1,322施設に在籍しており、1施設あたりの人数は全領域で最も多くなっています。地域包括ケア病棟は3,811人・1,249施設です。
この領域は成果評価が最も進んでいます。リハビリテーション実績指数の基準は、令和8年度改定で入院料1と入院料3が引き上げられ、基準のなかった入院料2・4にも新たに導入されました。実績指数の算出から除外できる患者さんの範囲も縮小されています。
さらに、より高い実績指数などを満たす病棟を評価する回復期リハビリテーション強化体制加算(1日80点)が新設され、その基準は実績指数48以上です。患者数や実績指数をウェブサイトで公表することも要件になりました。
| 入院料 | 改定前 | 改定後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 入院料1 | 40以上 | 42以上 | 引き上げ |
| 入院料2 | 基準なし | 32以上 | 新設 |
| 入院料3 | 35以上 | 37以上 | 引き上げ |
| 入院料4 | 基準なし | 32以上 | 新設 |
生活期・在宅
在宅系は事業所数が多く、1事業所あたりの人数が少ないのが特徴です。訪問リハビリテーションは1,142人が747事業所、通所リハビリテーションは1,629人が1,148事業所、介護老人保健施設は5,380人が2,263施設に在籍しています。
見落とされがちなのが訪問看護ステーションで、4,996人が2,961事業所に在籍しており、訪問リハビリテーションの4倍以上の規模があります。在宅で働く選択肢として実質的に大きいのはこちらです。少人数の職場が多いため、一人で判断する場面が増える点は事前に理解しておきたいところです。
予防・健康づくり
市町村が行う介護予防・日常生活支援総合事業は、要支援の人などを対象に、通所型・訪問型のサービスや住民主体の活動を組み合わせて実施する仕組みです。実施のための指針は厚生労働省の告示として定められており、理学療法士がリハビリテーション専門職として関わる場面があります。
ただし、雇用の規模としては現時点で大きくありません。会員の分布では、介護予防支援に関わる会員は141人・113事業所にとどまります。自治体の事業は委託や非常勤の形が多く、常勤の職として広がるかどうかは今後の動き次第です。
小児・障害福祉
高齢者領域とは需要の決まり方が異なる分野です。会員の分布では、障害児入所施設(福祉型)に273人が113施設、児童発達支援センターは医療型に249人が74施設、福祉型に171人が88施設在籍しています。事業所型では児童発達支援が147人・138事業所、放課後等デイサービスが199人・185事業所です。
規模は大きくありませんが、対象が高齢者人口の増減に左右されないため、地域の高齢者数がピークを過ぎたあとも需要の性質が変わりにくい領域だといえます。
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参考:公益社団法人日本理学療法士協会「統計情報」 / 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 / 厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業の適切かつ有効な実施を図るための指針」
技術の進展が業務に与える影響

「AIに代替される」という不安は、業務を分けて考えると輪郭がはっきりします。ここでは代替されにくいもの、支援されるもの、新たに生まれるものの3つに整理します。
代替されにくい業務
制度の側から見ると、リハビリテーションは人が20分そばで行う個別療法を単位として評価される仕組みです。疾患別リハビリテーション料の1単位20分という数え方も、令和8年度改定で離床を伴わない訓練の評価が下げられたことも、何をどう行ったかを人が判断して実施する前提で組み立てられています。
具体的には、患者さんの状態をその場で評価して負荷を調整すること、痛みや不安を汲み取りながら動作を引き出すこと、家族や多職種と方針をすり合わせることが挙げられます。
支援される業務
一方で、記録・計測・分析は機器が担いやすい領域です。動作の計測や歩行の解析、記録の入力補助などは、すでに導入している施設があります。
介護保険では、ADLや栄養状態などのデータを提出して評価に活かす仕組みが加算として制度化されており、データを扱う業務そのものが評価の対象になっています。手間が減るというより、集めたデータを読み取って次の計画につなげる部分に時間が移ると考えるのが実態に近いといえます。
新たに生まれる役割
ロボットやセンサーを使った機器の導入、遠隔でのリハビリテーション支援などは、実用の段階や制度上の位置づけに幅があります。診療報酬・介護報酬でどう評価されるかによって普及の速度は変わるため、現時点で先行きを断定することはできません。
ただ、機器を導入する際に誰が使い方を設計するのか、集まったデータをどう解釈するのかという役割は残ります。機器に置き換えられるかどうかではなく、機器を含めた提供体制を組み立てられるかが問われる方向だと考えられます。
理学療法士の求人を探す参考:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 / 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」
将来を見据えて今できること

ここまでで見た構造から導ける行動に絞って整理します。資格を並べたり、専門性を高めましょうと言ったりするだけでは、判断の助けになりません。
領域の選び方
領域を選ぶときに確認したいのは、その領域の需要が何で決まっているかです。同じ理学療法士の仕事でも、人員配置と収入を左右している制度は領域ごとに違います。
自分が働く地域の高齢者人口がいつピークを迎えるかと、領域の性質を重ねて考えると、10年後の見え方が変わります。前述のとおり、同じ「高齢化」でも県によってピークの時期は30年近く開きがあります。
説明できる形で成果を残す
制度は提供した量だけでなく、結果を見る方向に動いています。回復期リハビリテーション病棟では実績指数の基準が引き上げられ、患者数や実績指数をウェブサイトで公表することが要件になりました。介護保険でも、ADLや栄養状態のデータを提出して評価に活かす加算が設けられています。
その基盤となる科学的介護情報システム(LIFE)は、令和8年5月11日から国民健康保険中央会が運用する国保中央会運用LIFEに移行し、移行期間は令和8年7月31日に終了しました。データを提出する仕組み自体が整えられ続けているということです。
だからこそ、日々の評価指標や記録を残し、担当した患者さん・利用者さんにどんな変化があったかを自分の言葉で説明できる状態にしておくことが効いてきます。転職の場面でも、担当件数だけでなく成果を語れるかどうかが差になります。
転職や面談の前に、次の4点が手元でまとまっているかを確認しておくと安心です。
- 担当した疾患・病期の内訳と、おおよその件数
- 使用している評価指標と、入棟時から退棟時までの変化
- 多職種カンファレンスや家族指導で果たした役割
- 所属病棟が算定している入院料・加算の種類
働く地域と職場を選ぶ
同じ資格でも、働く場所によって条件は変わります。医療キャリアナビ掲載求人データ(2026年時点)では、理学療法士(PT)の求人6,409件のうち月給の中央値は272,500円でした。サービス種別で見ると訪問リハビリが300,000円と最も高く、病院は251,425円です。
- 住宅補助あり 20%(1,263件)
- 17時退社 15%(945件)
- 完全週休2日 13%(825件)
- 託児所・保育所完備 8%(496件)
- 時短勤務OK 6%(353件)
在宅系が高めに出るのは、少人数配置で一人が担う範囲が広いことの裏返しでもあります。金額だけでなく、その職場が何を評価される仕組みのなかにあるのかも合わせて確認したいところです。
参考:厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)について」 / 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
まとめ
理学療法士の将来性は、「ある」「ない」で答えが出るものではありません。需要は人口動態と制度の2つで決まり、そのどちらも地域や領域によって向きが違うためです。
有資格者は増え続けていますが、養成校の入学定員は令和6年度をピークに2年連続で減っています。高齢者人口は全国では増えても、9県ではすでに令和2年がピークで、令和27年から令和32年には44道府県で減少します。制度の側は、提供した量ではなく結果を評価する方向に進み、令和8年度改定では実績指数の基準が引き上げられました。
技術については、記録や計測は支援される一方、状態を評価して負荷を判断する部分は人が担う前提で制度が組まれています。置き換えられるかどうかより、機器を含めた提供体制を組み立てられるかが問われる方向です。
やるべきことは大きく2つです。自分が働く地域と領域の需要が何で決まっているかを確認すること、そして担当した人にどんな変化があったかを説明できる形で残しておくこと。制度が結果を見る方向に動いている以上、この2つはそのまま次のキャリアの土台になります。


