薬剤師が転職を繰り返してしまう原因は?転職回数が多いデメリットと抜け出す方法
転職するたびに「今度こそ」と思っていたのに、気づけば数年で何度目かの職場探しをしている。薬剤師として働くなかで、そんな状況におかれている方は少なくありません。
求人が豊富な職種だからこそ、次の職場が見つかりやすく、結果として転職回数が積み上がっていくという面もあります。
ただ、転職を繰り返してしまう背景には、性格や我慢の足りなさではなく、職場選びの進め方に共通した仕組みがあることが多いです。原因を特定しないまま次を探すと、同じ理由でまた辞めることになりかねません。
この記事では、薬剤師の転職回数が多いと採用側にどう見られるのか、繰り返すことで実際に何が起きるのかを公的データで整理したうえで、繰り返しが生まれる原因と、そこから抜け出すための具体的な手順をお伝えします。
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薬剤師の転職回数が多いとどう見られるか
転職回数が増えてくると、まず気になるのが「採用側にどう思われるか」ではないでしょうか。結論からお伝えすると、回数そのものを理由に一律で落とされるわけではありません。ただし、選考の場で説明を求められやすくなるのは事実です。
薬剤師の平均転職回数や「何回から不利になるか」という基準は、検証できる公表統計が見当たりません。転職サイトが独自に集計した数値は出回っていますが、調査方法や母数が明らかでないものも多く、目安として受け止めるにとどめるのが安全です。
ここでは数値の基準ではなく、採用側が実際に何を見ているかという観点から整理します。
選考で懸念されること
採用側が転職回数を気にするとき、その先にあるのは「またすぐに辞めてしまわないか」という不安です。薬剤師を1人採用すれば、調剤の手順や在庫管理、電子薬歴の運用、地域の医療機関との連携方法などを一から共有する必要があります。数か月で退職されると、その時間と費用が回収できません。
厚生労働省の令和2年転職者実態調査によると、転職者がいる事業所の84.1%が「転職者を採用する際に問題がある」と答えています。なかでも「応募者の能力評価に関する客観的な基準がないこと」を挙げた事業所は38.8%にのぼります。
薬剤師の採用で事業所が感じる問題
「問題がある」と回答した事業所が挙げた内容
※内訳は複数回答のため合計は100%を超える
つまり採用側は、目の前の応募者が本当に戦力になるのかを判断する材料を持ちにくい状態にあります。判断材料が乏しいとき、履歴書に並んだ在籍期間の短さは数少ない手がかりとして目に入りやすくなります。回数そのものが減点されるというより、「短期間で辞めた理由が説明されていない」ことが懸念につながると考えるほうが実態に近いです。
回数より重視される点
では採用側は何を最も見ているのでしょうか。同じ調査で、転職者の賃金や役職といった処遇を決める際に「最も重視した要素」を尋ねた結果があります。
最も多かったのは「これまでの経験・能力・知識」で53.7%、次いで年齢が11.9%、免許・資格が10.7%と続きます。学歴は0.6%、前職の役職は0.4%にとどまりました。処遇決定の際に何らかの要素を考慮した事業所は96.8%に達しており、ほとんどの職場が何かを基準に判断していることになります。
注目したいのは、この調査の選択肢に「転職回数」という項目がそもそも存在しない点です。複数回答で尋ねた設問でも、考慮した要素は経験・能力・知識が74.7%、年齢が45.2%、免許・資格が37.3%、前職の賃金が25.3%という並びでした。
回数が完全に無視されるわけではありませんが、処遇を決める軸に据えられているのは、あくまで何ができる人かという中身です。回数の少なさを競うより、これまでの職場で何を担当し、何を身につけたのかを整理して伝えるほうが、選考では効きやすいといえます。
応募先の業種によって見方が変わる
同じ経歴でも、応募先がどの業種かによって受け止め方は変わります。厚生労働省の統計では、薬剤師が働く場は薬局が60.0%、医療施設が19.2%、残る約20.8%が製薬企業や行政、大学などに分かれています。採用の考え方も、この分布のとおり一様ではありません。
同じ令和2年の調査から、薬剤師が含まれる「専門的・技術的な仕事」で転職者を採用した理由を見ると、「経験を活かし即戦力になるから」が66.1%、「専門知識・能力があるから」が52.7%と、専門性を求める回答が上位を占めました。「離職者の補充のため」も44.6%あり、欠員を早く埋めたいという事情も見えます。
欠員補充が主な目的の職場では、すぐに調剤に入れることが最優先されるため、回数より直近の実務内容が重視されやすくなります。一方、企業の管理部門や公務員のように定着を前提に育成する採用では、在籍期間の見通しを丁寧に確認される傾向があります。応募先がどちらの色合いに近いかを意識しておくと、準備すべき説明の内容も変わってきます。
「専門的・技術的な仕事」で転職者を採用した理由
※複数回答(3つまで)
参考:厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」 / 厚生労働省「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
転職を繰り返すことで起きること

転職回数が増えること自体は、キャリアの失敗を意味しません。実際、転職によって賃金が上がる人のほうが多いという調査結果もあります。ただし、在籍期間が短いまま職場を移り続けると、時間の経過とともに積み上がるはずだったものが積み上がりにくくなります。
ここでは、選考で不利になるかどうかとは別の話として、勤続年数と結びついた仕組みのうえで実際に何が起きるのかを見ていきます。感覚的な話ではなく、制度と統計で確認できる範囲に絞って整理します。
年収が上がりにくくなる
転職そのものが年収を下げるわけではありません。令和6年の雇用動向調査では、転職入職者のうち賃金が増加した人が40.5%、変わらない人が28.4%、減少した人が29.4%で、増加が減少を11.1ポイント上回っています。
一方で、勤続年数と賃金の関係を見ると別の姿が浮かびます。令和7年賃金構造基本統計調査によると、一般労働者の賃金は勤続0年で27万4,500円ですが、勤続5〜9年で31万2,500円、勤続15〜19年で37万800円、勤続30年以上では44万4,200円と、年数に比例して上がっていきます。
この数値は薬剤師に限った集計ではありませんが、多くの職場で昇給や役職手当が在籍年数と結びついている実態を示しています。数年ごとに移り続けると、そのつど勤続年数が0からの再スタートとなり、上のカーブに乗る前に次の職場へ移ることになりがちです。
転職時の給与交渉で一時的に上がっても、長期的な上がり幅は勤続を重ねた場合より小さくなりやすいという点は押さえておきたいところです。
勤続年数階級別の賃金(一般労働者・月額)
単位:万円
※横軸は勤続年数(年)。勤続0年の27.5万円から30年以上の44.4万円まで、年数に比例して右肩上がり
専門性が積み上がりにくい
薬局や病院では、入職してすぐに任される業務と、一定期間を経てから任される業務が分かれているのが一般的です。無菌調剤や在宅訪問、がん化学療法のプロトコル管理、実務実習生の指導などは、その職場の体制に慣れてから担当することが多い領域です。
令和2年転職者実態調査では、転職者に教育訓練を実施した事業所が74.5%、実施しなかった事業所が22.8%でした。実施した内容は計画的なOJTが79.4%で最も多く、通常の仕事を離れて行うOFF-JTは59.9%です。ただしOFF-JTの内訳を見ると、入職時の教育訓練が46.6%に対し、職務遂行に必要な能力・知識を付与する教育訓練は34.5%にとどまります。
入職直後に受ける教育と、その後の専門的な教育とでは、実施される割合に差があるということです。短期間で職場を移ると、入職時の研修だけを何度も受け、その先の教育を受ける前に離れるという流れになりやすくなります。
同じ調剤業務でも、扱う診療科や在宅対応の有無で身につく内容は変わります。積み上がった経験として語れるだけの期間を確保できるかどうかが、次の選考での説明のしやすさにも直結します。
転職者への教育訓練の内訳
教育訓練の実施状況
実施した内容(複数回答)
OFF-JTの内訳
※OFF-JTのうち専門知識・能力を付与する教育訓練は入職時教育より少ない
任される役割が広がりにくい
管理薬剤師や店舗の責任者、エリアの統括といった役割は、その職場での実績と信頼を前提に任されます。在籍期間が短いと、そもそも候補に挙がる前に次の職場へ移ることになります。
直前の勤め先の通算勤務期間の分布
※2年未満での離職が合計34.8%を占める
退職金の面でも差が出ます。令和5年就労条件総合調査によると、退職給付制度がある企業は74.9%です。大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の定年退職者1人あたりの平均退職給付額は、勤続年数が長くなるほど段階的に増え、20年代前半と35年以上では2倍近い開きがあります。
この数値は勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者を対象にした集計のため、そのまま自分に当てはまるわけではありません。ただ、退職給付が勤続年数に強く連動していることは読み取れます。
勤続年数別の退職給付額(大学・大学院卒/定年退職者平均)
※勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者が対象。長く勤めるほど退職給付額は積み上がる
雇用保険にも同じ構造があります。自己都合など一般の離職者の場合、基本手当の所定給付日数は被保険者であった期間が10年未満なら90日、10年以上20年未満で120日、20年以上で150日です。年次有給休暇も労働基準法第39条により、継続勤務した年数に応じて付与日数が増えていく仕組みです。転職すると年次有給休暇の付与日数は再び最初の段階に戻ります。
薬剤師の求人を探す参考:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」 / 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」 / 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」 / 厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」 / 厚生労働省「基本手当の所定給付日数」 / e-Gov法令検索「労働基準法」
転職を繰り返してしまう原因

ここからがこの記事の中心です。転職を繰り返す人に共通しているのは、我慢が足りないことではなく、職場を選ぶときと辞めるときの判断の仕方に、毎回同じ型が現れていることです。
型が変わらないまま次の職場を選ぶと、条件は違っても同じ理由で行き詰まります。原因は大きく4つに分けられます。自分がどれに当てはまるかを確かめながら読み進めてみてください。
職場選びの軸が毎回変わっている
1回目は年収、2回目は残業の少なさ、3回目は通勤時間というように、転職のたびに優先する条件が入れ替わっているケースです。直前の職場で困ったことを解消しようとするため、軸がそのつど前職の裏返しになります。
年収を優先して選んだ職場では処方箋枚数が多く残業が増え、次は残業の少なさを優先した結果、年収が下がって不満が残る。この行き来を繰り返すと、条件を1つ満たすたびに別の条件が崩れていきます。
令和2年転職者実態調査で、転職者が現在の勤め先を選んだ理由を尋ねた結果を見ると、「仕事の内容・職種に満足がいくから」が41.0%、「自分の技能・能力が活かせるから」が36.0%と上位を占めています。賃金が高いからは15.1%でした。
転職後に定着している人ほど、待遇そのものより仕事の中身を選択の理由に挙げています。軸が毎回入れ替わる状態から抜け出すには、条件の順位を一度固定する必要があります。
辞める判断が目の前の不満だけになっている
辞める理由が、そのときに起きている出来事だけで決まっているパターンです。特定の同僚との関係、繁忙期の残業、担当替えへの不満など、きっかけは具体的なほど動く力が強くなります。
同調査で自己都合による離職の理由を複数回答で尋ねた結果は、労働条件(賃金以外)がよくなかったが28.2%、満足のいく仕事内容でなかったが26.0%、賃金が低かったが23.8%、会社の将来に不安を感じたが23.3%、人間関係がうまくいかなかったが23.0%と続きます。
上位に並ぶ理由は、いずれも職場を移れば状況が変わる可能性があるものです。だからこそ「移れば解決する」と考えやすく、その職場に固有の問題なのか、どこにでもある問題なのかを切り分ける前に決断してしまいがちです。
- その不満は、この職場の体制や人員配置から生じているものか
- それとも職種や働き方そのものから生じているもので、移っても続く可能性があるか
前者なら転職で改善が期待できますが、後者なら移っても同じ場面が訪れます。ここを分けずに動くことが、繰り返しの入口になります。
自己都合による離職理由(複数回答)
※複数回答
応募前に確認する項目が定まっていない
面接や見学のときに何を聞くかが毎回変わっていると、入職してから「そこは確認していなかった」という点が必ず出てきます。前職で困ったことは念入りに確認する一方、経験していない領域は質問の対象から漏れやすいためです。
たとえば次のような抜けが起こります。
- 処方箋枚数は聞いたが、薬剤師の人数と勤務シフトは聞かなかった
- 年収は確認したが、賞与の算定方法は聞いていなかった
- 在宅の件数は聞いたが、同行するのが誰かは知らなかった
こうした抜けが、入職後の想定違いにつながります。
確認項目が毎回変わる限り、抜けの場所も毎回変わります。回数を重ねても情報の精度が上がらないのは、質問が経験の裏返しでしか設計されていないからです。
転職先に求める条件が多すぎる
年収も休日も通勤時間も人間関係も、すべてを満たす職場を探そうとすると、応募できる求人が極端に少なくなります。数少ない候補のなかから選ぶことになるため、実際には条件を満たしていない求人を「ここなら大丈夫だろう」と判断してしまいがちです。
そして入職後に、妥協した部分が不満として表面化します。条件を絞れていないことが、結果として妥協を招くという逆転が起きるわけです。
令和2年転職者実態調査では、転職後の職業生活について「満足」と答えた人が53.4%、「不満足」が11.4%、どちらでもないが34.5%でした。満足度D.I.は42.0ポイントで、全体としては満足が上回っています。
一方、同じ調査で今後の転職希望を尋ねると、今の職場で今後も働きたいが52.7%、機会があれば転職したいが21.0%、わからないが24.9%でした。転職を経験した人の約5人に1人は、次を視野に入れた状態が続いています。条件を絞れないまま動くと、この状態から抜けにくくなります。
繰り返しから抜け出す方法

原因が特定できたら、次は同じ型を崩す作業に入ります。前章の4つの原因に、それぞれ対応する形で進めていきます。気持ちの持ち方を変えるのではなく、手順を先に決めてしまうのが要点です。
いずれも転職活動を始める前に着手できます。すでに次を探し始めている場合でも、応募先を広げる前にこの4つを済ませておくと、判断のぶれが小さくなります。
これまでの退職理由を並べて共通点を探す
最初にやることは、過去の退職理由をすべて書き出すことです。1社目から順に、辞めようと思ったきっかけと、実際に辞めた決め手を分けて書き出します。
きっかけと決め手を分けるのは、この2つがずれていることが多いためです。きっかけは人間関係でも、決め手は「改善を相談したが変わらなかった」ことかもしれません。後者のほうが、次の職場選びで確認すべき点を示しています。
3社分ほど並べると、多くの場合は共通点が浮かびます。相談しても取り合ってもらえなかった、シフトの決め方に納得できなかった、教育の担当が決まっていなかったなど、表現は違っても同じ構造が繰り返されていることが見えてきます。
この共通点こそが、次の職場で最優先に確認すべき項目です。年収や休日といった求人票に書かれている条件は後から比較できますが、共通点は自分で言語化しない限り出てきません。
譲れない条件を絞り込む
書き出した共通点をもとに、条件を3つ以内に絞ります。多くても4つまでにとどめると、候補となる求人の数を確保しながら選べます。
絞るときは、条件を「満たさなければ応募しない」ものと「満たせば加点」のものに分けます。前者だけを3つ選び、残りは加点に回します。加点項目は複数あってかまいません。
たとえば「1人あたりの処方箋枚数」「教育担当者が決まっていること」「有給休暇の取得実績」を必須にし、年収と通勤時間は加点とする、といった形です。必須にした3つは、面接で必ず確認する項目にもなります。
- 過去3社分の退職理由をきっかけと決め手に分けて書き出す
- 共通して現れている構造を1〜2行で言語化する
- 必須条件を3つ以内に決め、それ以外は加点項目に回す
- 必須条件を確認する質問文をあらかじめ作っておく
確認する項目を固定する
必須条件が決まったら、応募先ごとに変えない確認項目のリストを作ります。毎回同じ項目を同じ順番で聞くことで、比較ができるようになり、聞き漏らしも防げます。
このとき、公的な基準がある項目を入れておくと質問がしやすくなります。薬局の場合、薬剤師の配置人数には省令上の基準があります。調剤に従事する薬剤師の員数は、1日平均取扱処方箋数を40で割った数以上と定められており、端数は切り上げます(1未満の場合は1人)。眼科・耳鼻咽喉科・歯科の処方箋は3分の2を乗じて数えます。
つまり1日120枚の薬局なら3人以上が必要という計算です。この基準を知っていれば、「1日平均何枚で、調剤に入る薬剤師は何人ですか」という質問が具体的な意味を持ちます。基準ぎりぎりなのか余裕があるのかで、日々の負荷は大きく変わります。
労働条件の確認も同様です。2024年4月から労働条件明示のルールが改正され、就業場所と業務について「変更の範囲」を明示することが必要になりました。異動や業務変更の可能性がどこまであるかを、書面で確認できるということです。
入職後に働き方を見直す時期を決めておく
入職前にもう1つ決めておきたいのが、働き方を見直すタイミングです。入職して3か月、半年、1年といった時点で、必須条件が実際に満たされているかを自分で点検する日を決めておきます。
これを決めておく理由は、不満が限界に達してから動くと、辞めるという選択肢しか残らなくなるためです。点検の時期を先に決めておけば、不満が小さいうちに配置や担当の相談ができます。
薬局や病院では、在宅担当への異動、勤務時間の変更、店舗間の異動など、辞めずに状況を変える手段が用意されていることがあります。育児や介護の事情がある場合は、育児・介護休業法にもとづく所定外労働の制限や短時間勤務といった制度も選択肢に入ります。
見直しの結果として転職を選ぶこともありますが、その場合も「点検した結果として決めた」という経緯が残ります。この経緯は、次の選考で退職理由を説明するときにそのまま使えます。
年次有給休暇 付与日数の推移
今のあなたの状況は?
参考:e-Gov法令検索「薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令」 / 厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」 / 厚生労働省「育児・介護休業法について」
転職回数が多い場合の伝え方

回数が多いこと自体は変えられません。変えられるのは、その経歴をどう説明するかです。採用側が判断材料を持ちにくい状況にあることは前述のとおりで、説明が整理されているかどうかで受け止め方は変わります。
隠す方向で対処しようとすると、後述するようにかえって大きなリスクを背負うことになります。書き方と伝え方を整えるという方針で進めるのが現実的です。
職務経歴書のまとめ方
在籍社数が多い場合、1社ずつ同じ分量で書くと読み手が要点を追えなくなります。職務経歴書は、経歴を時系列で並べる形式のほかに、経験した業務ごとに整理する形式もあります。
在籍社数が4社以上になる場合は、冒頭に「これまでの経験の要約」を5行ほど置き、そのあとに各社の記載を続ける構成が読みやすくなります。要約では、次の4点を先に示します。
- 調剤経験の年数
- 扱った診療科
- 在宅や無菌調剤などの特殊な業務
- 管理業務の経験
各社の記載では、在籍期間が短い職場ほど「そこで何を担当したか」を具体的に書くことが大切です。期間の短さは変えられませんが、その期間に何をしていたかが空白だと、読み手は判断のしようがありません。1年に満たない在籍でも、1日の処方箋枚数や担当した業務、使用していたレセコンや薬歴システムを書けば、実務の内容は伝わります。
退職理由の伝え方
退職理由は、事実と、そこから何を学んだかをセットで伝えます。前の職場の批判で終わると、同じ不満をこの職場でも言うのではないかと受け取られやすくなります。
有効なのは、退職理由と志望動機を1本の線でつなぐことです。「在宅業務に関わりたかったが前職では体制がなかった」「調剤に集中したかったがOTC対応の比重が大きかった」といった形で、辞めた理由が応募先を選んだ理由に直結していれば、繰り返しではなく方向性の修正として伝わります。
複数回の転職がある場合、すべてを詳しく説明する必要はありません。直近の1〜2社について丁寧に述べ、それ以前は要約で構いません。ただし、どの職場についても聞かれたら答えられる状態にしておくことは必要です。
面接で聞かれたときの答え方
面接で転職回数について触れられたときは、身構えずに事実から入ります。回数を認めたうえで、共通する理由があればそれを述べ、今回の応募でどう変えるつもりかまでを続けます。
回数を弁解する言い方は避けたほうが無難です。「若かったので」「たまたま職場に恵まれず」といった説明は、次も同じことが起きるという印象を与えかねません。
代わりに、前章で作った内容がそのまま使えます。過去の退職理由に共通する構造を1文で述べ、そこから必須条件を3つに絞ったこと、その条件を今回の応募先で確認したいことを伝える流れです。同じことを繰り返さないための具体的な手順を持っているという点が、回数への懸念に対する最も直接的な答えになります。
長く在籍した職場がある場合は、その期間に担当した業務も併せて伝えます。短期の在籍だけでなく、続いた期間もあることを示せると、経歴全体の見え方が変わります。
経歴は正確に書く
在籍期間を曖昧にしたり、短い在籍を書かずに済ませたりする方法を考える方もいます。しかしこれは、隠し通せるかどうか以前に、リスクの大きさの面でおすすめできません。
厚生労働省が示すモデル就業規則では、懲戒の事由として「重要な経歴を詐称して雇用されたとき」が懲戒解雇の対象に挙げられています。多くの職場の就業規則はこれを踏まえて作られているため、入職後に発覚した場合、処分の対象となる可能性があります。
また実務上も、雇用保険の被保険者記録や年金の加入履歴、前職の源泉徴収票などから、在籍の有無が分かる場面があります。入職時の手続きで説明がつかなくなると、業務を始める前から信頼を損ないます。
方針としては、隠すのではなく説明できる形に整えることです。短い在籍があっても、そこで担当した業務と辞めた理由が説明できていれば、経歴としては成立します。書かない選択より、書いたうえで説明を用意する選択のほうが、結果的に負担は小さくなります。
回数が多くても評価されるケース

転職回数が多いことが、常に懸念材料になるわけではありません。経歴を見た採用側が納得できる背景があれば、回数は判断の中心から外れます。ここでは、説明がつきやすい3つのケースを見ていきます。
自分の経歴がこれらに当てはまる場合は、その事情を職務経歴書や面接で先に伝えておくと、余計な推測を招かずに済みます。
ライフイベントに伴う転職
結婚や出産、配偶者の転勤、家族の介護などを理由とした転職は、本人の適性や定着意欲とは切り離して受け止められます。薬剤師は女性の割合が高い職種でもあり、こうした事情による職場の移動は珍しくありません。
令和6年の雇用動向調査で、女性の転職入職者が前職を辞めた理由を見ると、結婚が1.9%、出産・育児が1.8%、介護・看護が1.0%でした。割合としては大きくありませんが、労働時間・休日等の労働条件が悪かったが12.8%と上位に入っており、家庭の事情と勤務条件が重なって転職に至る流れが見て取れます。
この場合、伝えるべきは事情そのものより「今後の見通し」です。転居の予定がないこと、子どもの預け先が確保できていること、介護の体制が整ったことなど、同じ理由での転職が繰り返されない見通しを示せると、懸念は残りません。
前職を辞めた理由の男女比較
目的が一貫している転職
在籍社数が多くても、進んできた方向が一貫していれば、回数は経験の幅として受け取られます。調剤薬局から在宅専門の薬局へ、そこから在宅を手がける病院へ、といった移り方であれば、目的が明確です。
前述のとおり、処遇を決める際に最も重視されるのは「これまでの経験・能力・知識」です。一貫した方向で経験を重ねてきたのであれば、その積み上がりは回数の多さを上回る材料になります。
伝えるときは、各社の記載を並べるだけでなく、冒頭で「一貫して何を目指してきたか」を1〜2文で示すと伝わりやすくなります。読み手は最初にその軸を知ったうえで各社の記載を読むため、移動の理由が理解しやすくなります。
閉店や事業所都合による転職
薬局の閉店、事業所の統廃合、経営母体の変更など、本人の意思によらない離職も一定数あります。令和6年の雇用動向調査では、前職を辞めた理由が会社都合だった人は男性で5.2%、女性で5.3%でした。定年・契約期間の満了はさらに多く、男性14.1%、女性10.7%を占めています。
こうした離職は、雇用保険の取り扱いでも自己都合とは区別されます。倒産や解雇などによる離職者は特定受給資格者として、自己都合の場合より所定給付日数が長く設定されています。
選考の場では、離職票や退職証明書に記載された離職理由を確認しておくと説明がぶれません。会社都合であることを職務経歴書に明記しておくと、在籍期間の短さについて余計な推測をされずに済みます。
お探しの求人は?
参考:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」 / 厚生労働省「基本手当の所定給付日数」
次の転職を最後にするための確認点

最後に、求人票を見るときと職場見学のときにそのまま使える確認項目をまとめます。前章までの内容を、実際の質問に落とし込んだ形です。
すべてを一度に聞く必要はありません。求人票の段階で分かること、面接で聞くこと、見学で自分の目で確かめることに分けて進めると、負担が小さくなります。なお求人情報については、令和4年の職業安定法改正により、求人企業には求人情報を正確かつ最新の内容に保つ義務が課されています。求人票の記載と実際が違うと感じた点は、遠慮せず確認して構いません。
処方箋の枚数と人員体制
薬局を選ぶときに最も具体的に業務量を測れるのが、1日平均の処方箋枚数と調剤に従事する薬剤師の人数です。省令上の基準は処方箋40枚につき薬剤師1人以上ですが、これは最低ラインであり、この基準ちょうどの体制と余裕のある体制では負荷がまったく違います。
確認したいのは枚数と人数だけではありません。薬剤師の勤務シフトと、1人体制になる時間帯があるかも聞いておきます。同じ省令では、薬剤師不在時間は1日のうち4時間または開店時間の2分の1のうち短いほうを超えないこととされています。この不在時間の運用実態は、日々の働き方に直結します。
病院の場合は、病棟業務の担当数、当直や夜勤の頻度、注射薬調製の体制などが同じ役割を果たします。数字で答えられる質問を用意しておくと、職場ごとの比較がしやすくなります。
- 端数が出た場合は切り上げ、算定結果が1人未満でも最低1人は必要
- 眼科・耳鼻咽喉科・歯科の処方箋は枚数に3分の2を乗じて算定
- 薬剤師不在時間は1日4時間または開店時間の2分の1のうち短いほうまで
- 指針の策定と従事者への研修の実施も体制の基準に含まれる
教育とキャリアの道筋
入職後にどんな教育を受けられるかは、専門性を積み上げられるかどうかを左右します。薬局の体制を定める省令では、業務に関する指針の策定と従事者に対する研修の実施が体制の基準に含まれています。制度としての研修があるかどうかは、確認して差し支えない事項です。
聞くべきは、研修の有無だけでなく中身です。入職時のオリエンテーションで終わるのか、その後も継続的な教育があるのかを分けて尋ねます。前述のとおり、入職時の教育を実施する事業所に比べ、職務遂行に必要な能力・知識を付与する教育を実施する事業所は少なくなります。
あわせて、担当業務がどう広がっていくのかも確認しておきたいところです。
- 在宅への同行はいつ頃から始まるのか
- 管理薬剤師になるまでにどのくらいの期間が一般的なのか
- 地域連携薬局などの認定を受けた薬局であれば、その業務にどう関われるのか
半年後・1年後に何を任される想定かが具体的に返ってくる職場は、育成の道筋が整っていると考えられます。
- 3つの確認項目は、求人票・面接・見学に振り分けて聞く
- 「制度はありますか」より「使っている人はいますか」と聞くと実態が出る
- 数字で答えが返ってくるかどうかが、職場を比べるときの一番の手がかり
医療キャリアナビ編集部より
働き方を変えられる余地
長く続けられるかどうかは、入職時の条件だけでは決まりません。数年後に家庭の事情や体調が変わったときに、辞めずに調整できるかが分かれ目になります。
確認したいのは、時短勤務の実績、勤務時間帯の変更の可否、複数店舗を持つ法人であれば異動の申し出ができるかどうかです。制度があるかではなく、実際に利用している人がいるかを聞くと実態がつかめます。
求人票に書かれている条件にも幅があります。休日や勤務時間に関する条件は、掲載している求人が全体の1〜3割程度にとどまるものもあり、職場ごとの差が大きい部分です。求人票に書かれていない部分は、面接で直接確認するのが確実です。
参考:e-Gov法令検索「薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令」 / 厚生労働省「令和4年職業安定法の改正について」 / 厚生労働省「薬局・薬剤師に関する情報」
まとめ
薬剤師の転職回数について、何回までなら大丈夫という検証できる基準はありません。採用側が処遇を決める際に最も重視しているのは「これまでの経験・能力・知識」であり、転職回数は調査の選択肢にすら含まれていませんでした。回数そのものより、短期間で辞めた理由が説明されているかどうかが見られていると考えるほうが実態に近いです。
一方で、在籍期間が短いまま移り続けると、賃金・退職金・年次有給休暇など勤続年数に連動する仕組みの上では不利に働きます。教育の面でも、入職時の研修を何度も受けてその先に進めないという流れになりがちです。
繰り返しから抜け出す手順は4つです。過去の退職理由を並べて共通点を言語化し、譲れない条件を3つ以内に絞り、応募先ごとに変えない確認項目を作り、入職後に働き方を見直す時期を先に決めておく。この順番で進めれば、次の職場選びは前回までとは違う判断になります。
そのうえで、処方箋枚数と薬剤師の人数、継続的な教育の有無、働き方を変えられる余地という3点を確認できれば、入職後の想定違いは大きく減らせます。まずは過去3社分の退職理由を書き出すところから始めてみてください。





